
気がつけばもうSUPER GT 2019年シーズンの幕開けまであと1ヶ月半となりました。
GTファンの憧れの存在、GT500クラスのマシンに乗るスーパースター達も続々と発表され、4月13日-14日の開幕が待ちきれなくなってきましたね~。
ホンダ勢は年明け早々のオートサロンに今シーズンの体制発表がありましたが、10年前なんかホンダ勢は2月の末に体制発表をしていたのが何だか懐かしく感じます。
2018年シーズンを振り返ってみると、マシンの仕上がりで若干出遅れたレクサスLC500や、予選重視に振ったマシンのキャラクターが裏目に出てしまい、1年通してライバルより前に出れなかったニッサンGT-Rに対して、過去4年間苦労に苦労を重ねながらも着実に速さと強さを身につけてきたNSX-GTにようやく勝利の女神が微笑んだシーズンでしたね。
ホンダ陣営としては童夢のweider HSV-010が2010年にチャンピオンになって以来、8シーズンぶりのシリーズチャンピオンになりました。
また、チーム国光としては1994年にポルシェ911でドリキンと国さんが参戦を始めてから25年目で掴んだ初めての栄冠です。
No.100 RAYBRIG NSX-GTのAドライバーとしてチームを引っ張った山本 尚貴選手は、GT500クラス参戦9年目にして初めてのシリーズチャンピオン。
もちろんBドライバーの大型助っ人ジェンソン・バトン選手も、ぶっつけ本番で岡山国際やSUGO・オートポリスを走ったにも関わらず、来日1年目でシリーズチャンピオンを獲っちゃいました。
何よりも昨年3月の公式テストで、極限までナーバスになっていたジェンソン・バトン選手に、私が「ジェイビーー!!」って声をかけて励ましてあげたことが最大の勝因でしょう( ・`д・´)キリッ
GT300クラスを追い抜きながらライバルより速く走ることに最初は苦労していたジェンソン・バトン選手ですが、レースを重ねていくうちにGT300クラスをスムーズに追い抜く呼吸法を徐々に身につけ、シーズン終盤は日本刀の居合斬りをあっさりマスターした外国人観光客のように、目にも止まらぬ早業でGT300を処理するまで成長しました♪
異国の地での初めてのサーキットで慣れないレギュレーションに揉まれながらもキチンと結果を出す姿は、さすがF1ワールドチャンピオンです。
引き出しの多さを感じます。
……さて、前置きはここまでにして。
ここからは結構辛口になることをご了承下さい。
昨年、RAYBRIG NSX-GTとの壮絶なチャンピオン争いの末、僅か1.6秒差で負けてしまったKeePer TOM'S LC500のニック・キャシディ選手。
今年も昨年と同じKeePer TOM'S LC500を駆り、昨年と同じく平川 亮選手とタッグを組み、チャンピオン奪還を目標にシーズンオフもテスト走行を繰り返しながらマシンの戦闘力を磨いていってます。
そんなニック・キャシディ選手が某モータースポーツ専門サイトのインタビューでこんなことをおっしゃってました。
・・・・・“なんらかの理由”
ニックも本音でズバズバ言ってくれます。
毎戦毎戦サーキットまでたくさん駆けつけて下さるGTファンや目をキラキラさせたGTキッズに対し、その“なんらか”の部分をおっぴろげに出来る訳がないじゃないですかww( ̄▽ ̄;)
でもその“なんらかの理由”を全てぶっちゃけちゃいますと……
ドイツツーリングカー選手権とスーパーGTのGT500クラスは、コスト削減や自動車メーカーの参戦機会の拡大などを目的にハコ車の世界一決定戦に向けて2014年から徐々にルールの共通化に向けて動き出した事は、スーパーGTファンならご存知かと思います。
日本のスーパーGTでも2014年シーズンから、それまで使ってきた3.4リッターV8エンジンから2リッター直4ターボに変わりましたし、日本車のガワは残したまま左ハンドルになっちゃいましたよね。
