こんなにいっぱい書くことになろうとは‥‥。
これは、みんともさんとの楽しい議論としてみんともさんの記事へのコメントとして書いた内容に少し手を入れたものです。
おそらくはそこを読む人はほとんどいないと思われるため、割と一生懸命書いたのにもったいない(^o^ことから、私のブログにも前回のブログを補足するような位置付けて書き残しておこうかと思います。
まず、財政力指数(
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8A%9B%E6%8C%87%E6%95%B0)が1を超えている地方自治体はほとんどなく、0.5を切るようなところがたくさんあるのが実情です。地方自治体を破綻させるわけにはいかない(例外:夕張市)ので、国税から地方交付税という形で盛大に補填されています。地方自治体の行政サービスはそれで維持されているのが実情です。
その上で税の徴収・分配方法をどうしようかという話です。ふるさと納税がなくても、都会地域からの税収を地方に回すしかないというのがそもそもの最初の前提です。
(まあ地方自治体が黒字になるというのはおかしな話なので、財政力指数が1を超える方がおかしいという見立てもできますが、ひとまずそれは置いておきます。)
都道府県単位でみると、1を超えているのは東京都だけだったりします。
市町村単位だとはまたちょっと違います。いろいろな事情で潤っているところがあります。
ここ(https://www.soumu.go.jp/iken/shihyo_ichiran.html)を見ると現状がわかり、いろいろ想像されて面白いです。
さて、個人ならば、所得税は累進課税されますので、より多く稼ぐ人から多く集めて全体で配分する仕組みになっています。
一方で地方自治体単位を一つの会計単位と見立ててみたらどうでしょうか? 元々の地方税の仕組みにそのようなinput(収入)段階で是正する仕組みはありません。output(支出)段階で足りない分を補填する仕組みしかありません(地方交付税、それももちろんジャブジャブはもらえません)。
ふるさと納税のような地方税の割り当て方の変更は、この入力段階での税配分を是正しようという考えに立つものであると思っています。
税金を絡めずに「地場産品紹介サイト」を立ち上げればいいというご意見も伺いました。
そういう特別な仕掛けの前に、市場原理に則って出来上がった姿として、全国津々浦々の地場産品をネットで買うことは、現状でもだいぶ以前からできるようになっていると思います。それを越えて、地域の産業振興を図る、あるいは地域間での競争を促進するには、市場原理のみに頼らない追加の仕掛けが必要となると思います。すなわち、本来の経済性を越えてそういうことをやることになるわけですからそこに税金を投入して運営するしかないと思います。それをしないならば、何もしない現状と一緒です。
そして、政府のヘタクソがやると、効果(=地方の産業が促進できたか)の割に費用がかかることにもなりそうに思います。やってみないとわかりませんが、本当のところはどちらが税金の無駄になるのかわからない気がします。同時に透明性もなくなって、無駄かどうかすらわからなくなるだけのような気もします。知らぬが仏というやつになるだけということです。
例えば現状でも、地方自治体のアンテナショップ(https://www.jcrd.jp/antennashop/)なんかもあるわけですが、税金利用効率がいいかどうかは疑問ですし、それが故にほとんどの地方自治体でそういうことはやっていないのだと思います。
TVをつけると、ふるさと納税関連の仲介サイト(”さとふる” や ”ふるなび” など)のCMがガンガン流れていて、特定の企業の利益に税金が流れているのが許せないという話も伺いました。
これは確かに癪に障ります。ただし、仲介サイトへの配分率を知らないのでなんとも言えませんが、政府がヘタクソな運営をするよりも効率的に運営できている気がしなくもないです。規模の経済も働いているから宣伝が目立つのかもしれません。ふるなびもさとふるも東京の企業なので、ふるさと納税を進めることが、多少なりとも東京の雇用と東京の税収を増やす構図になっているのは皮肉ではあります。
また、政府はほぼすべての事業を民間業者に請け負わせますし、民間業者がそこから利益を上げることも自然なことです。そして、できるかできないかで企業が特定されることも必然です(架橋工事等に同じ)。なので問題は、それが公共性を鑑みて過剰になっていないかというところのチェックだと思います。これについては、私は情報を持ち合わせてはいないので良くわかりません。
地方振興をその他の方法で地方にもっとやらせるように仕向けるとするならば、それにも当然費用は掛かるわけで、結局はそれを地方交付税なりで補填することになります。その中身の是非・妥当性・規模を仕分けするのも大変で、お役所の仕事を増やす(=税金投入)ことにもなりかねません。
逆に何もさせない(地方が淘汰されるに任せる)というのも一つの手ですが、地方を盛り上げる施策を考えなくてもいいのか(地方自治体自らにさらに考えるように仕向けなくてもいいのか)ということです。赤字なくらいなんだから余計なことはせず、最低限のサービスだけ提供しておけということです。
私は地方財政を単に補填しているだけではなく、地方には富を生む可能性のある取り組みをして欲しいと思います。
