
ついに四輪車を販売か?
“F1直系”ヤマハのスポーツカー
東京モーターショーで展示された
「SPORTS RIDE CONCEPT」
最近の記事から
**********************************************************************************
2015年の2月、モーターサイクルでおなじみのヤマハが2019年から欧州で四輪車の販売を行
う予定との報道が流れた。そして今回の東京モーターショーでは軽量スポーツカー「SPORTS
RIDE CONCEPT」を発表、ヤマハから市販乗用車がデビューすることがいよいよ、現実味を
帯びてきた。
■MotoGP世界チャンピオンのヤマハが四輪車に挑む
ホルヘ・ロレンソ選手のライディングにより、二輪車レースの最高峰、2015年MotoGP世界選手
権で世界チャンピオンを獲得したヤマハが、勢いそのままに、ついに市販乗用車の世界へ挑も
うとしている。その先行試作モデルとして、「第44回 東京モーターショー2015」に出展したのが
この「SPORTS RIDE CONCEPT(スポーツライド コンセプト)」だ。
モーターサイクルファンにとって、国内4大二輪車メーカーにはそれぞれのイメージがある。エン
ジンと革新のホンダ、ハンドリングと精緻なヤマハ、唯我独尊のスズキ、男のカワサキというイ
メージだ。もちろんモデルにより異なるし、時代で受け取め方は変わる。だが、そのイメージは
企業の血脈として流れ続けているのだ。このスポーツライド コンセプトもまた、ヤマハのDNAを
感じさせるスポーツカーだ。伝統と革新を宿らせた、繊細かつ高品位なデザインは軽量かつコ
ンパクト。デザインスタディモデルながら、優れたハンドリングを予感させるのだ。
では、ディテールを覗いていこう。まずクルマの顔ともいえるフロント周りから。こちらは同社の
モーターサイクルのYZF-R1を彷彿させる、スポーティでシャープなデザインに仕上がっている。
インテリアデザインは独立した丸型メーターが配された、比較的オーソドックスなものだが、メタ
ル、レザー、そしてカーボンを適所に配した上質な仕立て。精緻なヤマハのイメージの源泉でも
ある、楽器製作の現場から着想を得た木目技術や、ギターに用いられるサンバースト塗装も同
社ならではのDNAを強く意識させる。アウターデザインはモーターサイクルのタンクとカウルのよ
うに、独立したキャビンと前後カウルが描くふくよかなシルエット。これもまた、ヤマハのアイデン
ティティを主張する。
■V12 3.5LのF1エンジンを搭載するモンスタースポーツカー
現在は二輪車メーカーとしてのイメージが強いヤマハだが、かつては市販前提のスポーツカー
を発表したことがある。それも超弩級のスポーツカーだ。何せF1と同じV型12気筒3.5Lエンジン
をミッドシップに搭載したのである。それが1991年に発表された「OX99-11」なのだ。
その昔、某コーヒーメーカーのCM「違いがわかる男」シリーズに登場したことでも有名なカーデ
ザイナー、由良拓也氏がデザインを担当し、極限まで空力を追究したスタイルは、カーボンモノ
コックフレームとハンドメイドのアルミ製ボディにより形作られている。サイズは全長4000×全幅
2000×全高1220mmとロー&ワイド。詳細は発表されていないが、車重は推定850kgほどと超軽
量なもの。
サスペンションはインボード式のダブルウィッシュボーン。そこにAP製の4ポットキャリパーのディ
スクブレーキを組み合せ、前後に奢られる。シートは一見センターレイアウトの単座に見えるが、
実はモーターサイクルのようにタンデム配置で助手席を持つ。センターレイアウトというアイデア
は、後に「マクラーレンF1」でも見られるユニークなものだ。予定された価格は1億3000万円とも
いわれていた。
特筆は何といってもF1と同じエンジンを搭載していることだろう。公道向けにデチューンされてい
るが、70度V型5バルブ3498ccが発するパワーは推定450PS/10000rpm前後と目されていて、6
速MTを介してリアタイヤにパワーが伝えられ、最高速度は350km/hに達したという。
トヨタが2002年から2009年まで参戦する以前に、ヤマハはエンジンコンストラクターとしてF1に参
戦していた。1988年、ドイツのザクスピード・フォーミュラー・レーシングと組み、「ウエスト・ザクス
ピード・ヤマハチーム」を結成し、F1にチャレンジを開始したのだ。そして、1990年には70度V型
12気筒・5バルブ3498ccの「OX99」エンジンを発表。最高出力は600ps以上と公表されている。
F1マシーンは1992年当時に供給していた「ジョーダン・ヤマハ」の実車。マウリシオ・グージェルミ
ンとステファノ・モデナの両名によりドライブされ、グランプリシーズンを闘った。
そのF1マシンに搭載されたOX99エンジンを用いた驚異のスポーツカーOX99-1は、フェラーリに
も負けない官能的なエンジンサウンドを奏でたという。現在、実車が本社工場に併設する企業
ミュージアム「コミュニケーションプラザ」に12月末まで展示中だ。
■トヨタの名車2000GTもヤマハ製だった
F1に参戦したヤマハとトヨタの関係は、実は長きにわたるものだという史実をご存知だろうか?