そして駆動方式に関しても、ドイツツーリングカー選手権(DTM)とスーパーGTとの間で、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)で戦うことが最初から決まっていました。
それなのにホンダさんは、NSXのマーケティングに反してるっていう自分の都合でFRベースのモノコックを無理やり魔改造し、さらに頼んでもないのにハイブリッドシステムまで組んで参戦してきました。
これだけのワガママが通用した背景は、トヨタ(レクサス)・日産・ホンダという国内3大メーカーがガチンコでぶつかり合う図式を興業的にも無くしたくなかったスーパーGT側の弱腰がもたらしたとも言えますが、よくまぁトヨタ(レクサス)も日産もそんな勝手を許したもんだと個人的に思います。
しかもわざわざレースに有利なミッドシップに仕上げておきながら、周りからはGT400なんてバカにされるくらい遅かったのだからタチが悪いww
参戦してしばらくはミッドシップ自慢のコーナーリングでアドバンテージを取ることができず、ハイブリッドパワーを生かしてストレートスピードでどうにかGT500らしさを見せていました。
あの頃の速いNSXはどこへ行ったのか……
2016年シーズンはとうとうNSX-GT未勝利のまま終わってしまい、レクサス陣営も日産陣営もあまりの歯ごたえの無さに呆れてしまいます。
そしてとうとうスーパーGTの運営側も、GT500クラス全体の戦闘力のバラツキによるレース自体の衰退に危機感を覚え、2017年シーズン途中からはNSX-GTに対して15kgの重量軽減を言い渡しました。
……そして昨年のNSX-GT復活劇に繋がるワケです(-公- ;)
ホンダファンを中心にして「最強のNSX復活!」って盛り上がっているところに水をさしてしまい申し訳ないですが、NSX-GTはハイブリッドシステムを外したもののミッドシップのレーシングカーであることに変わりはありません。
DTM側のアウディやBMWからしたら、スーパーGTのNSX-GTはルール無用の悪役レスラーに見えているのでしょうね。
今年はいよいよ11月の勤労感謝の日のあたりに富士スピードウェイで、DTMとスーパーGTのマシンが同じグリッドに並ぶ交流戦も予定されていますが、特別に参加が認められたNSX-GTがこの交流戦で勝った場合、ホンダファン以外誰が喜ぶのでしょうか……?
ただ、このままですとおそらく2020年シーズンにGT500が世界統一規格寄りに車体規則を変更しても、我が道を行くNSX-GTはミッドシップのまま“日本の”GTカーとしてトヨタや日産と混走するつもりなのでしょう。
運営側も興業的にスーパーGTからホンダファンを減らしたくはないですしね~
スーパーGTとDTMとの間で足掛け10年に渡り車両規則の統一に向けた話し合いを続け、私も熱烈なGTファンとしてワクワクしながらGTレースの未来を見守ってきたので、ホンダがミッドシップのGTカーで戦い続けることに関して違和感しかありません。
特に昨年は世界各国から強豪チームが集結した鈴鹿10時間耐久レースがあったので、余計にスーパーGTの弱点ばかりが目立って見えてしまいましたね。
それはもうレースのスタートシーンから一目瞭然です。
同じ鈴鹿サーキットでのローリングスタートを切り取ってみましたが、鈴鹿10時間の方が何倍も迫力がありますね。
まるで新年初売りのデパートの開店直後みたいです。
特にSUPER GTは2017年の最終戦でスタート直前に起きたアオリ運転からの追突事故を踏まえて、今年から小学校の運動会の行進の練習並みに隊列を整えるようにルールが改正されたので、オープニングラップのファーストコーナーでのハラハラするようなバトルが無くなってしまいました。
また、SUPER GTの総エントリー台数は毎戦40台ほど集まりますが、GT500クラスとGT300クラスに分けてレースをするので、自然とスタートシーンは空間だらけのスカスカな絵になってしまいます。
