
先月、東京・有明のビッグサイトで行われたBMWプレスカンファレンスの一環として行われた、MINI-Eのミニ試乗会でのこと。試乗アテンドするインストラクターは「アクセルオフで約0.3Gの減速力が発生するので気をつけるよーに」。
試乗してインプレッションとして留め置く必要のある事柄について余計な世話を言うもんだ……まあプレスにもいろいろなスキルの持ち主がいるので仕方ないか。気を取り直して試乗コースに繰り出すと、「おおっ、そうだった」2年前のLAショーで乗った記憶が甦えってきた。
エネルギー回生を強めるGフォースにはすぐに対応できたけれど、興味津々で試したフルスロットで驚いた。0㎞/hMAXトルクというEVの特性そのままの強烈な加速フィールとともにタイヤが暴れ、ちょっとドキッとするほどのトルクステアで蛇行した。
一瞬確かなステアフィールを失う浮遊感を伴うハンドリングは、「こっちのほうが安全上問題じゃない?」インストラクターに質すと「あれはMINIのキャラクター、クーパーSも同じようなもんですよ」最新のクーパーSを試した記憶がなかったので言葉を呑み込んだ。
折よく試乗会の案内が来たので、さっそく試してみることにした。ターボでパフォーマンスアップしているとはいっても、所詮は2次曲線的な性能曲線を描くしかない内燃機関(ICE)。どんなに荒々しくスロットルを踏みつけても、MINI-Eの切れた感じは味わえなかった。
そもそもEVでICEと同じセンスの駆け抜ける歓びを追求しようとするところに、僕は無理を感じるわけです。石油資源が潤沢で、消費が経済を回す美徳と考えることができた時代であるなら、原油から一定量必ず産出され、内燃機関を動かす以外に利用価値がないガソリンで、駆け抜ける歓びを商品的魅力とするのも悪くない。
でも、時代はかなり動いていて、スピードの全面解放にはなかなか同意しにくくなっています。相も変わらず高性能というとほとんど高速性能を意味するようになっていて、最高速や加速性能の極大と極小化がテーマになっています。僕はその魅力を全面的に認める者ですが、それはECOとは激しく衝突する。
いっぽうで駆け抜ける歓びをプッシュし、他方でECOだCO2だ地球環境だと正義を振りかざす。いったいどっちが重要なのかといっても判然としないのが普通です。考え方としては、日常的な使用パターンで現実的とはいえない160㎞/h(100mph)以上の領域は見切る必要がありそうだ。
2次曲線を描くICEの場合、高回転/高出力を狙うのはある種の必然的テーマになるけれど、燃料消費率や速度の2乗に比例する空気抵抗を考えると、従来型の高性能という価値観は説得力を持ち得ない。EVであれば、最高速にこだわることなく、日本の法定速度内でもFUNと言える加速性能を創造することができそうだ。
日常的な使用パターンではMINI ONEでも不足とは言えないが、クーパーSが備えているガソリンエンジン+ターボの持っている力強く息の長い加速フィールは、手にするとやっぱりいい。完全にキャラクター商品の域に達しているMINIは、デザインにしても全身から醸しだされる雰囲気にしても、費用対効果に見合う内容を持っているとは思う。コンバーチブルやクラブマンやJCWといった派生モデルも「自分で買ったら……」という妄想に浸れる独自の世界観を持っている。
それらは魅力的であることは間違いないが、これからのクルマが進む方向は20世紀型のレトロではない。そんなハンパなことを考えながら、BMW M3のセダン/クーペを試すことにした。MINIのMT仕様にも備わっていたが、M3セダンにはアイドリングストップとブレーキエネルギー回生機構が備わっていた。

7速M-DCTの他に6速MTが選べるけれど、いまやスティックシフトを用意する心意気は望めない。市場性を考えればやむを得ないが、試せない状況が残念だ。4ℓV8は、回転バランス、淀みのないクリーミーな加速フィール、スピードどれを取っても最良のV8のひとつに挙げられる。
M3のパフォーマンスをフルに引き出せる状況は、普段の生活空間には存在しない。東名高速に繰り出して一端を垣間見たが、とてもじゃないが書き表せない速度域だ。超高速域でもう一段上を期待したいステアリングの落ち着きと原因と考えられる空力的安定性には注文が付くけれど、踏んで行った時に得られるカタルシスは、自分のクルマとして側に置いた状況をつい空想したくなるヤミツキ系だ。
300㎞/hに迫るスピードを現実感とともに語れる実力が抗いがたい魅力であるのは間違いないが、その意識に留まるかぎり、次が見通せない。そんなことを考えながら御殿場の試乗会場を後にした。思うところあって、FISCO(富士スピードウェイ)通いをしていた70年代は当たり前のように走った国道246号をトコトコと上ることにした。
御殿場から小山町、大井松田、渋沢、秦野、伊勢原、厚木と続く246は、基本的に35年前と変わらない。当時のクルマで走っても最新の超高性能車で走っても、自宅まではたっぷり3時間は掛かってしまう。いかに東名高速が平均速度が低いとはいっても、どうにもならないくらい旧い国道の3倍速。もう一遍この辺りから話を解きほぐさないと、クルマはますます浮世離れしてしまう。
僕は誰よりも20世紀型のICE車には強い郷愁を持っていて、生涯それを愛し続けようと思っているけれど、本来語られるべきモビリティの本質抜きの『クルマだけ論』ではもうやって行けない気がしている。さてどうするか……。あまり商売には結びつかないけれど、ジワジワとその辺の話をここでできたらいいなと思っている。
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2010/07/12 17:39:42