地方への配分の決定方法が、地場産品(のみ)に頼った競争になっているというのは確かにイマイチだと私も思います(なので、地方が元気になる地場産業に対して投資できるようにして欲しいと前回書きました)。一方で、何某かの方法で地域間での競争の原理を入れないと、地方自治体の言いっぱなしを補填するような無駄は当然できないでしょうし、コンペさせるにも、優劣をどうやって判断し原資配分するのかという問題が残ります。
結果、他にうまい方法が実現できていないのだと捉えています。
"ふるさと納税"に「応援」や「寄付」という意味合いはないというご指摘もありましたが、まず、「寄付」は多分に法律用語で、納税とはいいにくいから寄付と呼んでいるレトリックだと思います。寄付と言いつつ(2000円を除き)限度額以内ならば、100%控除なので"志(≒狭義の寄付)"の要素はありません。したがって、あくまで納税先の選択制度です。
そして、「応援」は結果だと思います。元々特定の地域に応援したいモチベーションがある場合もあるでしょうが、納税先を選んだ結果が応援となるだけの制度です。総務省のページにあるふるさと納税の三大理念に地方間競争を謳っていることから、地方自治体は応援されたくなるようにしろという制度であることは明白だと思います。今はその判断材料に返礼品しかないということにはなります。
おかみによる押し並べての支援の仕組みはすでにあるので、もらう側も自助努力して金を集めよという建付けなわけです。その努力の幅が狭いとも思いますが、かといって何も仕掛けをしない方が優れているとも思えません。
そして、前回のブログでも最後の方に載せたわかりやすさを示すためのこの図が、実際の狙いを実は示していないのが問題だとも思います。私自身もこの図のわかりやすさを使ったので、その点は同罪かも知れませんが。
もしもこの図の是正がやりたいことならば、三大理念に書かれているようにはなりませんし、住民票の異動を基に課税すればいいだけのことです。第一の意義が、納税者が選択できる制度だということです。
ライフ・サイクル税制論ではないというのがこの税制の基本の立場のはずです。ライフ・サイクル税制論が税制の法的論拠にはなり得ないことは早い段階から議論されています(社会通念上はあってもいいけど‥‥というスタンス)。
また"ふるさと"という日本語の言葉の意味が本来の狙いを歪めているとも思います。情緒的にその言葉を残したいという声の大きい人がいたのかもしれませんが、それが仕組みの理解を阻害していると思います。そもそも、ふるさとなんてものは選択するものではなく、単なるファクトです。それを新たに決めてもいいとか曖昧なことを言い出すから、逆にわかりにくくなるのです。どこでもいいから好きなところを選べるというシンプルなルールなだけです。
個人ならば、稼げば稼ぐほど累進課税のために自分で自由には行使できなくなります。企業においても、累進はありませんが額としては増えていき、再配分されます。自身の努力で稼ぐ場合ですらそういう仕組みを入れているわけです。一方で、地方自治体の収入である地方税は入る分だけ純増です。地方自治体自身の努力というよりも日本全体の地域の構造的特性に基づいて多い少ないが決まっている要素が多いにも関わらずです。収入が多いところから少ないところに地方税の配分の仕方を変えることは、そんなに不自然なことではないと思います。
そして、財政的に厳しいところに配分する仕組みなので、地方でももらえないところはあります。現に私の住む宇都宮市はもらえないところです(以前にもらう側だった期間はあります)。逆に超立派な都会でも、財政的に超厳しい京都市はもらえる側だったりします。京都市の財政が苦しいのは、自らのミスのせいも大きいようですが、そんなことを言ってもなんとかなるわけもなく、単純支援のみではなくこの制度もあるから自助努力による税金集めをしろということでしょう。
また、もらう側の地方なのに、他所に払う人がいるのはおかしいという話もありますが、もらう側地域間での競争を特別に制限する論拠を持つことも難しいでしょう。単純に地方自治体間で競争させるに過ぎません。もしも持ち出しがもらうよりも多いようなところがあるならば、もっと自助努力しろということでしょう。
日本の人口は減る一方なので、ゼロサムゲームどころか、マイナスサムゲームのジリ貧まっしぐらです。地方に競争させて分配に勾配を付けると共に、自然発生頼みでは起こせない振興策を推進することには意味があると思います。
もう一度:
現状のふるさと納税は、ネットショッピングの一種くらいになっているというご指摘もありますが、それはそれでひとまずはいいのだと思います。ネットショッピングとはいっても、本来のモノの対価の3倍以上のお金を払うことになるし、購入行為においてその自治体に対してお金を払った意識は十分に感じられるフローになっているので、それをきっかけに自治体のことを多少なりとも知るくらいの効果はあると思います。自治体からのメールも届きます。それにより、行ってみるかという気にもなるかもしれないし、隣の市はどうなのだろうと思うかもしれません。
お金をその地域に確実に落とす仕組みなのも、(優れてもいないですが)そんなには悪くもないかなと思います。それすら用意できないようでは、ジリ貧になるしかないということでしょう。まあそうであっても最低限の補填はするのでしょうけどね。