エントリー台数が29台だったGT300クラスでもご覧のとおりです。
スタートラインを越えるまで隊列を乱してはいけないルールなので、自然と縦に長い車列になってしまいます。
このままGT300クラスの話を続けますと、プリウスとポルシェとマークXが肩を並べてレースをすることがGT300の自慢でしたが、この隊列の中身はプリウスやマークXなどのJAF-GT300車両と、ポルシェやBMW・メルセデス・ベンツなどの自動車メーカーが販売しているFIA-GT3車両の2つの車両規則がミックスされています。
載せるエンジンも自由でマシンセッティングも自由自在に出来るJAF-GT300車両に対し、自動車メーカーから買ったままカスタマイズも出来ず、サーキットに応じてギヤ比も変えれないFIA-GT3車両。
言い換えると日本のサーキットに合わせてプロフェッショナルドライバーが最高のパフォーマンスを発揮できるようにワガママなセッティングが決められるJAF-GT300車両に対し、プロフェッショナルドライバーからアマチュアドライバーまでどんな人が乗っても世界中のサーキットで安定したパフォーマンスを発揮できるように大人しく設計されたFIA-GT3車両という図式が成り立ちます。
ここまで前置きを長くすると、さぞかしJAF-GT300車両が連戦連勝を繰り返しているのだろうと連想させますが、実際は2017年シーズンから2018年シーズンまでの丸2年間全16戦中、日本のJAF-GT300車両は3回しかFIA-GT3車両に勝ててません。
さらに昨年の夏に開催された鈴鹿10時間耐久レースでは、賞金総額1億円目当てに集まってきたFIA-GT3車両の強豪チーム相手にホームコースで迎え撃ったJAF-GT300車両ですが、ケチョンケチョンに返り討ちに遭い最高で27位と惨めな成績に・・・
負けたJAF-GT300勢の言い訳としては、「タイヤが不馴れなピレリだった」とか「ピットの回数やピット作業の最低時間も決められたのでタイヤ無交換作戦が使えなかった」……などが挙げられますが、こればかりは相手も同じ条件なので全く説得力がありません。
このように国内で盛り上がって世界戦で叩かれるこの見慣れた展開はまるで……
史上最強のスター軍団と担ぎ上げられた後にアジア選手権で韓国と台湾にケチョンケチョンに殺られた侍ジャパンU-18代表のようでした。
甲子園を沸かせた球児の打撃力は、大人たちが興業的に盛り上げる為に選んだ金属バットのおかげなので、国際大会で標準規格の木製バットを普段から使用している韓国や台湾には打撃の面でどうしても劣ってしまいます。
このガラパゴスな雰囲気こそ、日本のサーキットをメインに戦うJAF-GT300車両が、世界中のレーサーが世界中のサーキットでライバルよりも速く強く戦えるように作られたFIA-GT3車両に勝てない構図のようです。
そう、何が言いたいかというと……、
GT500のNSX-GTやGT300のJAF-GT300車両は、この先世界のモータースポーツの戦線から取り残され、どんどんガラパゴス化していくのではないかと心配しているのです。
そしてガラパゴス化の心配はレースマシンだけにとどまらず、今国内で人気絶頂のスーパーGTそのものにも当てはまると考えてます。
昨今のスーパーGTではすっかりお馴染みとなったタイヤ無交換作戦は、レースラップで敵わない相手に対して意表を突く作戦としてレースを盛り上げます。
ですが、これも高校野球で例えると夏の甲子園で初戦から決勝まで一人で800球以上投げたエースピッチャーみたいなもので、国際大会をメインにピッチャーの球数制限が導入されている昨今では時代遅れの感があります。
実際に昨年の鈴鹿10時間では、1回のスティントの長さが最長で65分までと決まっていて、さらにピットインは最低でも9回以上、ピット作業時には最低でも52秒間は停止しないといけないルールでした。
