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● 東グリーンランドの玄関口・クルスク空港
エア・アイスランドのフォッカー50で東グリーンランドのクルスク空港へと到着。東グリーンランドの玄関口にあたる空港である。
時差はアイスランドより更に2時間遅れて、日本との時差は11時間。思えば随分遠くまで来たものである。
なおアイスランドからのフライト時間も2時間、すなわち「10:10発→10:10着」という実にユニークなフライトなのである。
機内で沸騰寸前に高まったテンションはまだ下がりきっておらず、係員がなんとか誘導してターミナル内へと移動。
ターミナル内
ここにツアーガイドやホテルの送迎などが集まっており、乗客はそれぞれの担当者と落ち合うことになる。
まず一番多いのが、アイスランドからの日帰りツアー客。
前回書いたように、5万円近い贅沢な日帰り旅行である。しかも14:00発の飛行機でアイスランドへと帰っていくので、実質的な滞在時間は4時間程となる。
時間と値段を考えると、ちょっと引いてしまいそうだが、こうして現地まで来てみると、アイスランドからのフライトそのものが遊覧飛行的な要素もあったこともあり、トータルで5万円なら、決して悪くはないのではないかと思えてくる。
そして次は「ホテルクルスク」の宿泊客。
ここのホテルは、私が今晩から2泊する「ホテルアンマサリク」の系列ホテルである。
事前の調査では観光客向けのホテルで、まあ最低限以上の観光客向けの施設・サービスは整っているようで、安心して滞在できそうな感じだった。
クルスク自体はアイスランドからの直行便もあり、グリーンランドの中では手軽に訪れることのでき、しかもそこそこ観光地化されているようだ。
が、肝心「アンマサリク2泊3日」ツアーに関わる出迎えは来ていない。
前回書いたように、飛行機とヘリの予約番号だけ伝えられ、旅程表も何も来ていないので、ちょっと不安なのだが…
仕方がないので、日帰りツアーのガイドさんに「ホテルアンマサリクなんだけど、どうしたら良い?ここでヘリを待てばいいのか?」と聞いてみると、「とりあえず、一度向こうへ行ってチェックインしてね」との返事が返ってきた。
普通にガイドさんや、ホテルの送迎が立ち入っていたので、何も感じなかったのだが、実はこの待合室は制限区域内の「国際線待合室」だったのである。
まあアイスランドにしろ、グリーンランドにしろ、地域内の航空路線に関しては実にセキュリティが甘いのである。
もう笑ってしまいそうなくらいなのだが、この辺りは追々紹介していくことにしたい。
そして私とガイドさんのやりとりを聞いていたフランス人夫妻から「私たちもアンマサリクへ行くのよ。よろしくね。」とご挨拶を受ける。
なお今回2泊3日の滞在期間中、このフランス人夫妻とほぼ一緒に行動することになる。
そしてセキュリティチェックエリアを通り抜けて(当然ノーチェック)、ロビーへ。
まあ国際空港としてはビックリするほど簡素だが、充実した売店(お土産や軽食も扱う)があるのは流石。
そしてカウンターでチェックイン。
一応、国際線のエア・アイスランドと、国内線のエア・グリーンランドに分かれてはいるが、カウンターはイヌイットのおばあさんがまとめて一人で仕切っており、まあアバウト。
しかしおばあさんは仰々しい制服(日本だと警備会社に近いデザイン)を着ており、どこまでしっかりしていて、どこからアバウトなのやら…
そしてお世辞にも巧いとは言えない英語でチェックイン手続きを済ませてくれ、チケットを渡される。

※写真は帰路のもの(往路のものは印刷がずれており、見るに堪えないので…)
エア・グリーンランドのロゴ入りなので、良い記念になるだろう。しかしロゴのデザインなど、流石は北欧デンマーク領である。
そしておばあさんから「ゴメンね。1時間くらい遅れそうなの。ちょっと待っててね。」と告げられる。
本来10:10着の10:40発の予定で、30分の乗り継ぎ時間だったのだが、少し余裕が出来たわけで、周辺など散歩できるかも知れない。流石にクルスクの集落まで歩くのは厳しいだろうが。(日帰りツアーだと、四時間弱の滞在で集落まで徒歩で往復する)
