※バックナンバーはこちらから。
#通貨について:この旅行記では、ニュー台湾ドル(新台幣)を“元”、日本円を“円”と表記しています。なおこの旅の段階での為替は1元≒2.6円を目安にしてください。
● 気動車自強号に乗車
旧型客車乗車体験を終え、台東駅に到着。
この辺りは台湾原住民が多く住んでいる地域で、駅構内にも…
駅は新しく立派
実はこの台東駅…訳あって市街地からは離れており、駅前はガランとしている。
この辺りの事情については、また次回以降で紹介することにしたい。
そして今回は、乗り継ぎ時間もタイトなので、駅構内で乗り継ぎの切符や駅弁だけ購入して次へ向かうことに。
(台東の市街地と近ければ、多少なりとも散策も出来たのかも知れないのだが…)
駅弁屋を除くと、日本語の心得のある若い女性が居て「ベントーですか?」と親切に案内してくれる。
台湾の弁当と言えば、ご飯の上にカツと煮卵とサラミと…と言った具合にワンパターンなのだが、今回は敢えてちょっと変化球を試してみることに。まあ変化球と言っても、ちょっとしたバリエーション程度の違いなのだが。
そして駅弁屋にドリンクスタンドが併設されていたので、先ほどの日本語の出来る女性にお願いして「無糖」かつ「ホット」の玄米茶を用意して貰う。
「無糖」はともかく、「ホット」とは…と思われるかも知れないが、台湾は冷房が効きすぎているので、偶にはホットが飲みたくなることもあるのだ。
しかしホットはかなりの熱さで…わざわざ段ボールを巻いて持ちやすく工夫してくれた。
こうしてあっという間の台東滞在を終え、再びホームへ。
今度は自強号という、特急相当の優等列車に乗車するのだが、非電化区間という事もあって、車両はディーゼルカー。
DR3100形という気動車で、第一編成は1996年に日本車両で製造し輸入。第二編成以降は台湾でのノックダウン生産が行われている車両である。
特に重厚感は無く、正直外観だけを見ると、かつての急行「礼文」や「陸中」のような、「普通列車用気動車の内装をアップグレードしたタイプ」に思えてしまう。
(まあ実際、
DR1000型気動車という日本車輌製の見た目が似ているローカル用気動車も存在しているのだが)
しかし内部は、国鉄型を思わせるしっかりとした造り。
シートは…急行相当の
「莒光号」などと比べても、少し安っぽいかも。
1996年デビューと比較的新しい車両と言うこともあり、車いす用スペースや、お手洗いも完備。そして
「莒光号」と同じような給水器も設置。
こうして車内外を見ているうちに、台東駅を出発。
早速、先ほど購入してきた駅弁を食べることに。(台湾の弁当は暖かい状態で販売され、すぐに食べることが前提になっているので、冷めてしまうと…)
包み紙には、「池上飯包故事館」という施設のPRが書かれている。
池上というのは、台東の少し北にある街で、この列車も通過して行く場所。
台湾では米処と知られ、「池上米」というのはブランドになっているとのこと。日本で言うところの「魚沼」のような場所だろうか。
それと同時に、その池上米を使った池上弁当(台湾語:便當、発音も「ベントー」。中国語:飯包)も有名となり、それまたブランドになっているのだとか。日本で言うと…「横川」のような感じなのだろうか。
そして包み紙の裏側には、「『便當』は外来語(日本語)で、香港や本土では『飯包』と言うのが正しいですよ」といった豆知識(?)と、美味しさの秘訣として食材や経木へのこだわりが記されている。
で、随分と焦らせてしまったのだが、弁当の中身。
そして暖かいうちに食べてしまうことにする。
しかし、次の瞬間あり得ない辛さが口の中に広がり、慌ててお茶を口にするもまだまだ熱い玄米茶で、今度は舌をやけどしそうになり…と、少しパニック。
別添されていた漬け物(唐辛子漬け)が、思っていた以上に劇辛で到底食べられたものではない。
一旦落ち着いて、唐辛子漬けを全て撤去し、ようやく落ち着いて弁当を食べ始める。
台湾の弁当というと、排骨(カツ)がメインの事が多いのだが、今回はチャーシューがメイン。
日本で流行のトロトロ系ではなく、サッパリとしたチャーシューで私好み。(最近トロトロ系チャーシューが急に辛くなってきた)
そして甘口のサラミや、アメリカンドッグなどの付け合わせも飽きの来ない味で、経木の風味が移った香ばしいご飯も合わさって、なかなか満足度が高い。おそらく今回台湾で食べた弁当の中ではダントツ一位だろう。
そして弁当を食べ終わる頃に、噂の池上駅に停車
少し停車時間があるようなので、窓の外を見ていると…
何と駅弁の立ち売りが健在。
あちこちの車両から声がかかり、売り子の女性が慌ただしく走り回っている。
どうやら正規の停車時間という訳ではなく、弁当販売が終わるまで発車を待っていると言った感じの様子。
一瞬、「もう一個食べてみようかな」とも思ったのだが、既に朝から2個も弁当を平らげているので、流石に今回は自重することに。
「池上飯包故事館」訪問と合わせて、立ち売りの弁当は次回への宿題ということにしたい。
そして列車は米処らしく田圃の広がる景色を眺めながら快走
そういえば、震災後に日本の業者が放射能汚染を警戒する消費者ニーズに応えて、この地域へ米の買い付けに来て、「高い評価」をして契約が成立したというニュースを見たことがある。
