笑顔で握り続ける〜死んでも離さない

久しぶりに見舞われた大雪、幹線道路は混乱はないのだけど狭い裏道では除雪車が脇にどけた雪が壁のようで、道幅が大変狭くすれ違いに神経を使います．しかも路面の轍（わだち）が対向車線の分をいれて3本しかなかったり．

対向車を発見するとすれ違い地点あたりでスピードが落ちるようにシフトダウンしていました．普通のAT車ではシフトダウンの際にちょっとスロットルを入れるとショックなく変速できます．対向車線を近づいてくる銀色のライトバン営業車に備えて、またそっとスピードを落として恐ろしいすれ違いに備えていたとき．

そのライトバン、僕の車とすれ違う地点にさしかかると、あろう事か路肩側にステアリングを切ったのです．ぐいっと元気に．そんなことをするからライトバンは左前輪を路肩の雪に食い込ませ、リアは対向車線に大きく張り出して滑走し始めました．僕は徐行スピードにまで落としていましたが営業車は30キロを超えるくらいの速度に見えました．

僕のワンボックスカーの前部キャビンがつぶれて、足を挟まれるほどの衝撃にはならない相対速度的とは思いましたが、やがて訪れるはずの衝撃と嫌な音に心の準備をしました．

そのとき僕が見たものは、営業車のドライバーが踏み込んだブレーキの油圧を正直に受けて、スタッドボルトが4個揃って光りながら慣性の法則に従って轍の間の固い圧雪路を滑る、完全に停止した車輪と、、、

右手で握りしめた携帯電話を耳に当てて笑っている若い男性ドライバーの口元．
「おっとっと、アブねーし」
とでも誰かと楽しく話していたんでしょうか？

どんなに恐ろしい凍結路でも、高速道路を狂ったようにぶっ飛ばして営業所に帰る夜更けでも、鈴鹿のなんとかコーナーを四輪ドリフトで駆け抜けるときでも、大切な彼女を家に送り届ける夜でも、生まれた子供を病院から初めて連れて帰る時でも、大好きなおじいちゃんが運ばれた病院へ急ぐ時でも、オマエは片手に携帯を握りしめいつも誰かとヘラヘラ笑いながら左手一本で運転するのか．

対向車のドライバーがどれほど運転が下手でもぼくは全然構いません．
それにはこちらで対処する方法がいくらかあります．

しかし、
対向車が緊張するような状況で、
携帯で楽しいお話をしながら、
自動車を運転して、
あわや衝突する瞬間にまだ携帯を握りしめて笑っているという、
ナメきったオマエの態度を僕はどうしても許す気になれないのだ．

衝突すれすれの恐ろしいすれ違い〜ぶつかりはしなかったのだけど、
彼は反省なんかしていないだろう．