今回のスカイラインのエンジンオーバーホールは、写真の様に異常燃焼の結果首振りでスカート部がシリンダーに当たったピストン及び摩耗を過ぎて完全に削れたコンロッドメタルが原因で行うことになったモノです。
遡ること2年前以上前の事ですが、メタルの打音が発症しはじめた事で気が付き、その1年後位に本庄サーキット走行の帰りのコンビニで停車中に突然エンジンの振動が始まった事が異常発生を確信した決定打となりました。
普段入庫している埼玉のディーラーで見て貰うも全く手に負えない感じだったので(街のクルマ屋ならそんなモノでしょう)、以前サスペンションリフレッシュを行った
日産プリンス東京(現、日産東京)のモータースポーツ室でエンジンチェックを実施。
その時は可能性の1つとしてタペット調整を行ってみたのですが、作業完了後にバルブ側では無く、メタルの異常が確定。振動に関してはその時点では不明でした。
このまま廃車にする気は全く起きませんでしたが、エンジンオーバーホールと関連修理費用は相応の金額が発生することから相当悩みました。(正直、普通に新車に買い換えられる金額がかかります。)
でも、やはり今後もER34に乗り続けたかったので、モータースポーツ室の独自メニューであるプレシャスパッケージ(東名パワードによるオーバーホール作業を中心に作業内容をパッケージ化したもの)でのエンジンオーバーホールを実施して修理することにしました。
しかしプレシャスパッケージによる作業は、その当時で約1年の作業待ち状態になっており、その間クルマは自宅周辺の日常用途で使用する程度ならば可能との事でしたので、サーキット走行と長距離走行を厳禁とする条件で乗りながら待つ状態でした。
因みに、現在のプレシャスパッケージの待ち期間は1年以上との事です。
そして作業申込みから約10ヶ月後に連絡が来て、予算に怯えつつ(苦笑)令和3年6月にモータースポーツ室へ入庫しました。(写真の多くはモータースポーツ室での作業中風景を撮影したものを提供頂き、その中から一部使用させて頂いております。)
入庫後、エンジンを降ろした時点で発見されたエンジン以外の不具合箇所や、事前に追加作業をお願いしていた点について早速連絡が来ました。
(1) インテークマニホールドの水ラインコネクタが腐食して要交換。なお、新品の部品在庫は残り1個で、その後の再生産は未定。(凄い高かったけど当然発注した)
(2) かつてパワステの高圧パイプを修理交換した際、取付け時の取り回しが誤っていたので直すが、パイプは再使用不可である。なお新品部品の在庫は普通にあり。
(3) ターボチャージャは交換を強く推奨。前期用の樹脂インペラタイプ及び後期AT用のアルミ2枚インペラタイプ共に新品在庫あり。
以前リビルトエンジンに載せ替えた時に後期AT用のタービン本体(リビルト品)に交換していました(アクチュエータは未交換)が、今回安全を取って新品のアルミインペラタイプに交換。
(4) ミッション本体は日常でも変速操作がかなり渋くなっていたので交換又はオーバーホールをお願いしましたが、部品はバックオーダー状態であったものの、ダメ元で発注したた何故か翌日に新品部品が店舗に届いたとの事。(勿論新品で交換)
これらの発注関係を済ませた後に、モータースポーツ室から東名パワードにエンジン搬送されました。搬送後のエンジン再使用可否連絡にドキドキしていた所、想像の斜め上を行くエンジン状態の連絡が「郵送で」来ました。(この時だけメールではなく、紙で連絡が来ました。健康診断と同じで、厚手の封筒で来る時ってロクな事が無い気が・汗)
(1) エンジンが異常燃焼を起こし、ピストン、シリンダーヘッド共に溶解が発生。また、ピストンとシリンダーはピストンの首振りによる傷多数。ブロックは元々ボーリングし、ピストンも鍛造ピストンに交換するので良いが、ヘッドは再使用不可。
(2) コンロッドメタルの損傷多数で、クランクシャフトにも損傷があり、メタルは元々強化メタルに交換予定であったので良いが、クランクシャフトは研磨限界を超えているため再使用不可。
(3) エンジン腰下ブロックの面研を行ったらクラックが発生している。基本、ブロック交換。
この様に交換が必要な大物部品が発生(と言うよりヘッドカバーとオイルパン程度しか再使用できない)した訳ですが、何しろヘッド・クランクシャフト・腰下ブロックの何れも新品部品が製廃で入手不可。
そこでリビルトエンジンをお店の方で探すも、以前ならばRB25DETエンジンならば普通に出てきたのに、ディーラー取引関連会社の在庫は一切なし。
