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2014年07月28日

30年後のベイビーベンツ

30年後のベイビーベンツ W201メルセデスベンツ190Eを購入したのは1986年4月のことだ。ベンツ100年祭の節目の年。僕はまだ34歳になったばかりだった。

フリーランスライターでやって行く。根拠のない自信とは恐ろしいものだ。それまで文章など一行も書いたことがないGSアルバイターが、アマチュアレースでそこそこやれたというだけでスカウトされ、今がある。

26で始めて36年、当然のことながら道のりは平坦ではなく、筆力が身につくまではとにかく身体を張った。若さは馬鹿さ、運転だったら一世を風靡した星野一義や中嶋悟だって負けるもんか。現実はともかく、ギラギラ感はなかなかのものだった。

試乗インプレッションは軽自動車からレーシングカーまで。80年代前半にブームとなった最高速トライアルでは雨宮REターボのSA22Cで当時最速の288km/hを叩き出し、モータースポーツ記者会の数少ない個人会員に名を連ねてシーズンの週末はほぼサーキットにいた。走り屋系ということで担当した雑誌のタイヤテスト企画が運を呼び、新ブランド立ち上げに参画する中で多くを学んだ。

30歳そこそこで海外取材を経験。視野が広がると自らの価値判断の基準を持つ重要性に思い至った。暗黒の70年代を乗り越えた80年代は無限の成長が信じられた。何でもありの日本車が世界に羽ばたいたディケードだが、日本ならではのギミックが面白がられるのは今のうち。すでに"FR絶対主義"の基礎は固まっていて、コンパクトFRセダンを理想とする論を確立したいと考えた。

E30BMW3シリーズかW201メルセデスベンツ190Eか。真剣に悩み、画期的なコンセプトと技術/デザインの先進性でW201を選んだ。1985年のIAAフランクフルトショー、当時はホッケンハイムで出展車両のテストデイが敢行され、同行の福野礼を助手席にE30でドリドリさせながら大笑い、なんてことをしながらしっかり190Eの品定めを済ませてきた。

右ハンドル・5速MT・P/Wなし・ブルーブラックメタにベージュのMBTEXインテリア……決めて帰国後に好事魔多し。FISCOの第1コーナーでT.T85Cが突如姿勢を乱しマシン全損、我が身は2ヶ月入院の重傷だった。それまでの積み上げは一瞬で霧消。ミスはなかったと断言できるが、ドライバーとしての信用は地に堕ち、プライドはペシャンコになった。

それでも190Eは諦めなかった。入院は生まれて始めて多読の好機となり、そこで入れ換えたスイッチがそれ以前とは異なる今の自分を形作っている。190Eから学んだことは数知れない。2ℓ直4OHCは"たったの"115psだが、1180㎏の軽くて空力に優れるボディは馬力自慢の国産車との間に確固たる格差を見せつけた。

今でも、あのスケール、あのパワースペックで十分やれるのではないかという思いは強い。ドイツは、ダイムラーAGはその後、企画/開発/生産/販売の各分野へのエレクトロニクス技術の全面的導入によって世界シェアトップの座を獲得した日本メーカーに対抗して、速度無制限のアウトバーンを源流とするハイパフォーマンス/プレミアム路線にシフト。1993年のW202以降のCクラスはベースモデルで質を問うスタンスから上級グレードに誘導するマーケティング主導の"お高いブランド"に変貌して行く。

高価だが華美ではなく、高級だが過剰ではない。価値判断は常に相対的なものであり、時代によっても異なってくる。過去を現代視点で振り返るのも、現代を過去の価値観に照らして語るのもナンセンスだが、ベースモデルで出来を判断するのがもっともフェアかもしれない。

190Eから数えて5代目のW205は、ついに1.6ℓターボという欧州メーカーが競って進めるダウンサイジングに舵を切った。背景にEUが求めるCO2排出量規制があるのは間違いなく、欧州市場で求められる走行性能と環境性能の妥協点を探った現実解だが、奇しくも比出力(パワーウェイトレシオ)は10kg/ps前後とW201と同等のレベルにある。

