冷めない熱

ぼくは決してレンズを多くは持っていない．
とても少ないと言って良いと思うし、焦点距離に偏りもあるし．
残念だが手放したレンズの方が多い．

せっかく手に入れたレンズを手放すのはとても無駄だと思う．
なかには、ある時から嫌悪感さえ生じたレンズもあった．
とても良いレンズを作るメーカーだが、自分個人の不信感が変わる事はないだろう．
偏見だとしても、根拠のない事ではない．



実はある一本を再び手に入れたいと思っている．
大げさな言い方など似合わぬ、たいへん小さくとても安価なレンズだ．
それで撮った写真をいま、拾って見ている．



そのレンズでのぞいていた5年前、その頃から、ぼくのロードスターはほぼ何も変わっていない．
iPodが初代の4GからHDD最後の160Gに変わり、
密かに隠されたオーディオのパーツたちを更新したが．
多分これからもその外観が変わる事はないだろう．



レンズって、気に入って使うか、イヤになって使わなくなるか、だ．
もちろん手に入れた時は、いつか使わなくなるなどと思わない．

むしろユーノスの方は、いずれ手放すものだと考えていた．
手に入れたあの夜から、いつか、将来に、更に自分を刺激するクルマを手に入れるために、
この小さくて丸くて小気味の良いクルマは人手に渡るのだと思っていた．



ああ、5年前の写真でもまるで昨日撮ったかのようだ．．
それくらいに、もうこのロードスターは、どこも変わらないだろう．
何年も、全く変わらなくても、飽きる事はなかろう．

ロードスターは、モディファイするのも、お掃除するのも、レストアするのも、どれもみな楽しい．
それは無意識であれ、自分の人生を投影して、その結果かもし出される「ものごと」に満足する作業だ．
とても、たいへんに、私的な世界なのだと思っている．



レンズに対しては飽きっぽい自分だが、ロードスターへの熱愛が冷める事はないのかもしれない．
たぶん「次にやりたいこと」も「もっとこうしたい」こともないからだと思う．

世界中の多くのオーナーと同じように冷めることはない、
「冷めない情熱」こそがロードスターの世界なのだ．