
アウディ・プロローグ・コンセプト
2014.11.27
最近のニュースから
以下引用
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現行のフォルクスワーゲン・パサートやゴルフのデザインを担当したマーク・リヒト氏は、その
経歴からも、クリーンで先進的なデザインにおいて彼の右に出る者はいないと言われている。
そんな彼が引き受けた次なる仕事は、VW傘下のアウディの次期モデルたちのデザイン。新た
なデザイン部門のボスとなったリヒト氏は、最新のプロローグ・コンセプトカーにアウディのこれ
からの方向性を諷示した。
デザインが着手されたのは今年の4月。彼がアウディに移籍しれ間もない頃だ。既にある高級車
レンジ用のメカニカル・レイアウトを流用するかたちで、すらりとした2ドア・クーペの構想が浮きあ
がったのだった。
アウディ社内では少し前から話が進められている次期A6、A7、A8に用いられるデザイン言語が
、このプロローグにたっぷりと反映されている点は、ぜひとも覚えておく必要がある。
さらに大事なのは、すでに耳目を集めているアウディA9のデザインのヒントにもなるという点。ご
存じない読者のために、まずはA9の説明から。
A9とは、後に発表される4代目A8と機械的パッケージを共有し、ドイツはネッカーズルム工場で
組み立てられる予定の、メルセデス・ベンツSクラス・クーペに対抗するフラッグシップ・クーペの
ことである。巨大なアルミニウム製ボディをもつこのクルマは2017年に正式なデビューを控えて
いる。
そしてプロローグは、つい先日、ロサンゼルス・モーターショーで華やかなデビューを飾った。わ
れわれは、まさにそのモデルを走らせる許可を得て、ビバリー・ヒルズ・ホテルへと向かったのだ。
燦々と輝く太陽のしたで待ち構えるプロローグは、こちらがたじろいてしまうほどに壮麗に見えた。
フロントにドンと腰を据えるシングル-フレーム・グリル、鋭利なエッジの立ったヘッドライトに、ピ
ンと引き締まったサーフェス。低く、力強く隆起したショルダー・ライン、ほのかに折り目のついた
脇腹のライン、伝統を感じるホイール・アーチに細かやな技巧が凝らされたテール・ランプ。目線
を集めないわけがないのだ。新しい試みがたくさん盛り込まれているけれど、ひと目でアウディ
とわかる不思議な存在感がそこにあり、これこそが後にデビューするモデルのヒントとなってい
るのだ。
全長5100mm、全幅1950mm、全高1390mmのプロローグは、現行A8と全幅こそ同じものの、全
長は40mm短く、全高は70mm低いという。R&D部門のボス、ウルリッヒ・ハッケンバーグ氏いわく
、このディメンションはA9のプロダクションカーに受け継がれるとのことだ。
大きく繰り抜かれたホイールハウスを、わずかな隙間しか残さずに22インチのホイールが占拠
する。これがまた並外れた横幅と絶妙にバランスし、おどろくほど堂々として見える。
しかし、そうであるがゆえに、つまり新しすぎ、高価すぎ、希少すぎるがゆえに、こちらが萎縮し
てしまったのも事実。あるいはアウディから派遣されたプロローグのボディガードが、執拗に私
のブルージーンズの染料が純白なシートに色移りしないかを気にしすぎていたからなのかもし
れないけれど……。
ドアの先端に手をかざせば、センサーが感知して自動的にドアが開き、運転席へ招き入れてく
れる。キャビンに目をやれば、独立した4座と、もはや近未来の世界ともいえる斬新なデザイン
を見ることができる。広範囲にわたって、タッチ-スワイプ・ファンクションが適合され、数あるディ
スプレイが驚くほど整然と並べられているからだ。
キャビンの表面の大部分はレザー、研磨されたアルミニウム、ウッドで覆われている。扱い方を
手短に教わり、幅広いけれどサポートが豊富なドライバーズシートに身をおさめる。シートから
ステアリングまで、調整はすべて電動式になっており、もちろん極めてスポーティなポジションで
