※現段階で何かと騒がれている時期・場所への旅という事もあり、落ち着くまではお友達限定公開とさせて頂きます。 →2024/8公開範囲を変更しました
時々、正方形の写真が出てきますが…数年ぶりに持ち出したブロニカSQによるものです。
お天気のお陰で、網走到着日に砕氷船に乗っておくことができ、あとは網走とその周辺を気の向くまま動くだけ。
そんな訳で網走駅からこんな列車に乗ってみることに(帯が水色だと、JR四国のキハ54と間違えてしまいそう…)
臨時快速「流氷物語」号という列車で、網走から知床斜里までをシーズン中毎日2往復している列車。
以前はトロッコ列車で運行されていたのだが、現在では通常のディーゼルカー(キハ54系)で運行するようになり、全車自由席となっている。
但し通常のキハ54とは、塗装が変更され、上の写真の青基調のものに加え、もう1両白基調の車両もあり、2両編成で運行されている。
※下の写真は後刻別の駅で撮影したもの
しかしJR北海道の塗装がボロボロになった車両を散々見てきたので、「こんな綺麗にラッピングして大丈夫かな…そんな余裕あるのかな…」などと心配してしまうのも事実。
いざ乗車(整理券発行機などそのまま)
車内は転換クロスシート仕様
内装はシート地やヘッドレストカバーが「流氷物語」号独自のものに変更されているものの、ワンマン設備も含め、基本的にはキハ54そのままなので、通常の列車にも使える合理的で無理しない程度の変更に留まっている様子。
ちなみに普通列車仕様なのか、テーブルは固定され使用不可能
しかしこの転換クロスシート仕様のキハ54…窓と座席の位置が合っておらず、なおかつ流氷の見える進行方向左側の座席となると、意外とアタリ席が少ないのが残念なところ。まあ専用車両による観光列車ではないので、このあたりの細かな部分は致し方ないのだろう。
それゆえよく判っている人は早めに改札口に並んで、早々に良い席を押さえている様子。
私の場合は乗車時間の短さを考えて、そこまで座席には執着しておらず、とりあえず空いていた海側の座席を確保。
最後にツアーの団体が乗り込んでくる。団体客はバスツアーの合間にちょっとだけこの列車に乗って気分転換といったところなのだろうか。
そして車内の座席がさらりと埋まったところで出発。この列車には運転やドア開閉といった業務を担当するJRの乗務員の他に、法被を着た観光協会のスタッフが数人乗車し、車内アナウンスや車内販売などのサービスを担当する形になっている。
比較的若いスタッフが多く、車窓案内のアナウンスも元気よく、なおかつ観光案内等もクオリティが高く、なかなか充実したものになっている。(地方のこの手のイベントはクオリティ云々は気にせず「一応やりました」というアリバイだけで終わっているケースが多いので、こうしてきちんと運営されているのは凄い事だと思う。)
また英語アナウンスもJR東海のカタカナ棒読み英語アナウンスとは違って、ちゃんと英語になっているところが素晴らしい。
列車はほんの数分で網走市内を走り抜け、海沿いを走って行く
海が見えてくると、すぐに流氷が浮かんでおり、乗客も大盛り上がり。
車内では豆菓子の試供品が配られるなど、地元業者とのタイアップしたおもてなしも行われる
もちろんこの豆菓子は車内販売で大袋を購入可能。
網走駅を出発してわずか13分で流氷に一番近い駅として有名な北浜駅に到着
この下り列車はこの駅で10分停車時間が設けられており、乗客は一時下車してホームに設けられた展望台に昇って流氷の海を眺めたり、列車の写真を撮ったりと、それぞれ停車時間を楽しんでいる。
(ちなみに反対方向の上り列車は原生花園駅で停車時間が設けられており、往復で違った駅での途中下車を楽しむことが出来る趣向になっている。)
そしてバスツアーの一行はこの駅で下車し、先回りして待機していたバスへと乗り込んで次なる目的地へ向かう様子。また逆にここの駅から乗車するバスツアーの一行もいて、狭い駅前に何台もバスが出入りするなど、何かとバタバタしている。
(バスツアーの場合、全区間乗車せず、網走ー北浜、あるいは北浜−原生花園(あるいは斜里?)といった単区間だけ乗車するケースが多い様子)
私もどうしようかちょっと悩んでいたのだが、この区間の流氷車窓はまだトロッコ列車(「流氷ノロッコ」号)で運行されていた当時に楽しんだこともあることと、早くも観光列車特有のざわざわ感に疲れてきたこともあって、ここ北浜駅で下車することに決定。
この「流氷物語」号が終点の知床斜里まで行って折り返してくるまでの1時間半ほどここの駅を満喫することにしたい。
列車が再び乗客を乗せて知床斜里へ向けて出発し、ツアーバスも走り去り、落ち着いてきたところで改めて探訪開始
駅舎横の展望台に昇り
北海道のローカル線の風情を楽しみ
流氷の海を眺め
しばし冬景色を満喫。しかし暖冬とはいえ冬の北海道。長時間屋外に居るのはちょっと辛い。
実はここ北浜駅は駅としては無人化されているものの、かつての駅事務室のスペースを改装し、喫茶店「停車場」がオープンしている。
それ故、冬場でも駅舎内で流氷の海を眺めながらコーヒーなど飲みながら列車を待つことが出来ることは判っており、安心して途中下車という選択肢を選ぶことが出来たのである。
実はここの駅は何度か訪れており、ブログでも紹介したことのある駅。(以前のブログでは夏場の写真を掲載しており、今回のブログと同じ角度から撮影した写真もあるので、是非見比べて頂きたいところ。)
