加える事、捨てる事

どうでも良い用事を作って、ロードスターで出かけた．
高い位置の歩道を歩いて帰る女子高生が、ユーノスのドアを開けて乗り込む俺を見て「かーっこいい」と言うのが聞こえる．
当たり前すぎて驚きもしない．
「俺じゃないぞ、お前の事なんだぞ」
とユーノスに言ってやる．

でも、俺のユーノスは、俺無しでは生きてゆけないし、美しくもキレイでも恰好良くもいられないだろう．
他人の手に（良い値で）渡ったら最後、クーッだらないクソお飾りパーツで盛り盛られてバカのロードスターになるだけだ．
そんなくらいなら誇り高きユーノスのまま博多湾に沈めるのが良いんだよな．
そうだよね、やっぱり．
北陸だけど．



もうずっと前から変わらぬ眺め．
これからも変わらないだろう．
52φのメーターがぴったり入る吹きだし口．
そのための設計なのだ、と俺は信じている．
個人的にこの位置から風が出て顔に当るのは不快だし、
どうせエアコンは備えていないし、
どうせトップを上げて走る事もない．

この使い方が本来なのだと思う．



風変わりなメーターパネルも良いなと思うが、変わったパーツを取り付けるよりキレイにしている方が好きだ．何より自分が気に入っていればそれが正義なのだ．

それより最近のクルマはとにかくまぶしすぎる．
目がおかしいのか、アタマがおかしいのか、その両方か？



ここ最近で交換したパーツでは純正プラグコードがダントツで気に入っている．
どうしてもっと早くからこうしなかったか？バカである．

「簡単に交換できる部分がひときわ目立つ社外品である事」があまりにも当たり前になっていて、頭がおかしくなってしまったのだ．

と、思う．

もちろんわずかでも性能がよいパーツを与える方が、良いロードスターになるに違いない．

と、思う．と言っておこう．

良いロードスターとは何か？言うお話は、そのうちやろうのココロだ．



ハッタリ、こけおどし、実弾がでないモデルガンのようなもの．
ま、今実弾を装填したら、多分エンジンが致命的に壊れる．
それはこまるのだ．



数少ないノーマルではないパーツ．



新車の時に「ここが汚れてボロい中古車になる」と思った部分のひとつ．

当時のユーノスは「クルマが好きな若い男性」が買うものだった．
その人たちが手放したユーノスの中古車は「古くはないのに細部が汚ったない、掃除なんかした事もない、リアパーセルの隅にゴミや空き缶や落ち葉がひとつかみはさまっているのは当たり前」なものばかりだったが125万から140万程のお高いNA6だった．（当時はね）
165万円でNA8の新車を買ったのは、俺の人生で多くはない「正しい選択」だった．



26年間で「空調パネルを交換しよう」と思った事がない．
こんなもの要らないから取り外してしまおうか？と思った事は何度かある．
結局下らない物をあれこれ「取り付けて」しまったから、ロードスターに無意味な下らない事をしているには違いない．



素手でレザーステアリングに触れるのも好きだ．
ただ、やはり最近は握力が低下しており、その操作はさらに全神経を集中する必要がある．
低速で横丁を曲がるような時だけだが．

加給したBPの豊富なトルクが美味しい3000回転以上あたりでステアリングをしっかりグラブしてコーナリングする快感は、このロードスターの美点のひとつだ．
細くて「きゃしゃ」なウッドもよし、太めのレザー巻きリムをしっかり握るのも良い．



このような眺めさえ美しくて仕方がない．

走行中のドライビングシートから振り返ると、何もない．
これこそがスポーツカーだ、とユーノスが教えてくれた．



昔、「ヘッドレストの背後にロールフープがある」ユーノスに追い越された時、なんて素敵なクルマだろうか、と思った．
自分でその世界を手に入れてみたら、アタマの後ろにモノがあるなんて許容できない、と思うようになった．

「太く大きく重いパイプのパーツを最も目立つ重心よりはるかに高い位置に取り付ける」
「ファッションバー」という名称はその通りで、ファッション的意味しかなく機能的デメリットしかないパーツの正しい名称だ．

あまりにもライト・ウエイト・スポーツカーの魅力を損なうから純正オプションでも作られなかった．
大きな事故の際は変形して後頭部を強打する事もある．
実際にロールオーバーしたら付け根からひん曲がるだけ．

でも、後方からみると「二人乗り」である事をことさらに協調する光り輝くパーツだ．

「アタマの後ろにパイプがあるよ、かっこいい！」

女子高生もそう言うと思う．



昨日次女が小豆色でお宮参りを付き添った．
あまりに良い天気なので神社で自分でトップを下ろして帰ってきた．
しかも、よせば良いのにキャンバスのブーツカバーまできちんと装着したと言うから驚いた．
見ると、ベルトを通すリンクが違っていたがそれ以外は正しく装着してあった．

あとで姉が教えてくれたが、やはりその際に爪を傷めてしまったらしい．
かわいそうに、ブーツカバーなんか装着しなくて良いよ．
メンドクサイおっさんだって許してくれるよ．

と、そんな事は知らず、Phoenixは久しぶりにガレージで落ち着いて眠りに入った．