
身体(からだ)という言葉を使うようになって30年ほどが経つ。この仕事もついに35年目に入ったというわけで、端からフリーランス一本でやって来たという一点に限れば一世代上のお歴々に続く最長不倒の部類に入ると思う。
1970年代の入口で運転免許を取得し、75年から足かけ4年FSW(富士)で若気の至りを迸(ほとばし)らせ、26歳から急転直下驚天動地の文筆業に迷い込んだ。
当然、最初はハラホロヒレハレで、当時を知る編集者は例外なく何年ともたずに消えると思ったようである。本人は悩むことは悩んだけれど、根拠のない自信は人一倍だった。何よりもクルマの運転に関しては、事実はどうあれ誰にも負けないと頭から信じていた。何事も10年頑張ればなんとかなる。

80年代前半、当時すでに日本を代表するメジャーだった星野一義も中嶋悟も、レーシングマシンはともかく、ツクバのノーマルカー(いわゆるメーカーの広報車)なら負けない。
他に誰もやる奴がいなかっただけという説もあるが、1985年にFSWのグループCカー取材で怪我するまでは、ほとんどのツクバレコードは僕のものだった。すでに30年が経とうとしている昔話を誇っても何の意味もなさないけれど、若き日の馬鹿さと溢れるエネルギーは、ここまで来てみるとさすがに眩しい。
今月は2008年に本ブログを始めて5回目のNovemberだったわけだが、月が変わる直前に身体から覇気が薄れ、気力も萎え気味になっちゃった。からだはもう十分草臥(くたび)れてきている年頃なわけで、無理は利かなくなった。当然といえば当然なのだろうが、アレッ?という感じはあるもんです、やっぱ。

人間見た目が9割ということで、ウォーキングに励み、シェイプアップを試みなければと気合いを入れるわけですが、恩田川を歩き始めたミレニアムの頃とは雰囲気が違いますね。
フィジカルなカラダだけではなく、メンタルなアタマが上手いことシンクロしない。別に大袈裟なことを言うつもりは更々なくて、実は僕は今の老いる過程というかそこで味わう感覚を楽しんでいる。
60年間生きてきて、川崎の野山を駆け回った子供時分からサッカーに明け暮れた10代、レースで身を立てることを夢見た20代に、ジャーナリストになっちゃうもんねの30代、40歳の前後5年で100回以上の海外プレスツアーを経験し、50代は世界の主だったモーターショー巡りを自らに課した。

もともとが走り屋志望だったので、事故がなければ間違いなく今とはまったく異なる道を進んだと思う。そうはならないところが人生の綾というもので、それはそれで面白かったと心から思う。
クルマだよね。このところずっと思い続けているのは、僕のカラダと新しいクルマとの関係、バランス、距離感。従来比や過去のクルマとの関係で言うと、どのクルマも押し並べて良くなっている。いわゆる性能も高い。
でもさ、クルマはからだとの関係において価値や存在感が測られるもの。もう一つ走るインフラやシステムとしての環境を踏まえたところで考えないと、良いけどしょうもないモノというなかなか面倒な存在になっちゃう。このブログのタイトルにもなっている、僕が思う目下のクルマに取っての最大のテーマだね。
オーバーサイズやオーバースペックやオーバークォリティやオーバーファンクション……いつも言わざるを得ない過剰性をどう見きるか。この有り余るパワーとか装備とか質感っちゅうやつが、また魅力的だったりするから厄介だ。

安全性とか環境性能、資源保全の燃費性能は、もちろん喫緊の課題に違いないけれど、そういう正しさよりも心踊る面白さとか、目茶苦茶興奮するスリリングな走りとかいうアブない感じが、クルマの魅力の本質ではないかという思いが腹の底に堆く溜まっている。
20代で経験したサニークーぺ1200(KB110)の1171㏄A12型OHVエンジン・SUツインキャブで83ps(グロス)を1298ccにボアアップ。ハイカムとウェーバー45DCOEツインチョークキャブで140psプラスにスープアップする。

645kgのJAF公認車重にフロント205、リア225幅の13インチスリックタイヤの組合せは、その後乗ったどのスーパースポーツよりも肌に合った。フロントストラットにリアリーフリジッド。
ボンネットを開けて手にしたスパナを誤って落としても、カランコロンと音を立てて地面に辿り着いた。スッカスカの伽藍堂。ボディの安全性? なかったね全然。オープニングラップの100Rでスピンした前走車に突っ込んで無残な全損を食らったことがあるけれど、泣けたね。ボディのほうがエンジンより高くつくことをその時知った。
今週やっとのことで正式発表を迎えた3代目アテンザも、先週立て続けに3日連続で乗ったBMW523dもActiveHybrid7も三菱アウトランダーもホンダN-ONEも、あれから30余年の時の流れは当然のことのようにある。

でもね、性能はあの頃の何倍? 軽のN-ONEだって、660ccターボは間違いなくサニークーペ1200GXより速くて快適で安全性も比べ物にならないほど良い。アウトランダーはあれもこれもありますというコモディティ化の見本のようなあれまあな後出しジャンケン状態だが、そこにバリューを感じ魅力的と思う人が居ても不思議はない。
アテンザはいろんな意味で力作で、BMWがライバルなんて言わなくてもいいこと言って、余計な揚げ足取りの餌食になっちゃうあたりがご愛嬌だが、デザインとディーゼルを中心としたエンジニアリングのまとまりは日本車に新たな指標をもたらすのは間違いない。
他にもここ1、2ヶ月はニューモデルラッシュで年の瀬まで、どこがデフレで大不況?といいたくなる賑やかさだが、どれも共通して言えるのは良いけれど"too muchじゃね?"ここ数ヶ月ポルシェのラインアップにはなるべく触れて、911(タイプ991)はやっぱり良い。
何が良いってベースのカレラ3.4ℓ 350ps7速MTが3.8ℓ400psのカレラSよりフィット感で優る。パナメーラのGTS430psのバカでかさとくそ力の使い切れない消化不良もそうだが、なんとかに糸目をつけない緩い感性の人でないかぎり、あの優越感を満喫するのは難しいのではないだろうか。
みたいなね、ケチをつけると言うのではなくて、取り敢えず言うべきことは言う、まず疑いの目を投じ、批評精神をひるませることなく、忌憚のないところから話を始める。それをスマートなエンターテインメントにできるか、が腕の見せ所? しかし、ミラージュは日本で販売するメリットがあるのだろうか。

また長くなっちゃった。何だかんだ書くことはあるわけで、あちこち書くスペースを埋めて行けば気も鎮まるやもしれぬ。エンジンが掛かったので締め切りはなんとかなるだろう。
ということで今宵はこの辺で。
Posted at 2012/11/23 00:53:03 | |
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