ならばと中古エンジンを探すも、これまた同じ状況で、ヤフオクで見てみても多少は出物はあるが、RB25DETのFR用NEOモデル(つまりはER34ターボ用)は特に価格が異常に高騰していました。
モータースポーツ室から連絡があり自分でも中古のRB25DETを探してみましたが、確かにFR用のNEOモデルは出物も少ないし、中には初期保証も無いのに100万以上の値付けをしているモノまで普通に出回っています。
何れにしても初期保証が確実なエンジン以外は手を出さない方が良さそうなので、エンジン確保は難航しました。
その中で、価格的に及第点なFR用の中古NEOエンジンを夏頃に落札できた(保証付き)ので、落札後現物は直接東名パワードに送付して貰いましたが、そのエンジンはクランクシャフトのガタがある等の、開けるまでも無く使用不可と判断される機体でした。
(出品者への返品に当たっては、東名パワード様に写真と詳細な説明文を出して頂く等の多大なるご協力を頂きました。この時ほど「日産プリンス」とか「東名パワード」とか、企業名の信頼性って本当に大きいんだなと強く感じました。)
改めて次のエンジンを探し始めましたが、個人・ショップ関係問わず本当にER34用のエンジンが市場から無くなっている事にびっくりしました。(その節はお手数をお掛けしました皆様、有り難うございました。)
ヤフオクでも、R33等用の非NEOや4WD用のRB25DETは多少入手し易い状況ですが、それらは基本的にFRのER34にポンと搭載することは不可。
オイルパンの4駆機構を殺す加工を行うことも視野に入れて、東名パワードで指定してくれた後期ステージア4WD用のエンジンを落札して、結果的にオイルパン加工は行わずに、ER34用エンジンのパーツとニコイチすることで作業続行することになりました。
※ステージア用エンジンはヘッドとクランクシャフトを使用。自分のエンジンは腰下ブロックにクラックがあるものの再使用が可能と判断して再使用。オイルパンはER34エンジン用のものを再使用しました。(ピストンとコンロッドは東名の鍛造を使用)
ステージアのエンジンが東名に到着してから作業完了まで約1ヶ月。バルブ加工やバランス取り等も実施したプレシャス・ニコイチエンジンが東名パワードから戻って来てくれました。
あまりのエンジンダメージの大きさや、中古エンジンの供給状態から一時はどうなる事かと思いましたが、作業が完了して本当に良かったです。
あと、今回作業全般を見通して感じたのは、エンジンオーバーホール作業が高額になるのは、普通、エンジンのみの作業で済まないからですね。
あちらこちら細かい故障や劣化が発生しており、作業後に早々発生しそうな不具合を予防するためにも、付随作業と部品が多数必要になります。
今回の作業では、オルタネータをリビルド品に交換して、プーリー等も一式全部交換しています。
純正オプションのオイルクーラー用の取り付けブラケットも、以前リビルトに交換した時は再装着のみでしたが、今回はブラケットにブラストをかけて頂けたんですかね?ピカピカになっていました。
先に書きました、ターボチャージャーはアクチュエータも含めて新品に交換。
以前、吸気側インペラの樹脂製羽根が割れて交換したのですが、リビルト品を発注する際に中期型の型番をネットで調べて調達をお願いし、実は本当にアルミ羽根の製品が来たのか自信が無かったのですが、今回目視でアルミ製羽根であることが確認できました。
当時の自分、調べるの頑張った!
排気側のタコ足は、以前エンジン交換作業をした時は変形して再使用できませんでしたが、今回再使用できた様です。また、タービンアウトレットは今回も再使用。熱が入って相当焼けていますが、かなりこの部品は頑丈なんですね。
遮熱板関係はさび取りと耐熱塗装までして頂けたようです。何気に嬉しいですね。
作業前の不具合は特に無かったと思いますが、セルモーターをリビルド品に予防交換しています。
地味に劣化してきているパーツですので、余計なトラブルを回避する目的で。
エンジンを戻す前のボディチェックで、やはりステアリングブーツの破けが発生していたそうです。
過去にステアリングラックを一度交換していますが、それも10年近く前の話ですしね。(自分的にはつい最近の事のように思えますが。)
なお、ホース類は可能な限り新品に交換して貰っています。
エンジン搭載前のエンジンルーム。フレームは洗浄&塗装して貰えた様です。勿論エンジン&ミッションマウントは純正新品に交換しています。
エンジンルームも全塗装するとさび防止の面で良いのかも知れませんが、全部品取り外しなので作業工賃が跳ね上がりそうですね(汗)
半年ぶりにエンジンが搭載されました。心臓さん、お帰りなさい!