ある。
メーター部分には有機ELディスプレイがはめ込まれ、その他にも2つの同スクリーンが、しみひと
つないダッシュボードに設えられている。先進性を醸し出すだけではなく、横方向の広さを感じさ
せるアクセントにもなっているようだ。ディスプレイをスワイプすることにより、ドライバー側の表示
情報と、フロント・パッセンジャーの表示情報を簡単に交換することもできる。
4枚目の有機ELディスプレイはうっとりするようなカーブを描きながら、センター・コンソールの下
側に鎮座する。アウディによると、世界でたった10枚しかないうちのひとつなのだそうだ。普段は
寝かせられており、ボタンを押すことにより物理的に起き上がり、インフォテインメント・システム
やエアコン、その他諸々の機能を制御できるようになる。そしてそれらすべての操作は両腕の届
く範囲内で完結する。
センター・コンソール上の、アルミ削り出しのボタンを押し込むと即座にエンジンが掛かる。この
時の音量はなかなかのもので、回転が落ち着くまではゴロゴロといった感じの低い轟音があた
りに響く。
ブレーキを踏めば、T字型のシフトレバーをD(ドライブ)に入れてください、とのメッセージ。カチリ
とDレンジにセットすればいよいよ出発だ。
低いボンネットの下には、既におなじみの4.0ℓツイン-ターボV8ガソリン・エンジンがおさまる。とい
うことは、次期A8や、さらにスポーティなA9にも同じエンジンが組み合わされることになる可能性
は十分にある。バンク角90°のこのユニットは、605psと71.3kg-mを発生するように設定されてお
り、フル-スロットル時(オーバーブースト)は76.5kg-mを発生すると予想される。
くらりとしてしまいそうなパワーは、これまたおなじみの8速トルコンATと、リアにトルク・ベクトリン
グ・ファンクションを組み合わせたアウディ製トルク感応式4WDシステムを介して路面に伝わる。
ガスペダルの踏力が軽い場合に、8本のシリンダーのうち4本を休止させるシリンダー-オン-デマ
ンドも採用しており、ガソリンの消費効率をあげている。また、アウディの内部関係者が漏らした、
次期A8/A9に採用される予定の48Vエレクトリック・システムもプロローグに組み合わされている
のだそうだ。
このあたらしい48Vのシステムはベルト・スターター・ジェネレーターを採用しており、V8ユニットに
ハイブリッドの要素をもたせ、ブレーキングによって12kWまでエネルギー回生を行う仕組みとなる。
したがってプロローグを製品化した際には、おおよそ11.7km/ℓの燃費と200g/kmのCO2排出量に
なることが予想されている。
乗ったうえでの第一印象は、いい意味でも悪い意味でもコンセプトカーらしいな、といったところ。
車高も展示品らしく極めて低いため、どう見ても高価そうなカーボン製フロント・スプリッターをキ
ズ物にしないよう慎重にホテル出口の段差を踏み越えた。
低回転域ではややエンジンのレスポンスに鈍さがあるように感じる。また、エンジン周辺に熱が
こもりやすいなどのマイナーな問題もわずかながらだが見て取れた。
ただしペダルの踏み始めに生じるデッドスポットに大方慣れたあとならば、自分の思い通りの加
速を得ることができ、そこからはターボチャージャーが仕事を初め、スムーズに速度が乗り始める。
現行A8のプラットフォームに大改造を加えた結果、もはや別物と言ってもいいくらいの下半身は
次期A8/A9に採用予定で、感触としてはややソリッドな印象がある。
ホイールベースはA8のそれより50mm短縮されており、リアのマルチ-リンク・サスペンションは5
リンク式に変わっている。これにスポーティな仕立ての可変エア・スプリングが組み合わされ、最
適な車高に調整してくれる。
4輪操舵機構もついており、後輪は最大で5°まで角度を変えるとのこと。市街地などの曲がり
