
万博開幕まで半年 パビリオン 45か国着工も前売券販売が課題
2024年10月13日 18時53分
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大阪・関西万博の開幕まで13日で半年です。
工事の遅れが指摘されてきた海外パビリオンの建設は、開幕に間に合うよう進められていますが、全国的な関心の低さなどから前売券の販売は低調で、課題となっています。
目次
13の企業やグループもパビリオン建設
プロデューサー 石黒教授「未来つくるきっかけに」
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13の企業やグループもパビリオン建設
プロデューサー 石黒教授「未来つくるきっかけに」
前売券の販売 目標の半分ほど
防災面の課題
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ニュース動画をNHKプラスで配信中【配信期限 :10月20日午後7時半】
およそ160の国と地域が参加する大阪・関西万博は、大阪 此花区の人工島・夢洲を会場に、来年4月13日から10月13日までの半年間、開催されます。
会場では、参加国や企業などがみずから建設する70余りのパビリオンや、世界最大級の木造建築物となる「大屋根リング」の工事がピークを迎えています。
会場のシンボルとされる「大屋根リング」は、8月に会場を囲むリングがつながり、現在はエレベーターの取り付け工事や芝生の整備などが進められ、来年2月までには完成する計画だということです。
また、工事の遅れが指摘されてきた海外パビリオンについては、独自に建設する予定の47か国のうち、博覧会協会によりますと、これまでに45か国が着工したということです。
13の企業やグループもパビリオン建設
万博には多くの企業も参画しています。
13の企業やグループがパビリオンを建設しているほか、「未来の社会」をイメージした展示や自動運転によるEV=電気自動車のバス、それに「空飛ぶクルマ」の準備も進められています。
このうち「パソナグループ」のパビリオンは、「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマを象徴する展示物として、iPS細胞から作った「ミニ心臓」を展示の中心に据える計画で、先月その試作品を公開しました。
「パナソニックホールディングス」は、会社が培ってきた人の行動や表情を解析する技術を活用し、来場者の行動や表情をもとに「蝶」をモチーフにしたグラフィックを映し出す演出を行うということです。
来年2月ごろのパビリオンの完成を前に、パナソニックホールディングスの小川理子関西渉外・万博推進担当参与は、「すごく面白い体験ができたと感じてもらって、5年たっても10年たっても思い出してもらえるような、原体験を味わってほしい」と話していました。
一方、万博で国内初めての実現を目指していた「空飛ぶクルマ」は、来場者を乗せる商用運航は見送られ、運航する4つの陣営がすべて、来場者を乗せないデモ飛行を行うことになりました。
プロデューサー 石黒教授「未来つくるきっかけに」
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博では、8人のプロデューサーが「いのち」をテーマに会場の中心部にパビリオンをつくることになっています。
そのうちの1人が、ロボット工学の第一人者として知られる大阪大学の石黒浩教授です。
教授が手がけるパビリオンでは、人間に似たロボット「アンドロイド」などの最先端の技術が、生活空間に溶け込む様子を体験してもらう予定です。
石黒教授は「順調に仕上がってきていて手応えを感じながら準備を進めています。みんなに驚いてもらえるようなパビリオンにできればいいなと思っています」と意気込みを語りました。
そして「これから50年たてば、人間らしいロボットやAIが世の中で使われることは必然で、パビリオンではそういったロボットなどを展示し、リアリティーある未来のシーンを紹介したい」と話していました。
その上で、万博を開催する意義については「未来についてみんなで考えること、そして想像力を豊かにして自分たちで未来をつくるきっかけにすることだと思います」と話していました。
前売券の販売 目標の半分ほど
一方、万博の前売券の販売状況は低調で、実施主体の博覧会協会によりますと、目標の1400万枚に対し、今月9日時点の販売実績は約714万枚と、目標の半分程度にとどまっています。
13日からは、来場する日時の予約が始まるほか、繁忙期ではない時期に予約なしで入場できる紙のチケットもコンビニなどで販売されます。
博覧会協会はPRを強化し、パビリオンの展示内容やイベント情報を積極的に公開するとしていますが、目標を達成できるかが大きな課題となっています。
認知度は上昇も、関心度は低下傾向
民間の調査では、大阪・関西万博に対する「認知度」は上昇傾向にあるものの、「関心度」は逆に下がる傾向にあります。
