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※ようやく日数的な旅の折り返しまで話が進んできました。(ストップオーバーを除く)
※この旅の報告は全部で本編32編+番外編4編程度となる見込みです。(完結できれば、、、の話ですが)
● ツアーの選定
今回のアイスランド訪問では、やはり火山や氷河は外せないテーマであり、旅7日目は氷河へ行くツアーに参加することにしたい。ツアーばかりと思われてしまうかも知れないが、やはり氷河に関しては専門的なガイドの同行は必須だろう。
アイスランドの地理的な事情から、氷河はレイキャビック近郊でもいくつか見られ、前の日に参加したゴールデンサークルツアーに+αする形で、そうした近場の氷河でのトレッキングや雪上車による観光を取り入れているツアーも見られる。
そうしたお手軽型のツアーでも良かったのだが、今回は敢えてレイキャビックから片道三百数十キロ離れたヨーロッパ最大の氷河であるヴァトナヨークトルまで足を伸ばしてみることにしたい。
もちろん近くの町で宿泊してヴァトナヨークトルへ行った方が良いことは確かなのだが、今回は敢えてレイキャビックから往復700km程の行程を日帰りするという強行軍での訪問とした。
交通の不便なアイスランドを限られた日程で訪問するという条件である以上、やはり何かしら無理をしなければいけない場面が出てきて当然だろう。
それにアイスランド南東部の見所と言えば、実質的にこのヨークルスアゥルロゥンだけであるということに加え、「欧州最大の氷河に足を記す」という目的さえ達成できれば満足であろうという判断もある。もちろんアドベンチャー好きならもっとじっくり訪問すれば楽しめることだろう。
で、レイキャビックからの日帰りツアーを探してみたところ、昨日ゴールデンサークルツアーやブルーラグーンへのシャトルバスでお世話になった最大手のレイキャビックエクスカージョンReykjavik Excursion社はこうしたニッチなツアーは扱っておらず、二番手とされるアイスランドエクスカージョンIceland Excursion社がツアーを催行していることがわかった。
往々にして、最大手のレイキャビックエクスカージョン社が至って定番コースに徹しているのに対し、二番手のアイスランドエクスカージョン社はこうしたマイナーなコースや、半日単位で好きなコースを組み合わせられるコンビネーションツアーなど、ニッチに徹している印象がある。
そして私の性格的にも、アイスランドエクスカージョン社のツアーの方が合いそうな予感がする。
で、具体的なツアーなのだが、ヴァトナヨークトルへの日帰りコースとしては、ヴァトナヨークトルの玄関口であるスカフタフェットル国立公園までのシャトルバス(ガイド無し)の運行があり、それに現地でのオプションツアーを組み合わせた形になっている。(シャトルバスのみの利用も可能。またオプションツアーは現地ツアー会社のガイドが担当。)
今回は氷河ウォーキングと、氷河湖(氷河が形成されるときに削られた地表が氷河末端に天然の堤を形成し、その後の氷河の後退により湖と化したもの)での水陸両用車によるクルージングがセットになっているコースに申し込んだ。
ちなみにシャトルバスから全て含めた価格はISK29900(≒\21500)とかなり高額ではあるが、行程や内容(往復シャトルバスに氷河ウォーク、水陸両用車、更には装備レンタル、昼食・軽食まで込み)を考えると必ずしも高くはないのだろう。なお今回はインターネット経由の直接申込特典でここから5%の割引の割引となった。
● アイスランド南海岸を走る
先ずは今回のツアーコースをプロット。

※今回の目的地であるヴァトナヨークトルだけでなく、それ以外の氷河についても薄青色で描いている。
ツアー出発は7:30なのだが、ホテルへのピックアップは7:00。
今回は4組だけの乗客と言うこともあり、送迎車によるピックアップではなく、運転手が直接ホテルまでお出迎え。
そして一旦アイスランドエクスカージョン社のオフィスに立ち寄って手続き。
…の、筈だったのだが、ここのオフィスの営業時間は7:30から。
私は事前に決済していたものの、まだツアー代金を決済していないグループもおり、寒い中をしばらく待ちぼうけ。
