
この頃筆が重い。もともとスラスラ書けるほうではなくて、考えながら(自分の書いたものを読みながら)書く。振り返ってみると35年もよく続いたものだと、我がことながら感心する。文才は怪しいが、続ける才能だけはあったようだ。
そもそもが明日のF1パイロットを夢見た走り屋で、デスクワークに向くとは露も思わない。頭脳労働よりもからだで生きる他ない人間だと決めていた。人が右に行くなら、左に行く。Me too conceptは苦手で、人とは違う道を選ぶ癖がある。
協調性がないのではなくて、競争相手が少ないほうがチャンスが多いと考える。学生時分はサッカー選手だからね、目的を共有できるチームワークは好きだし、むしろ得意なほうだとさえ思っている。凸凹道を歩き続ける中で、皆が口を揃えることの怪しさに気がついた。一人くらい違ったアプローチで山に登る奴がいても誰も困らないし、自分の頭で考えたことのほうが誰かの意見に寄らば大樹より責任が持てる。
多様性が問われる最近では、通り一遍よりも咄嗟の機転が利くへそ曲がりのほうがリアリティを共有しやすい。できることなら皆に好かれたいけれど、曲げて媚を売るのも面倒くさい。間違えることを恐れ、無謬性に囚われてまことしやかな嘘をつく。
国の行政官僚を筆頭に責任逃れのリスク負わずが賢さの象徴の如くもてはやされる。できることなら間違いや失敗はないに越したことはないが、分かっちゃいるけど止められないのが人間さ。しくじったら正す、迷惑かけたら謝る。それでいいんじゃない?
自分で考えて、厄介な己のからだを運んで動き回る。しくじる頻度は鰻登りであり、いい年をして未だに世界のあちこちで失敗を繰り返している。しかしこの目と身体で見聞きしたことは、僕の中では完全にリアルだ。誰にでも共有できる普遍性があるかといえば、かなり厳しいが、"そういうこともあるかもね"のレベルでの共感は得られるだろう。
話がどんどん暗く深く重くなっていますが、そもそもこんなことを書こうと思ったわけではありません。文章はナマモノでありイキモノだからこうなっちゃった。
ここでメディア論を展開するとさらに難しい状況に陥るので止めますが、多数による意見調整が避けられないマスメディアでは余程練達のプロが心して掛からないと個人や情報源そのものが発信ツールを手にいた現代ではビジネスモデルとして難しい。
ここから先は個人プログDRIVING JOURNALやまぐまぐ!のメルマガ『クルマの心』で書こうと思いますが、まずはご無沙汰しちゃった親愛なるみんカラ読者の皆さんに近況報告まで、ということで。
ここ数カ月の時代の動きは正直言ってよく読めません。言えることは、時代は本当に大きく動いている。成長から成熟へのプロセスに入ったという話は、我が身と重なるところもありますが、時代の分水嶺でさあどっち?まさに舵が切られようとしている実感があります。
クルマで近年にない衝撃を受けたのが、昨年の11月LAショー取材のついでに現地試乗会に飛び入りしたテスラ(TESLA)モデルS。いろいろ言われるベンチャーの新作は、スタイリング、パッケージング、ハンドリングという自動車の商品性を決定づける3要素をまったく新しいプラットフォーム、モージュール化したEVアーキテクチャーで事も無げに満たして、自動車の形をしたまったく別の乗り物という情報体験をもたらした。時代を変えるのは、このような常識から外れた魅力的な存在なのかもしれません。
NAIAS(北米国際自動車ショー)いわゆるデトロイトショー2013は、何となく景気が良くなったような……でもまだ安心するのは早い……年末の総選挙からアベノミクスによる追い風が吹く状況によく似た、何かもぞもぞした心持ちになる雰囲気が漂っていました。
日本のトップ3はそれぞれ本体とプレミアムブランドでワールドプレミアを行い、それぞれに勢いが戻ってきた感じ。デトロイト3もそれぞれの持ち味を出してリーマンショックからたったの5年たらずでカムバックした感じ。ジャーマン3もEUのバブル崩壊にも似た不況感を呑み込んでの明るいブース演出で突っ張っていました。
印象的だったのはメイン会場から離れたジョールイスアリーナで昨年に続いてプレスカンファレンスを催したフォード。いつものCOBOアリーナが改修工事中であることを受けての場所替えですが、ここで見せたのはフォードの屋台骨を支える商用車。トランジット、コネクトにドル箱F150の時期型アトラスコンセプトという地味なモデル群を大掛かりな演出で魅せた。大勢のプレスが詰めかけましたが、日本のプレス陣はあまり関心がなかったようです。

ここで僕が注目したのは広い広いアリーナ席の一角に設けられた”特別席”。シートバックに貼られた紙を見て唸りました。『Bloggers』いわゆるプレスの人々とは毛色の違う若者(だけではありませんが)が、既存メディアとは別格の扱いでポジションを得ている。
再販制度に護られた新聞雑誌などの出版メディアや免許事業者として独占的なポジションを得、それぞれがクロスオーナーシップという先進国でも稀な仕組みで既得権益を握っている日本の状況ではあり得ない光景。
そういえばレクサスのプレスカンファレンスの直後、ステージにカメラマンが殺到して画撮りに勤しむ中、iPad2を動画撮影モードにして自らリポートを喋りながら新型LEXUS ISに迫るティーンエイジャーと思えるほど若い女の子の姿を見ました。ああいう人の中から次代のスターが生れるのかも。そういう生き方に日本の若者のな誰かが気づいてくれたら、この国のクルマの情報空間も変わるかも。
20日に発売のdriver誌で、日本の自動車シーンの変化を象徴するクラウンをはじめ、アテンザ、BMW、ATS、FUGA、北米のアコード、アバロンHV、アルティマ……セダンを中心に30ページほど書きました。
トヨタを初めメーカーが変わろうとしている。だったらこっちもね、ということでピンクのクラウンにタキシードで臨みました。できることならかっこ良く。いやいやそれはダサいでしょう? かもしれませんが、気持ぐらいは前に出さないと駄目です。

多くの評者が絶賛のMB Aクラス。これは批評の対象として扱わないと。日本のバブル期に登場したイケイケのクルマ作りと重なる禁じ手でしょ? あれは。その後の展開も歴史は繰り返すということになるのでは。世界のプレミアムブランドであることを意識しすぎて、奇妙な子供っぽさが際立つ。クールに受けて立たないと、判断を誤る可能性大ではないだろうか。
Posted at 2013/02/16 01:15:52 | |
トラックバック(0) | 日記