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ニト朗+(風紀委員)のブログ一覧

2015年01月17日 イイね!

不完全で完全なロードスター


2006年の単独事故で修整中のスナップ.


この工場はラジオさえなく、いつもとても静かな作業場だった.
二人のスタッフが休憩に入ると、ぼくとぼくのロードスターだけの空間で時間が止っている様だった.
夏だから蝉の声がしていたかも知れない.

ぼくのロードスターはウインドウシールドが後退していて、幌をかけるとサイドウインドウの角にスキマが出来ていたし、ボンネットの後端がワイパーカウルに強く食い込んだ跡さえあった.
ドアも強く後部に食い込んでいたしトランクリッドのチリも狂っていた.
そもそもフロントのサブフレームが大きくズレていた.
文句ない「全損」と言う評価だった.

ボディは設計された予定の場所が折れて初期の衝撃を吸収し、
それを超えて全体に伝わった力はボディを大きく曲げ、捩じり、
その一瞬後に受けきった力のどれだけかを押し戻してバランスした.
恐らくその全てが1秒ほどの時間だったろう.

一度は同じ色、同じ年式のロードスターを見てもきたのだけど、
それは同じロードスターでも全く違う何かの様に思えて、
どうしても全損の自分のロードスターを捨てて
見知らぬロードスターを自分のものとする気にならなかった.

ぼくは、自分の気持ちを確認できた.
大切なのは、このロードスターがぼくしか知らず、ぼくがこの1台のロードスターしか知らぬ事だった.
そんな事を守るため、数人の職人たちが容易くはない作業に挑戦し、やり遂げてくれた.

全損とは言え、ウインドウスクリーンも割れなかったしドアやリアフェンダーは交換しなくて済みそうだった.
このロードスターは「直せる可能性」に賭けて、精いっぱい変形に抗ったのだと思った.
だから「出来るだけやるが100%は期待しないで呉れよ」と言う親父さんの声は頼もしかった.
その声はこいつにも聴こえていただろう.



フレーム修正器にマウントされた部分.
フレーム修整は設定値に近づけるために鉄板の復元力で戻る分まで見越して、多く引っ張る.
しかし引っ張りすぎるとスポット溶接が切れてしまうので限度がある.
前後左右4ヶ所にあるこの跡を愛すべき部分などと言うのは感傷的過ぎるが、
この跡を消してはいけない.

車体には今でもぼくだけが知るゆがみが、いくつかある.
しかし加速しても減速しても進路が流れる事は一切なく、高速では完全に直進する.
これは富山のオオミチさんが目分量でアライメント調整したままで、今でもアライメントは取り直していない.
かえって計測してアライメントを変えると走り方が変わるのかも知れない.

新しいボディを手に入れて一切がっさいを移植したら、
ロードスターとしては完全さを保つ事はできた.
でもそれでは自分のロードスターと言う意味において、完全ではなくなってしまう.
外観も走行性も、満足できるレベルで復活することができ、
自分のロードスターを失わずに済んだ事にどう意味を見いだすか?

私的にはかけがえのない価値があるが、
客観的な価値はゼロだ.
客観的価値なんていかに無意味だろう.
下取りや買い替えなどという未来はないのだから.

ボディを修復してくれたのは初めて乗ったクルマを初めてぶつけた時からお世話になっているショップ.
親父さんとはいつも亡父の話になる.
レストアラーではないが目の前でその技をみて声を上げて驚いた事もある.

エンジンと足回りを見てくれた大道さんは律義に作業をしてくれる職人、つまり手も作業着もキレイな事なんかないタイプの人.

その他特別に補修パーツを出してくれたFMのビルにも世話になった.

自分の不始末は言葉に出来ぬほど愚かだが、
いろいろな縁と人々の力で、ぼくのロードスターは不完全さを秘めつつも、
今ここにある.
とても多くのものを授かって、今も元気に走れるのだ.

本当に、本当に、有り難いと思わない日はない.


Posted at 2015/01/17 16:52:25 | コメント(2) | トラックバック(0) | ロードスターのこころ | 日記

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「@メディック どんな作品にも言えますが「承認と解放」は普遍的テーマで、両親を含め作中の全ての人物の望みであります。」
何シテル?   08/02 08:00
日本おわん組合 代表理事組合長 日本ロードスター学術会議 会員 ロードスター高校 風紀委員 ロードスター国家安産保障庁(2021/3/8初孫誕生につき退任...
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