しかしこのオフィス、レイキャビックのど真ん中の一等地にある広場に面しており、何度も登場してくる首相官邸の目の前。(写真左端)
しかし朝7時を過ぎているというのに閑散としている。更にその中にポツンとあまりに無防備に首相官邸があるというのだから、この国の長閑さは相当なものである。
更にこの国の人は往々にして寝坊助であり、7:30オープンと言っても、実際のところそれはスタッフが出勤してくる時間。
さらに出勤してきたスタッフのあまりに不機嫌そうな態度には…最早笑うしかない。
今回に限らず、この国の朝は全てにおいてこういう調子で…まあ、お国柄なのだろうか。
そしてようやく出発。
今日の車は20人乗りほどのマイクロバス…というか、大型のワゴン車。(ベンツ製)
参加者は私のほかに、オランダから来た夫婦と息子、南欧系と思われる2人グループ×2組の合計8名。
バスの座席にもゆとりがあり、ゆったりと過ごせるうえ、至って相合とした雰囲気でまるでドライブ気分である。
ちなみにドライバーはR氏という中年男性で、ガイドではなくあくまで「ドライバー」という位置付け。
しかし親しみやすいキャラクターで車内の雰囲気作りにも気を遣いつつ、「皆さん、南海岸へ行かれたことはありますか?」「そうですか皆さんはじめてですか。私はあくまで『ドライバー』なので専門的な説明は出来ませんが、途中にある海岸や滝などの見所を車窓からとはなりますが簡単にご案内させていただきますね。」と言った具合。
至ってフレンドリーな雰囲気の方で、他の参加者を含め、今回は大当たりな予感。
往復700km、ピックアップが7:00で最終的なホテルへの到着予定時刻が23:00という、超強行軍なツアーだけに、こうしたアタリ要素は嬉しいところ。
もし昨日のゴールデンサークルツアーのような感じの悪いツアーだと、こんな長丁場は耐えられなかったことだろう。
(ちなみに往復700kmというのは、札幌-網走をの往復距離とほぼ同じで、例えるなら札幌から網走まで日帰り流氷を見に行くようなものである。)
そしていよいよ出発。(ちなみに写真右下に見えている町は昨日訪れたセルフォスの街)
地熱発電所など、レイキャビック郊外を抜け…
車窓には至って雄大かつ牧歌的な光景が広がってくる。例えるなら北海道の宗谷本線沿いを走っているような雰囲気である。
しかもR氏は気持ちよく飛ばしていくので、それこそまるで道北をドライブしているような気分なのである。
そして時々、街がポッと現れる。これもやや道北的ではあるのだが、やはり建物だけは北欧風。
また街中の交差点は必ずと言っていいほどロータリーになっていて欧州的。
そして給油。中途半端なサイズの車と言うこともあり、航続距離はあまり長くはないようだ。
ちなみにこの国のガソリンスタンドは、必ずと言っていいほどコンビニ兼ファーストフード店と一体化しており、しかも寂れていることがないので、気持ちよく利用することが出来る。
そして更に走り続けていく
そして車窓に滝が現れる。
「セーリャラントスフォス」という有名な観光地とのこと。今回の行程には入っておらず車窓からの見学となるが、実際に下車観光すると滝の裏へ回ることが出来るとのこと。日本で言う「裏見の滝」なのである。
ちなみにこの辺りは右手に崖を見て走ることになるので、有名無名問わず、多くの滝が見られる。
なおこの崖はかつての海岸崖とのことで、現在道路が通っている場所は磯だった場所ということになるのだろうか。
しかし数ある滝の中で、メジャーな観光地になっている滝はそれなりの付加価値があるわけで…
今度は大規模で迫力のあるスコゥガルという滝。
やはり有名どころだけあって、遠目で見ても相当な迫力である。
そして更に進むと…
お分かりだろうか…
氷河の氷舌の部分が見えてくる。
但しこれらはお目当てのヴァトナヨークトルではなく、随分手前に位置するミールダルスヨークトルという氷河である。
レイキャビックからの日帰り氷河ツアーでは比較的近場のこの辺りの氷河でウォーキングなどを実施していることが多い。
しかしながら、今回はまだ目的地までの半分も来ていないのである。
そしてようやく海岸線が見えてくる。
今回「アイスランド南海岸を走っていく」とは言うものの、幹線道路はやや内陸を走っていることが多く、実際に海岸が見えるのは行程のほぼ中間にあたるヴィークという街の近辺だけなのである。
ミールダルスヨークトル氷河が存在することで、この近辺のみ道路を海岸近くまで迂回させている格好になっている。
