凍霜対策「今年こそ」 福島県内農家、寒暖差に備え
2022年04月10日 06時15分
夜に点火する燃焼資材を準備する菊田さん。「朝は寒い日が多く油断できない」と警戒する=福島市飯坂町
日中は春らしい暖かな陽気となる中、朝晩は冷える日が続いている。昨春は甚大な凍霜被害に見舞われた本県農家。他にも東日本台風、モモせん孔病と相次ぐ自然被害で苦境が続いてきただけに「今年こそは」とさまざまな対策を講じながら被害防止へ備えを進めている。
「毎日、天気予報の最低気温とにらめっこしている」。国見町でモモやリンゴなどを栽培している阿部郁さん(31)は間もなく花を咲かせる新芽を眺めながら語る。昨年はカキが全滅した畑があり、リンゴも例年の半分しか収穫できなかった。今年は花の剪定(せんてい)をする際に芽を多めに残したほか、霧状の防霜資材をまくことなどを検討する。「今月20日くらいまでしのげれば、例年並みの収穫が見込めるはず。資材はコストがかかり全てに使うのは難しいが、リンゴとモモに重点的に対策したい」と話す。
昨年は3月の気温が高く、農作物の生育が例年より早く進行。例年より早く開花したところに4月に急激な冷え込みがあり、1980年以降2番目に大きい被害につながった。県などによると今年は気温も生育状況も平年並みで、現時点で昨年ほどの被害が発生する状況下にはないという。
それでも、各農家は対策に余念がない。国見町でモモなどを栽培する鈴木耕治さん(71)も昨年の被害は大きかったが、上部から空気を送り地表の冷たい空気を逃がす「防霜ファン」のおかげで助かった畑もあった。今年はさらにアイスガード(防霜資材)の使用も考えている。「約50年農業をしているが、去年は異常だった。朝晩の寒暖差や晩の冷え込みが怖い。今年は大丈夫であってほしい」と2年分の思いを膨らむ新芽に託す。
「やるだけのことをやって備えるしかない」。福島市飯坂町の菊田透果樹園の園主菊田透さん(70)も昨年効果があった耐寒性を高める葉面散布剤のほか、米ぬか油を入れた缶を果樹畑に何個も置き夜中に点火する対策を進めている。「サクランボ、リンゴ、モモと予断を許さない時期を迎える。苦労はあるが、自然相手なので仕方がない」と話し「日中は温度が高くなっても朝は寒い日が多いので油断できない」と気を引き締める。
南会津町の湯田清記さん(73)は「(昨年の)霜の被害が響いていなければいい」と不安を語る。28棟のビニールハウスでアスパラガスを育てているが、昨年は思いもよらぬ凍霜で例年より2~3割(約数百キロ)減の収穫量となった。南会津は寒暖差が大きいため、ビニールハウス内の温度管理に細心の注意を払っている。今年は降雪が多く、収穫時期が遅れているのも懸念材料だ。「今が(収穫の)ピークだったはず。品質の高い、おいしいアスパラを早く出荷できるようにしたい」と収穫本格化に備えて準備を進める。
福島県が危険度予測システム公開
県は昨春の凍霜害を受けた農家に対し、生産意欲を失わずに営農を継続できるよう財政支援を実施。樹勢回復のための肥料や農薬、被害予防のための燃焼資材の購入費、実のならない枝を切り取る作業にかかる経費、防霜ファン導入費などを補助した。防霜ファンなどは需要が高く、多くの農家が支援を活用して導入しているという。
新たな対策も導入されている。県農業総合センター果樹研究所が、モモやナシなどについて、発芽期から幼果期まで段階に応じた「発育ステージ」の到達日を予測するシステムと、予想気温を入力すれば発育ステージ別に凍霜害の危険度を事前に把握できるシステムを作成。ホームページ(HP)で公開し、対策につなげる。
Posted at 2022/04/10 10:26:51 | |
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