2009年11月16日
続・バージョンニスモの話
前回、書き始めたらやたら話が長くなり、生い立ちだけ書いたらエネルギーを使い果たしてしまったために『つづく・・・』 と書いて早1ヶ月(爆)
フェアレディZ(Z34)バーニスの話、続きを書きます m(_ _)m
念のため言っておきますが、ここで話していることってバージョンニスモに限った話じゃなくて、基本的なモノつくり思想としてオーテックの車にすべて流れている『血』みたいなもんだと思ってください。車種によってやってることは違いますけど。
で、そのZ34のバージョンニスモ、やってる内容を列挙すると、エンジン出力向上やらボディ特性変更、サスペンションチューニング・・・ などなどがありますが、それらアイテムはともかくとして、なによりも根本的な方向性(求めた性能の志向性)にかなり差があります。
Z33バージョンニスモって、エンジンはノーマルなのに、筑波サーキットのラップタイムなんかでノーマル比1.5秒くらい速く、これがコーナリング速度が上がっていることをしめしていたわけですが、それ以外にも高速のスタビリティや乗り心地もすばらしくて、そんなところから『外観の派手さを裏切る上質な乗り心地』などとも評されました。 つまり、全体のパイを大きくしたような車だったのです。
で、今度の車ですが、標準のZ34自体が 『出力をアップし、ホイールベースを縮めて、タイヤサイズを上げて、ボディ剛性を飛躍的に向上させ、大人のスポーツカーとしてのクオリティも・・・』 と、非常にピュアーなモデルチェンジが行われたこともあり、バーニスに関してはかなり明確な方向性を持たせています。 その方向性とは『速いこと』です・・・多少日常性を犠牲にしても(@@)。 単純明快♪
ま、日常性は犠牲にしているとはいえ、オーテックのファクトリーカスタムですから、無茶なことはしておらず、Z33のときは設定を見送ったVDCもサイドエアバッグも標準装備化。 前時代的ということはありません。 さらに限界性能を上げた分、VDCの介入も深いところに設定してます。
でも基本的なメニューは速い車になるために必要なことが盛り込まれています。
おそらくカタログを見て一番ビビッとくるのはエンジン出力ですね。
以前書いた、Z34バーニスのエンジンの話・・・
引用開始---------------------
Z34バーニスのエンジンは、オーテックが提供する『ファクトリーカスタム』としてのチューンですので、全国の日産の販売店で通常の新車保証(3年6万km&5年10万km)が前提となっています。
さらに新車登録時点で改造済み車両なので『改造車』といいながらも、超厳し~い日本の騒音規制を、量産車(型式指定車)同等の水準でクリアすることが求められます(T T)。要するに、マフラーとコンピュータを変更してる、といいながらも日本の量産車の法規水準をを完全に遵守した超イイコちゃんチューニングなのです。
なので、ドライバー8月5日号の記事(by 森野恭行さん)にある・・・
――― VQ37VHRに火を入れると、とたんに「特別」であることを主張してきた。いわゆる「抜けがいい音」を響かせるのだ。――――― しかもオーテックチューンVQ37はパワーもしっかり上乗せ。2500回転ぐらいまでのトルクは痩せた印象(VVL採用の3.7Lだから神経質ではない)だが、4000回転から上の吹けやレスポンスの鋭さ、パワー感や伸び感は明確に強化されている。―――
や、ザッカー8月号の記事(by 河口まなぶさん)での・・・
――― バージョンニスモでまず魅力的なのはエンジン・サウンド。――――― 踏めば心震わすサウンドを響かせる。抜けのよいサウンドは気分を高揚させる。―――
などという表現にあらわれるこのエンジンの魅力商品力の陰には、オーテックのエンジン開発担当の並々ならぬ苦労があったりするわけです。
エンジンチューニングと言うときに、まず思い浮かぶのは出力(ps)の向上だと思いますが、出力を上げるにはトルク(kg・m)を上げるか、回転数(rpm)を上げる必要があります。トルクを上げるためには、ピストンやヘッドを変更して圧縮比を上げたり、給排気系を変更して充填効率を高めたりします。回転数を上げるにはカムを変更したりしますね。
このとき、ベースエンジンが比較的ベーシックな仕様であれば、いろいろやりようもありますが、たとえばフェアレディZに搭載されているVQ37VHRあたりになると、ノーマル状態ですでに圧縮比も高く、当然ハイオク指定だし、VVELという可変バルブ機構が搭載されており、高回転域のバルタイやリフトなんてレーシングエンジン並みだったりするので、弄るのも容易じゃないのです。
量産車のエンジンの耐久性保証ってのは、それはそれは過酷なモノで、水温/油温ともほぼMax状態で数百時間の連続運転とか、そんな無茶なことまでクリアしないといけないので(オーテック車では標準車と同じ保証をするためにこういうのクリアしてます)、大変なんです(T T) 一方で先に言ったような騒音規制もクリアしないといけない。
ってなわけで、今回のバーニスのエンジンチューニングは、出力アップばかりが目に付きますが、むしろトルクカーブの作りこみがハイライトといってもいいのです。ま、トルクカーブをデザインする、といった感じでしょうか。もちろん前述の制約条件をすべてクリアしながらの実現です。
そのトルクカーブがこちら♪
Cの回転域はノーマルエンジンをガッツリと上回り、スポーツ走行時のパワフルな走りをサポートします。一方でAの回転域は標準車に対して明確に痩せています。ま、痩せているとはいえ、3700ccもあるエンジンですから、乗りにくいことはないはずです(これで乗りにくいという人はMT免許没収します(嘘))。
そしてここをつなぐBの回転域は、ググ~っと盛り上がるようなトルクカーブにしています。
1速だと余裕駆動力がありすぎてこの盛り上がりは体感しにくいですが、高速のランプでの加速などで3速あたりで踏んでいくと、超気持ちいい加速が楽しめると思います。
VVELのような高度なデバイスを使いながら、あえて低速トルクの痩せを許容するなんて、純粋な技術的視点で見ると?かもしれません。乗り方/乗り手によっては、ノーマルエンジンの方が速く走れる可能性も十分ありえます。あまりエンジンを回さない人(がZを買うのか謎ですがw)が、+19psと聞いて全域パワフルなんじゃないかと思ってバーニス買ったらノーマルより遅い・・・みたいな話もあるかもしれません。
でも、こんな特性のクルマがあってもいいよね、と考える一部のオーナーさんにはたまらない魅力だろうと確信してまして、こんなところがオーテック商品の特徴だと思ってます。
標準車(ベースとなっている量産車)は、いろんな要件を満たしながらベストなバランスを追求した究極のハイバランス商品。一方オーテック車とは、使用シーンを特定したり、特別なコダワリの部分にスポットをあてて作りこんだ、ある意味でちょっとイビツな商品。
この考え方は、すべてのオーテック商品に(表現の仕方、デザインや仕様装備は車種によって違うけど)共通して備わっていると思ってます。
---------------------引用終わり
ってのが、ここにつながってます。
日常性(低速トルク)を多少犠牲にしても、速さと気持ちよさを狙いました~! という話です。
ただ、補足しておくと低速がなんぼ痩せているとはいえ、Z33初期型のVQ35以上のトルクは出てますよ、念のため。
あ~、やっぱり長くなってしまった・・・。
ということで、今回はエンジンの話だけにしておきます。
次回は・・・ 空力かな?
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2009/11/16 15:02:17