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#通貨について:この旅行記では、ニュー台湾ドル(新台幣)を“元”、日本円を“円”と表記しています。なおこの旅の段階での為替は1元≒2.6円を目安にしてください。
● 思いつきで西子湾へ
高雄で2回目の朝を迎え、今日もまた高雄願景館(旧・高雄駅舎)を横目にMRT(地下鉄)で出発。
今日最初の目的地は、
昨日振られた「打狗鉄道鐵道故事館」というミュージアム。
前回も書いたように、廃線となった旧高雄港駅の駅舎を活用した鉄道博物館である。
旧高雄港駅の事実上の代替を担っているMRT西子湾駅の出口を出ると、目と鼻の先にミュージアムが建っている。
しかし、スケジュールが半日押しになってきたことも勘案し、「開館(10:00)と同時に入って…」を意気込んで出向いたのだが、何と30分以上も前に到着してしまった。
周囲の散策は昨夜に済ませているので、「どうやって時間を潰すか…」と勘案していたところ、目の前に停まっていたマイクロバスが目に飛び込んできた。
これはMRTの駅名にもなっている景勝地「西子湾」へと向かうバス。
西子湾は「夕陽の名所」とされているものの、それ以外にも「旧英国領事館官邸」が一般公開されているなど、「夕陽」限定のスポットでも無さそうなので、思いつきで乗車してみることに。
まあスケジュールが半日押しになっているとは言え、台湾最南端方面をカットしたため、行程にはある程度の余裕があるのである。
バスの車内
西子湾の奥に、名門大学である中山大学のキャンパスがあることもあってか、通学の学生と思われる若者の姿も見られる。
(ちなみに「中山」とは孫文のこと。大陸にも同名の大学が存在しているが、当然無関係。また「中正」…つまり蒋介石と並んで、台湾の道路や公園などの名前に「中山路」「中正公園」と名付けられていることも多い。)
そしてバスは運河を迂回し…
歴史ある赤門を眺めつつ…(ピンぼけご容赦)
ものの5分ほどで、如何にも景勝地な雰囲気のパーキングに到着。
日本でもよくありそうな「景勝地に設けられたパーキング」的な雰囲気である。
そして多くの観光客(専ら中華人民共和国か?)や、散歩あるいはハイキング的に訪れる人の姿が見られる。
そしてお目当ての旧英国領事館官邸はと言うと…
どうやら丘の上のようだ。
帰りのバスの時間だけ調べて、覚悟を決めて上り始める。
そしてようやく登り切って…(ブログだと一瞬だが)
まずは正面に見えている寺院に参拝。まあ台湾の寺院は既に何回も登場しているので、簡単に…
そしてお目当ての旧英国領事館官邸はと言うと…
残念ながら、11月・12月は補修工事のため、年内一杯はクローズされているではないか。
実は階段の下にも「暫停営業」と書かれていたのだが、本来「暫く営業を停する」と解釈しなければいけないところ、漢字だけ見て「暫定営業」…つまり「(工事期間につき)制約付きで一部公開」という意味に捉えてしまっていたのである。
少しは中国語を勉強した方が良いことは確かだろう。(苦笑
とは言え、折角上ってきたので、景勝地「西子湾」の景色を楽しんでから下りることにする。
ちなみに右手に写っている赤煉瓦の門柱風建造物は、例の中山大学のゲートである。
そして階段を下りて、バス停に荷物を置いて少し周囲を散策してみることに…
すると定刻の15分も前なのに、マイクロバスがスーっと通過して行くではないか。
慌てて手を振ってアピールすると、バスが止まってくれたので、慌てて乗り込んでみると…何と貸し切り車。実に恥ずかしい思いをしつつ、丁重にお詫びしてバスを降りる。
しかしわざわざバスを止めてまで事情を説明してくれるとは何と親切な事のだろうか。
そして改めて周囲を散策。
非常に賑わっている観光地ということもあってか、海辺へは出ることが出来ず。
それゆえ、ただ海岸に設けられたプロムナードを歩きつつ、灯台など周囲の景観を眺めて過ごす。
● 打狗鉄道鐵道故事館にリベンジ
