少なくとも自分が乗ったクルマは、イグニッションを切る前にオーディオと空調を必ずオフにする.
大切なものを使ったら、丁寧に片づけるのだ.
泥靴で乗り込んで思いきりドアを閉め、キィを回したら付けっぱなしのテレビが大声でげらげら笑いだし、ベンチレーターからオートエアコンのファンの風が顔に向かって全開で出るのに構わずエンジン(というかシステム)をスタートさせる.
と言うのが普通なら、その普通が好きではない.
それを大切なロードスターで行いたくないのだ.
(やろうと思ってもできないけどね)
フッド・ストラット・ダンパーはスカスカになったので数年前に買ったが、新品は1本でも充分に保持力があるので片方だけ交換した.それでもこんな角度で保持できる.
使わなかったもう片方のダンパーは何年後に必要になるだろう?
少なくとももう一度買うことは絶対にない.
ガレージのロードスターに乗ろう.
しかし、出かけない、乗るだけだ.
イグニッションをACCに回してオーディオの電源を入れてボリュームを回す.
SSDに換装したiPodクラシック(160G to 250G)のホイールにタッチして選曲.
Miles Davis (tp)
George Coleman (ts)
Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b)
Tony Wiliams (ds)
Recorded Live On February 12th,1964,
At Lincoln Center's,Philharmonic Hall
マイルスの"Four and More"を選んだ.
1曲目のWalkin、初めて聴いた時は急速調ブルースに演奏されていて本当にびっくりした.
1964年の米国でのライブ録音(57年前).
本当に短いテーマの後で容赦なく始る高速のアドリブが凄い.
インプロヴァイザーとしての最後のマイルス、と言われている.
マイルスのソロは全ての音が無駄なく圧巻だ.
ジョージ・コールマンのソロは少し単調だがトニー・ウィリアムス、ハンコックのソロは素晴らしい緊張感と変幻自在のプレイ.
もっと、もっと、できるだけ大きな音で再生しなくてはダメだ.
次は日本のジャズ、Four Soundsの"Live at Mobs"
峰厚介 (ts,b-cl)
板橋文夫 (pf)
井野信義 (b)
村上寛 (ds)
Recorded live at MOBS, Tottori,
on Jan 17 & 18. 1989
Produced by Hisoshi Murakami
Recorded by Kimio Oikawa
T Friends TFC 0001
板橋-井野のデュオで始る「8488」
dsが入り充分に盛り上がったところで峰のテナーでテーマが奏でられる.
やはり日本のジャズはぐいぐい心を掴まれ揺さぶられ振り回される.
「なぜ日本のジャズが好きなのか」
と聴かれて、
「アドリブが日本語なんですよ」
と答えたヤツがいた.
俺である.
こちらは31年前のライブ録音だが音質は良く(ダイナミックで芯がありながらバランスが良い)何の不満もない.
できるだけ大きな音量で.
強力な磁気回路の6.5インチ・ユニットは強引にストロークさせられてベースとバスドラでドアの内張がバンバンびびる.
ボイスコイルのモーションストロークは少ない方が良いに違いないが、それに崩れず耐える限界はユニットの資質だ.
無理を強いられるのはスピーカーだけではなく、このロードスターのいくつもの部分がそうである.
JBLのP660Cのツイーターは初めて聴いた時は粗っぽいと思ったが、ジャズを聴くと俄然逆にこれが効いている.
そんな音質の性格もこのロードスターの方向性にビシッと合っていて気に入っている.
火の出る演奏を聴いているとキリがない.
どれほど良い録音でも、ダメな演奏はダメだ.
素晴らしい演奏なら、音質は多少悪くても関係ない.
しかし、音圧が出せないのはそれ以前にダメだ.
どんどん音量を上げても絶対不快な音にならずクリップするなら、それは正しくチューニングされたオーディオである.
音質の話をするのは、それが出来た後のことである.
iPodを停止させ(HDDのシーク音がないのがまだ不自然)、ナカミチのボリュームを回してゼロにして、ボタンを押してオーディオの全ての電源を切ってから、イグニッションをオフにする.
シートを最後部まで下げて、左ドアを半ドアにして、心を込めてロードスターから降り、最後に半ドアでそっと閉める.
日本の襖や障子は乱暴に閉めるものではない、ように。
半開きのトランクルームの中でリスニングに使った電力を補充するために充電器(セルスターDRC-300AMZ)のインジケーターが点滅していた.
Posted at 2021/08/16 23:23:27 | |
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