ドアを上げてみよう

調整後のドア、別に何の変哲もない眺め．
「スポーツカーのドアは心を込めて開けるもの」by徳大寺有恒（記憶不鮮明ですが）
これこそ日常の中の非日常のドア．
これを開けられる、幸せ．

ドアが下がっている、というはっきりしたものではないのですが、
助手席側ドアを閉める時にほんの少しストライカーにすれる感じが気になっていて、
この際上げてみる事にしました．

各パーツの呼び名ですが、
ドアウエッジ　=　車体側に付いているゴム、上下に調整できます．
ダブテール　=　ドア側についているスチール製のカップ、調整はできません．
ストライカー　=　車体側にT40 x 2本で固定されているU字型金具、固定ボルトに対して穴が大きいので360度調整できます（調整代は大きくありません）
キャッチ　=　ドア側のストライカーをくわえ込んでロックする部分、調整できません．
としておきます．



用意するのは12ミリのドアヒンジレンチ、Straightで1,180円
アストロで買った12-14ミリSレンチが750円
本締めには力が入るドアヒンジレンチが良いですが小さいSシェイプレンチの方が回しやすかったです．
ドアウエッジを調整する10ミリのソケット、
ストライカーを調整するT40のトルクスが要ります．

まずドアを全開にしてナットを緩めていきます．



上下のヒンジのボルトは各2本、そのうち上には位置決め用のナットがもう一個かかっています．
このナットを緩めてしまうとドアが大きく前後に動いてしまうので上下２本の「ボルト」だけ緩めます．



特に順番はありませんが緩めすぎるとドアがどさっと落ちますから少し抵抗があるくらいが良いでしょう．
下がりすぎた場合は緩めなかった上ヒンジのナットを中心に下がります．
慌てずそのまま上げて締めれば元の位置に戻ります．

ボルトは緩めきらないでドアが落ちない状態にします．
少しドアを閉めてそっとジャッキを当てます．
ジャッキを上げるとミシミシっと音がしてドアが上に動きます．
ここで小さなSレンチで締めれるだけ仮締めします．
締める時は力をかけた体勢でレンチが外れるととても危ないので十分注意します．

ジャッキを外してそっとドアを閉めてみて高さを確認します．
ストライカーとドアウエッジが当たる様なら仮に少し上げてみます．
高さを決めるのはドアウエッジで、ストライカーは最後に調整します．

普通はドアが下がるとドアウエッジの上部がすり減り、
その後ボディのストライカーがドアのキャッチ（の樹脂部分）に当たる様になります．
こうなると開閉時に「ごろっ」というイヤな音が出ます．

ドアを上げすぎるとドアウエッジの下がダブテールに擦れて音が出ます．
ドアウエッジはかなり調整幅がありますが、ぼくのユーノスではほとんど上げきった辺りになりました．
気持ち高目ボールだったので、もう少しど真ん中でも良かったかも．
ドアウエッジは上部がすり減っていたら左右入れ替えるとまだ使えます．

最後にストライカーを決めます．
思いきって緩めるとドアウエッジほどではありませんが前後左右に調整代があります．
これは内ー外にも調整できますからドアの表面のちりも確認します．

閉まり具合が良ければドアヒンジレンチで本締めします．
こちらは注意して締めないとレンチの角がドアのエッジやフェンダーの折り返しを傷つける事になります．あまりたくさん回せません．ある程度、締めれるだけSレンチで締めておくのが安全だと思います．

これまでドアの調整はフェンダーをまくり上げないとダメだと思っていたのですが、レンチ一本で簡単に出来る事が分かりました．どこにも触れずにストライカーに命中するのは気持ちよいものです．
気になったらいつでも、自分で気が済むまで調整できるのは気持ちよいし満足感があります．



ドアヒンジに注油しない派なのでドアがきーきー言ってますね(^_^;)

考えてみればこのドアハンドル、年数が経っても劣化が少ないと思います、
普通の形であればハンドル周辺にひっかき傷が多数出来ているでしょう．
それにしても指一本で開けるドアとは、、、
スポーツカーならではの憎い演出です．
いわゆる「お客様の声」と言うものがこう言う演出をどんどん駆逐して行くのです．

趣味のスポーツカーが「お客様の意見」なんかに左右されていて絶対ダメなのです．
絶対ダメです．
ユーノスにはそんな哲学が、
車体のあちこちで輝いています．

NA発売前に米国で
「このドアハンドルは女性の長い爪を痛めてしまう」
と言う声が上がった時、
「こうすればいいのよ！指を曲げて引っかければ簡単に開くわよ！」
と実演して見せた女性がいたと言う話．

そう言えば米国でも女性に人気がありました．
それはもう、さまざまな話を思い出します．

ユーノスのドアは素晴らしいドアです．
いつでも開けるたびにワクワクするドアです．
日常の中で小さな非日常が始まるドアです．
性能には全く関係ない所ですが、
これこそスポーツカーが忘れてはいけない事なのです．

「指で開ける」と言うドア、
和室の障子と同じですね．
ドアハンドルを引っ掴んで開ける洋風ではない、
和の趣があります．

だからこのドアは、心を込めて開けるのです、
本当に素晴らしいドアだから．
そして、
「イイじゃろう！」
と仰る笑顔を思い出します．