
東京モーターショーで
スバルとマツダが
にぎわう理由
主催者側と、観客の
意図はずれている。
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10月28日から東京モーターショーの一般公開が始まり、11月5日に閉幕を迎える。
2017年の東京モーターショーは、一般公開日初日の来場者数が台風の影響もあ
る中で8万6000人とまずまず。一方で、展示内容や参加メーカー数の減少などか
ら東京モーターショーの凋落を嘆く声も、メディアを中心に少なからず聞こえてきた。
そもそも、モーターショーの位置づけや役割は、世界的に変化を遂げている。3大
モーターショー(ドイツ、北米、日本)、5大モーターショー(+フランス、スイス)とい
った枠組みはすでに過去のもので、どのモーターショーもローカル市場や各メーカ
ーの戦略によって出展を調整するのが常識だ。
その中で昔ながらのモーターショーを色濃く残している、というより引き継いでいるの
が中国上海モーターショーだろう。主要メーカーがこぞって参加し、コンパニオンの
露出度もバブル期の東京モーターショーを彷彿とさせる。
■「BEYOND」に込めた自工会の意図
2017年のモーターショーのテーマは「BEYOND THE MOTOR」。ホームページには
その意味が「自動車産業の枠を超えて、さまざまなアイディアやテクノロジーを取り
入れ、『これまでのモビリティの価値を拡張していく』というビジョン」と説明されてい
る。これまでのモータリゼーションを超えるという意味が込められている。
自動車そのものの価値が大きかった過去から、自動車が移動手段として新しい意
味を持ち始めた。今こそモビリティ時代への跳躍が求められている、といったところ
だろう。クルマであればその基本性能で売れる時代ではないので、移動や運転とい
う体験をサービスとして提供することを考えないとダメ、という自工会の業界に対す
るメッセージでもある。もっと言えば、EV、自動運転、シェアカー、コネクテッドなどを
やらないと生き残れない、という警鐘とも取ることができる。
EVやコネクテッドカーの流れはおそらく止められない。ビジネスにとってスピードが
重要な現在、旧来のままでも「まだ大丈夫だろう」では、確実に世界に置いていかれ
る。将来必ず当たるビジネスを見通すことは不可能なのだから、未来を見据えたトラ
イアンドエラーに慣れていくことが生き残りの手段になるというわけだ。
■業界の思惑と消費者ニーズのミスマッチ
自動車業界への戒めを込めたメッセージであり、現状の消費者の想いと必ずしも一
致していない可能性がある。
それを痛感するのは、会場でひと際人気を集めているのがマツダのデザインコンセプ
トカー、VISION COUPEとKAI。そしてスバルブースのVIZIV PERFORMANCE CONC
EPTを筆頭とするBRZ、S208、XVなどの車種たちであるという事実だ。
マツダにおいては、前回2015年のモーターショーでもRX-VISIONの展示だけ絶大なに
ぎわいを見せていた。このときも各社はEVや自動運転などをベースに、ハンドルがな
かったり、外装がイルミネーションディスプレイになっていたりと、斬新な未来カー推し
だった。他方で人々の注目を集めたのがロータリーエンジンを搭載したスポーツコン
セプトだ。
マツダ、スバルといえば個性的なクルマづくりに定評があり、コアなファンが多いメー
カーでもある。マツダのSKYACTIV-XやGベクタリングコントロール技術、スバルのボ
クサーエンジン+AWDにアイサイトなど、技術的な注目ポイントもたくさんあるが、自
工会がEVや自動運転の打ち出しを「BEYOND」という言葉を使いながらある意味推奨
している中で、若干方向性の異なる「BEYOND」を打ち出している。
こうした独自方向への「BEYOND」が、来場者に大いに受けた。ブースの賑わいを見れ
ば一目瞭然。世界の潮流や業界の危機感とは別の次元で盛り上がる。来場者の表情