先ずは空港内の観察。
今までに紹介した写真に追加するとすれば…
発着案内
公衆電話とポスト
…と、これくらいだろうか。
まあ全体的な作りや雰囲気など、「スキー場のリフト乗り場のロッジ」といったような感じである。
そして外へと出てみる。玄関も「国際空港の玄関」とは思えない質素な作りで、まるでビルの非常口か裏口のような雰囲気。
ちなみに脇に停まっているバギーは郵便車。このバギーで豪快に砂埃を上げながら、手紙や荷物を配り歩いている。
● 何もない空港近辺
で、ドアを開けた瞬間に広がっていた風景がコレ。
とても「国際空港の玄関先」とは思えない景色である。
まあ「雄大な自然の中にポツンと掘り出されたような気分」である。
それでも遠くに微かに石油(?)の備蓄タンクのようなものなど、目を凝らせばいくらかの建物が見えて、ちょっとホッとしたりもする。
全てが一体化したようなグリーンランドらしい光景なのだが、望遠で覗いてみると、山の手前に海があり流氷が見られる。
おそらく写真だけでは全く伝わらないと思うのだが、この景色に加え、「はるばるやって来た」という気持ちに、ヒンヤリとした風…と様々な要素や思いが重なり、何とも言えない充実感のような気持ちで心が満たされてくる。
フランス人夫妻も同様だったようで、「コレは凄い!!私たちハッピーですね~」などと会話を交わす。
このフランス人夫妻はドイツ国境に近い町にお住まいだとかで、「仏独越周遊の旅」でも訪れた温泉地・バーデンバーデンの近所。
しかも温泉とお酒が大好きとのことで、欧州の温泉や、アイスランドの地酒、そして「SAKE」の話などで大いに盛り上がり、待ち時間も退屈することがなかった。
いつも思うのだが、フランス人はフランス本国ではやや高飛車な感じを受けるが、第三国で一緒になると、実にフレンドリーで親しみやすい。
逆にドイツ人と台湾の人は、本国では非常にフレンドリーでウエルカムな半面、第三国で一緒になると何だか感じが悪いことが多いのは何故なのだろうか…
(まあ、あくまで私の経験から感じる、個人的な感想に過ぎないのだが。)
そして時が過ぎ、11:30をまわっても折り返しのヘリコプターが到着する気配が無く、係のおばあさんから「もう1時間くらい遅れそう」と告げられる。
仕方がないので、空港の周辺をブラブラと。但し町まで足を伸ばしている時間は無いので、空港の周りをウロウロしていただけなのだが。
クルスクの町へと続く道
空港の全景
そして足下に目をやると…
若干の地衣類(苔など)が見られる。
「グリーンランド」と名乗る島にもかかわらず、全くと言って良いほど「緑」とは無縁で、こうしたコケ類がこの島で見た唯一の「グリーン」と言えるだろう。しかもあまり緑色でもないのだが…
「グリーンランド」と「アイスランド」はネーミングを入れ替えればちょうど良い、などと言われるが、それは全くごもっとも。
但し正確に言うなら、アイスランドは名前を入れ替えて「グリーンランド」と名乗るよりも「ブラウンランド」あるいは「アッシュランド」と名乗った方が適しているように思うのだが。
なお「グリーンランド」の名称の起源には諸説あり、「グリーンランドに入植した当時、地球全体が温暖傾向にあり、特に(当時入植した)南グリーンランドは本当に“グリーン”だった。」「アイスランドを“アイスランド”と名付けて入植者が集まらなかったので、敢えて“グリーンランド”という豊かそうな名前を付けた。」などの説があるようだ。
● エア・グリーンランドのヘリに搭乗
出発予定時間から2時間以上が過ぎた、12:45頃になってようやくヘリコプターの音が聞こえてきたので、空港へと戻る。
エア・グリーンランドのベル212
そして実際にヘリコプターへの搭乗が始まったのは、クルスク到着から3時間後、定刻を2時間半程過ぎた13:10頃。
最初からこれだけ待ち時間があると解っていたら、町まで散策に行けたので、とても残念でならない。
