
長野・白馬村の地震から二日経ちますが、被害の状況をニュースで目にするにつけ、被災された方や不自由されている皆様を思うと落ち着かない気持ちです。
画像は秋に登山した唐松岳への登山道。
神城地区の真上にある場所です。
上に見えるのは丸山ケルンですが、
あのケルンを過ぎたあたりを歩いていた時、御岳山が噴火しました。
11/22の地震があった時間、
ちょうど今年の9月に唐松へ登山した時の画像を編集している最中でした。
登山の最中に御岳山の噴火を知り、
下山後、山行記録をUPする気持ちになれずにいたのですが、
紅葉がとても綺麗だったこともあり、やっと思い立ったのだけど。。。
今回の地震の被害が最も大きい神城地区は、唐松岳登山口である八方尾根の真下。
登山の時に車を駐車するのも、下山後の温泉や食事も、
過去に何度かペンションに宿泊したときも、
すべてがこの神城地区です。
高校生の時、初めてこの地に数日滞在し、
初めて後立山連峰の山々に登り、
以後何度となく避暑に訪れ、登山や、周辺の散策に親しむ場所であり
もはやアウェイな場所ではありません。
遠く離れた馴染みの地が無惨な姿になるというのは
深く悲しみを感じ、心が裂かれる思いです。
冬を前に、断水や停電などはとても心配ですし、
土砂崩れなどの二次災害も懸念されます。
生活道路の補修や糸魚川線の道路復旧も、
本格的な雪の季節の前にどうにかしなければ。。。
どうか、もうこれ以上の被害が起こりませんように。
そして、1日も早くもとの生活を取り戻せますように、
深く心よりお祈り申し上げます。
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想いは色々あれど、唐松の画像はいずれUPしたいと思います。
デジブックも編集したいし。
今回は、地震に思う所もあり、
登山における地形観察のお話と画像を。
自分が登山で得るものというのは、本当に際限なくて
だからそのすべてを逐一ブログに書き留めたりはしていません。
精神的なもの、情緒的なもの、植物や昆虫や動物との出会い、
気象や自然現象から学ぶもの。。。。。
五感すべてを総動員して、その懐へと分け入って行くことの
厳しさと素晴らしさ。
ひとつの生き物として、地球上の他の生命と同列でいることの謙虚さ。
山はそれらを隠すこと無く教えてくれます。
地上の生命というものは、動植物だけではないのだ、ということも。
太陽の光ひとつで劇的に環境が変化する様は、
地球だけではない大きな規模での環境を感じるし
人知の及ばない要因で「地上が鼓動していること」そのものを
体や感性で理解できます。
地球というのはマグマという流動体の上に被さった
殻のような大地の凹凸と、その凹みに溜まった海で成り立っているに過ぎず、
感知できない「浮遊」状態の塊の上に人は住んでいるわけで。
登る山の成り立ちの歴史を知ることや、
実際に縦走しながら目にする山容や地質の変化は
古代からの大地の摩擦をダイレクトに学ぶことができるわけです。
山域によって土の色や地面の状態が変化するたびに、
過去、この山で何があったのかが容易に想像できますし
多方向から山の形を捉えることで
過去地下でどんな地盤運動が起きたのか、
この先このあたりがどんな様相になって行くのかも想像できます。
そういう「想像を巡らしながら」登山することも、自分の楽しみのひとつです。
今回登る山は火山であるのか?隆起であるのか?
活火山か?休火山か?死火山か?
隆起であるならその規模や歴史は?
・・・必ず公式登山ガイドブックを読んで予習をします。
山の歴史を知ることは、地理地形を知ること・・・
すなわちルート上の特徴や危険を知ることにも繋がりますし
それを知ることで事前の危険回避の対策や万が一の時の対応策もとれます。
何より、私自身がそういった地理地形や増山活動の歴史を知ることに
とても興味を持っていて、だから、それを体感できるという意味でも
登山が楽しいわけですが。
そういった視点から後立山連峰という山塊にはとても興味深いものがあり
何度も縦走して登りたくなるんですよね。
後立山連峰の中でも、今回の震災被害が大きかった地区に連なる部分である
白馬岳から唐松岳の区域は、
自分も
ルートを変えながら何度も登っている場所です。
なぜなら、ここがフォッサマグナの西端であることを
顕著に視認できる場所だから。
この山の画像から、フォッサマグナを感じることができたアナタは
「こちら側」の人ですオメデトウ(^^;
私は登山中に振り返ってこの景色を見た途端、このように感じました↓
「まさに、この山の麓にフォッサマグナの西端があるんだ!」
富山側はなだらかに隆起
→長野側に向かって押されている。
長野側は鋭く切れ落ちている
→富山側に押しつつも直下の構造線で地盤が沈み崩れ落ちた
これは、この直下の構造線の地下深くが
周囲に比べて緩い地質であるためと想像できます。
上記箇所は、白馬岳から白馬鑓ケ岳への稜線ですが、
他にも、後立山の稜線を歩くと、同じように感じる箇所がいくつも。
後立山の特徴的な山容です。
この地形により、気象現象として
日の出直後は富山側から雲が斜面に沿って沸き上がり
滝のように長野側へ流れ落ちます。
それはそれは豪快な様相ですが、その状態の稜線を歩くのは
空気の流れが速すぎるため風速が強烈すぎてとても危険。
逆に、午後は長野側から雲が湧き立ち、雷雨を起こします。