またこの辺りの海岸は写真でわかるように真っ黒であり「ブラックサンドビーチ」と呼ばれている。ビーチとはいうものの、実はアイスランドから吹き出している玄武岩質の溶岩そのものなのである。
海岸が見えてくれば、直ぐに今回の行程のほぼ中間点であるヴィークの街が見えてくる。
南海岸の主要都市とのことで、大きな街をイメージしていたのだが、実際はビックリするほどこぢんまりとした街。
それこそ北海道に例えれば、市町村役場のある町の規模ではなく、本当に小さな集落(道北なら中頓別どころか敏音知レベル)である。
そしてヴィークの街中にあるGS兼ドライブインで休憩。
今回のシャトルバスは、特に路線バスというわけではないので、休憩場所はドライバーが乗客のリクエストも聞きつつ決定している。
とは言っても、乗客から格別のリクエストがあるわけではなく、ドライバーの決定を追認しているだけで、実際のところは“ドライバーの寄りたい場所”での休憩となる。
但し沿道を熟知しているプロのドライバーだけに、そのチョイスには然るべき理由があるのだが…(詳しくは帰路で)
店内の様子
小規模なお店ながら、飲物やお菓子などはもちろん、日用品からカー用品、そしてキャンプ用品まで備え、更にカウンターでホットドッグの販売まで行っている。
そしてドライバー氏はホットドッグとコーヒーで朝食タイム。
よくよく考えてみると、ドライバー氏はここのホットドッグが食べたくて立ち寄ったのではなかろうか。
多くの乗客もそれに習うが、私は朝食を済ませていたので、周囲をブラブラと歩いてみることにする。
(ホテルの朝食はピックアップ時刻と同じ7:00からだが、少しフライングでレストランへ入って、バイキング朝食を口に押し込むような感じで食べてきた。今思えば何と下品な…)
先ずはドライブインから道路を挟んだ反対側。
ヴィークのシンボル(?)と思われる丘の上の教会、そしてその下にある立派な建物は「エッダEDDA」というホテル。この地まで来て日の丸が掲揚されているのを見ると嬉しいものである。
ちなみにこのエッダというホテルチェーン、アイスランド各地に点在しているのだが、基本的に夏期のみの営業。
普段は学生の寄宿舎として使用され、夏休み期間に学生が帰省している間、宿泊施設として使用されるというユニークなシステム。
しかしここヴィークも含め、驚くほど辺鄙なところにあり「こんなところに学校があるのか?」と思ってしまうほど。
まあ自然豊かで誘惑のない環境とも言えるので、勉学に励むには良いのかも知れない。
(日本でも全寮制の学校を中心に、教養部を全寮制にした東京理科大学の長万部キャンパスや、野球部で有名な高知の明徳義塾高校、教師による暴力事件や生徒の死亡事件などを繰り返した悪名高き日生学園高校など、トンでもない場所にある学校って多々あるように思う。)
なおここヴィークではないのだが、今後の行程でこのホテルエッダを利用する機会があるので、内部の様子などはその際に紹介することにしたい。(おそらくNo.22で紹介することになるかと。)
そしてドライブイン建物の裏手から海岸方向。
植生があるので、少し分かり難いが、やはりブラックサンドビーチ。
そして沖に見える不思議な形をした岩は「レイニスドラゥンガル」という舌を噛みそうな名前で、最高66mもの高さがあり、「2匹の妖精が3本マストの船を引っ張っていたところ、そのまま固まってしまった。」という伝説があるのだとか。
こうしているうちに休憩時間も終わり、バスは再び出発。
まあ相変わらずで、写真だけ見ていると飽きてしまいそうなのだが…
川を渡り
氷舌を眺め
相変わらず崖の下の道路を走り続ける
牧歌的な景観を眺め
芝屋根が印象的なアイスランドの伝統的な家屋も見えてくる。
これはカモフラージュを意図したものではなく、半地下のような構造で冬場の保温性を高めることが目的の建物である。
なお今回は車窓から簡単に眺めただけであるが、後日保存家屋を見学する機会があったので、また改めて紹介することにしたい。(おそらくNo.31で紹介予定。)
そしてこれまた相変わらず、多数の滝が見られる。
こうしてどんどんバスは東へと進んでいくのだが、周りの風景がだんだんと月のような火星のような雰囲気になってくる。
こうした光景を活かして、アイスランドはSF映画などのロケも頻繁に行われているのだとか。