を見れば「楽しんでいる」「喜んでいる」し、何よりマツダもスバルも2017年度上半期の
決算ではグローバルでの出荷台数を増やしているという事実がある。
■独自路線を貫く2社のポリシー
マツダもスバルも、EVや自動運転を考えていないわけではない。マツダは過去に、小型
のロータリーエンジンをレンジエクステンダーとしてEVデミオなどに搭載した車両を発表
している。スバルのアイサイト・ツーリングアシストは、他社に先駆け、高速道路や渋滞
時の追従走行を実現している。
この2社はどのような背景で今回のモーターショーに臨んだのだろうか。会場でそれぞれ
の広報担当者に「自工会のテーマは、EVや自動運転、コネクテッドを強く意識したものだ
と思うが、会社としてどう考えるか」という質問をしてみた。
マツダは「CO2の排出量に関してWell to Wheel(燃料の製造からCO2消費を考える)とい
う考え方があるが、インフラ整備のコストやエネルギー消費を考えると、既存の内燃機関
でもできることはあると思っている。EVや自動運転で価格が上がるより、多くの人に手の
届く製品であること、ソリューションであることが重要だと考える」と答えた。
スバルは「まずドライバーあってのクルマという考え方。その安心や安全を追求するうえで
パワートレーンや運転支援システムを考えている。また、走行性能を追求していくと安全
なクルマになっていく。EVや自動運転(支援)はその延長で考えるもの」とする。
どちらも、EVや自動運転など特定技術ありきではクルマ作りを考えておらず、それぞれの
目標・目的のために必要または使える手段としてそれらの技術があるという点で一致して
いる。
世界の名だたる自動車メーカーがひしめいている日本。トヨタ、ホンダ、日産に比べ、企業
規模に差があるマツダやスバルだからこその戦略。つまりは消去法であり、EVや自動運
転を「やらない」のではなく「できない」のだろう、と考えるのは素直だが、そこをもう少し深
く考察してみたい。
■大手には大手の事情がある
今回の東京モーターショーでマツダ・スバルのように明確なポリシー、わかりやすい筋を
通せるのは、企業規模やグローバル市場への依存度が関係している。
東京モーターショーがローカルモーターショーとなったのは事実だ。背景には世界におけ
る「日本市場規模の低下」と、「日本の自動車メーカーのグローバル化」という2つの要素
が関係している。
トヨタ・ホンダ・日産の規模になると、まずはグローバルでのシェア、売上の維持、拡大が
重要。日本市場における、自工会の意向、自動車業界の事情、そして消費者ニーズは、
あくまでグローバル市場におけるワンオブゼムだ。とすると、東京モーターショーでのアプ
ローチは、グローバルで優先順位を落としている日本市場という意味で、どうしても総花
的になってしまう。
マツダやスバルもグローバル展開はしているが、企業体力では大手に劣るため、既存の
延長にある資産をフル活用して「ニッチ」を狙う。結果ブランドの色や狙いが大手に比べは
っきりしてくることで、消費者のニーズに深く刺さる。今回、ローカルショーという位置付け
がより明確になってきた東京モーターショーで、大手メーカーよりもマツダやスバルの打ち
出し方がわかりやすく、来場者の心を掴んだのはこうした背景があろう。
モーターショーにおいて、次世代パワートレインや自動運転機能に考え方の差があるのは
、メーカーごとのカラーや規模、戦略の差による。消費者は従来のように排気量や走りを
追求した車が並ぶ「モーターショー」を求めているのか、新しいテクノロジーなどを楽しむ
「モビリティショー」を求めているのか。それに対してメーカーはどちらを提案したのか、とい
う話だ。
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自分らの世代だと、EV化よりも内燃機関に拘ったり、走りやスポーツに拘っているほうが
断然興味がわく。個人差や世代差があって当然でしょうけど。
限られた時間で観るとなると、トラック系やEV系はやはり外していましたー