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2017年02月17日

Def busta 第三章 ~legacy~ 第5話

Def busta 第三章 ~legacy~ 第5話

  11 Counter Rockets




「ほんっと、いい加減にして欲しいっす」


岩野にそんな小言を言われた俺は 「 ふんっ 」 と鼻を鳴らして無視してやった。 まったく、うるさい奴だ。









「あ、あ、なんスかその態度は !? 」



岩野は興奮気味だった。



「いきなり出て行ったかと思ったら、今度は怪我して帰ってきて何の説明も無しっスか?まったく、いい大人が何やってんスか !? ほんっと勘弁して欲しいっスよ」






確かに…。 喧嘩して顔に痣をつくってくるなんて、いい大人がやることじゃないよな。それにしても修二…。 お前はどうしちまったんだ !? 
スツールに腰掛け窓に目をやると、絆創膏だらけの自分の顔がガラスに映り、その姿を見て思わず笑ってしまう。












   12


今日の太陽は、灼熱の業火だ。空の一番高い位置から、ジリジリと地表を焼き、アスファルトの照り返しと、蓄熱させたコンクリートの壁で、周囲をオーブンレンジへと変化させる。まあ、本州にくらべ湿度が低いのは唯一の救いだが。









道民は長い冬を耐え忍び、あらゆる生命が活性化する真夏の躍動を待ち望む。 しかし、たとえ北海道といえども、今日の晴天は誰もが物陰に隠れ涼を取りたくなる。そんなひと時。更に熱を発する一団が現れた。表に数台のバイクの排気音が響き渡った。しかも聞き覚えのある爆音だ。

『 まさか !? 』 心の中で警鐘が鳴り、考えるより先に外へ飛び出した。

先頭にCB750F、続いてハーレーXLCHとXR750、更にはシボレーのV8エンジンを積んだバイクBOSSHOSSや、Z650ザッパーがそこに佇んでいた。
修二だった。わざわざ仲間を連れここまで来たのだ。




「修二…」

全員がヘルメットを脱いだ。修二、エミー、マリー、スキンヘッド、涙目のガキ。全員が知った顔だ。それから修二がゆっくり歩み寄ってきた。




「はは。さすがですね。あんな大立ち回りをして、ピンピンしているなんて」

修二は冷たい表情でそう言ってきた。










「20人、いや正確には23人ものバエルを、残らずノシてしまって」

「修二…あのな…」


それを横で聞いていた岩野は『はあ?』という表情をした。




「一体アナタは何がしたいんですか?人のシマを散々荒せば満足なんですか?」





「いや、違う…俺はただ」

言葉に詰まってしまった。何て言えば良いのか分からない。ジリジリと照りつける白い日差しのなか、修二の凍てつく視線が、鋭く突き刺さってくる。




「いや違わない。アンタは俺を潰しに来たんだ。昔からそうだった。好き勝手暴れて、飽きればポイだ。なんにも変わっちゃいない」

「お前まさか…俺を恨んでいるのか?」

「恨み?ああ、そうだね。そうかもしれない」

「SANTANAの解散がそんなに気に入らなかったのか?」

「そうだ。アンタは立石さんの死から逃げたんだ」




立石…。やはりそうだったか。今でも胸の奥につかえている、当時の俺の相棒だったZ400GPの立石。俺達はコンビだったんだ。そして修二の兄貴分だった男…。







「 SANTANA は少数精鋭で走りのチームだった。それに皆腕っぷしも強くて、アンタ達に助けられた奴等はたくさんいた。皆が憧れた SANTANA 。 そして Def busta 下村 。 僕はそのチームに入れて本当に嬉しかった。それにどれだけ誇らしかったことか」




修二の顔が一変した。凍てつく表情は見る間に赤みが差し、憤怒へと変わっていった。

「だけど、立石さんが事故で死んだ後、アンタは全てを捨てて逃げた ! 荒れていたあの時代、あの街を護ってくれるのはアンタだと、僕達は心の底から信じていた。なのにアンタは全てを捨て去ったんだ ! そうだろ !? デフバスタァーー !! 」









修二の叫びは、俺の心に深く、悲しく、そして重々しく響いてきた。確かにそうだった。あまりにも悲しいその出来事から、俺はバイクを降りようとも考えたほどだった。




「ふんっ。でも僕だって馬鹿じゃない。人それぞれ、事情があることくらいは理解できる。だけど2年くらい前から、アンタ達の噂が耳に入り出した」




こんどは俺を憎らしげに睨みだした。

「アンタは無責任に投げ出したSANTANAの名を使い、TSW(十勝スピードウェイ)で走り出した。無敵の速さを誇る、TEAM SANTANA としてね」




修二はまた憤怒の表情となった。

「この肩のバンダナ覚えていますか?アンタが作ったSANTANA章。車輪デザインに、闘う者の勲章・鉄十字…。そして聖なる SANTANA の名前」




修二は肩のバンダナを解き、俺の足元に投げ付けてきた。

「これはお返ししますよ。永遠に仲間を護るために闘い続ける?笑っちゃいますね。それにSANTANAとして走り続けていたのは僕だ。アンタじゃない。それを今更…ショップの名前にまでして」




俺はゆっくりとした仕草でバンダナを拾った。それは長年の風雨で劣化が見られるものの、しっかりと補修しながら使われていた形跡がたくさんあった。それから、バンダナをじっと見つめながら静かに言葉を発した。

「修二、ありがとな。今まで頑張ってきたんだな」




憎しみの炎を帯びた、修二の紅蓮の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

「そう、ケリをつけよう」








修二は怒りの表情で小さく頷き、踵を返して自分のバイクに跨った。











つづく


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Posted at 2017/02/17 15:48:14

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