そしれ更にバスは進んでいくのだが、心配していた事が起きてしまった…
そう雨が降ってきているのである。
しかも一気に強く降りだして、今後の行程が心配になってくる。
しかしバスは何事もなかったように走り続ける。雨天時の扱いについては確認していなかったが、あまり荒れるようなら、当然中止というパターンも有り得るのだろう。
しかし片道5時間も掛けて出掛けて、現地で中止と言わたらあまりに悲しい。
そんな心配をしていたのだが、スカフタフェットル国立公園に近づくにつれ、幸い雨は小雨となってきた。
そしてスカフタフェットル国立公園到着直前に長い長い橋を渡る。
見ての通り、片方が大型車だと行き違いも出来ないような質素な造り。
アイスランドの道路は国道1号線とは言え、交通量の少ないエリアは橋などの建造物が簡略化して建設されており、更には道路そのものも未舗装となる区間すら存在している。
よく言えば、交通量を踏まえて合理的な道路建設がなされていると言える。
しかし道路建設などの公共事業には雇用対策や地域経済の活性化といった側面もあるので、“合理的であること”が全て正しいなどと言うつもりも毛頭無いのだが。
そしてこの川こそ、ヴァトナヨークトル氷河の下流に当たる川。
ヨークルスアゥルロゥンはヨーロッパ最大の氷河なのだが、アイスランドという地理的条件もあり、氷の下に多くの活火山が潜んでいる。
そして氷河の中でも、活火山の火口の部分だけは、熱により氷が溶け、グリムスヴォトンと呼ばれる湖となっている。
ところが、火山活動が活発化すると、そのエネルギーにより、周囲の氷までとけてしまい、それにより生じた水がグリムスヴォトンに流れ込み、湖を決壊させてしまい大洪水が発生してしまう。
1986年の噴火では、こうしたメカニズムにより大洪水が発生し、現在走行している国道1号線の橋脚を破壊し、道路を寸断するに至ってしまった。
その際に破壊された橋脚の一部が、川岸に保存され、ちょっとした観光地になっている。
こうした現象はアイスランドでは多々発生しており、道路などの寸断などの災害はもちろん、土石流で浅瀬が埋まり陸地面積が増えるなど、色々な現象が現在進行形で起きている国なのである。
先ほど“道路が質素”と言っていたのだが、もしかするとこれは“破壊されることを前提にした造り”とも解釈出来るのかも知れない。
なおこの旅の一月ほど前にも、ここヴァトナヨークトルの氷の下で火山爆発が起こり、欧州の航空便に大きな影響を与えたことは日本でも大きな話題となっていた。
しかも私の場合は、アイスランドへの旅の直前と言うこともあり、相当気をもむことになったのだが、噴煙は相当立ち上ったとのことだが、それ以外の被害が少なかったとのことで、こうして何とかアイスランドまで来ることが出来た。
レイキャビックなどの街中も火山灰が相当積もったとのことだが、今ではすっかり片付けられている。
しかしお気づきかも知れないが、郊外の道路の脇には未だに火山灰が積もっており、ドライバー氏は「これは“ブランニューアッシュ”だよ。eBayで売れるかもね!」などと冗談を飛ばしていた。
(まあ実際にこの灰をeBayに出品していた商魂逞しい出品者も居たみたいだが)
しかしこの旅で私の行く手を阻むモノは決して「火山灰」などではなく、もっと違った“敵”に苦しめられることになる。
そしてその一報がこのバスの中で掛かってきた電話だったのだが…
こうしてアイスランド南海岸のドライブを終え、ヴァトナヨークトル観光の拠点であるスカフタフェットル国立公園のビジターセンターへと到着。
駐車場に面して、ビジターセンター(売店や食堂もあり)と、2軒のツアー会社の事務所があるだけの必要最小限の雰囲気で、日本で言うと月山弥陀ヶ原など“登山の拠点となる場所”のような雰囲気。
そしていよいよヨーロッパ最大の氷河ヴァトナヨークトル訪問のスタートである。
<つづく>
撮影機材
・SONY α200 + SONY CarlZeiss T* Vario-Sonnar 3.5-4.5/16-80(24-120)[SAL1680Z] and SIGMA 10-20(15-30)mm F4-5.6 EX DC
・SONY CyberShot DSC-TX5 (CarlZeiss T* Vario-Tessar 3.5-4.6/4.43-17.7(25-100))