角が多いシチュエーションはもちろんのこと、空いた道での敏捷性も飛躍的に高まるのだそうだ。
現時点ではスタイリングを優先させ、極限まで車高が下げられているため、ホイールの上下方
向の動きは制限されている。これに拍車をかけるかのように22インチ・ホイールには285/30の
ピレリPゼロが組み合わされているため、乗らずとも、ある程度の乗り心地は想像できるはずだ。
野次馬たちの熱い視線を背に、ポンポンと上下に跳ねながらロデオ・ドライブをあとにした。
一方のステアリングに関しては褒めるべき点が多い。実にハツラツとしており、正確性も高いの
だ。ほかの電制装置と同じく、プロローグのエレクトリック・ステアリングは現行のS8から借り受
けており、後輪操舵システムと呼応して大型クーペとしては異例の最小回転直径(8.5m)を実現
している。A3のそれよりも小さいといえば、どれくらいすごいかがお分かりいただけるだろうか。
プロローグはコンセプトカーと言えども、その範疇を軽く飛び越える運動性能をもつ。速度こそ制
限されているものの、操舵には遊びがなく、自らが曲がりたがっているかのように向きを変える。
コーナリング時に不意に不安定になることもなく、常に冷静であるさまは、他のプロダクションカ
ーに匹敵する出来栄えと言っていいだろう。
さらに速度を増していけば、安定性はより高くなり、ここからはプロローグの真のキャラクターが
きらびやかに浮き上がってくることになる。
60km/h前後の速度域では ’快適’ と形容できる安定方向のマナーに徹することで、低速時に感
じていたサスペンションの瑕疵が見事になくなる。
ここからさらにガスペダルを踏み込めば、コンセプトカーによくあるデリケートさが消失し、パフォ
ーマンスカーとしてのある種の野蛮さが顔を見せるはじめる。
当初感じていた、鈍いスロットル・レスポンスも過去のものになり、V8が雄叫びた時には、メルセ
デス・ベンツSクラス・クーペの立場を危うくするほどの振る舞いへと変わる。
アウディいわく、製品化される際には車重は1980kg程度になり、0-100km/hタイムは3.7秒になる
のだそうだ。車重から想像するに、加速マナーは恐ろしいほどに獰猛であることは間違いない。
ギアボックスの変速マナーも、この時点ですでに舌を巻くレベル。ZFに由来するユニットは高い
ギアまで滑らかにかつ淡々と歩を進め、アクセルを踏み込めば即座に適切なギアまで落として
くれる。ブレーキはほかのアウディのモデルがそうであるようにオーバー-サーボな印象は否め
ないし、やや感じやすくも感じるものの、制限速度域のあいだでは十分に扱いやすいものだった。
先導してくれた警察車両がサイレンを鳴らし、前方のクルマに避けてもらったうえで思い切りアク
セルを踏み込めば、けたたましいエグゾースト・ノートとともに、それはもう気持ちいいことこのう
えない加速体験をさせてもらった。
とはいっても、プロローグの本来の立ち位置は、ロード-ゴーイング・プロトタイプではなく、スタイ
リングを提示するためのワンオフのコンセプトカーである。事実、この記事の写真に写っている
車両ができあがったのも、この取材のたった5日前のことなのだそうだ。
しかしアウディは、実際にショールームに並ぶまでにさほど長く待つ必要はないと言う。少なくと
も既存の問題が解決し、開発の着手にゴーサインが出るのは、すぐ先の話なのだそうだ。
しかしA9はさらに実用的な5ドア・ハッチバックのレイアウトを採用する予定であることから、ピラ
ーレス2ドア・クーペの製品版は別の機会でのお目見えのようだ。
何はともあれ、プロローグを間近で眺め、実際に運転した筆者は、このモデルが数々の賞を総
なめにすることを、強く確信している。
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デザインはジェントルですが、中身はスーパーカー級とアウデイーもいよいよ番数の上位を
繰り出してくるようですねー