
クルマ・ジャケコーナー第335回、Bob Dylanの「The Freewheelin' Bob Dylan」(1963)のPart.2です。
Part.1では、
ボブ・ディランが歌手としては初めてノーベル文学賞を受賞(2016)
78歳の時、『Murder Most Foul(最も卑劣な殺人)』(2020)でディラン初の全米1位を獲得!
というところまでご紹介しました
いや、ボブ・ディラン、ほとんど聴いてこなかったし、よく知りませんでしたが、思ってた以上の人物でした(;^_^A)
で、本日ご紹介のクルマ・ジャケ・レコ、
「The Freewheelin' Bob Dylan」/Bob Dylan(1963)
ディランの2ndアルバム
全米22位、全英1位(1965)
Youtube
Bob Dylan - The Freewheelin (FULL ALBUM)
A1『Blowin' in the Wind(風に吹かれて)』は、Peter, Paul and Maryがカバーし全米2位の大ヒットとなりディランの名を一躍高めた代表曲
♪ どれだけ大砲の弾が撃たれれば もう二度と撃たれないよう禁止されることになるのだろう? その答えは、友よ、風に吹かれている その答えは風の中に舞っている
他にも、
A3『Masters of War(戦争の親玉)』は軍需産業を痛烈に批判した歌で、
A6『A Hard Rain's a-Gonna Fall(はげしい雨が降る)』は核ミサイルの歌とも解釈され、
B3『Oxford Town』は、ミシシッピ大学に初の黒人学生が入学したことが引き金となったオーレ・ミス暴動についての曲
などなど、政治的メッセージ性の強い曲が収録されており、公民権運動が高まりを見せていたアメリカにおいて、ディランは大きな支持を受け、時代の代弁者とみなされるように
これらの歌は、当時、ディランの恋人だったアメリカ共産党の急進派の娘であるスージー・ロトロ(スーズ・ロトロ)の影響も大きかったとか

↑ 写真は図書館から借りた本「ダウン・ザ・ハイウェイ ボブ・ディランの生涯」(2002 河出書房新社)より
そして、A2『Girl from the North Country(北国の少女)』やB1『Don't Think Twice, It's All Right(くよくよするなよ)』はロトロを歌った歌とも言われます
A4『Down the Highway(ダウン・ザ・ハイウェイ)』も、ロトロがニューヨークを離れイタリアに行ってしまったことを嘆く歌
♪ ハイウェイを歩いているんだ スーツケースを手にして 神よ、本当に恋しいんだ 彼女はどこか遠い土地にいるんです…イタリアだよ
フォークギターとハーモニカの伴奏で語るように歌われるプロテストソングとラブソング(どれも深読みできる歌詞)が絶妙なアルバム
そしてジャケがまたイイですね~❣
ロトロがイタリアから帰国した数週間後の1963年2月、ニューヨークのウェスト・ヴィレッジのジョーンズ・ストリートで撮られた写真です
泣きそうな(寒そうな?)ディランとカメラ目線のロトロ
ロトロは、ディランのセーターの上にコートを着て、イタリアンソーセージのような気分で太って見えると回顧録に記してるとか
ディランは大スターになり、フォークの女王・ジョーン・バエズと一緒にいる時間が長くなり・・・
Youtube
Bob Dylan & Joan Baez "It Ain't Me Babe" Live 1964 (Reference for A Complete Unknown)
・・・ロトロは中絶、そして破局・・・😿
3rdアルバム「The Times They Are a-Changin'(時代は変る)」(1964)に収められた『Boots of Spanish Leather(スペイン革のブーツ)』は、彼女が“海の向こうから何を送ろうか”と彼に尋ね、“どんなプレゼントも穴埋めにはならない、ただ無事に戻って来てほしいだけ”という手紙のやりとりが交互に歌われる歌
Youtube
Bob Dylan - Boots of Spanish Leather (Official Audio)
コレって太田裕美の『木綿のハンカチーフ』(1975)とソックリ?!