ピット作業時間を短縮するために、スタート前にセットしたタイヤを労りながら走り、給油時間を短縮するためにスタートドライバーが燃費走行をする日本のスーパーGTとは全く逆のルールですね。
どちらのルールもそれぞれ良さがありますが、ピットの戦略やピット作業の速さで勝負するかコース上の速さで勝負するか、観客の分かりやすさから言えば鈴鹿10時間のルールの方がいいかなと私は思います。
また、速いクルマの勝ち逃げを許さず、シーズン終了まで全てのマシンの実力を拮抗させてチャンピオン争いを最終戦まで盛り上げる目的で導入されているウェイトハンデ制度も見直す時期に来てるのではないかと個人的に思います。
最終戦のファイナルラップまでチャンピオン争いが盛り上がった2018年シーズンも、最終戦のひとつ前の第7戦オートポリス終了時点でシリーズチャンピオンの可能性を残したマシンはわずか4台。
2017年シーズンは5台、2016年シーズンは熊本地震の関係で最終戦が2連戦となったので飛ばして、2015年シーズンは接戦だったけどわずか6台でした。
別にゆとり世代の運動会みたいに横一線に広がって手つなぎゴールをしろとは言いませんが、せっかくウェイトハンデ制度を敷いているんですからもう少し最終戦まで団子状態でファンを楽しませて欲しいもんです。
またトップとラスのポイント差にフォーカスを当ててみると、2018年シーズンにシリーズチャンピオンを飾ったNo.100 RAYBRIG NSX-GTの獲得ポイントは78ポイント。
それに対してGT500全15台中最下位だったNo.64 Epson Modulo NSX-GTの獲得ポイントは僅か4ポイントでした。
年間で8戦しか戦わないのにこのポイント差はちょっと開きすぎな気がします。
ウェイトハンデ制を敷いているのにこれだけ差がつくのなら、いっそのことウェイトハンデ制を無くして全戦ノーウェイトで戦ってみたらいいのにと思います。
私のホームコースでもある(笑)岡山国際サーキットのイベントや最終戦のツインリンクもてぎのイベントでは、いつもウェイトハンデ無しのガチレースを堪能できるのに、同じく年に1度しか来ない宮城県のスポーツランドSUGOや大分県のオートポリスを拠点としているGTファンは、毎年ハンデウェイトが載ったGTマシンによる50%~80%程度のパフォーマンスの走りを観させられてるので、同じGTファンとしてとても可哀想に思います。
おっと、つい熱くなって長文になってしまいました。
これまでの要点を整理します。
①速度の異なる2クラスのマシンが混走するのがウリのスーパーGTですが、あまりにもレギュレーションが複雑化してきてバランスを取るのが大変になってきているので、DTMとのコラボも止めてFIA-GT3車両で統一したらどうでしょうか?
レクサスからはRC F、日産からはGT-R、ホンダからもNSXがFIA-GT3車両が発売されているので、日本車不在のレースになることはなさそうです。
さらにピット作業のレギュレーションも鈴鹿10時間にならっていけば、シンプルで観客も見てて分かりやすいレースになるのではないでしょうか。
②このままGT500とGT300のマシンを残してスーパーGTの興行を継続するのなら、ウェイトハンデ制度を廃止して全戦ノーウェイトのガチバトルを魅せて欲しいですね。
おそらく全国各地で同じマシンが連戦連勝してしまい、これまでのシーズンよりもトップとラスの点差が大きく開くことが予想されますが、日本一速いマシンが日本中のサーキットで日本一の速さを観客に見せつけてもいいじゃないですか☆
ずいぶんと過激な内容のブログになってしまいましたが、平成の30年間ずっと日本のハコレースを愛してきた私の熱い想いがここまでの長文になったと受け止めて下さい。
新しい元号に切り替わっても末永く日本のハコレースが発展していくことを、心から願っています。