ジャガーは奥行きがある。

点検中、ちょっとだけ乗ってみたXF。

いつの間にか、オーディオはメリディアンになり、前後の形も多少変わり、エンジンは直４ターボになるしミッションは８速になるし。この変化はS-typeのビックマイチェンにも似ています。ようするに、前期型のネガを根こそぎ潰した方向なんでしょう。

見た目もC-XF(コンセプト）時代の鋭い目つきになり、リアはLEDを多用した流行りのデザインになりました。現代的な目線から見ればカッコよく、懐古主義的に見ればそもそもXF自体が受け入れられないという見方になるのではないでしょうか？まぁ・・・X300ボディとかのXJみたいな車を愛でる人には現代のジャガーはおろか、他の全ての車を受け入れられなくなっているように思えます。

中身はなるほど確かに良くなっていて、初期型XFでさえ良いと思った乗り心地はさらにリファインされているし、持ち前の自然さは損なわれていない。ステアリングフィールも繊細な中にしっかり感がある理想的なモノ。唯一８速ATがややビジーシフト気味なのを除くと、パワートレーンも絶対評価をすると悪くない。同じセグメントの４気筒ターボ車と比べてもアイドリング時の音は小さ目ですし揺れない。同様の出力値を持つ４発ターボのBMW５２８iはもっとブルってます。

とはいえ、エンジンに関して言うと微妙。

というのも、絶対的な燃費がそこまで良くない。原因はアイドリングストップしない事もあると思いますが、どうもエンジンの能力自体が他社のダウンサイジングエンジンより燃費に関しては良くないようです。試乗中は７ｋｍL台でした。これは、BMWの５２３や５２３に比べると１～２ｋｍ悪い数値です。
あと、これの前まで積んでいた３０００ｃｃのV6エンジンは隠れ良いエンジンで、とにかく６８００ｒｐｍのリミットまで良く回るし、音も良いし、NAエンジンの良さを全部持っているような良いエンジンでした。ヘッドがコスワース設計というのも良かったのか。それに比べると、事務的な２．０ターボエンジンはどうしても良いモノ感が薄い。

仕方ないんでしょうけどね。仕方ないなりに燃費が良好ならいいのですが、そうでもないところが面白いです。カタログ見てもあんまり良くないな、と思っていましたが、やっぱり良くなかったです、笑。

とはいえ、例えば燃費では遥かに上を行くアウディなんかと比べてもジャガーは良いところあるんですね。

やっぱり高級感が底知れず上にある感じがします。やはり高級車を作っている歴史の違いがある気がします。とにかく、ジャガーの能力は奥深く、目立って凄い！と一瞬にして解る表面性はあまりないものの、３年５年乗ってじんわりと解る「ああ・・・良いモノ買ったなぁ・・・」と思える実感はあまたあるメーカーの中でもぴか一に思えます。

そもそもは、アストンやラゴンダやベントレイの三分の一の価格で同等の性能を備えた車として出たわけですが、それもはや８０年とかそれくらい前の話で、その長い歴史の中でジャガーは基本的に１０００万円を超えてくる価格帯のクルマをずっと作っていたわけです。

そういう経験値は、運転が好きな人であればあるほど、長く乗った時にじんわりと心に響きます。

確かに形はもはや似ても似つかないほどに現代的になったジャガーですが、本質は変わらない。色眼鏡で言われるような成金カーでもなければ、ファッションカーでもない。走ることが好きな人には最高のクルマ、それがジャガーなんだろうなぁと思います。

XFR、いいですぜ・・・。