そんな訳で駅舎内へ入っていき
名刺や切符で埋め尽くされた待合室を通り抜けて
喫茶店「停車場」のボックス席(実際の客車のパーツを利用して作られている)に落ち着く
何気に十数年前と全く同じ席に座って、全く同じ構図で写真を撮っている私…
こんな景色を眺めながら
ランチタイム
ここのお店はこのロケーションだけに胡座をかくこと無く、元駅事務室とは思えない本格的なキッチンスペースを設けて、本格的な喫茶店として…いやちょっとした洋食屋顔負けのフードメニューを出してくれるのが素晴らしいところ。
(但し「本格的な喫茶店、あるいはちょっとした洋食屋」ではあるのだが、観光客向けのメニューはほとんど無いので、物足りないと思う方も居るかも知れない。また缶のサッポロクラシックを置いているので「純喫茶」の定義には当てはまらない。)
そして食後は列車の時間までのんびりとコーヒータイム
しかし列車の時間が近づいてくると、ツアーバスが立て続けに3台も4台も到着し、ツアー客が駅に溢れてきてガヤガヤしはじめ、急に現実に引き戻されることに。
どうやら私が網走まで戻る折り返しの「流氷物語」号からは、大型バス1台分のツアー客が下車してバスに乗り換え、逆に大型バス2台+小型バス1台分のツアー客がこの駅から乗車する様子。
とは言えここまでの台数が一気に集結することはそうそう無いようで、添乗員は座れるかどうか心配する(というか詰め寄っている)ツアー客をなだめるのに大変な様子。
そうこうしているうちに列車が接近
しかし鉄道車両としてはこぢんまりとしたイメージのあるキハ54も、バスと比べれば相当な収容力。しかも2両編成なので、場所さえ選ばなければどこかには座れるくらいの乗車率。でもまあ網走駅までわずか12分の話なのだが…
そして帰路の列車でも観光協会スタッフによるアナウンスが行われており、ちょうど先日大学生写真を撮ろうとして流氷に乗ってそのまま流された件が話題になり、「絶対に!絶対に!流氷には乗らないでくださいね!」と念押ししている場面で…
この様子を見て、何故か車内で年配のツアー客が激怒しはじめ…しかしコレはちゃんとしたガイドと装備を伴った正規のネイチャーツアー。勝手に流氷に乗って遊んでいるという話では無い。
そんな訳で、この列車はJR北海道の投資を最低限に押さえつつも、観光協会のスタッフの工夫で盛り上げられてなかなか面白い趣向である反面、バスツアーに組み込みやすく、そのガヤガヤ感やドタバタに巻き込まれてしまうのが難点だろうか。
結局のところ、知床斜里まで往復乗り続けずに、北浜駅で下車してコーヒー片手に流氷を眺めるという趣向にして正解だったという事だろう。
流氷編はこれで終わりなのだが、今回もちょっとだけ網走散策編のオマケ
網走市内を見下ろす高台、桂ヶ岡公園へ足を運び
網走神社・網走護国神社に参拝し

(中判カメラを持ち出すと、こういう画を撮りたくなる…)
地図上ではすぐ隣(実際はちょっと遠回りさせられる)の網走郷土博物館へ
赤いドームが印象的な本館建物は田上義也による設計で、昭和11年竣工の味わい深い建造物。郷土の誇りとしてこの博物館を建てた先人の心意気が伝わってきそうである。
そして本館と並んでいると霞んでしまいそうなのだが、右隣の新館(同じ田上による設計で昭和36年竣工)もデザイン性に富んだなかなか小洒落た佇まいである。
そんな訳で展示よりも建物に心奪われてしまい…
ちなみに常設展は考古関係が多く、他にアイヌ関係、生物関係、郷土史・生活史関係なども充実
コンパクトながら地域密着で押さえるべき点はしっかり押さえている印象。
但し展示室が昭和11年当時の設計のままと思われ、展示室内は人工照明ではなく、外光による採光となっており、紫外線のダメージを受けていないかちょっと気にはなるのだが…
そして新館側で行われていた特別展示「網走の街並み展」もなかなか面白い
ノスタルジックな昭和展かと思いきや…
確かに室内中央部はそういう趣向なのだが、外周部のパネル展示は徹底した地域密着型で、町並みや諸施設、商業施設などの変化を細かく取材し、写真や資料による新旧比較を徹底的に紹介しており、地元の人には懐かしく、私のような旅行者でもわかりやすく楽しめる展示となっている。
例えば拓銀やラルズといった一つ一つの施設の新旧を、地図や写真などの資料を示すだけで無く、関連するモノを持ってくることで観覧者の記憶や体験を呼び起こしつつ楽しめる展示構成になっているのがニクいところ。
例えば拓銀に関係するモノとしては…
幅広い層の地元の人(年配の方はもちろん、子供連れの若いお母さんまで)が引っ切りなしに訪れ、食い入るように展示に見入っていることが、この特別展の評価を示しているのではないだろうか。
そして網走の酒事情に関する展示もあり…
網走の地酒「君が袖」も紹介されていたのだが…残念ながら今は網走市内では醸造を行っておらず、新十津川の酒蔵に製造委託されているとのこと。
そんな地酒「君が袖」を片手に、網走の食も満喫
たまたま入った店が大当たりで、美味しい食べ物はもちろん、カウンター席で地元の方と語り合い…結局、開店直後から閉店時間まで居座ってしまうことに…
そんな網走の旅を終え、帰路は女満別空港からひとっ飛び
往路は特急「オホーツク」利用で距離感を味わい、帰路は飛行機で気楽に…やはり味わいがあっても距離感ばかりを感じてしまうと再訪の意欲も失せてしまうので、程々に気軽なくらいの行程が良いのかな、と感じるところ。
<おわり>