ピアッツァとブレラは30年の時を隔てた異母兄弟のようなものですが、ブレラにも兄弟が増えて心なしか嬉しそうです。(実は自分が嬉しい?-笑)
そしてPIAZZAの元となったASSOにはその前にいくつかのシリーズが存在していました。
皆さんもとっくにご存知だと思いますが、一応順を追ってご紹介しましょう。
1番めは1973年のフランクフルト・ショーでアウディに提案された、アウディ80をベースとしたAsso di Piccheです。
ハッチバックのような形状を持っていますが、マセラティ ブーメランを彷彿とさせる直線的でワイド・アンド・ローなスタイリングを目指しています。
後ろから見ると若干オリジナルのシャーシ幅が狭いのか、スタイリング上少し損をしているような気がします。
後のランチア・デルタを想像させる部分もありますね。
Asso di Picche(スペードのエース)
2番めはヒュンダイ(ヒョンデ?)のポニー・クーペとして、1974年のトリノ・ショーで発表された当初Asso di Fiori-Ⅰになるはずだったショーカーです。
依然として直線基調ですが、僅かながら幾分角を落として造形されているような気がします。
シャーシは確か三菱のランサーだったような気がしますが、そのせいかやや腰高な印象になっているのが残念です。
それでも当時は韓国メーカーの車でも、デザイナーによってこれだけ印象が変わるのだと驚きました。
この当時は三菱とヒュンダイの関係があったからかどうか分かりませんが、当時の三菱はスタイリング重視のクルマ作りが得意で、ギャラン・シグマやミラージュはとてもスタイリッシュでした。
Hyundai Pony Coupe(Asso di Fiori-Ⅰ/クラブのエース)
3番目は1976年のトリノショーでお披露目されたBMW320をベースとしたAsso di Quadoriです。
惜しくも生産化はされませんでしたが、造形の完成度は高く、特に横から見たリア周りはあのM1を彷彿とさせます。
ノーズ先端の黒塗りは気になりますが、個人的にはアッソ・シリーズ全体の中で、プロポーションのバランスが一番取れているような気がします。
Asso di Quadori(ダイヤのエース)
そして4番目として正式にAsso di Fioriを名乗ったのが、1979年にジュネーブショーで発表されたこの車両でした。
Asso di Fioriとして発表された後いすゞ Xとして量産化がプロフィールされ、ピアッツァとして誕生しました。
いすゞジェミニをベースとしながらも、巧みな造形で全く異なるスタイリングを実現し、またそれまでのASSOシリーズは直線基調でまとめ上げられていましたが、80年代のトレンドとして柔らかい曲面構成で形作られているのが大きな特徴です。
ウエッジシェイプでありながら角を適度に落として柔らかさを演出し、車名さえもシールとしてフラッシュサーフェス化を成し遂げていました。
正に80年代に向けてのトレンドセッターだったのです。
画像に映るモデルさんが、いかにも時代を感じさせてしまうのに反し、ピアッツァそのものは少しも古さを感じさせません。
これが才能のあるデザイナーの力というものなのでしょう!
Asso di Fiori(クラブのエース)
自分はガンディーニとジウジアーロが描いてきた車たちが大好きです。
二人とも同時期に生まれ活躍してきたデザイナーですが、彼らの残してきた功績はダ・ヴィンチやミケランジェロの作品と同じようにこれからも永遠に評価されることでしょう。
それは懐古趣味ではなく、彼らのデザインしてきたクルマたちはただの工業製品としてではなく、魂と感性が込められた「芸術作品」としてこの世に生み出されてきたと考えているからです。
私的には、彼らと同じ時代を生きることができたことに感謝しています。
ミウラの誕生によって幕を上げたスーパーカーの誕生と、現代においてはスーパー・スポーツカーに変貌してしまったスポーツカーの変遷をほぼリアルタイムで見ることが出来たのですから・・・・。
今後さらに人間の欲求によってスポーツカーは進化していくでしょう、しかし60年代後半から70年代に生み出されたスーパーカーの価値が減じることは決して無いのです。
それらのクルマたちにはCADでは描けない,、人の手によって生み出された「美」が宿っているのですから!
私のジウジアーロ作品たちですが、メラクはジウジアーロ初期の代表作であるマセラティ・ボーラとのシャーシを利用して作られた、4人乗りのスポーツ・クーペでした。
当時としては比較的値段が安かったこともあり、日本にも多数が輸入されました。
しかし現代まで生き残っている固体は僅か、レストアに掛かる費用に比べて売りに出した時の格差が激しくて、誰も興味を示さなかったからです(-"-)
このメラクはレストア中ですが、友人の元で少しずつ復元中です。
1978 マセラティ・メラクSS (メラク1号車)
外装はほとんどSSと変わりませんが、インテリアはシトロエンのDSと同じメーターパネルが付いています。
マセラティが経営危機に陥った時、当時提携関係にあったシトロエンとの名残りなのですが、これはこれでメラクの外観に良く似合っています。
SSのメーターパネルはどことなくアメリカン調なのですが、こちらの方がシックで未来的な感じがします。
1973 マセラティ・メラク (メラク2号車)
エスプリは70年代ジウジアーロが手がけた直線基調なデザインの傑作だと思います。
パッと見はカウカクの直線で構成されているように感じますが、実はそのウエッジシェイプの中に僅かな曲面が取り入れられています。
当時のコーリン・チャップマンがこのデザインを気に入り生産化を決断しましたが、ロータスがスーパーカーメーカーへと脱皮することになったきっかけのモデルでした。
面構成などは、歴代のASSOシリーズとの類似性も感じ取ることが出来ます。
1978 ロータス・エスプリS1
そしてブレラとピアッツァ。
20世紀と21世紀を繋ぐ2台です。
イタル・デザインのショーカーは、そのほとんどが銀色に塗られていました。
ジウジアーロによればその方が「モデルの陰影がはっきり分かるからだ」とのことですが、個人的にもそう思います。
イタルも既にVWグループに吸収されてしまいましたが、御大にはこれからも私たちをドキドキさせてくれるモデルを生み出していってほしいものです!