
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。
今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。
そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。
(※河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです)
【自動車業界の4大潮流】
製造業においてはマーケットの変質も経営を揺さぶることになる。
例えば、戦後の日本経済を強く牽引してきた『自動車産業』だ。
現在の『自動車産業』は、100年に1度の大変革期に見舞われている。
それは「Connected(IoT化)」、「Autonomous(自動運転化)」、「Shared & Services(カーシェアリングの浸透)」、「Electric(EV(電気自動車)の浸透)」という業界の構造を根底から変える4大潮流のの頭文字をとって「CASE」と表される。
政府がグリーン成長戦略で「2035年までに新車販売で電動車100%の実現」を国の方針として明記したこともあり、自動車産業や蓄電池産業は開発にしのぎを削っている。
政府は充電スタンドや水素ステーションの設置を急ピッチで進めようともしており、電動車への切り替えは進んでいくだろう。
自動車産業は輸出が大きな割合を占めるため、人口減少で各社の経営がただちに揺らぐことはないが、国内マーケット縮小の影響を受けないわけではない。
内閣府の消費動向調査を基に、世帯主の年齢階層別の乗用車普及率を調べるとクルマの中心的な購入層は30代、40代だが、厚労省のの人口動態統計の年間出生数を計算すると、30代前半だけでも今後30年で3割減る。
これは大きな痛手であろう。
そうでなくとも、若者のクルマ離れが指摘されている。
このため最近では、若い世代にアピールしようとメーカー自らサブスクリプション(定額制サービス)に力を入れ始めている。
ところが、自動車産業をめぐっては思わぬところにも落とし穴がある。
【整備士不足という「落とし穴」】
整備士が不足し始めている…自動車は販売すればおしまいという商品ではない。
安定的に利用するにはこまめなメンテナンスが必要である。
それは、クルマを走らせる燃料がガソリンであるか、電気であるかを問わない。
高齢化で、今後は高齢者の自動車保有が進む。
それは同時に、買い替えサイクルが長くなるということである。
現役時代と比べて収入が少なくなり、1台を丁寧に乗り続けようという意識が強くなるためだ。
またかつてよりクルマの性能が向上したことも長く乗り続ける人を増やすこととなっている。
長く乗るということは部品の交換が必要となることでもあり、自動車整備の需要はますます増える。
需要が高まりを見せるのに整備する人が足らず、作業が滞ることになればクルマ離れに拍車をかけよう。
整備士の不足は自動車の製造や販売にとって新たな経営上のマイナス要素となりかねないのである。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト) ※現代ビジネス 2024/12/17より
ここからは私見だが、確かに今の整備士達の労働環境はお世辞にも良いとは言えず、若者の職場として魅力的では無いであろう。
しかし、この先10年15年と掛けてではあるが、電動化EVへの流れは進むのは間違いない。
整備は、足回りや操舵系など、従来と変わらない部分も有ろうが、従来のICE(内燃機関)車の整備よりも、電動部品交換や電動ユニット交換と、作業性は容易になる部分も多くなり、整備作業の負担度も重→中→軽へと減る流れになるのは自明の理である。
その流れを確実にする為に、整備士の国家資格の簡素化(電動車限定:運転免許のAT限定と同義)や、業界盟主のトヨタ自動車が主導(販社への支援金等)してディーラー各社への電動車整備士採用拡大など、氷河期世代より下の世代を積極登用する施策(国・自治体から販社への電動車整備士人材採用補助金等)を官民一体となって推し進めるべき…だと考えている。
さすれば、非正規雇用に苦しむ氷河期世代以降の若者達も、整備士不足に苦しむ販社も、これから増える長期保有車ユーザーも、助かるのではないだろうか。
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2024/12/17 15:15:09