こうして西子湾散策を終え、再びマイクロバスで西子湾駅へと戻る。
ちなみにバス運賃の支払いはICカードで行っているのだが、往路はMRTからの乗り継ぎ割引が適応されてか6元(≒16円)、復路は12元(≒31円)と若干運賃が違っていた。どちらにせよ日本の感覚からすると安すぎて申し訳ないような運賃である。
そして今度こそ打狗鉄道鐵道故事館を見学。
内部はかつての駅舎をそのまま活かした展示スペースになっている。
ちなみにカウンターに2人のスタッフが待機しているものの、入場は無料。
そしてこのスタッフ、おそらく学生バイトなのだろうが、販売品の購入や質問など、こちらから声を掛けない限り、自分の勉強に熱中している。(但し声を掛ければ、嫌な顔などせず、丁寧に対応してくれる。)
特に覗き見るつもりはなかったのだが、たまたま見えたノートに、中国語で化学結合について書かれており、ちょっと興味深かった。
机の上には各種の切符類や、駅で使っていた鋏などの小物類が展示されている。
そして駅長室や応接室など自由に開放されている。
資料コーナー
日本の鉄道雑誌のバックナンバーも揃っており、台湾に関する記事をコピーしたものも展示されている。
そして室内の壁や棚の上などのスペースに、かつて使用した行先案内板や、窓口案内板なども展示されている。
ただ全体的に、あくまでメインは「昔の駅をそのまま開放している」事であり、こうした往時のアイテム類などはお世辞にも整理されているとは言い難く、体系的な収集をしている訳でもなさそう。
そういう意味ではミュージアムというより、かつての鉄道を偲ぶ記念館的な要素が強いのだろう。
そしてかつてのホームへと出てみる。
駅名標がそのまま残されている。
そして往時の写真。
この高雄港駅近辺を撮したもので、
前回・今回と歩いてきた広く長閑なヤードが、かつてこんなに賑わっていたのかと驚かされる。
で、昨日も見てきたヤード跡を昼間に再び散策してみる。
レールなど残しつつも、芝生やベンチで公園の要素を強め、更に木道を整備して自転車が通りやすくなっている。
実際、廃線跡のサイクリングロードを通って、このミュージアムまで自転車で訪問する人も多いようだ。
そして最後に駅構内の保存SL。
まずは日本統治時代に持ち込まれたCT259(日本名C55 9)
1938年三菱重工製で、戦後も1961年までメイン幹線である台北-高雄間で速達列車用として使われ、その後他線区で余生を送った後に廃車。台南市内で保存された後、このミュージアムへと引き取られてきたとのこと。
今にも走り出しそうだが、あくまで静態保存。しかし違う角度から見ると補修作業が行われているなど、維持管理はしっかりとされているようだ。
そしてもう1両はDT609(日本の9600型と同型)
こちらは1929年汽車製造会社で台湾向けに製造され、旧名は「1101」→台湾総督府鉄道「828」とのこと。
こうしてミュージアム見学を終え、最後に室内で販売品(特にミュージアムショップという形態ではなく、展示室内に時々販売品が置かれている)を眺めていると、台湾で出版された鉄道関係の書籍が目についた。
いわゆる「撮り鉄」向けから、ダイヤ関係、鉄道史関係、月刊誌など、実に多種多様な鉄道関係の本が出版されているようだ。それだけ台湾に鉄道文化が浸透していると言うことなのだろう。
但し価格はというと、日本より「気持ち安いかも」程度で、台湾の物価を考えると、結構高価な本ということになるのだろう。但しカラー写真を多用するなど、それなりに立派な造りの本ではあるのだが。
実は今回の台湾の旅はリュック一つに軽量化しているので、あまり途中で荷物を増やしたくないという判断もあって、あまりアレコレは買わなかったが、2冊ほど買い求めてミュージアムを後にする。
学生バイト風の係員は丁寧に対応してくれ、最後は「アリガト」と外まで見送ってくれた。
そして高雄港線の代替を担うMRTで高雄駅へと戻り、次なるスポットへ向けて出発である。
<つづく>