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伏木悦郎のブログ一覧

2012年02月11日 イイね!

反対声明2012

反対声明20121994年、今から18年前のことになりますが、自動車雑誌業界に突風が吹き荒れた。専門誌としては老舗に入るdriver誌に掲載された『反対声明』なる刺激的な記事が発端だった。

スクープなどを担当する編集者が、折入って……みたいな感じで企画の執筆を依頼してきた。何でも、1989年に鮮烈なデビューを飾り、世界中にライトウェイトスポーツカーという宝の山の存在を知らしめたユーノス・ロードスターが、オリジナルの1.6ℓエンジンを諦め、1.8ℓを搭載する決断をしたという。

それに対してどう思うかと尋ねるので、それは駄目だろう。即答して書き上げたのが他ならぬ僕である。同調する意見があちこちから聞かれると思ったが、驚いたことに他誌や他の同業から聞かれたのは『反対声明の反対声明』だった。

なぜ、反対の反対=賛成に回ったのか、理由はよく分からない。メーカーの決定に逆らうことに対する異論なのか、僕個人に対する不快感の表れなのか。一時期はdriver対他誌みたいなムードが奇妙に盛り上がった。

僕の考え方はほぼ一貫しており、紆余曲折を経ながら求める答えに近いトヨタ86系トヨバル86BRZFR-Sの登場を見た。理想はもっと軽く小さく遅いけれど面白い…ということになりますが、グローバル化が進んだ市場経済と現行の資源・環境・安全の諸法規制への対応を考えると、これがminimumという説明には納得が行く。

1994年の反対声明については、この場には馴染まないと思うのでDRIVING JOURNALにてご覧ください。

その後の経緯を振り返れば、その時々の諸事情を考慮しても踏み止まった方がマツダの未来に大きな収穫をもたらしたと分かります。ポストバブルの難しい時代。やがてFORDの資金力に頼らざるを得なくなり、4代にわたって外国人トップを頂くことになって、奔放な自由が失われた反面、キャッシュフローを重視する経営の健全化とそれを背景にした大胆な車種再編とRE復活やロードスターの継続など、DNAの継承はむしろ徹底された感もありました。

FORDの影響力が薄れ、エンジニア出身の経営陣の発言力が増してからは、またまた技術偏重によるおかしな状況が続いていて、ちょっと危なっかしい感じになっていますが、マツダの人気の原動力はデザイン力にある。それとエンジニアリングが噛み合ったときに、big waveの時代が訪れる。

技術でクルマが売れた試しはない。一般的なshopping processでは、まず目を引くデザインが動機の筆頭に来る。技術の説明は往々にして言い訳になる。繰り返しトップマネージメントには進言しているのだが、どうしても曲解されて思いが届かない。

NCロードスターは、あと2年は現状維持が続くという。ジュネーブでNDのコンセプトが出展されるという噂もあるが、仮にショーモデルが現れたとしても、その市販化は早くて2014年末ぐらいになるだろう。

その間、今話題のトヨタ86とスバルBRZ、サイオンFR-Sが、1989年のユーノス・ロードスターのような世界的ヒットとなり、再びライトウェイトスポーツに陽の目が当たるようになっていてくれないと、そしてSKYACTIVテクノロジーが成功を収めて原資を確保していないと、なかなか多くのファンが期待するオリジナルロードスター路線への回帰は難しい。

それよりも何よりも……である。ここ数年来抱き続けている現代の反対声明は、すでに個別のクルマの段階を過ぎ、システム全体に対して向けられるようになっている。クルマは『人・道・車=マン・マシン・フィールド 3重のシステム』として語られる必要がある。このところちょくちょく書いている視点ですが、注目しなければいけないのはやはり大本(おおもと)となる走行環境としてフィールドでしょう。

真っ先に手を付けたいのは、道路システムの最適化、有効利用化です。高速道路は即刻無料化に踏み出し、一般国公道と有機的に結びつけるように改めなければいけない。道路は原則無料……道路法で定義される道路はそういうことになっている。

高速道路などの有料化は特例措置として認められたもので、受益者負担などといった筋違いの論点で有料を正当化するのはペテンに属する犯罪的行為にほかならない。

財源がない? やめてよ。日本は国内外に生産拠点を構える世界最大の自動車生産国であり、保有台数は2輪、4輪合わせて約8000万台を数える。自動車税、重量税は何のためのものだ? そしてそれらの99%はガソリン/軽油で走る内燃機関車両であり、依然として暫定税率を加えた53円80銭のガソリン税や軽油引取税を収めている。

それらの総額は約5兆円に及ぶが、道路特定財源と呼ばれたその多くは2009年に一般財源化された。行政の失敗を反省するでも、改めるでもなく、すでに相当額の徴収額が存在し、しかも取り易いところに目をつけて、何かというと居直って財政が破綻してもいいのかなどと、いけしゃあしゃあと言う。