アルミ材の使用をボディ面積比で48%まで拡大し、ホワイトボディで70kgの軽量化を実現する。スチールとアルミの接合にリベットを用いたり、フロントサスをマルチリンクに発展させたり、6個のレーダーとステレオカメラで全方位をカバーして自動運転時代の序章を匂わせたりといった革新性に加え、デザイン的にもフラッグシップのSクラスとイメージ的にかぶる往年のポリシー復活を感じ取ることができる。

W201の190Eに対し、史上最大の販売台数記録を残したW126Sクラス。いずれも有名なチーフデザイナーブルーノ・サッコの手になるものだが、今度のW205もW222Sクラスとのイメージ的つながりを強く感じさせる。今年まだ45歳という若きメルセデスベンツのチーフデザイナーゴードン・ワーグナーデザイン統括の仕事ぶりは、完全にブルーノ・サッコのそれに被る。

1.6ℓ直4直噴ターボのC180アバンギャルド(濃いテノライトグレーのほう)は、かつて心酔した190Eに似た味わい深さが印象に残った。C200の2ℓ直4直噴ターボのスピードよりも全体に穏やかで必要十分な軽快さを評価したい。でもテンロクにはエアサスのオプション設定がないんだ。オプションの18インチタイヤとAMGラインに加わるエアサスとの相性の良さが印象的だったので、テンロクにも欲しい。そうすると2ℓより1.6ℓのほうが高い……なんていうねじれが生じたりもするんですけどね。

久しぶりに購入シミュレーションやっちゃいました。より詳しい新型Cクラスのリポートはこちらで!!

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Posted at 2014/07/28 15:08:47

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この記事へのコメント

2014年7月28日 15:18
さすが FR 絶対主義!!
(●^o^●)
コメントへの返答
2014年7月28日 23:51
こだわらないと流される。

そろそろ皆さん分かってきたのでは?

俺が言い続けなかったら、代わりに誰かいたの

だろうか?
2014年7月28日 18:58
先日C200に試乗してきました。

若干曲線を帯びたそのボディーラインは美しく、ややタイトに感じた室内も
必要にして十分、初体験のエアサスも変にふにゃふにゃした感じはなく
意外と引き締まった足回りでした。

ただOPを積み重ねて行くとコンパクトベンツといっても結構な価格帯に!

BMW3シリも高価になったが、気軽に手が出せる価格帯とは言いがたい。

スタイルや装備を見ればC180でも十分と思えるが、やっぱり2Lは欲しいです。
コメントへの返答
2014年7月29日 16:13
常にシャシーはエンジンより速く。メルセデスベンツの有名なポリシーです。

MBは、というよりドイツメーカーは、過去30年間に渡って繰り広げられた技術のグローバル化の過程で、自らのプレミアムブランドとしての価値の源にアウトバーンが存在する事実を置き、世界中の富裕層の多くが求める高出力、高速性能の要求に応えようと決意したと思います。

追いかける他国のライバルがいくら力んでも超えられない歴史の古さとヒトラーが残したインフラ資産に、誰もが反論する言葉を失った。

日頃から100km/hの法定最高速度に抑圧された気分でいる人が、ドイツを訪れてアウトバーンをストレスフリーで駆け抜けるとそれだけで感激します。

事実としてドイツ車は高品質で高い性能を誇りますが、工業製品であることにかわりはなく、第三国でのCSIで日本車の後塵を拝することは珍しくありません。

何事も是々非々で評価判断しないとだめなのは当然ですが、クルマ同士の比べっこで見ると上級グレードに分があるけれど、乗り手と走行環境という視点を絡めて見ていくと案外低位のベーシックモデルのほうがフィットするかとが多い。

