
先日の「きなこをうちの子に」の続きです。
きなこが訳ありと言った店員さんに、「訳ありってどういうことですか?」と聞いてみました。
「実はこの子、ショーケースに入れてお客さんに見てもらえるようにすると、体調を崩してしまうんです。」
「何度か様子を見てみましたが、何度ショーケースに入れても調子が悪くなってしまいます。」
「それでバックヤードにいるんです。」
「それにこの子、興味を持ったお客様に抱っこしてもらうと、次の日必ず熱を出してしまうんです。」
「だから目立つところに表示もせずに、あえてあまり公にしていないんです。」
「今回はお客様(私)がベンガルを名指しで来られたので、ただの冷やかしだけでこの子に負担をかけることにはならないだろうと思い連れてきました。」
人間と猫が全く同じ感情で、全く同じことを考えているわけではないと思います。
しかしもし私がペットショップで売られていたとしたら、四六時中食事も排泄もじっと見られていたら、たまったものではありません。
毎日毎日ガラス張りのショーケースに入れられて、入れ代わり立ち代わりじっと見られる。
そんなのはまっぴらごめんです。
ベンガルは描種の中でも神経質でストレスに弱いといわれます。
この子はその特性がより強いが為に、体調を崩してしまうのかなと素人ながらに考えました。
ペットショップも何も手を打たずに放置していたのではなく、何度も獣医に診察してもらっていたようです。
しかし獣医からは原因不明でどうしようもないと言われたとのことでした。
店員さんに「この子はどうなりますか」と聞くと、今は他に商談が入っていませんし、他の店舗に移動する話もないので、暫くはここにいるとのことでした。
その話を聞いて、その日はペットショップを後にしました。
数日後、りん と れおん の物を買いにと、その子のことが気になっていたので、そのペットショップを仕事帰りに訪れてみました。
すると店員さんが覚えていてくださったようで、私のところに駆け寄ってきました。
「先日ベンガルちゃんを出して抱っこしていただいたので、その後熱が出るだろうと注意していたんです。」
「そしたらあの子、熱を出さなかったんです。」
「こんなこと初めてです!!」
と、ちょっと嬉しそうに話してくれました。
その日は買い物と様子を聞きに来ただけだったのですが、「ベンガルちゃん連れてきますね。」と言ってバックヤードに消えていきました。
以前、なぜか猫に好かれるという話をしたのを、覚えていてくださっている方もいるかもしれません。
飼いネコ・野良ネコにかかわらず、何人か人がいても私のところによって来て、スリスリしてくれることがよくありました。
ベンガルはその性格ゆえ、抱っこが苦手な子も多いのですが、この子は初めて抱っこした時からされるがまま嫌がりもせず、怒りもせず抱っこされていました。
そしてこの日も最初に私の顔を見た後、大人しく抱っこされていました。
店員さんに他の方のキャンセルの理由を聞くと、必ず正直に状態を話されるようで、高いお金を出して飼うのに、そんな調子が悪くすぐに病気になられたら大変だし、いくらペット保険に入ったとしても、しょっちゅう病院へ連れて行ったら治療費もバカにならない。
何よりもいつ死ぬかわからないような子はいらないと、だいたいみんなそんな感じの内容でキャンセルになったようです。
言ってることもわからなくはないですが、聞いていてだんだん悲しくなってきました。
店員さんが「あのう、もしこの子を家族に迎えて頂けるのなら、今フェアでお値引きさせて頂いていますけれども、本当にこの子をかわいがって育てて頂けるなら、私の気持ちとしてもこのままお譲りするのは申し訳ないので、私の一存で更に◯万円お値引きさせて頂きます。」
「もしよろしかったらお考えください。」とおっしゃられました。
そして「ご参考に見積もりをお作りしましょうか?」と言われたので、とてもこの子が気になっていたこともあり、とりあえずお願いしました。
見積書を見ると、かなりの値引きがされていました。
それでもベンガルの子ネコですのでけっして安くはありません。
ただこの子の顔立ちやロゼット模様を考えると、相場よりはかなり安くなっているとは思いました。
そして見積もりに挟んであった名刺に目をやると、犬猫部門責任者との肩書が書かれていました。
「なるほど、それで一存で値引きができたのか。」
その日は見積もりを手に、家に帰りました。
元々保護猫を保護する為に今回は動き出しました。
ペットショップから猫を購入するなんて、毛頭考えていませんでした。
でも、一体それは何の為?
ひとつでも命を救うことができたらと、私は行動を始めました。
もしあの子にこれから先、ずっと飼い主が見つからなかったら、あの子はどうなってしまう?
自問自答の日々が続きました。
この間探していたベンガルの保護猫は、新しい里親の募集が出ていませんでした。
あの子はペットショップでは人気だったようで、私に抱っこさせる為にバックヤードから出てきた時、他の店員さん達も「ベンガルちゃん出してもらえたんやねー 良かったねー 」って声をかけたりしていました。
店員の皆さんの態度や言葉の節々に、この子がここで大事にされていることがとてもよく伝わってきました。
もし誰も見つからなかったら、店員さんの誰かが引き取らないだろうか?
でも冷静に考えると、そんなことをしていたらきっと、店員さんの家はイヌやネコで溢れてしまいます。
色々考えた末、保護猫だろうとペットショップだろうと、ネコにしてみたらどこにいるかなんて関係ない。
助けるのに出所がどこだとか、そんなのが無意味に思えてきました。
第一私は保護猫を引き取って、誰かから褒められたり良く思われる為に行動しようと思ったんじゃない。
ペットショップであろうと、先行きに不安がある子がいるなら、その子を引き取るのも選択としてあるべきだと考えるようになっていきました。
ただ正直、不安がないわけではありませんでした。
私はネコを家族に迎えたことがありません。
そんな私が果たして病弱な子の世話をして、育てていけるのだろうか?
もしそんな私がこの子を迎えて亡くなってしまったりしたら、かえってこの子を不幸に陥れることになるんじゃないか。
命を簡単に安請け合いすることはできません。
また暫く自問自答を繰り返しました。
考えに考えた結果、私はこの子を家族に迎える決断をしました。
そしてペットショップに伺った時、また店員さんから「やっぱりこの子(また私に)抱っこされても熱出さなかったんです。」
って言われました。
「きっと相性がいいんだと思います。」
「安心しきって抱っこされているし、(私になら)きっと大丈夫なんじゃないかなって思います。」
と言われました。
その間、ベンガルの問い合わせがあり、他の方が見に来たりした時も、商談中ですとか言ってけっして店舗に出さず、頑なに抱っこもさせなかったそうです。
私が、「今日はベンガルを迎えに来ました。」
と言うと、一瞬間を置いて「ほんとですかぁー 家族に迎えてくれるんですかー ベンガルちゃんに報告しなきゃ! あっ!! とりあえずベンガルちゃん連れてきますね。」
と言ってバックヤードに走っていきました。
ここまでがきなこがうちに来ることになった経緯です。
ただご存じの方もいらっしゃると思いますが、実際きなこがうちに来たのはここから暫く後のことでした。
この後、実際にきなこがうちに来るまでの間、まだ一波乱二波乱ありました。
そのことについては今回のブログも随分長くなってしまったので、また機会があれば綴っていきたいと思っています。
長文ご覧くださり、ありがとうございました。
追伸、現在のきなこの様子を心配してくださっている方もいらっしゃるかもしれません。
現在の様子は、今のところおてんば娘を通り越し、じゃじゃ馬という表現がぴったりの元気な毎日を送っています😊
