性能バブル

土地、IT、金融。過去20年の間、およそ10年サイクルで盛り上がって弾けたバブル経済は、実態を伴うものから無形の価値へと姿を変えながら、巧妙に仕組まれるようになっていた。

すべては欲望に根ざした人為だったが、表面上は正義や善意を装うから始末が悪い。仕組んだ悪党はとっとと売り逃げ、後から欲に釣られてやって来たお人好しが泣きを見る。

サブプライムローンに始まり、昨年9月15日のリーマンショックで終焉を迎えた金融バブルは、とりあえずアメリカを世界の市場フロンティアの立場から引きずり下ろした。住宅とクルマ。なるほどアメリカですねぇ。

自動車産業が崩壊したら、多分唯一の超大国としてのUSAの覇権は急速に衰えることになるだろう。

それはともかく、世に泥棒の種はつきまじ……土地、IT、金融に続く経済の牽引車はすでに巧妙に仕組まれていると見た方がいい。

次は多分CO2だね。排出権取引。二酸化炭素に代表されるグリーンハウスガス(温室効果ガス)は、少し前までは人畜無害と言われていたけれど、地球温暖化の原因とみる知見が有力となってから、経済の対象になってきている。

排出権取引は、次なるマネーゲームのニューフロンティアとして欲深い西欧人のビジネスアイテムとして深く静かに浸透しつつあるようだ。

地球規模のエコという、誰もが否定的な立場に立てない錦の御旗の下に、多分次なるバブルは進展して行くのだろう。その主要市場はBRIC'Sになる…と見るのが正解かもしれない。CO2問題は、換金化によって変容する可能性があることを、注意深く見守る必要がありそうだ。

BMWの新7シリーズに乗った。4.4L V8ツインターボの750iと3L直6ツインターボの740i。それぞれにロングホイールベースのLiがラインアップされる。

大きくて、高品質で、高性能。プレミアムセダンとしては第一級の実力を盛り込みながら、エコへの関心も忘れない。この手の高級車の顧客となるお金持ちにとって、スピードは何よりも優先される最大価値と言っていい。

それを得るためのパワーは、客をつなぎ止める唯一の勝負所ということになりそうだ。排気量を押さえながら、ツインターボで要求を満たす。シャシーには20年前の土地・株バブルの狂乱時に花開いた4WSなどのハイテクデバイスを投入する。

走りもクォリティも素晴らしかった。しかし、その時の速度計の数字はとてもではないが公表を憚られる。実用とはかけ離れた過剰性の多寡を評価の対象にする。

さすがにこれはもう危ういと思うのだが、皆さん相も変わらず性能バブルを煽ることに執心と見える。どこがエコやっちゅうねん。

ドイツは過剰性の海の中で溺れる覚悟で、新たな船出をしようということなのだろうか?

くれぐれも日本メーカーはそこでの勝負を避けて通るよーに。バブルに手を染めたら20年祟る。あれをもう一回やる度胸はさすがにないでしょう?