TCB 追徴課税9億円 “雇われ院長”開業は免税対象にあらず
2025年2月10日 12時50分
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全国で美容クリニックの「TCB東京中央美容外科」を展開する医療法人などが、クリニックの利益を院長がそれぞれ開業したもので個人の所得だとして税務申告させていましたが、国税局から実際は法人の利益にあたり本来、適用されない消費税納付の免除を受けていたなどと指摘され、あわせておよそ9億円の追徴課税を受けたことが関係者への取材で分かりました。
追徴課税を受けたのは、全国で「TCB東京中央美容外科」などを展開する、福島市にある医療法人社団「メディカルフロンティア」や東京、北海道などの運営法人です。
関係者によりますと、TCBグループの複数の運営法人が、美容クリニックの利益を院長がそれぞれ開業したもので個人の所得だとして税務申告させ、開業から2年間は一定の条件を満たせば消費税の納付を免除される制度の適用を受けさせていたということです。
しかし、各地の国税局が税務調査を行ったところ、法人と院長が雇用契約を結んでいるなど実際は「雇われ院長」で運営法人が税務申告すべきであり、法人の売上高が一定の額を超えているなど消費税の免除制度の対象の条件に当てはまらないと判断されたということです。
また、一部の運営法人で実体のない業務委託費を計上していたなどと認定し、仙台国税局や東京国税局などは、おととし6月までのおよそ4年間で8億円余りの申告漏れを指摘し、過少申告加算税などを含めおよそ9億円を追徴課税したということです。
取材に対し「メディカルフロンティア」は、これまでにコメントしていません。
「TCB東京中央美容外科」とは
大手美容外科グループなどが次々と全国で事業の拡大を続けるなか、国の調査では「美容外科」と掲げる診療所は2023年時点で前回2020年の調査よりおよそ4割増えて全国2000余りに上り、急速に広がりをみせています。
「TCB東京中央美容外科」は、会社のホームページなどによりますと、医療法人社団「メディカルフロンティア」などが展開する美容クリニックグループで、2014年に設立され、現在は北海道から沖縄まで100を超えるクリニックで美容診療を行っています。
また、民間の信用調査会社などによりますと、二重整形のほか男性向けにもダイエットやひげ脱毛などを手がけ、美容に関する自由診療を中心にサービスを提供し、若者を中心に利用者が増加していました。
医師の年収については「1年目から年収5000万円を上回り5年目には3億円を超す実績もある」などと、好待遇を強調し採用にも力を入れていました。
「業界最速」の急拡大の中 申告漏れ指摘
TCBグループは、全国にクリニックを次々と開設し「業界最速」の創業から8年9か月で100院に拡大したとPRする中で、今回、国税局から申告漏れを指摘されました。
問題とされたのは、開業から2年間は一定の条件を満たせば消費税の納付が免除されるという制度が、これらのクリニックの運営法人に適用されるかどうかです。
TCBグループの複数の運営法人は、それぞれの院長が開業したクリニックであり個人の所得にあたるとして、院長に税務申告をさせこの制度の適用を受けさせていました。
しかし、国税局は、院長が運営法人と雇用契約を結んでいたり、法人から指示を受けて業務を行っていたりしたなどとして、実際は「雇われ院長」でありクリニックの利益は運営法人の所得として税務申告すべきだと判断しました。
また運営法人としては、売上高が一定の額を超えているなど消費税の免税制度の適用対象となる条件に当てはまらないと判断し、免除された消費税分を追徴課税しました。
「雇われ院長」の中には、すでに消費税の免除を受けたとして、独立して開業した際に制度の適用を受けられなかった人もいて、国税局は制度の適用を受けられずに納めた消費税を返金する対応を進めるものとみられます。
このほか、グループの中心となる運営法人が全国のクリニックの利益の一部を院長たちから集め、クリニック側は業務委託費の名目で損金として計上していましたが、国税局は一部は業務委託の実体がなく損金に当たらないなどと判断し申告漏れを指摘したということです。
元“雇われ院長” 「残念な思い」
大阪の美容外科医の南享介さんは、TCBグループで「雇われ院長」を務めたことで、知らないうちに消費税の納付の免除を受けてしまっていたといいます。
南さんは、形成外科の医師として保険診療を行う病院などに勤務していましたが、6年前、37歳のときに自由診療の美容業界に移ることを決め、TCBに就職したということです。
数か月後、大阪市内のクリニックのいわゆる「雇われ院長」になることを打診され、引き受けたといいます。
その後、4年前、独立するためにTCBを退職し自身のクリニックを個人事業主として開業しましたが、同じようにTCBをやめて開業した医師から「自分は、TCB時代に個人事業主としてすでに消費税の納税義務の免除を受けたことになっていて免除にならなかったので確認したほうがいい」と助言されたということです。
確認したところ、南さんもすでに消費税の免除を受けていて、自身の開業では免除にはならないことがわかったということです。
その後、国税局から「免除が受けられなかった分は返金の対応ができる予定だ」などと説明されましたが、現時点ではまだ返金の手続きなどは行われていないといいます。
南さんは「このようなことになって残念な思いです。はやく一人前になりたいという思いもあって、当時『雇われ院長』になることを決めましたが、よく理解せずに安易に引き受けてしまったことを反省しています」と話していました。
Posted at 2025/02/10 20:58:57 | |
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