古くは1967年から1970年にかけて生産された「トヨタ2000GT」に遡る。同車はトヨタとヤマハが
共同開発したスポーツカーで、エンジンはクラウンに搭載されていた直列6気筒エンジンをDO
HC化し、最高出力は150psまで引き上げたもの。これを美しいロングノーズに収め、リアタイヤ
を駆動。最高速度は当時としては驚異の200km/hに達したという。価格も238万円と破格なもの
。これは現在では2000万円程度の価値があるという。
また、レクサスが2010年から2012年にかけて生産・販売した「レクサス LFA」のエンジンもまた、
トヨタとヤマハが共同開発したもの。当時のF1に準ずるV10レイアウトを採用したエンジンは、
4805ccの排気量から560psもの大出力を発生。カーボン素材で軽量化が図られた1480kgの
ボディを軽々320km/hにまで加速させたという。そのエンジンサウンドは官能的のひと言。
ヤマハ伝統の楽器製作のノウハウを感じずにはいられない、魅力的なものだ。
■1000ccクラスの小型車からスタート!? ハンドリングに期待!
スポーツカーに関わり続けてきたヤマハが2019年から欧州で販売するのは、1000ccクラスの小
型車からだと目されている。そのベースとなるのは「第43回 東京モーターショー 2013」で発表さ
れた「MOTIV(モティフ)」だという。
モティフはF1マシンデザイナーでもあるゴードン・マーレーが率いるゴードン・マーレーデザイン
社が提唱する「iStream」コンセプトを採用した、F1に源流を持つ軽量&高剛性な車両構造を採
用する。鋼管パイプとコンポジットパネル接着の組み合わせによる基本骨格を持ち、ガソリンエ
ンジン、EV、ハイブリッドなどパワーユニットを選ばない柔軟性を備えている。
かつてOX99-1が採用したセンターレイアウトを市販車として実現した「マクラーレンF1」のデザ
イナーでもあることに、ヤマハと同氏の少なからぬ因縁を感じずにはいられない。高剛性ボディ
が生む、スポーティなハンドリングには今から期待大。小型車ながらスポーツカーすらコーナー
で追い回す、そんなハンドリングマシンが誕生すれば、面白い。
そんな期待を抱かずにはいられない、ヤマハの四輪市販車進出の可能性。その道を切り拓く
礎となるのが、F1直系のiStreamコンセプトを採用し、四輪車に二輪車の楽しみを詰め込んだ
ライトウェイト・スポーツカー、スポーツライド コンセプトなのだろう。
**********************************************************************************
排ガス関連の環境規制問題で、エンジン開発そのものが今後はは相当厳しい事が予想される
中で、実際に後発でデビューするのは、想像以上に厳しいのではと思います。
しかしマツダのように、皆が諦めるような状況でも諦めず挑戦してほしいというのが本音です。
日本人の物づくりに対する職人気質を大いに発揮していただきたいものです。