作詞した松本隆はディランの歌から着想を得たと認めるも、「影響とパクリは違う」とあえて南沙織の『哀しい妖精』を『風に吹かれて』と似た歌詞にしたそうです
まあ、それにしても、この歌詞に曲をつけた筒美京平先生はスゴイ!
『スペイン革のブーツ』の方は、木綿のハンカチーフではなく、“何か送ってくれるのならばスペイン革のブーツがいい”と歌ってますが、スペイン革のブーツを拷問器具と深読みする人もいるそうで…💦
「MUSIC MAGAZINE 特集 傑作音楽伝記映画50」(2025年3月号)
↑ ディランの半生を6人の俳優が演じた映画「I'M NOT THERE」(2007)や、俳優ティモシー・シャラメが吹き替え無しで歌い若き日のディランを演じた「A COMPLETE UNKNOWN(名もなき者)」(2024)などが紹介されてます
映画「名もなき者」は、たった1人だけ実名でなく登場する人物がいますが、それがスージー・ロトロ
ディランからの要望だったらしいですが、やはり特別な女性だったのでしょう…
2023年の来日公演記念盤「流行歌集」は「The Essential Bob Dylan」(2010)の日本独自ジャケですが、歌川広重の「大はしあたけの夕立」に、はげしい雨(?)に打たれる2人が描きこまれてます
ブートレグ・シリーズ「NO DIRECTION HOME」(2005)のブックレットにはアウトテイクと思われる写真がありました
また、ディランとクルマの写真も
↑ “1964年の春、紺色のフォード・ステーションワゴンでニューイングランドをツアーした”時の写真と思われますが、「1964 Ford Galaxies Country Sedan Station Wagon」?
↑ 街では1947年式オースティン・プリンセスを乗り回してたそうです
↓ ネット上の画像
1966 Ford Mustang ?
ディラン、派手な高級車は好みではなかった?ようですが、女性にはかなりモテて、相当乗り回していたようです😅
さてさて、ジャケのクルマは・・・
右の白いクルマは・・・
トム・クルーズ主演映画「Vanilla Sky(バニラ・スカイ)」(2001)にこのジャケの場面が登場し、フロントがしっかり再現されてます
シボレー・デラックス・フリートライン(1951)?
「バニラ・スカイ」は、スペイン映画「オープン・ユア・アイズ(Abre Los Ojos)」(1997) のリメイク版でストーリーはほぼ同じ、両方に同じ役でペネロペ・クルスが出演❣
左は、フォルクスワーゲン・タイプ2ですね
↑ Kleinbus (小型バス) ? ジャケとは違います
カタログ表記は「VW Transporter(トランスポーター)」、日本では「ワーゲンバス」と呼ばれる、タイプ1(ビートル)と共通プラットフォームの商用車
実用性、整備性、信頼性、経済性が高く、本国ドイツや周辺国では、「Bulli(ブリ:ブルドッグの意)」の愛称で親しまれているそうです
ジャケの初代(T1 1950 - 67)タイプ2は、アメリカの法規制に適合させたダブルバンパー仕様で、ウインカーが小さい1962年式あたり ?
小型バス、パネルバン、後部がトラックタイプのものなど様々なタイプがあったようです
1960年代後半、アメリカでヒッピームーブメントの時代、中古で入手しやすくなっていたType2に若者たちがサイケなペインティングをして乗り回していたとか
Type2は、
クルマ・ジャケ「THose Were The Days American Hits '71~'77」/Paul Mauriat に鈴木英人イラストで登場してます
冬の夕暮れ、雪に覆われたニューヨークのウェスト・ヴィレッジを歩く2人
古典的2ドアクーペと自由を象徴するようなトランスポーター
意図的に構図したとしたらすごいクルマ・ジャケです!
【登場車両】
Chevrolet Delux Fleetline Coupe 1951 ?
Volkswagen Type 2 (T1 1950 - 67) 62年式あたり ?
写真は Kleinbus (小型バス)
【自己採点】
クルマ度 8点(古典?クーペと自由なトランスポーター)
魅惑度 10点(2台を意図的に構図した?美人・クルマ・ジャケ❣)
音楽度 7点(歌詞が判らないと・・・💦😿)