因みに、車輌は半年間倉庫に置きっぱなしでしたので、タイヤは見事にフラットスポットが出来ました。まだ新しいタイヤなのに(涙)
エンジンが搭載されたら、次はトランスミッション搭載です。
トランスミッションはオーバーホールになるだろうなと思っていましたが、まさかの新品交換が出来て自分でもビックリです。
新品部品が手に入る内は、可能な限りオーバーホールより新品の方が間違いないそうですので。
なお、交換前のミッションは新車の時から2速⇒1速が入りにくいクセがありましたが、新ミッションは5速⇒4速(と言うよりニュートラル)に引っかかるクセがあります。逆に1速にはスコスコ入り易いです。
ミッションみたいなギヤの塊の機械モノって、個体によってこんなにクセの違いが出る物なんですね。新たな発見があって面白いです。
クラッチは、前回リビルトエンジンに交換した際は新品の純正クラッチに交換しましたが、今回はニスモのカッパーミックス(シングル)と軽量フライホイールがセットになったキット品に交換しています。
強化クラッチは生まれて初めて使いましたが、今時の製品の踏力は純正と全く変わらないのですね。ただ、繋がり部分は純正よりも少し神経を使う様になりました。(遊びが少なくて突然繋がる感じになった)
クラッチマスターシリンダーは新品に交換。併せてクラッチホースも新車から未交換だったため、ニスモのステンメッシュに交換しています。
そう言えば、ブレーキホースは遙か昔にステンメッシュに交換していますが、耐用年数ってどうなんでしょうね?
1年近く前に燃料ポンプの大幅値上げがありましたが、モータースポーツ室で値上げ前のニスモ燃料ポンプの在庫を保有していたので、改訂前価格で交換して頂きました。
ポンプ交換は良いのですが、燃料タンク本体に繋がるホースも本当は交換したいんですよね。アレは劣化が怖いのですが、燃料タンクを下ろす必要があるので中々作業する機会がありません。
エンジン等を搭載した後に、イグニッションコイル(純正)と各種センサー類も予防を兼ねて新品に交換して装着します。
交換したのは、クランク角センサー・O2センサー・ノックセンサー・エアフローメーター
センサー類は大分価格が上がりましたが、まだ部品が入手できるので助かります。
全て組み上がった後の動作試験を行う中で、まさかのラジエータ詰まりを発見。もしかすると大分前から水の流れが悪かったのかも?という事でしたが、当方の希望でアルミ二層式タイプをチョイス。
ところが調べてみると、社外品でER34に適合する製品が今は本当に少なくなっていてビックリ。(少ないと言うよりも殆ど残っていないと言っても過言では(汗))
モータースポーツ室で調べて頂き、辛うじてコーヨー製のタイプFと言う製品がまだ販売していたので、そちらを追加で調達。
交換前に使っていたのはアペックスのアルミ三層でしたので、少し鼻先が軽くなることが期待出来るため、サーキットでの回頭性が上がるのかか今から楽しみ!!???
実は最後の最後まで導入を悩んだのですが、これまで長らく使用していた車高調(オーリンズPCV)が相当固着していた感じがしており、乗り心地がガツガツになっていましたので、オーバーホールを検討していました。
ただ、割と最近ER34用のオーリンズDFVモデルがラインナップに正式に加わり、既に使用していたPCVもオーバーホールを2回行っていますので、思い切ってオーリンズDFVを新調することにしました。
エンジンが快適になったのに、乗り心地がアレだと嬉しさも半分以下&家族からの不満も出まくりですからね。(実際、スプリングの異音も含めて不評だった・汗)
なんと言っても現行モデルのDFV様ですので、サーキットでの接地性の向上に期待が膨らみまくります!
改めて作業内容を見直してみると、相当濃い作業内容になりました。
ただ、全てクルマの外から見えない場所ばかりの作業であり、見た目的には何も変わっていないのが少々残念な所ですが(苦笑)
現在はエンジン2,000回転縛り走行を行っており、併せてミッションとタービン及びサスペンションの馴らしも同時進行中です。
先にエンジン馴らしを優先していますので、暫くは高速道路での家族旅行の足として活躍して貰おうかと思っています。
このままER34を街乗り専用にして余生を送って貰うのもアリかも知れませんが、作業内容的にはエンジンもサスペンションも完全にサーキット指向ですね。
取り敢えずER34でのサーキット走行は、2022年の年末辺りに照準を合わせて仕上げてゆきたいと思います。(タイヤも買わなきゃ)
なお、コレを書いている時点で、まだ150㎞程度しか走っていませんが、エンジンは非常に快適です。ミッションは渋さがありますがギヤの入りは快調です。(やはり以前のミッションは入りが悪かったので劣化が進んでいたのだと痛感しました。)
納車後に早速エアコン操作部の自照式ボタンの一部ランプが切れたりして(涙)今後もプチトラブルの予感はありますが、取り敢えず絶好調です。
これであと10年以上は乗れるハズですので、大事に維持してゆきたいと思います。
(盗難許すまじ)
しかし、ER34でのサーキットが減ってくると、車種は何でも良いのでサーキット用の中古車が別に欲しくなりますね(笑)
昔でしたらかつてサーキット用に持っていたS13の様なモノが簡単・格安で手に入ったのでしょうが、今の時代は難しいでしょうね。
あ、でもグレードを問わなければ維持費の安い軽やコンパクトでも遊べるのがあるかも知れないですね。(※あまり具体的に考えない様に。)