
皐月も晦日。すでに卯月のNYIAS.AUTOCHINAは遠く、もしかしたら一年でもっとも明日を感じられる31日が流れ去った。
先週軽井沢ミーティングに出掛けた。ロードスターのオーナー達が自然発生的に作り上げて20余年。今年はロードスター登場25周年という節目であり、またNDと呼ばれることになるだろう次期ロードスターの輪郭がおぼろげながらも見えてきた。NYIASで公開されたペアシャシーを軽井沢でも見せるという話は少し前に漏れ聞いていた。
ならばと、また出掛けてみようと思った。振り返ると、前回初めて軽井沢ミーティングに足を運んだのはもう5年前ということだった。ロードスター20周年ということで何かと話題だったけれど、リーマンショック直後の底冷えのタイミング。時の流れるのは本当に早い。
せっかくの機会なので、今回はロードスターで行こうと思った。編集部経由で借用すると、NAロードスターが在籍中であるという。NCとNAどっちにします? 面白そうなのでNA。横浜R&Dに引き取りに行くと、それはネオグリーンのVスペシャルで、ナンバープレートは19-90。横浜ナンバーに改められていたが、明らかに年式を表わしている。

これは? 担当女史に尋ねると、平井さんが寄贈された広報車とかなんとか。その時はまあ聞き流したが、あらためて確かめると本当に平井敏彦オリジナルロードスター開発担当主査が何かに役立てるようにと広報車両に供されたとのこと。
引き取ってすぐに帰宅しようと走り出したら、これが何というか芳ばしい。細身のナルディウッドリムに、24年物という経年変化を考慮してもこんなに柔だったかなのボディ/シャシー。思うところあって湘南まで足を伸ばすことにした。
ある種の頼りなさと、しかし24年モノとは思えない必要十分感。ところどころでキラリと光る心に響く感触が心地よい。これでいい……ではなくて、これがいいという身体に丁度良い感覚。これって何かに共通するね。おおっ、少し前に同じ横浜で試乗会が催されたケータハム・セブン160を手にして腹の底から湧き上がった、なんていうの普遍的な"これがいいじゃん"感かね。

国道一号線をビュンと下って行く道すがら、今思っていることをタイトル付けすると何かね。問わず語り風に思いを巡らせていて浮かんだのが『スポーツカー原論』スポーツカーってこういうことじゃね? という気分を一度まとめといたほうがいいね。これについてはまぐまぐ!のメルマガ『クルマの心』でも書き始めましたが、時間を掛けてまとめるテーマとすることにしました。

軽井沢ミーティングは、1300台の各世代ロードスターが2000人余の人々とともに集う国内最大級のオーナーズミーティングに成長していました。25周年という節目であり、第四世代ロードスターへの期待もあってのことでしょうが、独特の柔らかい空気感が印象的な不思議な体験。

NYIASに出展されたのとはまた少し違う国内展示専用のベアシャシーを、何はともあれ熱いオーナー達に見てもらおうというMAZDAの開発陣のアプローチも、新たなブランディング、マーケティングの手法として面白い試みだと思った。

オルタナティブもいい。最先端の自動運転車も悪くはないと思う。しかし、もう少し等身大の、誰のためという視点に一歩踏み止まった、そりゃ人間の幸福のためにあるんでしょうという、あたりまえのところに立ち返ってクルマを考えたいね。スポーツカーを根っこから考え直す作業は無駄じゃないと言う気がしている。

とりあえず、自分の身体で動いて、自分の頭で考えないとね。人は先に進まなければならない宿命を背負っているけれど、身体の存在が希薄になるクルマについては熟考熟慮で臨みたいもの。可能性を狭めない範囲で、頑固にこだわるのも馬齢を重ねた者の勤めではないかと思うんですわ。
Posted at 2014/05/31 23:58:18 | |
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クルマ | 日記