1970年代以前の発展途上段階で債務国だった頃は、借金によって道路を建設するという仕組みは当然だったろう。しかし、成長期に入り税収が潤沢になった1980年代に入っても単年度主義をかさに仕組みを変えず、余剰を翌年以降にまわすことなく無駄に使い切ることに明け暮れた。

有料道路は償還主義に基づいて、個別に無料開放されるプロセスを踏むのが当然なのに、プール制などといって無限に借金が残る仕組みを作り上げ、末代まで権限が残る悪巧みを編み出した。道路公団の民営化? あれは態の良い天下り機関の創造だろう。

国なら文句もいえるが、民間を装い皆さんと一緒とか言われたら、こっちが悪者のような気分になってしまう。そもそも国家が鉄道事業をしていた頃に、台頭してきたモータリゼーションの勢いを競合ライバルの出現と捉える勢力があって、新旧、先輩後輩の関係で国鉄と道路公団が位置づけられ、通行料が世界屈指の高値に固定された。

余裕があった頃はまあいいかと見逃せたが、機能性では明らかに社会貢献の度合いの高いクルマは自前で道具立てを用意した上で鉄道料金並みの通行料まで取られる。

クルマに頼らなくても公共のモビリティが発達した大東京をはじめとする都市圏はまだしもである。地方の都市同士や農村部を高速道路を中心とした道路網でネットワーク化を図り、独自の経済圏を構築するには、中央の決め事で同じ料金体系を押しつけられてはかなわない。

それよりも何より、東京をほとんど無原則に肥大化させ、全国から首都圏に集めてなおも拡大を続けようとしている。中央があって、地方はその供給源としてある。物流の仕組みから交通体系から、参勤交代の為に作られたすべての道は江戸に通じる五街道的発想から、どれをとっても徳川時代の発想から抜け出ていない。

僕が育った神奈川県川崎市中部は、今は住宅密集地になっているが、小学生の頃は長閑な田園風景で、目の前の田圃から2~3㎞先の南武線が見渡せた。半世紀前というと遥か遠い昔かもしれないが、たかが50年前の話である。その間に首都圏の人口は小さく見積もっても倍増しているはずだ。

いまさら69年周期説を引っ張りだしても現実のほうがさらに先を行きそうで洒落になりませんが、歴史的に見て必ず発生している震災を承知でここまで無原則に東京を大きくした理由は何だろう?

大急ぎで分散化を図り、道路をネットワークシステムとして有効に機能するようにしなければならないと思うのに、あたかもそうするのが当然の集金システムのように道路を捉えている。

これだけ世界に冠たるクルマの生産国であり、世界中で支持されていた日本車を生み出した国なのに、それを生み育てた日本をクルマで走ってみたいという声はほとんど聞かない。ただでさえ日本語は難しいと言われているのに、日本の道路は外国人にとっては魔境だろう。

道路は基本的にどこでも同じルールと構造で出来上がっているはずだが、日本の高速道路は東名やら名神やら山陽やら東北やら。日本人にはあたりまえでも、世界の常識にはない名前で呼ばれる。A1とか、E50とか、I-405、一定の法則で付けられた名前で分かりやすくという配慮はまるでない。

中国語が分からないと、高速道路が有料の中国を走るには相当の困難が存在する。ルール/マナーの国際化が未達による難しさを置いても緊張感がある。

しかし、それと外国人にとっての日本はほぼ等価だと断言できる。システムやマナーはモダンになっているが、べらぼうに高い通行料、日本のクレジットカードを保持していないと作れないETCカードを要求する最新システム。

風光明媚は世界に胸を張れるものがあると思うのですが、我々がアメリカやドイツやイギリスで享受できる自由で走り易くて基本タダのフリーウェイ、アウトバーン、モーターウェイのあの感覚を得ることは不可能です。自国のことは自己中でも構わないけれど、ドイツ車に憧れアウトバーンやニュルブルクリンクを走りたいと思わせる、あの感覚を意識しないで日本のクルマをシニカルに語るというセンスは何だ?

利いた風な話を人ごとのように言う。変える必要があるのは、まずここだろう。

震災に見舞われて首都機能が失われる前に、東京中心の仕組みからそんなに大きなエネルギー供給に頼らなくて成り立つ、日本車本来のライトなクルマで自由に楽しく動けるシステムに移行したほうがいい。今までの行きがかりの結果としてある有料高速道路には反対するのが当然だ。

今までの流れの中にあるITSのいかがわしさやESCの標準化に隠された責任転嫁の疑いなど、反対すべきことはまだまたあります。他国の猿まねではなく、自分の頭で考え、自分の身体で走り、完全ではないが最良の答えを自前で見つけ出す。

それらは一見よくいわれるガラパゴスに見えるかもしれないが、行き詰まりが明白になってきた近代西欧に対峙し、世界に受け入れられる柔らかい高性能のあり方になるはずなのです。

なかなか手短にはいかないね。次はITS反対声明、やります。
Posted at 2012/02/11 23:42:09 | コメント(12) | トラックバック(0) | 日記
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