
先日、ドアミラーの話を書きながらフェンダーミラーの写真を参照してて、フェンダーのことを考えていました。
さてフロントフェンダーってのはなんでしょう?
写真は、1933年式のダットサン12型フェートンですが、この時代の車では、4つのタイヤを覆うような部品(濃茶の部分)がついていて、ご存知のとおりこれが泥除け=フェンダーと呼ばれる部品。自転車やバイクなんかと同じように、いかにもタイヤを覆ってるのでわかりやすい。
ところが、現代の車というのは、フェンダーはタイヤを覆うもの、というよりも、タイヤ周辺についているボディパネル、って感じになっている。

現代の一般的な車では、上から被さっているというよりも、ボディの横からついている感じだ。それでもこの部品は『フロントフェンダー』と呼ばれる。フェンダーミラーの足も、つま先でぎりぎり立つくらいの断崖岸壁だ。マーチなんかではさらにヘッドランプがでかいので、フェンダーミラー化にはかなり苦労しそうだ(笑)
ところが、15年ほど前かな…? たぶん初代ランチア・イプシロン(1994年)あたりからだったと思うんだけど、フロントフェンダーの立場を見直そうという動きが出始めた気がする。(初代ランチア・イプシロン→
wiki)
部品と部品の分割線をパーティングライン(Parting Line)というんだけど、フェンダーとボンネットとの分割線が、ヘッドランプの目尻ではなく目頭につながっているのね。
不思議なもので、こうやってフェンダーの峰(頂点)にパーティングラインが入らないだけで、クラシカルな印象を受ける。事実昔の車はそういうのが多かったし、ポルシェなんかは924を除いては全部そうだ。
『そもそもフェンダーとはタイヤを覆うものであって、その先端にヘッドランプが備わるものなのだ!』と主張されているみたいで、面白いなぁと思う。車の形はどんどん先進的に変化していくんだけど、その中に車という工業製品の歴史みたいなものを現代に伝えようとしているような意図が見える気がするのです。
V36のスカイラインなんか、アグレッシブでありながらもクラシカルでエレガントな感じをうけるのは、そんなこともひとつの要因かもしれない。
僕は造形の専門家ではないので、デザイナーがどういう意図で新しい車の仕事をしたのか、その真意まではわからないけれど、パーティングラインひとつで、これほど違った印象になるのだから、デザイナーの仕事というのは面白いだろうなぁと思うのです。もっとも生産制約などがあって、デザイナーの意図だけでパーティングラインの位置を自由にできるわけではなく、そこには設計部門や生産部門などとの間で、ものすごいせめぎあいがあるのだろうけれど。
車のデザインには好みがいろいろだけど、こういう部分で『お~、この車は色々せめぎあってここまできたんだろうなぁ』なんて話は好き嫌い関係なしにできるので大好きです(笑)
Posted at 2008/03/25 18:50:54 | |
トラックバック(0) |
歴史・あゆみ | クルマ