2016年09月22日
多くのお客様や、ジャーナリスト、雑誌編集者の方々がボレロA30に関心をよせてくださり、商品説明をしていると、どうしても話が「マーチニスモ」に及ぶ。
A30は、過去にオーテックがいろいろな車を開発してきた過程で蓄積していったノウハウがたっぷりあるからできている。 それには「マーチニスモ」「ノートニスモ」も含まれていて、言ってみれば同じ材料を使って、和洋中の料理を作れるシェフをオーテックの開発陣が演じているみたいな感じ。
ここで疑問がわく。
「ニスモバージョンをオーテックが開発してる?」
「作ってる、っていうならわかるけど」
「ニスモパーツをかき集めて装着して売ってるんでしょ?」
って思っているひとが大多数。
けれど、これは全然違う。
そもそも、ニスモパーツ・・・ニッサンモータースポーツインターナショナルが販売している「チューニング」パーツは、ニスモロードカーを、たとえばサーキット走行用にもっと適したものにしよう!と考える人のために用意されたパーツ。
オーテックが担当しているのは、そのベースとなるロードカー。
ちょっと特別な仕様を、誰もが安心して楽しめる、ファクトリーカスタム。
開発にあたっては、ニスモバージョンと名乗る際に備えるべき
①こんな性能で(エンジンは・・・、ハンドリングは・・・)
②こんなデザインで
に加え・・・
③通常の日産車と同じ耐久性や品質要件を満たし
④これくらいの値段で、○月○日までに発売したい
⑤継続的に供給できる
を満たすスペックを見つけ出し、仕様確定させ、継続生産できるような工法を探したり、サプライヤーさんを探したりして仕立てていくことである。
当然、日産のニスモビジネスオフィスとやり取りするし、日産のデザイン部ともやり取りするし、ニッサンモータースポーツインターナショナルともやり取りする。 「らしさ」みたいなものがちゃんと実現できているか、の確認も一緒にやっていく。
<誤解があったみたいなので、具体的な「連携」のイメージを追記します>
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コンセプトや目標性能、装備仕様はニスモCPSが判断して決め込んでいく。
デザインはニスモ担当デザイナーが行い、そのデザイナーはニスモのレーシングカー(たとえばGT500のGT-R)のデザイナーとも連携して、レーシングカーとロードカーとの共通性を作りこんいく。
オーテックは目標性能を実現できるスペックを模索し、決まったデザインを実現できる工法を探り出し、サプライヤーさんを探し、商品仕様として確定させていく。
出来上がった車が目標通りであり、二スモを名乗るのにふさわしいもになっているか、ニスモCPSとニスモのテストドライバー(ロードカーとは別のニスモパーツも開発している)が、最終確認する。目標に沿っていなければダメ出しして仕様変更をする。
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ただし、上記の条件を実現する手段は、オーテックがひねり出さないといけない。
特に大変なのは③④⑤。
どんなに素晴らしい性能やデザインも、生産できなければ・・・、適切な価格で提供できなくては・・・、ちゃんとした保証できるものでないと意味がない。
マーチニスモやノートニスモは、日産グループにある「ニスモ」という伝統的な「走りの楽しさ」を持ったDNAを多くの人に体験してもらうことが目的。
だから、ニスモを名乗るにふさわしい性能を具備することはもちろん、手ごろな価格でそれを体験できることが大事。 なおかつ、欲しいという人にはちゃんと渡るように継続生産できるようにしなくちゃならない。
たとえばマーチニスモS。 この車、ベースのマーチはタイで生産されているのはご存じのとおり。
じゃあニスモはどうやって作られているのか? 完成車を日本に持ってきてニスモパーツを付ける・・・なんてことでは、絶対にあんな価格では実現できないし、不要なベース車パーツの捨て場だけで大事件になってしまう。
じゃあどうしているか、というと、タイの日産の工場内で組み付けちゃうものと、タイ国内の協力工場で組み付けるものと、日本に持ってきてから組み付けるもの、という3段階の工程を経ている。
口で言うのは簡単だけど、やってることはハンパない。
パーツのサプライヤーさんだって、自由には選べない。 言葉も違えば文化もちがう。 開発過程に提供してもらう試作部品だって、きわめておおらかに誤仕様品が届く。 こんな扁平率のタイヤ組んだことがない、とか言われる。
そんなことも乗り越えながら、継続生産できるよう商品仕様を仕立てて行く。 生産技術と開発は一体である。
きわめて難しい生産制約の中で、いかに「元気よく回るエンジン」をつくりあげるか、どうやってそれをタイの工場で積むか、非常に合理的に設計された基本ボディにハイグリップタイヤを履かせ、それをうまく使い切れるようなボディと足をどう作っていくか、計り知れない苦労のもとに、出来上がっている。
『ニスモロードカーは、日産グループ内にある、あらゆるノウハウを活用して作られている』 というのはあちこちで語られている。
中には、ジュークのようにオーテックが関与することなく完成しているものもあれば、マーチニスモやノートニスモのようにオーテックが関与することで(そもそも量産では難しい特殊な作り方ができるのがオーテックの持ち味)ものもある。 Zニスモのように、もともとは改造車として作っていたものを、日産自動車がさらに一苦労して量産工場で生産完了できるようにしているものもある。
ニッサンモータースポーツインターナショナルは、それを作るにあたり、レースフィールドでのリアルな実績や情報を日産グループ内にフィードバックしロードカーつくりのためのノウハウを共有する。
まさしく『ニスモロードカーは日産グループの知恵の塊』。
マーチボレロA30があまりに気合が入っちゃってるので、マーチニスモはヌルイんだな、みたいな事を言う人がいるけど、そんなことは決してない。 ある意味では、A30は30台限定だから仕様決定に「楽」ができているという部分もある、実は。
日産グループとしは、マーチニスモSという一つの回答を提供したうえで、オーテックは30周年記念車として違う提案としてA30を作っている。 だから、ニスモSをワイドトレッドにして、さらにハードはサスを与え・・・みたいなことはしなかった。
それは、ニスモSをひとつの理想形として完成させているという自信の証でもある。
ボレロA30とニスモSの絶対的なコーナリング性能は同等レベルだろうと思う。
マイルドなタイヤ+(ニスモ比)ソフトなサス+ワイドトレッドのボレロA30
ハイグリップタイヤ+ハードサス+標準トレッドのニスモS
ファントゥドライブの答えはいくつもある、いくつもあっていいはず。
そのバリエーションをお見せした例だと考えている。
いろいろ書いたけど、要するに何がいいたいかというと・・・
ニスモSは、A30みたいに限定販売でもなく欲しいと思ったら公平に手に入る。
A30に対して「限定販売であることが残念」「もっとスポーティに な方が」とお感じになった方はは、ぜひマーチニスモSをお試しください! ということで。
開発、という言葉の意味は、想像以上に深く広く、だから車つくりは面白い。
Posted at 2016/09/22 22:48:26 | |
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