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2014年07月17日

水野和敏が遺したモダンアート

水野和敏が遺したモダンアート V37スカイライン200GT-t試乗の前に、GT-R NISMOが用意されていると小耳にはさんでいたので所望することに。

GT-Rは、2000年のゴーンさんによる復活宣言から2001年のTMSへのGT-Rコンセプトの出展、同コンセプトのNAIASデビューと追い続け、リーマンショック以前に最高潮を迎えた東京モーターショー(TMS)2007での正式デビュー、同年のドイツ・アウトバーンフラットアウト試乗まではかなり密に取材した方だった。

GT-R開発の全権をC. ゴーンCEOから委ねられ、2003年から2013年3月31日まで10年の長きにわたって陣頭指揮にあたった水野和敏さんとはまったくの同世代。R32スカイラインやPA10プリメーラの頃にも面識があったかもだが、僕が存在を認識したのはNRP(日産リバイバルプラン)が発表された10月8日の2週間後に開催された第33回TMSの時だったか。

XVL……後にV35スカイラインになるFMプラットフォームというV6エンジンを前提とするFRのパッケージを、独特の語り口でまくしたてた鬼才の香りがするパーソナリティ。バブル期にT.N.Mの一角NのNISMOに在籍してレーシングダイレクターとして名を挙げたようだが、接点はなかった。

面白い論客が仕立て上げたGT-Rは、結論として世界に類例のないユニークなスーパースポーツとして地球規模の知名度を得るに至った。ロードゴーイングカーでありながら、語り口がサーキットでのパフォーマンス以外に見出せない開発手法とレーシングカーの視点でしか評価軸を用意できない取材陣に強い違和感を覚えた。

「このクルマは誰のためにあるのだろう?」エンジニアの自己実現? レーシングカーのベースモデル?カテゴリーの特定できないレースでの勝利? 乗れば強烈な走りのパフォーマンスに痺れるし、技術的成熟度にも感心するところは多いのだが、経済的余裕があったとして真っ先に欲しいと思うクルマかというと違った。

そう言えば水野さんが日産を去って1年と少しが過ぎた。ターンパイクでバッタリ会ったり、先日も御殿場のミュゼオで雑誌の取材をする姿を見かけたりもしたが、それほど密な関係でもない。

NISMOの名が冠せられ、既存のラインとは異なる展開を見せてきたGT-R。さらGT3ライクな闘うクルマ然としたルックスにちょっと気押されながら流してみると、ほう? 真っ先に触れたステアリングのタッチにこれまでにない感覚を覚えた。

グレーのアルカンターラを巻いたやや細身のグリップは芯材とのあいだにけっこうなストロークがあって、強く握ると力に応じて"たわむ"。操舵力が軽くなったPSとの相性は、つい肩に力が入って強く握るシーンがあっても、一瞬そのストロークが逃げとなって、人間誰しも持っている位相遅れとそれ故の過剰反応を未然に抑えている。

㎲の話なので言葉にすると大袈裟になるが、この指向性は600ps、66.5kgm、最高速315km/hに達する(国内オンロードでは180km/hのリミッター作動)ウルトラパフォーマンスカーとしては他に類例のない感覚性能として評価したい。

少しずつペースを上げて行くと、ボディの無駄な動きがほとんどなく、足を相当固いのに当りが柔らかく実にフラットな"乗り心地の良さ"に仕上がっている。セットアップはすべて『Rモード』でよく、その他のモードはRモードの違いや良さを実感するためにあるといった雰囲気。

加藤博義現代の名工の姿を見かけたので、あれは何が効いているの? 通常のスポット溶接に加えて構造用接着剤による補強(ボンディングというらしい)ですね。物凄く手間暇かかる作業なので我々の工場以外ではできないでしょう。

まあスピードリミッターが作動する状態なので実力の片鱗しか垣間見ることができないが、パワーを満喫しようとその気になるとクルマが意識を追い越して行く。図らずも老いを感じてしまったが、最大G領域で破綻するようなモーションに陥ったらどんな挙動を味わうことになるのだろう。

フロント255/40ZRF20、リア285/35ZRF20のダンロップSPスポーツMAXXをレイズの鍛造アルミホイールに履く。1700㎏の重量級をあの加速で曲がり止まる。チョイ乗りですべてを語り尽くそうなんてこれっぽっちも思わないが、ここまでに至るパッケージを考案し熟成してきた功績は偉業と評したい。

意見は意見として互いに異なるところもあるが、こうして形に残ったものは素直に認めないとね。走りも含めてモダンアート。狂気を含むスピードを現実世界で知るものはわずかだが、仮に皆がそれを経験し求め始めたら世界はどうなるのだろう。

