大川原化工機えん罪事件 民事裁判 2審も都と国に賠償命じる
2025年5月28日 19時31分
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横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長ら3人が警視庁公安部に不正輸出の疑いで逮捕され、その後、無実が明らかになったえん罪事件をめぐる民事裁判の2審で、東京高等裁判所は1審に続いて警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認め、都と国にあわせて1億6600万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。
目次
判決後 原告の弁護士 社長など会見
注目
【詳細】東京高等裁判所の判断
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判決後 原告の弁護士 社長など会見
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【詳細】東京高等裁判所の判断
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横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長など幹部3人は5年前の2020年、軍事転用が可能な機械を中国などに不正に輸出した疑いで逮捕、起訴されましたが、その後、起訴が取り消され、無実が明らかになりました。
社長らは「違法な捜査で苦痛を受けた」と訴えを起こし、1審の東京地方裁判所は都と国に賠償を命じ、双方が控訴していました。
28日の2審の判決で東京高等裁判所の太田晃詳裁判長は、警視庁公安部の捜査について「輸出規制の要件についての警視庁公安部の解釈は国際的な合意と異なり、合理性を欠いていた。経済産業省の担当部署から問題点を指摘されたのに再考することなく、逮捕に踏み切った判断には基本的な問題があった」と指摘し、違法だったと認定しました。
逮捕された元取締役の島田順司さんへの取り調べについても「欺くような方法で捜査機関の見立てに沿った調書に署名させた」と指摘し、違法と判断しました。
検察の捜査についても「通常要求される捜査をしていれば、輸出規制の対象に当たらない証拠を得ることができた。起訴の判断は、合理的な根拠を欠いていた」として違法と指摘しました。
その上で、1審よりも逮捕された3人の慰謝料などをおよそ400万円増額し、都と国にあわせて1億6600万円余りの賠償を命じました。
大川原社長「深く吟味し判決出していただいた」
判決が言い渡されたあと、東京高等裁判所の前で原告や弁護士たちは「違法捜査を認定」や「全面勝訴」などと書かれた紙を掲げました。
集まった人たちからは拍手が起こり、原告の1人、「大川原化工機」の大川原正明社長は、「おめでとうございます」という呼びかけに対して、「ありがとうございます」と答えていました。
大川原社長は、取材陣に対し、「判決を聞いて安心しました。1審よりも深く吟味して判決を出していただいたと思っています」と話しました。また、勾留中にがんが見つかり、起訴が取り消される前に亡くなった相嶋静夫さんについて「まずはこの結果を相嶋さんにきっちり報告したいと思います。警察や検察は同じようなことがないように検証していただきたい」と話していました。
判決後 原告の弁護士 社長など会見
判決後、原告の弁護士や「大川原化工機」の社長らが会見を開きました。
まず高田剛弁護士は「認めてほしかった事実がほぼ全面的に認められた。客観的かつかなり踏み込んだ内容の判決で、裁判所の覚悟が見える。『ねつ造』ということば自体は判決文に使われていないが、丁寧な事実認定がされていて、警視庁公安部が事件がないのに事件を作っていったという大きな流れを認定してもらった。判決全体をみると、『事件のねつ造』を認めたと評価できると思う」と話しました。
その上で裁判で「ねつ造ですね」などと証言した警察官3人については「3人の証言がなければこの判決はなかった。この証言について都は『壮大な虚構だ』と中傷ともいえる酷評をしたが、警視庁がそういう捉え方をしているのは非常に危険だと思う。判決を重く受け止めて発言を撤回してもらいたい」と述べました。
「大川原化工機」の大川原正明社長は「なぜ私たちがターゲットになったのかは今も分からない。大川原化工機は噴霧乾燥機の専門メーカーとして、日本で一番、世界でも負けない会社にするんだと社員に話をしてきた。亡くなった元専務の相嶋さんを含めて技術的な面を十分検討し、国際的な取り決めの内容も確認して対応してきた。一番は法令解釈で、自分たちがやってきたことが間違っていなかったことを裁判官が認めてくれたと思う」と話していました。
原告の1人で、勾留中にがんが見つかり、起訴が取り消される前に亡くなった相嶋静夫さんの長男は父の写真とともに会見に出席し「より踏み込んだ判決をいただくことができた。裁判で証言をした3人の警察官には裁判の風向きを変えてくれたと感謝しているが、この3人が特別であってはならない。最後までうそをついた警察官もいたが、『警察官としてこの捜査は許せなかった』と言ってくれた人もいた。警視庁や警察庁は正面から判決を受け止めて、上告して争うようなことにエネルギーを使わず、内部改革を早急にしてもらいたい」と話しました。
元取締役の島田順司さんは「相嶋さんと一杯やろうといって5年になりますが、きょうの判決で、『やっと一杯やれるよ』と言いたい。警察や検察の捜査の違法性などが認められたわけなので、このようなことが起こらないよう再発防止策を明らかにし、法整備を急いでもらいたい。特に、取り調べの録音録画や弁護士の立ち会いはできる限り早くしてもらいたい」と話していました。
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警視庁「判決内容を精査し対応を検討」
2審の判決について、警視庁は「判決内容を精査した上で、今後の対応を検討してまいります」とコメントしています。
東京地検「判決内容を精査して適切に対応」
東京地方検察庁は「主張が認められなかったものと承知している。判決内容を精査して、適切に対応して参りたい」とコメントしています。
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2025/05/29 10:08:53