中学の思い出 最終回です。
2学期も終盤にさしかかったある日、リカが学校を休んだ。
今までも学校を休んだり、早退したり遅刻したりすることはあったので、特に気にもとめていませんでした。
次の日も、その次の日も、リカは学校を休みました。
さすがに今までそんなに休んだことはなかったので、だんだん気になっていました。
そしてこれだけ休むのは何かあったのかもしれない。
クミだったら何か知っているかもしれない。
今日学校に行ってリカが休んでいたら、クミに聞いてみようと思い学校へ行きました。
学校へ行くと、その日はクミも休んでいました。
もしかして野口は何か知っているかなと思い聞いてみたものの、野口も知らないとのことでした。
リカが休んでからも、3人でご飯を食べていましたが、この日はクミも休みだったので、野口と私は久しぶりに男友達のグループと一緒にご飯を食べました。
あれだけ男友達と一緒にご飯を食べていたかったのに、今となってはなんだか違和感がありました。
勿論気を遣わず、バカっ話をして爆笑して、楽しいのは楽しいのですが・・・
翌日からもクミは学校に来ませんでした。
2人に何があったんだろう。
心配がつのっていきました。
今なら手軽にLINEで、一昔前でもメールで、簡単に連絡を取ることができます。
しかし私の中学時代にはスマホは勿論、ガラケーもない時代です。
連絡手段は自宅の電話か、若しくは直接自宅に行くくらいしか方法がありませんでした。
「なあ野口、お前クミかリカの電話番号知ってるか?」
知らないだろうと思いつつ聞いてみましたが、「どっちも知らん。」との予想通りの返答。
ダメもとで「家は?」と聞いてみたものの、やはり「知らん。」との答え。
それでもさすがに毎日クミからの告白を断っていたとはいえ、少し気になるようでした。
私はクミとリカは仲のいい友達だと思っていました。
なんなら親友とさえ思っていました。
一緒にいる時はそれくらい仲が良く、居心地が良かったのです。
クミやリカからも、「私ら親友やんな!」って言われていました。
それが、今になってよく考えてみたら、家はおろか連絡先さえ知らない。
以前一度クミに何かの話の流れで「家どこ?」って聞いたことがありました。
でもクミは、「うち家ボロいから教えへん。」って教えてくれませんでした。
その時は私も「ふーん。」と言って終わりました。
それから家も連絡先も聞いていませんでした。
そうこうしているうちに、2学期の終業式の日になりました。
それでもやはりクミとリカが学校に来ることはありませんでした。
その頃には同じクラスの奴や、他のクラスの奴にも、「クミかリカの連絡先か家知らんか?」と聞いて回っていました。
でも誰も2人の家も連絡先も知らなかったのです。
なんの根拠もなくただ漠然と、3学期になったらクミもリカも学校に来るかもしれない、そう思うしかありませんでした。
冬休みが終わり、3学期が始まりました。
しかしクミもリカも、学校には来ませんでした。
それから暫くしたある日、2人ついてあるウワサが流れていました。
※ここからはウワサを断片的に繋ぎ合わせたものです。事実と異なるところがあるかもしれないことをご理解ください。
リカについてのウワサは、リカが妊娠したらしいとのこと。
そして子供は産むようなので学校には来れないという話でした。
相手が誰だとか詳しいことはわかりませんでした。
クミがリカには彼氏がいないと言っていましたが・・・
そしてクミですが、どうやら他校の生徒と大立ち回りをして何人かにケガを負わせ、警察にパクられたあと鑑別所送りになったということでした。
一瞬クミならあり得ると思いましたが、鑑別所に送られたのが事実ならば大変だと心配になりました。
先生に聞いたら本当のことを知っていると思い、担任に教えてくれと言いましたが、言葉を濁すばかりでやはり何も教えてもらえませんでした。
中学生の私はあまり制度について詳しくありませんでしたが、クミが鑑別所を出たら、保護観察かなんかで学校に来れるようにと願っていました。
その後、クミが年少(少年院)に送致されたとウワサが流れました。
いったい誰がウワサを流しているんだろう?
誰がこんなに詳しく知っているんだろう?
探しても調べても、情報源はわかりませんでした。
3学期の最終日、卒業式の日もクミとリカの姿はありませんでした。
わかってはいましたが、卒業式に2人の姿がなかったことが、私には心残りであり辛い出来事でした。
野口はやんちゃでそこそこ有名な、私立高校に進学しました。
私は高校が遠いのが嫌で、電車通学も面倒くさかったので、家から近い公立高校へ行こうと思っていました。
しかし一番近い高校は進学校で、レベル的には上の上。
到底私の脳ミソでは行けるわけがない。
次に近い高校はレベル的には中の上くらいでしたが、なんとか私の脳ミソでも入学することができました。
高校生になり学校がバラバラになっても、野口とはよく遊んでいました。
そしてどちらからともなく、よくクミとリカはどうしているだろうと話題になりました。
そんな時中学時代の同級生とバッタリ出会い、いろんな話をするなかでクミとリカの話題になりました。
そいつは卒業してから偶然リカと出会って話をしたとのこと。
やはり妊娠していたのは本当で、赤ちゃんを抱っこしていたそうです。
少し驚きましたが、リカの近況を知ることができ安心しました。
しかしその同級生もクミのことはわからないようでした。
その後、私は二度と2人と会うことはありませんでした。
ただ、ふとした時、4人で昼食をとっていた時のことを思い出し、あの時は楽しかった、心地良かったと思いにふけることがありました。
歳を重ねる毎に思い出すことは少なくなりましたが、最近YouTubeを流していると、放置していたら次々と自動でYouTube側でオススメを流すなかで、だんだん私の好みとは違うものが流れるようになり、中学・高校時代の出来事や、恋愛の馴れ初めが流れました。
何気なく観ていたら、ふとクミとリカのことを思い出し、2人のことを綴っておきたいと思いました。
たぶん、ご覧くださった皆さんの想像とは違った話だったのではと思います。
小説やドラマだったら、最後はハッピーエンドになっていたことでしょう。
でも事実は小説より奇なりという言葉がピッタリの出来事でした。
皆さんがどんな感想をお持ちになったかわかりませんが、私にとっては思い出の一コマです。
これからも、何かのきっかけで思い出したりするんだと思います。
最後までご覧くださり、ありがとうございます。
※(イラストはフリー素材から拝借しています)