実際、日帰りツアーの乗客は14:00出発の便でレイキャビックへと戻るので、もう間もなく空港へ戻ってくる頃だろう。
そんな事を言っていても仕方がないので、国内線ゲートへと進む。
係員に搭乗券を提示し、これまたビルの裏口のようなドアから外へ出る。
飛行機の場合、タラップからターミナルビルの入口までは一応でもチェーンで仕切られていたのだが、ヘリの場合はそれすらなく、平然とヘリ着陸場まで歩いていくことになる。
その気になれば、先ほど乗ってきたエア・アイスランドのF50に普通に触れそうな状態である。
そしてベル212に乗り込む…
…のだが、先に乗り込んだフランス人夫妻とは逆サイドのドアへまわるように指示される。
「何故だろう??」と思いつつヘリに近づくと…

(この写真はアンマサリク到着後に撮影)
要はセカンドシートが貨物で埋め尽くされており、3名の乗客は左右の後部に横向けで設けられている簡易席のようなシートに振り分けられる、という事のようだ。
簡易席のようなシート
私の場合、まだこのスペースに一人なのでマシな方なのだが、フランス人夫妻はこのスペースに二人掛け。
しかもスラリと背の高い(平均的な日本人男性よりよっぽど高い)奥様と、典型的な“先進国の中年男性”な体型の旦那様では相当窮屈だったようで…後で相当愚痴っておられたのだが。
ただ途上国のように「荷物のオマケで乗せてやる」的なスタンスではなく、乗り降りにきっちりと脚立を持ってきてくれるなど、きちんと「お客様」として扱われているのが救いだろうか。
…とは言え、狭い。しかもセカンドシートに積み上げられた荷物が更に圧迫感を醸し出している。
たかだか20分のフライトなのでまだ良いのだが、長時間のフライトでこの座席だとパニックでも起こして発狂してしまいそうである。
しかし一度飛び立ってしまえば、まあ20分くらいはガマン出来る。なぜなら…
● 再び流氷の海へ
先ずはクルスク空港を離陸。八丈島空港のように滑走路まで移動せず、その場で飛び立ってゆく。
無舗装の滑走路
そして先ほど行きそびれた(?)クルスクの町が眼下に見える。
そしてヘリは海上へ。
参考

右手のマーカーがクルスク空港、左手のマーカーがアンマサリクヘリポート
そう、先ほどの飛行機に続いて、息を呑むような美しい光景が眼下に広がってくるので、座席の狭さなどすぐに忘れてしまうのである。
そしてヘリはアンマサリクへ向けて飛行。貨物の合間から操縦席を覗く。
そう言えば事前に旅の下調べをしていたときに、このヘリに搭乗した方の旅行記を拝見したのだが、ただただ流氷の写真を何十枚も掲載されており、サイトを見ている方(つまり私)は飽きてしまったのだが…
でも自分が実際にこのヘリに乗ってみると、この感動的な光景に心奪われ、その感動を伝えるべく、ただただ写真を羅列する…という気持ちもわからなくは無い。
少しの写真だけではナカナカ伝えきれず、兎にも角にも全部の写真を並べて、少しでも…ということなのだろう。
前回から引き続きなので、見てくださる方を退屈させても…とはよくよく解っているのだが、それでももう少しお付き合い願いたく…(笑
でも、これでも随分、取捨選択しているつもりなのだが…
そして流氷を避けるように巧みに航行する小船を発見。
上の写真をアップで
上の写真をアップで
この迷路のような流氷の海を巧みに航行していく船を見ながら、この地に生きる人々の苦労の一端を感じ、そして人間のちっぽけさをも感じたのだった。
(それに流氷に激突したらひとたまりもないだろう…)
上空からの景色の場合、往々にしてスケール感が無くなってしまうのだが、この小船のお陰で、ふとその“スケール感”を意識することが出来た。
そして20分程の飛行を経て、目的地のアンマサリクが見えてくる。
何しろ我々日本人と同じモンゴロイドであるイヌイットが、北米大陸を経て、この地に至り、こうして定住しているというのだから、ただただ驚きである。
更に19世紀にデンマークの将校により偶然“発見”されるまで、外界との繋がりもなく、この大自然の中でただ生き抜いてきた…と聞くと、ますます感慨が深まってくる。
