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2023年12月13日

"誰かの"ふるさと納税

"誰かの"ふるさと納税 私個人が山口の田舎出身で、学生時代は大阪で過ごし、首都圏(横浜、東京)に20年以上生活基盤を置き、その後に別の地方都市(宇都宮)に移り住んできたことから、地方の活性化・振興には少し思いがあります。
先週、ふるさと納税について書いたのもそのせいですが、ふるさと納税は数々の不備・不手際で不評を買っていることも承知の上で、もう少し書いてみようかなと思います。

東京(圏)の人は、地方を馬鹿にしていると言われることがありますが、私からすると、どちらかというと地方に"関心がない"という方が正しい気がします。関心がないから馬鹿にする土俵にも上がっていないということであり、もしかすると、理解して馬鹿にされる方がマシかもしれないくらい関心がない人が多いというのが実情なのではないかと思います。
東京圏以外の場所と言うのは、たまの行楽と観光で訪れるところに過ぎず、観光に行くくらいのところ(≒廃れていない、流行っている)にしか行くことはないため、かつ、東京は発展の一途を辿っているため、地方が衰退していることを肌感をもって感じている人は少ないのではないかと思うわけです。
もちろんそこに悪気などまったくなく、地方の人々の生活に関わりをもつきっかけすらなくて、地方に関心をもつ必然が生まれないだけと言い換えてもいいかもしれません。

そうであっても、東京の発展が歴年の地方からの流入マンパワーで発展し成り立っている事実は変わらず、東京在住の人はその認識の有無にかかわらず、東京の発展という恩恵を享受している事実も変わりません。東京という都市が日本全体の中で構造的な受益者となっているという事実です。人材こそがすべての源泉です。
そういう中において、(現状のふるさと納税の前に)地方税を全国にどのように分配するのが適切なのかということが、考えるべき命題(課題)であるということだと思います。
東京の自治体からすれば、なんで他所に回さないといけないの?となるのでしょうけどね。



という前置きをしておいて、では、ふるさと納税の目的創設意図について振り返ってみましょう。

まずは、総務省の理念のページ(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/)にある三つの大きな意義についてです。それをタイトル画像に載せました。
それによると、納税者が能動的に寄付先を選択できること(第一)、好きな地域の力になれること(第二)、自治体間の競争促進(第三)なのです。第二の地域の記載をみると、「お世話になった地域」「応援したい地域」を赤太文字で強調しているのに対して「生まれ故郷」は強調していません。日本語として本来の「ふるさと」とは無関係ということです。そして、限られた原資配分の仕方として競争の原理を導入しようというのが第三の意義でしょう。

これはまとめすぎな感もあるので、では次に、創設時の検討段階でなされていたであろう議論を、平成19年の研究会報告書(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/furusato_tax/pdf/houkokusyo.pdf)で見てみましょうか。

■ふるさとの定義は自由に考えてよい
このまとめにおいて、その冒頭にて上京してきた人が地元に還元できないというわかりやすい例示が述べられています。はは~ん、そういうふるさとを持つ人が地元に納税できるようにする主旨なんだなと思われがちですが、それは、東京が構造的に地方のマンパワーで成り立っていることを典型的にわかりやすく述べるためのものでしょう。そういう人限定の納税方法を見直しをしようするものではありません。
多分に情緒に訴えるまとめ方にもなっていて、ボランティアで訪問した場所でもいいという響く人の少なそうな例示もありますが、結局はふるさとの定義は、各自が自由に考えてよいというところから入っているのです。そもそも研究段階から、「どこでも好きな地方納税」であって「誰かのふるさと納税」なのです。マクロにみて東京のような都会から地方に地方税を回るようにしたいということでしょう(そもそもが、後述するそれ以前の制度の不十分さを踏まえて検討開始されたものです)。
上京した人の典型例イメージが先行しすぎているのは、キャッチーなわかりやすさに迎合しがちなマスコミが、その例示ばかり伝えてきたからのような気もします。もしもそういう限定目的(上京元に還元)であるならば、住民票の異動に基づく範囲に限定するとかやりようはなくはないわけで、そもそもそういうものではないのです。

■納税先の自由選択
そして、納税者に納税先を自由に選ばせるという思想を入れようというのがポイントでしょう。地方交付税のようにおかみが決めた方法で分配するのではなく国民一人一人に自由に選択させる仕組みにしようということです。
自由に選ばせるということは、税分配に競争の原理を導入しようということです。地方を押し並べて単純に分配するのではなく、有限な原資を頑張っているところに集まるようにしようということでしょう。人口減少が始まっている日本において、これまで通りの現状維持をすることは困難になることは容易に予想されることで、地方自治体の淘汰・集約も踏まえてのことでしょう。
合わせて自治体側には、自治意識の進化を求めています。


このようにふるさと納税は、最初から納税者が自由意志で任意に選ぶものであって、自治体は競争を勝ち残ってようやく税を獲得できるようにする思想のものなわけです。
ただし、研究会での検討段階では、自治体間の競争は自然に起こせるものであって、税使途の情報発信がキーだろうとかなりナイーブな見立てをしていたと思われます。その「何で競争するのか?」について、深堀して考えていなかったのが問題だと思います。

冒頭書いたように、そもそも多くの都会の人にとって地方には関心がないわけですから、実際には地方の選びようはありません。ここがキーなわけです。

ここでちょっと別の話を挟みますが、今のふるさと納税が始まるよりもずっと前から、地方団体に対する寄付金が個人住民税の所得控除の対象になる制度はありました(平成6年度以降)。確定申告をしたことがある人は、申告書にその欄があるので案外知っている人は多いかもしれません。生まれ故郷への恩返しという意味では、この制度の方こそがふるさと納税という言葉の概念に近いかもしれません。でも、この制度は(10万円以上という制約もありますが)、今のふるさと納税の始まる前の平成18年度でわずか6196人したやっていないもので、規模にして約38億に留まるものでしかありません。極めて強い意志がなければやらないでしょうから、広く活用されるようなものではなく、規模的に地方自治に影響を与えるものには程遠いものだったわけです。