W201が典型的な例ですが、後に2.3ℓや同16パブル、2.6ℓ直6などが追加されても標準の2ℓOHCが色褪せることはありませんでした。

今度のW205にも同じ匂いを感じたんですよ。
2014年7月28日 22:31
完全無欠の新Cクラスみたいですね…(^^♪
例えば、新Cクラスをご主人が乗って、奥様はゴルフ7…。果たして幸せになれるんでしょうか?(^_^;)
コメントへの返答
2014年7月29日 16:15
世に完全無欠は存在せず、メルセデスベンツにしても例外ではありません。

幸せはいつでも自分の心が決める……みつを。

ということで。
2014年7月29日 1:02
ベンツの新デザインは各セグメントのどのボディサイズとも合う上にブランド全体の統一感を見事に演出できていると思います。
どのクラス、SであろうとEやCであろうと、ましてやAであっても高級感が微塵も損なわれていないと、街中を走る新型をみる度に感じます。
コメントへの返答
2014年7月29日 16:19
ゴードン・ワーグナーは歴史に学んだ賢者ということになるようです。

ブルーノ・サッコが一世を風靡した統一感のあるデザインでブランドを構築する手法を巧みに取り入れ、現代的なセンスで見事にまとめ上げている。当初は、若さの気負いがMBには早いかなと思いましたが、天才はやはりモノが違いますね。
2014年7月29日 9:28
僕は190Eが入ると同時に買いました、その後190E,2,3,16VのMT,ヤナセが1台だけ入れたのを手に入れました。
ポルシェも何台か乗りましたが、190Eno16Vは今でも忘れられません!

伏木さんが190Eの信奉者とは知りませんでした。

大きさも4ドアとしては小型でいい大きさですね!また乗りたくなりました!
コメントへの返答
2014年7月29日 16:41
190Eは12年間乗り続け、公約通り国産コンパクトFRセダンのアルテッツァが出たので近所のネッツ店で下取り査定を受けると「5万円!?」

驚愕の見立てに怒り心頭「なら、読者プレゼントだ!」1998年当時メインで執筆していたBC誌で読者に声掛けると、全国から500通を超える応募がありました。

編集長に掛け合ってそれを届ける道中を企画にしてもらって原稿料と日当で査定額を上回る資金を得ようと計画したわけです。

OKが出たので、それならもっとも遠方の読者がいいねということで北海道最東端の根室に住む読者を尋ねました。新調なったアルテッツァとともに、真冬の北海道を横断し、帰路ホンダの鷹栖PGに寄って冬季イベントにも参加する。総行程3000㎞を超えたと記憶しています。

話には後日談があって、数年後贈った読者から手紙が届いて、手離すことになったのでいかが致しましょうか、廃車の予定です、とあった。

その話を懇意の若い編集者にすると「それ貰い受けに行って良いですか?」僕のFR論の影響を受けた人でしたが、その後もうこれ以上は無理というほど走らせて20年目にナンバープレートを外したと聞きました。

日本に何台もない右ハンドル、5速MT、P/Wレス仕様。現存車の所在は不明です。
2014年8月3日 8:51
お早う御座います!
Cクラスって、クルマ好きだ何だかんだ言ってもこれまでは、私の様な普通のオサーンサラリーマンが買うと、如何にも『あらら頑張っちゃったかなあ?』的な冴えない見栄えになるのが想像出来ちゃって、ある程度の車格でないとちょっと手が出せないなあって、思っていました。
けど、今回のCクラスは、街中で既に走り出してるのを拝見しますが、そういう感がしない風格と押し出しが前面に出てて素敵ですね。
後席乗員の事を考えると、やっぱCクラスでは厳しいので、手が出る経済力に届くまではまだまだ我慢のクルマライフです♪
2014年8月4日 9:07
190Eは当時、婦人服会社の常務をやってる時、2002に乗ってました。
僕より10才若い社長が,クマさん常務が2002ではおかしいと、出たばかりの190Eを買ってくれました。
フロントグリルを取り替え得意になって乗ってました。
千葉方面にゴルフに行く際200km近く出しててオービスに引っ掛かり、1発免停になったことも有りました。
懐かしい思い出です。

その後964を乗継ぎ190E,2.316Vにたどりつきました。

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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