[追伸] 本日次期マツダデミオの実像がマツダのサイトで露になりました。その中身については18日がエンバーゴ解禁日となっているのでまだ明かせません。予想通りとガッカリ。あまり表立っては書けない意外な評価となったので、興味がある方は是非こちらまで。土曜日中にアップする予定です。

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Posted at 2014/07/17 23:29:39

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この記事へのコメント

2014年7月18日 9:30
なんで日本車は大口を開けるんですかね!そうしないと冷えない?
カッコイイと思ってるんですかね?
デザイナーの感覚を疑います。
コメントへの返答
2014年7月21日 14:48
冷却は相当厳しいと聞いています。

大顔はドイツに始まる世界的な傾向で、中国の大気(ターチー:堂々とした・立派なという意味)を重視する市場ニーズが発端だと思われます。

VW、アウディのシングルフレームがハシリ? 

ブランド勝負が明らかになった今、プレミアムブランドとして認知されたメーカーもこれからのメーカーも顔作りやブランドイメージの確立に余念がありません。

自動車ビジネスの現実ですね。
2014年7月18日 16:51
初めまして。
最近、気にかかるようになり伏木さんのお話に、
耳を傾けるように。
何と無く、改めて見てみるとR35のコクピットには、
やはりER34を感じたり(MID搭載位置、空調&
オーディオ操作パネルなど)。
ふっと気が付いたのは・・、ミラースイッチがV35と
ほぼ同じ・・。でも、GT-Rは近づいてみるほど、
惹きつけられるものを感じます。
昨今の、自動車の在り方っていうものは、もう・・
次元が違い過ぎるというか、一般消費者の程度の
感覚じゃとても、理解に及びません・・と僕は、
思うのですが。
このステアリングについて、お世辞にもHV37と
同等品質ではないでしょうが、僕が見た
V37ステアリングと似てますね。
表皮が違って、骨は同じ?かしら??
コメントへの返答
2014年7月21日 15:08
水野和敏が去り、GT-Rが水野組から日産正規開発部隊の所管となって晴れて開発に関わることになったという現代の名工加藤博義は、アルカンターラ張りのステアリング表皮について”俺は駄目”といった。

ステアリングリムを親指と人指/中指の3本で摘む独特の評価スタイルでは滑るとかでグローブが必要とか。

僕はアルカンターラの乾いたようで適度な摩擦感のあるタッチは好物で、握った際の”ストローク感”も細身のグリップも上手いバランスを見つけたなと評価したけれど、現代の名工はグローブが要ると言った。

グローブとステアリンググリップの掛け合わせで評価していったらたまたまこのグリップタッチに行き着いた。偶然の産物だったということでした。

プロセスはともかく、結果は世界的にもユニークで評価される仕上がりになっていると思います。

サーキット一本槍の人には軟弱に感じられるかもしれません。
2014年7月18日 20:00
GTRの存在意義、難しいことは分かりませんが、
911ターボや599などのエキゾチックカーに我が物顔で日本の道を走らせない為に存在していて欲しいです(笑)
というのは冗談としても、日本にもややこしい狂った車がおるで!俺とタイマンして勝ってみろよ、と知らしめておく、舐められないようにしておくのは、必要悪と言いますか、ある意味でアリだと思っています。
コメントへの返答
2014年7月21日 15:20
喧嘩上等!!ということで?
2014年7月19日 23:45
こんばんは♪

>意見は意見として互いに異なるところも

・・・・期待しちゃって良いのでしょうか、
再び発現しそうなクルマ新世代の前夜に、GTRを前にしてその開発者と、自動車メディア界きっての論客との対談形式インタヴューなんちゃって?(@v@;

それからクルマの外観って、車格・価格によらず、クルマ選びに於ける一番のファクター。↑Fグリルの造形は格好悪くてとても1,500諭吉掛けられる風格は無いけど、リヤ周りのデザインは、写真では?・・・って思ってましたけど、オートバックスの駐車場で実車を目の前にしたら迫力に、そして思い切ったカッティングに、萌えて感動してました。

この形を水野さんがどう思っていたのか。このあと、水野さんはどう思いを表現するつもりだったのか。伏木さんになら、何を語ってくれるのか。伏木さんは、そんな水野さんに何を語るのか。。。。興味津々なんです(0v0;
コメントへの返答
2014年7月21日 15:19
踊るステージが用意されれば、不可能な話ではないですね。お互いにプロなので。

意見は異なって当然。それぞれに背景に違いがあって育った環境が違えばモノの見方も変わる。

思うところがあって言葉にすれば衝突は免れないけれど、そのぶつかり合う中にこそエネルギーに満ちた面白さの発見があると思います。

プロモーション、よろしくお願いします(笑)

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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