2009年07月03日
ボディ剛性の話でちょっと嬉しかったこと
写真は、先日発売したフェアレディZバージョンニスモに採用されている強化型ストラットタワーバー。
Z33バージョンニスモのときは、ウィンドシールド回りの溶接面積拡大とかエンジンルームのラジコアサポートバー追加(エンジンルームの横曲げ剛性対応)などエロエロやってましたが、Z34バージョンニスモでは標準車にも採用されているトライアングルストラットタワーバーに補剛のステー(黄色の○)を追加しているだけです。
ま、ボディチューニングという面ではパフォーマンスダンパーの採用もあるけど。剛性に関する変更はこのステーの追加だけです。
ボディ剛性という言葉は、自動車メーカーから発する解説だけでなく、アフターマーケット的にもけっこういろいろ出てますね。剛性アップパーツとしてポピュラーなのはストラットタワーバーなどがありますが、昔自分でもオンボロ車に後付けして『車がシャキっとした』などと喜んでいたのが懐かしいです。
昔から一方的に知ってた(憧れてた)方で、昨年お知り合いになれたジムカーナの達人がいるんですが、その達人のホームページで、面白い話(嬉しい話)を見つけちゃったので紹介させていただきます。
この達人は今でも第一線で活躍されていて、ショップも経営されているのですが、リンク貼ったりするとご迷惑になるかもしれないので。要点だけ引用だけさせていただくことにします。
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最近乗ったノーマルボディで、こいつはいいなと感じたのが、マーチ12SRとフェアレディ(Z34)の2台。重さもサスペンション形式も全然違う2台だが、乗って直ぐに同じ匂いがした。メーカーがちゃんとボディをチューニングするとこういう感じになるんだな、とひたすら感心した。路面からの情報の伝わり方や、クルマが荷重移動する時の躍動感みたいなものが同じ匂いがする。
部分的な補強を入れると、その部分が強くなった分、必ずボディの他の部分にしわ寄せが来る。例えば、はじめからそこそこ強い部分を更に補強すると、今まで弱かった部分は更に弱くなってしまうことも起こり得る。弱い部分だけを補強したら、今まで強かった部分とのバランスが崩れて全体のボディの弾力性が損なわれるかもしれない。そして、それはハンドリング&トラクションを含めクルマの基本性能に大きな影響を与える可能性も出てくる。
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不適切に局部的な剛性アップをすると力の逃げ場がなくなり思わぬところに影響が出るってのは、牛乳を飲んでいるときに笑わされて吹き出さないようにクチをおさえると鼻から出ちゃうのと同じようなもんですね d(^^)
オーテック車でもサスチューンと合わせてボディチューンをしている車が増えつつあり、前述の達人に『いいな』と思っていただいた12SRも、オーテックのマイスターが要所に鼻のあぶらをつけて作った車です。先日発売したZ34のバージョンニスモも、同じマイスターの作品ですが、冒頭に説明したとおり剛性面ではベースに対してほんのちょっとしか手を入れていません。結局、理想としているレベルが一緒ということかも。
その、うちのマイスターに話を聞くと『ボディ剛性アップというよりもボディ性能の変更なんだよなぁ』と言います。標準車のボディってのは、果てしない構造解析の末に出来上がった究極のバランスを持ってます。だから、ノーマルがヘボなので改善して良くしてる、という感覚ではないってことです。
車のボディは通常使っている範囲では、入力を受けて変形しても元に戻る範囲で使われています。元に戻らない変形ってのは事故なのでフレーム修正してください。この変形は、ある瞬間だけを切り出してみるとたしかに『変形』だけど、いずれは元に戻る変形なので、時間軸でみると『振動』ってことになります。



(画像はマーチのボディが変形する様子をシミュレーションしたものです。変形量は拡大してあります。)
ボディは鉄でできてて、スプリングと同じように縮んだ後あっさりと元のカタチに戻るわけではなく、ビヨヨ~ンビヨヨ~ン・・・と、しばらく揺れてから収束します(宇宙空間だといつまでも揺れます)。ただそれは、スプリングなどに比べたら圧倒的に周波数の高い振動だし、内装とかメルシート(振動を抑えるためにフロア等に貼ってある3~5mmくらいのアスファルトのシート)とかによって減衰されているので、目で見てわかるもんではありません。
ってことなので、剛性アップパーツといわれるものには、変位量を変える(少なくする)だけでなく、振動の周波数や伝わり方を変える意味があるということになります。車は鏡のような路面を真っ直ぐに走っているだけではないので、つねに前後左右上下に動いています。この動きに伴ってボディにはねじりや曲げの力が入り、それが振動となるので、変な共振をしたりすると『なんだかなぁ』とかいう印象を運転手にもたらすんですな。たとえば、ティーダアクシスのパフォーマンススペックに、ノートライダーのハイパフォで採用しているフロアバーが採用されていない、とかいうのもそんな理由からなんです。
そんな気持ちでうちのマイスターが手がけた車が、憧れの達人に『いいね』って言っていただけているのが、妙に嬉しかった私なのでした♪
ちなみにこの達人の愛車(日産車です、ありがとうございます♪)は、ジムカーナやサーキットなどで酷使され、すでに走行距離は20万キロ以上だそうですが、タワーバーを含めてボディ補強は一切行っていないそうです(競技車としては全然違う車にお乗りです)。
久々に深い話になってしまった(笑)
7/9 追記
宇宙空間では揺れ続けると書きましたが、あれは間違えでした。スプリングなどが変形して起こる振動は、分子間の内部摩擦があり、熱に変換されて放出されるので、宇宙空間でも減衰する、が正しいのでした。
すみません m(_ _)m って誰も気にしてないか・・・
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2009/07/03 17:34:28