
僕たちはレガシィを磨き続ける
富士重工業の生きる道(上)
東洋経済オンライン
最近の記事から以下引用
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「スバル」ブランドの自動車メーカー、富士重工業の快進撃が続いている。主力市場の米国は
2014年の販売台数が初めて50万台を超える見通しだ。14年夏に発売した新型「レガシィ」シリ
ーズが売り上げに大きく貢献している。
米国販売の拡大で業績もうなぎのぼり。2015年3月期は3期連続で過去最高純益を更新する見
通しだ。絶好調のスバルに死角はないのか。吉永泰之社長に直撃した。
――米国市場の好調ぶりをどう受け止めていますか。喜びなのか、それとも危機感でしょうか。
これだけスバルというブランドを買っていただけるのは喜び。ただ、やはり社内の課題として、
急成長に伴うひずみもある。物流や部品の供給体制など、今は必死になってインフラ関係を追い
つかせようとしている。私が一番強く言っているのは「とにかく安全と品質だけは何があっても
最重要だ」ということ。
需給が逼迫すると、製造部門は「ラインを止めるわけにはいかない」という気持ちになりがちだ
が、品質にちょっとでも不安があれば止める。供給が足りないことは反省すべきで、もちろん整
備していく。ただ、ここ(品質)が崩れると、根っこから崩れてしまう。
われわれの強みは前身の飛行機会社(中島飛行機)のDNAから来ている。この特徴を一言でいう
と「安心と楽しさ」。だから社内の安全基準が異様に高い。よそから言われてやったのではなく、
最初から高い。そうした中で、「ぶつからないクルマ」を作ってみたくなるわけです。
――吉永社長は常々「100万台以上は目指さない」と言ってきました。しかし今年5月に発表した
中期経営ビジョンでは、2020年の目標として「110万台+α」と掲げました。
数を追わない、という考え方は変わっていない。ただ、(外から)100万台はもう超えてしまうでし
ょうと言われ始めて、次の目標が必要になった(14年度の世界販売見通しは約91万台)。とはいえ
150万台とか、そういう数字を出すと、世の中から、そして社内から絶対に誤解される。「スバル
は数を追い出した」と。社内で勘違いされないことが一番大事。だから妙に刻んだ110万台という
数字を出した。それでも、「すぐに達成するでしょう」と言われ、「+α」というものをつけた。
なぜそう言われるのかというと、目標台数の大半、(2020年の北米の販売目標である)60万台を
占めるのが今一番伸びている北米だから。最近は、「あと1年くらいで達成できるのでは」と何度
も言われる。達成したらしたで、せっかくお客さんに買ってもらっているのに、それ以上の数字を
出しませんというわけにはいかない。
――数は追わずに、「100万台で打ち止め」ということはできないのですか?
それは現実的ではないでしょう。現在米国には621のディーラーがあって、一昔前は1店舗あたり
年間350台も売れていなかったのが、今となっては800台になっている。ディーラーの経営者からす
れば、店の規模の差はあるにしても、平均1000台は行けると考える。そこでメーカーとして「供給
しません」なんてことを言ったら、極端にいえば訴訟ものですよ。
当社として高い台数目標を掲げたことは一度もない。ただ、買っていただけるものに対する供給
責任は当然ある。今年、暦年で米国販売が50万台を超えれば、来年の全米ディーラー大会で50
万台という目標を言えるはずがない。台数を減らそうとは言わない。伸び率が小さくてもプラスの
数字。それが51万でもいい。
――少しずつでも数が増えていくことで、「スバルらしさ」が保てなくなるということはありま
せんか?
これだけ世界でスバル車に乗ってもらえる人が増えてくると、もっと増やしたくなるのが人の常。
私も元々は営業部門だったから気持ちはよく分かる。営業が欲しくなるのは、より多くの量をさ
ばけるコンパクトカーだ。しかし社内では「数を追えるクルマが必要という思考回路に入るな」
といつも言っている。スバルの個性から離れて普通になってしまうから。
今、どちらかというとニッチマーケティングをやっている。経営学で引き合いに出される「スマ
イルカーブ」では、ニッチの事業に集中して特徴を出す会社の利益率が高い。成長したくなって
商品数を増やしていくと収益性は下がり、もっと量を増やしてトヨタ自動車のような支配的地位
になれば、また利益率は高くなる。
自動車というのは今となってはほとんど成熟産業で、これからトヨタや米ゼネラル・モーターズ
(GM)のようには絶対になれない。われわれにとって量を追うのは自殺行為なんです。
――ではその個性をどのように守っていくのでしょうか。
当社ぐらいの規模の会社は、良かれ悪しかれ皆同じ戦略を取ってくるはず。「走りの楽しさ」な
んて、全員言うに決まっている。となると、スバルもマツダも言っていることが同じだという話に
必ずなる。
その中でも利益率を維持できるのか。そこからが自分たちの戦い。”旗”の立て方は、根源的
な議論を経たものなのか。実態が伴っていないと勝てない。そこでわれわれが打ち出したのが
「安心と楽しさ」。ここで突き抜けようとした。
一度、「レガシィ」を出したら、ずっと「レガシィ、レガシィ…」と言い続ける。スバルはそんな
会社です。ある意味では変化に対して弱い。世の中の変化に合わせて刷新していく力が弱い。
昔は欠点と言われたところで、社内でもみんなそう思っていた。でも、逆に特徴にしてしまえば
欠点にはならないのではないか。1つの商品を出したら、それを磨きに磨く。「僕たちは死ぬまで
ずっとレガシィを磨き続けます」って、悪くないでしょう。
亡くなった米アップルのスティーブ・ジョブズは、商品の数を増やしていないですよね。数を絞り
込み、その商品がものすごくよく考えられていれば爆発的に売れる。スバルも商品が少ないから
こそ作り込んでいるということを本当にやれば良いじゃないかと。「考え抜いた『アウトバック』
(新型SUV)です」というメッセージに、米国でも反応してもらっている。
――スバルが個性を磨くということは、ドイツ車のようなプレミアムブランドになるというわけで
もないような気がします。
自動車のブランドには、プレミアムとそうじゃないものくらいしかない。たとえば、ファッション
のブランドというのはたくさんの機軸があって、オートクチュールの高級品からスポーツ衣料まで
たくさんある。
スバルはSUV(スポーツ多目的車)や4輪駆動に特徴がある。自動車にも、たとえばもっと「スポー
ティー」なブランドがあって良いはず。あるいは、「良い道具」のような機能的な価値を訴求するブ
ランドでもいい。そこでは安全性能も重要。米国の調査機関で最高の評価もいただいている。
結局米国での支持の根っこにあるのは、安全性能の高さなんだと思う。
――現在の自動車メーカーで独自の立ち位置を築いているブランドは?
海外でいえば「ジープ」がそうでしょう。米国ですごく売れている。プレミアムというわけでは
なく、ジープはジープという独自のブランドを確立しているのではないでしょうか。
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もともと早くから年改制度を取り入れて、モデル末期が成熟したものになっていることは、スバリスト
でなくても知られている取組ですねー
だから信用が高い、アメリカで安全な車種と評価されているため、アメリカの景気や為替に大きく
影響うける体制にも見えますが、数を追わずに品質重視であることは、重要なポリシーかと