一方で、東京の発展を享受している人は、その地に住む人全員なわけです。もっと裾野広くやってもらうにはどうすればいいのかということになるわけです。それで出てきた答えが「返礼品」ということなのでしょう。
各地の特産品を返礼品とすることで地域の産業振興を兼ねるという意味では、ある一定の合理性もあると思います。もっといい方法がないか議論の余地はたっぷりあるとは思いますけどね。そういう意味では、「返礼品競争が起こること」「返礼品目当てでやる人が増えること」は、最初からの狙い通りなわけです。
ただし、返礼品の占める金額割合の競争はいただけませんね。それでは、中身ではなく税率の競争をしているだけになってしまいます。さらにその地に根付かない金券(相当)で返すなどというのは税率低減目的以外の何物でもなく、泉佐野市にそれを一旦は許してしまった政府がアホなだけだと思います。公共性のある地方自治体はアホなことはしないという性善説にでも立っていたんでしょうか。

個人的には、返礼品だと第一次産業産品になりがちで、本当にその地域振興として相応しいのかに疑問を感じるので、その地の産業・企業・個人に投資をする仕組みのようなものがいいのではないかと思います。事業を立ち上げたい人の設備投資を支援するとか、そういうことです。その投資の成功報酬という形でリターンがあるようにするインセンティブにするという感じですね。リターンを直接的な返礼品にしてもいいことにすれば、今までのやり方を包含できます。第二次産業製品としては個人ではいらないものになりそうなので、持株会的なものにして事業にかかわることができるようにするのも面白そうです。そうすれば少額であっても応援したくなることでしょう。私の出身地元で頑張ろうとしている人、地元以外でもその地方を盛り上げようと頑張ろうとしているアイデアがあれば、私個人としては、直接の返礼品ではなくても応援したくなると思います。何をしようとしているのか、中身が開示されれば十分に選択の源泉になりますし、動機にもなります。

‥‥と思うのですが、言うは易しでそれを実行するのが難しいかもしれませんけどね。

ふるさと納税で収める税を何に使うのか、地方自治体は開示する仕組みにもなっていますが、現状のそれによって納税先を選ぶ動機には到底なっていないと思います。地方自治体が企画している税の使途は、地方自治体だから当たり前だと思いますが、概ねつまらないものだし、どこも似たり寄ったりなのです。

要は、もっと地方の選択方法に知恵を絞る必要がある気がします。

使途を選べる数少ない税制です。もっと返礼品に限らない選択肢を増やして欲しいのは上述の通りですが、私は地方自治に競争原理を導入することにも賛成です。人口が減ることは止められないと思うので、地方の合理化を行うことも必須だと思います。

また、税を払ったあとの収入から地方にもお金を落とせと言われても、財布の紐はなかなか緩まないでしょう。税として払うことが決まっている支出の中から、払い先を選択できるというところが味噌だと思います。

現状のふるさと納税に問題点があって、それに批判的な層がいらっしゃることも事実でしょうし、批判の中身も正しいことが多いと思います。私のような考えの人は少ないのかもしれません。でもそれに乗じて、東京都は、東京都の主張の味方につけようとしている姑息さを感じるものちょっといやな点です。
東京都は、そもそも財源を持っていかれることそのものに反対をしているのであって、東京の利益こそが正義なわけで、都会が構造的受益者になっていること自体を否定する立場でしょう。地方税が地方に回らないのは人が減っている地方のせいであって、都会が人を吸収しているなんてことは知ったことかというスタンスです。

子供の頃に地方で育ち(=地方は負担側)、大人になって東京でお金を落とす(=地方は払い損、東京丸儲け)というわかりやすい構図の話だけではなく、

親世代、その上の世代の積み重ねで、複利計算的に東京は発展してきたのです。もっとがっぽり地方に返してもしかるべしと個人的には思います。


ただし、個人に地方を選択させる方法にはどうしても難しい面があって、再配分のいい方法が見つからない、ということは起こりうるかもしれません。そうなのであれば、競争原理の導入の部分をあきらめて、おかみによる再配分に変えるしかないでしょうね。そういう見直しをするとしても、少なくとも、東京都が欲している地方税の地方への再配分をやめよ、というような話にはそもそもならないのではないかなと思いますけども。

東京圏を東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県だとして、合わせても国土の0.6%しかない場所に日本の人口の3割の人が住んでいます。その中で"狭義の日本"が成り立っていて、皆さんそれが標準的なものだと思っているわけです。
良くある東京圏の人へのインタビューで、四国4県を言えないとか、島根と鳥取がどっちがどっちかわからないとか、おもしろおかしく取り上げられることがあるかと思います(割合的にも少なくはない)。そういう話をするときに「知識がなくて(勉強できなくて)何が悪い」という論調になりがちだと思いますが、「知識として」知らないという切り口がそもそも他人事なわけで、自分事になっていない関心の低さがポイントなんだと私は思います。自分事になれば、自ずと知ることになるはずです。もっと地方のことを自分事にする仕掛けが足りないのではないでしょうかね。地方税の払い方もまさにそこにポイントがあると思います。

まあひとまず、「ふるさと納税」という名前には語弊があってニュアンスの正確性に欠けるので、「誰かのふるさと納税」に名称を変えてもらえませんかね。

名前にちょっとウィットを入れて一捻りすれば、中身を考えるきっかけになるかもしれません。
ブログ一覧 | 日記
Posted at 2023/12/13 16:40:29

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