「三菱総合研究所」がことし4月に全国の3000人を対象に行ったアンケート調査によりますと、2025年に大阪・関西万博が開かれることを「知っている」と答えた人の割合・「認知度」は93.4%で、前回・去年10月の調査から3.8ポイント上昇しました。
地域別にみると、「京阪神圏」「その他西日本」「中京圏」「首都圏」「その他東日本」の地域で90%を上回りました。
一方で、万博に「大いに関心がある」「まあ関心がある」と答えた人の割合・「関心度」は25.6%で、前回の調査から1.9ポイント低下しました。
「京阪神圏」の関心度は40.5%だった一方で、「首都圏」の関心度は21%にとどまりました。
万博記念公園でイベント
こうした中、1970年に万博が開かれた大阪・吹田市の万博記念公園では、開幕に向けた機運を高めようと催しが開かれました。
大阪府と大阪市などが開き、主催者発表で約1万人が集まりました。
博覧会協会副会長の大阪市の横山市長や関経連=関西経済連合会の松本正義会長、大阪出身のアンミカさんが万博をテーマに語り合い、横山市長は「パビリオンの建設も順調に進んでいる。半年後には世界中の人を大阪に迎えましょう」と呼びかけました。
町工場やベンチャー企業も準備進める
大企業や海外のパビリオンに注目が集まりがちな万博ですが、地元大阪の町工場やベンチャー企業も、国内外から来場した人にアイデアや技術をアピールしようと、準備を進めています。
万博では大阪の町工場やベンチャー企業400社余りが、アイデアや独自の技術などをアピールする計画です。
このうち、履物の製造が盛んな大阪・生野区では、地元の中小メーカーが「未来のファッション」をテーマに“宙に浮く靴”の展示を目指しています。
開発の中心となっている社員40人余りの靴メーカーでは、試作品のサンダルの底と展示台にそれぞれ磁石を埋め込み、反発する力で宙に浮かせる実験を繰り返していて、これまでに6センチほど浮かせることに成功したということです。
将来的には磁石の反発を利用し、弾むような歩行感のある靴を開発したいとしています。
「リゲッタ」の高本やすお代表取締役は、「万博には、世界中からものづくりの人たちや子どもたちが来る。未来を感じて、希望があるんだと思ってもらいたい」と話していました。
一方、脱炭素に向けて、藻の一種のミドリムシから油の成分を取りだし、バイオ燃料の開発に取り組む大阪のベンチャー企業は、バイオ燃料を使ったトラックを会場内で走らせる予定です。
このベンチャー企業のミドリムシは、稲を用いた培養液を使う独自の技術で6日間で90倍に増やすことができ、光合成による培養と比べて短い期間で大量のミドリムシを培養できるのが特徴だということです。
この技術が実用化できれば、効率的にバイオ燃料を製造できるのではないかとしていて、温室効果ガスの削減に向けた日本のベンチャー企業の取り組みを、国内外にアピールしたいとしています。
RevoEnergyの中谷敏也社長は「循環型の社会を構築するために、大阪にはこういう技術があるということを世界の人に知ってもらいたい」と話していました。
防災面の課題
関西・大阪万博については、防災面の課題も浮かび上がっています。
万博の会場は、大阪湾に浮かぶ「夢洲」と呼ばれる人工島で、島へのアクセスルートがトンネルと橋の2つに限られています。
博覧会協会は
▽トンネルと橋は耐震化工事が行われ、南海トラフ巨大地震による激しい揺れにも耐えられる
▽会場はかさ上げされていて津波による浸水は想定されていない
としています。
ただ、トンネルや橋の安全確認に時間がかかれば、一時的に孤立する可能性があるとして、対策を進めています。
協会の試算では、会場内で孤立する人は最大15万人にのぼることから、協会は最大3日間、孤立する場合に備えて、大阪府と大阪市とあわせて約90万食の備蓄を準備する計画です。
一方、会場内にある「屋内の避難スペース」は今のところ約10万人分しかなく、雨風をしのげる避難スペースの確保が課題となっています。
猛暑や台風への備え
開催期間中は、猛暑への対応、台風や落雷への備えも欠かせません。
猛暑対策としては
▽パビリオンに事前予約制を導入するなど、屋外での待ち時間の削減を図る
▽無料給水スポットの設置など給水環境の整備
▽熱中症警戒アラートなどの情報提供
など複数の対策を進めることにしています。
勢力の強い台風が近づく場合、協会は「事前に閉場を決めることはありえる」としていますが、現時点では具体的な基準は決まっておらず、今後、検討する方針です。
落雷のリスクが高まった場合には、会場のシンボルとされる「大屋根リング」の上にいる人を避難させる計画ですが、具体的な判断基準や誘導の手順は今後決める予定です。
博覧会協会はこうした災害への対応について、先月公表した「防災実施計画」の中で示していますが、年内をめどにより具体的にする方針です。
協会の小澤孝文危機管理局長はNHKの取材に対し、「災害発生時のスタッフの動きや警察や消防との連携について、細かくマニュアルに落とし込む作業も行っている。会場が出来上がる来年2月から3月には現地での訓練を繰り返し、スタッフの練度を高めていく」と述べました。