景色として見る分には、沸き立つ雲はとても幻想的で綺麗ですけど。
さらに、蓮華山直下↓
白馬大池(栂池側)から白馬岳へ向かう登山道ですが、
右側が綺麗にカーブしている割に、左側はガタガタに崩れていますよね。
これも典型的な後立山の構造。
もっとわかりやすいのが杓子岳。
長野側の大雪渓の落石の要因ともなっている杓子岳の崩落っぷりは
間近で見ると本当に恐ろしいものです。
常に大きな岩が落ちる音が聞こえてますし(^_^;
ところがこの杓子岳、反対の富山側はこんなに優雅な傾斜。
初めて大雪渓を登り切り、杓子岳の裏側を見たときは、
別の山かと思った位にその様相が違い驚きました。
山の隆起の方向と、その反対側の崩落は
唐松岳直前の不帰ノ嶮(かえらずのけん)でも顕著です。
岩山であるこの一帯は
スラブ岩が斜めの方向にせり上がっています。
この斜度に沿って、下から崖の左端に向けてルートがあり、
そこから右へ鎖場が続いているのですが、
この崖の左端部分、90度に切れ落ちていて足場も狭い。
なんでここに鎖が無いのかと泣きそうになります(^_^;
風の強いときだったら登るのをかなり躊躇したかも(^^;
稜線は吹き飛ばされる程の強風に煽られることもあるので
そんなことになったら崖から何百メートルも下まで真っ逆さまです;
死人が多いルートであるワケがよくわかりました。。。
唐松岳山荘直下のこの崩落箇所↓も、
今回の地震でかなりダメージがあったと思われます。
崩落だけでなく、火山も気になりますね。。。
御岳山の例もありますし、上高地や立山にも活火山があります。
そして、今回の震源に隣接する白馬大池も、火山の跡なんですよね。
白馬大池に登ると、構造線そのものをハッキリと見ることができます。
乗鞍・栂池方面に下るこのU字溝は、まさに構造線の沈み。
この左下の麓にあるのが今回震源の小谷村です。
大池の火山の痕跡は、一目見ればすぐ解る程。
池の周りは大きな噴石だらけ。
そして、この巨大な噴石群は、乗鞍方面を覆い尽くしています。
乗鞍岳一帯とその下の沢沿いはずっとこんな感じ。
でも、大池のすぐ隣の蓮華山はこのように
もろい花崗岩が砕けたガレた状態。
この状態なので、蓮華山のホントの「山頂」へ立ち入ることはできません。
白馬乗鞍から唐松への縦走路だけでも、
・溶岩噴石(乗鞍・白馬大池)
・花崗岩のガレ場(蓮華山)
・白い砂塵が入り交じるなだらかな稜線(蓮華山ー白馬岳−天狗平)
・スラブ岩の断崖絶壁(天狗の大下り−不帰ノ嶮−唐松岳)
・蛇紋岩による赤茶の土に花崗岩が入り交じる山頂付近(唐松岳)
・古代の地質があらわになった蛇紋岩で形成される尾根(唐松岳−八方尾根)
と、地質の変化を見ることで、
山の成り立ちの片鱗を知ることができます。
後立山連峰の森林限界が、通常の山々より低い標高であるのも、
塩基質を含む蛇紋岩が多い、古代の地質が要因とも言われています。
さらに、これらが
麓を流れる姫川の手前のみに見られる古代の地質であることから、
フォッサマグナの沈下により
境である糸魚川−静岡構造線の西側は
中生以前の古い地質が剥き出しになっていることが解ります。
長くなりましたが、
登山するだけでも、その地の成り立ちや厄災への危機感は
ある程度想像がつくのですよね。。。。
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ここからは余談。
フォッサマグナ(中央地溝帯)は、
糸魚川−静岡構造線(西端)から、柏崎−千葉構造線の間(東端)の
大規模な大地の凹み地帯を指します。
特に糸魚川−静岡構造線と、直江津−平塚構造線の間にはプレートの境が存在し、
日本列島はここを中心に折れ曲がっています。
地震多発地域の静岡で育った人の中でも特に
静岡市の人間は、このフォッサマグナという言葉に敏感に反応する(^^;
なぜなら、糸魚川−静岡構造線沿いに、山梨へ抜ける国道52号があり、
西側には南アルプス、東には富士山を有するという、
地元民が親しむ特徴的な地形を形成しているから。
ちなみに、静岡−山梨区間は国道52号、
山梨−長野区間は国道20号(中央高速道路)、
長野−新潟区間が国道148号と、
各地域を結ぶ主要道路は、糸魚川−静岡構造線沿いに走っています。
これは、この構造線が厳しい山塊の間にできた大地の溝であるため。
道路を造るには、この溝に添ってでなければ不可能だったためです。
若い頃、地元静岡の友人達と52号沿いを山梨へドライブする度に
「いままさにプレートの境の上を走ってるぜー♪」なんてはしゃぐのも
まさに地震大国・静岡ならではのノリ(^_^;
便利な交通網ではあるけれど、実はその地下深くは
こんなにアブナイ場所なんですよってことを
静岡の人間は常に意識していたんですよね。。。
他人事のように思って読まれた方も多いと思いますが、、、、
気付いてますよね?
フォッサマグナというのは中央構造「帯」。
つまり、地殻の変動が激しい構造線に挟まれた「面」単位の地域であり、
こともあろうに、日本の首都は丸々その上にのっかっているわけです。
オマケに、活火山・富士山もあるんだよ(^▽^;
今回の地震の前日に、Twitterで「地震雲」が話題になってましたよね。
山も、空も、空気も、ホントはいつも
いろんなサインを出してくれてる。
自然が教えてくれることを、もっと敏感に察知して
山の上じゃなくても「地上の生き物として等しく」居たいと思います。