
そういやエンジンの話・・・
あ、その前に5MTオンリーです、この車。
6MTを期待していた人、ごめんなさい。
はい、エンジンの話。
テンロク、NA、Revアップの話をし、ポート研磨の画像をお見せしたりしたけど、それ以外の話をしてませんでした。
今回は、実際に折り込むか否かはまだ見えてないことを含め、一般論みたいな話をします。
このシリーズを書いていると、結構コメントでいただくのが、パルサーVZ-Rみたいなのをやってくれ!ってな話。
でもそれは無理。 まず、そもそもSRエンジンがもうないのだ、残念ながら。
オーテックはレストアや再生をする会社ではないので、今あるものを使って改造車を作り、それを販売した時点から通常の新車と同じ保証や部品供給をする。
そのレベルは通常の日産の新車に準拠する。 改造車であっても普通の車と同じように使える、というのがうちの特徴であるから、これは外すことができないのです。
というわけで、今回使うベースエンジンはHR16。
HRをはじめ、現代のエンジンってのは、燃費や実用域での熱効率を徹底追及している。そうしないと生き残れない。
エンジン内部の慣性力は、回転の2乗に比例して増えるので、高回転高出力!みたいなエンジンを作ろうとすると、これに耐えられるよう堅牢なつくりとなり、フリクション(≒抵抗)や質量が増加するので、軽量で省燃費という時代の要求に沿わなくなる。
HRエンジンって、ダミーヘッドを付けてボーリングしているんだぜ!って話を以前書きました。
エンジンを組み上げていく際、ボルトの締結力で変形する(するんですよ、金属でも、プリンみたいにね)ので、ダミーのヘッドを組んでおいて(応力変形した状態にして)ボーリングし、一旦ばらして本チャンのヘッドなどを組み込んでいく。こうして、フリクションの少ないものを作る。昔だったらダミーヘッドつけてボーリング・・・なんてレーシングエンジンの組み方。
実用域の熱効率アップを狙えば、おのずとロングストロークとなり、高回転では筒内ガス流動からベストな燃焼になりにくい。 したがって、燃費は確実に改善するものの高回転化はやむなく見送るようなコンセプトが今の主流。
でも、その一方で現代のエンジンは上記の素質から、かつての高回転型エンジンに対し、フリクションが非常に少なくかつ低中速の燃焼(=実用レスポンス)に優れるので、これはこれで使いようによっては魅力にもなる。
マーチニスモSも、ノートニスモSも、HRエンジンの素質を最大限活かし、限られたエンジン回転数のなかで、スポーツユニットとしてのチューニングを実施している。もちろん、よくある『名ばかりの』スポーツグレードのエンジンのように、誰が乗ってもギクシャクしないような調教はしていないので、中速でのパンチやピックアップは抜群で、これが実質的な速さと楽しさになってる。
そう、今、市販されている通常車のレスポンスは、誰が運転しても滑らかに走行できるよう、エンジン本来のレスポンス素質を電子制御技術でかなり落とした状態で市販されているのです。 時代はとんでもないスピードで進化しているので、イマドキはECMでここをいじると、まともに操れないような、とんでもないモノも作ろうと思えば作れちゃう。
VZ-R N1のようなエンジンは“モータースポーツで勝つこと”が開発の狙いだったので、イマドキのエンジンとは、ベースエンジンの考え方がまったく異なるのであります。
というわけで、残念ながら、VZ-R N1のような骨格のエンジンは今は望んでも無理なんですが、チューニング次第では『なんじゃこりゃ!』みたいなのもできないことはないわけです。
なので、30th記念車のエンジンは、現代のエンジンが基本的な長所として持っている超低フリクションを活かしつつ、回転をあげて走った時に気持ちいい!と感じられるようなものが出来ないかな~ってずっと考えてます。
Revアップすれば振動が増えるので、ブロック剛性をあげたり振動を減らすための回転系バランスの向上(クランクやコンロッド)とかをやらないといけない。 まぁ幸い、今回のエンジンは『手組み』ですから、まあまあのことはできるんじゃないかと思ってる。
ニスモSに積んでるエンジンと似たようなもんなんだろうな~って思っている人も多いかもしれないけど、おそらく、たぶん、かなり違う。 ニスモSたちは『ニスモ』と名乗る以上必須ともいえるスパッと結果(速さ)を出せる車になっている。
あえて違いを表現するならば、今回の30周年車は、速さは狙っておらず、車を運転するプロセスを楽しんでもらうような感じ。 競技に出られる車にもしない。 だからLSDも入れません。
でも、結果的には相当速いかもしんない。もしそうだったらごめんなさい(謝る必要もないかw)。それは、この車が速いのではなく、運転するあなたが速いのだ、ということだと思います(喜んでくださいw)
けっこうやりたいことやらせてもらうつもりなので、値段は高いです。
普通車の価値基準で積み上げたら、とても納得できない額になると思う。
これまでの話を聞いて『欲しいな』と思っている方の中に、値段次第ではニスモSを買う、という方がいたら、こちらが完成するまで待たずに、今すぐニスモSを買うことをお勧めします(爆)
*ちなみに冒頭の画像は12SRのベンチテスト中のものです(懐かし~)
Posted at 2015/10/28 16:17:57 | |
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