険しい氷河地形の続くグリーンランドにおいて、フィヨルドの奥に僅かな平坦地を見つけ、この地に町を作る…自然の大きさと、その中で生きる人々の苦労…そんなことを感じているうちに、アンマサリクへの着陸態勢に入る。
(ちなみに上空から見ると、まだ平坦に見えるが…アンマサリクの町は実際に自分の足で歩いてみると、それでも相当な傾斜地である。)
ヘリが向きを変え、青い鏡のように美しいフィヨルドを眺めながら…
アンマサリクへ着陸
アンマサリクのヘリ待合所
フランス人夫妻は預け入れ手荷物があるということで、一旦は待合所内で待機したのだが、もちろんターンテーブルなどあるはずもなく、外へ出るように指示される。
そしてフランス人夫妻の手荷物を含め、ヘリに積まれていた貨物が運ばれてくる。
何とフランス人夫妻の手荷物はこの不思議なトロッコ(?)からピックアップすることに。
そしてホテルへと向かうわけだが、歩き出そうとしたところ、フランス人夫妻が「私たちスーツケースがあるから、ホテルに迎えに来て貰えないか電話してみるわ。」との事。
ここアンマサリクは人口2000人程と小笠原の父島とほぼ同じ人口のこぢんまりとした町。
町の大きさも父島の中心部と大して変わらなさそうで、ホテルまで1キロも無いのだろうが、あまりに急な坂が多く、スーツケースを転がして歩くには過酷過ぎるだろう。
結論から言うと、連絡さえすればホテルから迎えが来るのだが、そのような情報は全く告知されておらず、もし知っていたとしても、ここグリーンランドで使える携帯電話を持っていなければ一筋縄ではいかないのである。
(ヘリの時間が結構いい加減なようで、「時間を見てお迎えに上がります」とは言えないようだ。)
私の手元にある携帯電話は「国内の電波はダメダメ、でも海外ではVodafoneの威力で意外と使える」携帯電話なのだが、それでもグリーンランドでは完全に圏外。
(逆にアイスランドでは、驚異のVodafoneパワーを見せつけられることになるのだが…)
フランス人夫妻の携帯が通じたお陰で大分助かった。もし自分一人だったら、ホテルまでトロトロ坂道を登って行っていたことだろう。
アンマサリクの景色を眺めながら、送迎車を待つ。
<つづく>
撮影機材
・SONY α200 + SONY CarlZeiss T* Vario-Sonnar 3.5-4.5/16-80(24-120)[SAL1680Z] and SIGMA 10-20(15-30)mm F4-5.6 EX DC and TAMRON SP AF 18-250mm Di II LD Aspherical [IF] Macro [Model A18]
・SONY CyberShot DSC-TX5 (CarlZeiss T* Vario-Tessar 3.5-4.6/4.43-17.7(25-100))
・MINOLTA αsweet II + MINOLTA AF 24-105mm F3.5-4.5 + FUJICHROME PROVIA 100F or VELVIA 100F
※なおグリーンランドに関しては、日本語で書かれた資料も少なく、今回の旅行記の執筆にあたっても、断片的な情報から判断していたり、また資料や現地で見聞きした英語を私の拙い英語力で解釈しているものが多くあります。
当然のように正確さを欠いていたり、間違いもあることが予想されます。
地名などのカタカナ表記はWikipedia等を参照しておりますが、日本語での統一的な記載が定まっていないうえ、私自身がデンマーク語やカラーリット語が読めるわけでもなく、正確さを欠いている可能性があります。
また文中で“旧市街”“新市街”“流氷の見える丘”といった日本語の呼称を用いていますが、当然現地にこのような日本語訳が存在している訳はなく、私の理解に基づいて、あくまで便宜的に名付けたものにすぎません。
以上、ご了解のうえ、あくまで“無責任な素人の日記”としてお読みください。
間違ってもこのいい加減な旅行記を根拠にした論などなさらないようにお願いいたします。
また何か間違いがあっても当方では一切責任を持ちません。(ご指摘やご教授は歓迎いたします)