現地では「米にうるさい日本人から高い評価を得た」と好意的に捉えられているようだが、これが平時に「台湾の美味しい米を食べられる」という話なら単純に喜べるのだが、今回の買い付けに至る事情が事情なので、日本人としては正直あまり喜べない話でもある。
● 日本時代の温泉保養所に宿泊
そして瑞穂駅という、米処にふさわしいネーミング(?)の駅で下車。
何となく懐かしい空気のある待合室を抜けて
駅舎
駅前
先ずは駅前左手にある観光案内所を訪問し、今宵宿泊を予定している紅葉温泉へのバス停と時刻を確認。
事前の下調べでは、花蓮から瑞穂駅経由のバスが有るらしいという情報はキャッチしていたのだが、残念ながら具体的な時刻などは不明。
観光案内所の男性に英語で訪ねてみると、片言の日本語で「バス ナイ。 タクシー ノル。」との返事が返ってきた。まあ駅から数キロ程度しか離れていないので、タクシーに乗っても大した金額では無いはず。
この瑞穂駅近辺には、温泉地が点在しており、その中でも有名なのは日本統治時代に開発された瑞穂温泉と紅葉温泉だろう。
瑞穂温泉は有馬温泉の金泉に近い泉質とのことで当時から好評だったのだとか。
一方の紅葉温泉は無色透明な泉質ながら、日本統治時代に警察関係の保養所として建てられた建物がそのまま旅館として受け継がれており、静かな一軒宿として好評なのだとか。
観光案内所には、この2軒の他にも、多数の温泉旅館の案内カードが準備されており、今後の参考も含めて数十枚(全種類)のカードを頂いておくことに。
そして片言の日本語を話すおじさんが、コンピューター端末(中国語)を操作しながら、「ココ エキ ネ。 コノ ミチ イク。 ココ モミジオンセン ネ!」と言った具合に色々と親切に教えて頂いた。
一旦、コンビニ(ファミマ)に寄って飲み物など確保した後、再び駅前へ戻り、タクシーの運転手さんに筆談で紅葉温泉へ行ってくれるよう依頼しようとしたところ、先ほどの観光案内所のおじさんが出てきて、運転手さんに紅葉温泉へ行きたがっている旨を伝えてくれる。
この運転手さんも片言の日本語が話せるようで、「モミジオンセン ネ!」とあっさり了解。
そして日本語と英語で値段を確認するも通じなかったので、片言の中国語で「トゥーシャオシェン?(多少銭)」と聞いてみると、「ニヒャク エン ネ」との事。
台湾人の言う「エン」というのは、日本円ではなく、台湾元の事なので、200元≒520円ということになる。
台湾のタクシーは、物価の割にあまり安くはないので、まあこんなトコロだろうと判断し乗車。(もちろん日本のタクシーと比べると随分と安いのだが)
そして走り出したタクシーの車内で、「ヨヤク アルカ?」と聞かれたので、「無い。泊まれないことがあるのか?」と聞いてみたのだが、今ひとつ通じなかったので、「クーマン(客満) アルカ?」と聞いてみると、「トキドキ アル。トキドキ コム。ニホンジン ヨククル。」とのこと。
そこで「イフ(if) モミジオンセン(紅葉温泉) クーマン(客満)、プリーズ(Please) ゴートゥー(go to) ミスホオンセン(瑞穂温泉)」と日中英混合で伝えて、瑞穂温泉を第二希望にすることに。
それでダメなら、先ほど大量に貰ってきた温泉カードの中から、運転手さんオススメの宿へ行って貰って、片っ端から空室を探すしかないだろう。
途中「アソコ ミズホオンセン ネ」などと教えて貰い、瑞穂温泉を横目に通過し、第一希望の紅葉温泉へと到着。
戦前の警察関係保養所だけあって、日本の鄙びた一軒宿の秘湯を思わせる佇まい。
そして一旦下車して、空室を聞きにフロントへと向かうのだが、運転手さんも一緒に降りて、簡単な通訳をしてくれて、あっさりと宿泊OKとなる。
宿の人は日本語はもちろん、英語すら何とか単語で出てくる感じなので、運転手さんが通訳してくれなければ、結構難儀していたかも知れない。
ちなみにタクシーメーターは「210元」となっており、その通り払おうとしたのだが、「200エン デ イイ。 ヤクソク ダカラ。」と200元しか受け取ってくれず。
正直チップを払っても良いくらいに親切にして貰ったのだが、200元で良いと仰るので、ご厚意に甘えることにする。
なお帰りのタクシーはメーターも倒さず走り「200元」と言ってきたので、どうやら駅から温泉へは200元均一とするという暗黙のルールが存在しているようだ。
タクシーの運転手さんと別れ、チェックインの手続きを済ませて部屋へと向かう。
戦前からの玄関
廊下などそれなりにリフォームはされているものの、基本的な造りは日本時代そのまま
そして客室
日本時代から現存する本館(?)の客室で、当時のままの和室で、くつろげる空間。
しかも畳や壁などはリフォームされており、ファンやテレビなども設置され、清潔で快適に過ごすことが出来る。
但しトイレと洗面は共用。
しかしコレが難儀で、蛇口など細かな部分は交換されているものの、基本的に日本時代そのままの造りなので、雨が吹き込む渡り廊下にタイル張りの昔ながらの洗面所が設置されていたり、水洗化こそされているものの離れの昔ながらの「厠」といった趣のトイレなど、現代の生活になれてしまうと、今ひとつ快適とは言えないのである。
実は最近建てられた、新館(?)に洋室トイレ・洗面付きの部屋もあるのだが、こちらは特に趣もなく、味気ない感じなのに加え、お値段が3倍以上となってしまうので、今回は本館和室をチョイス。
(フロントで写真を見せながら部屋を選ぶことが出来る。)
ちなみに今回滞在した和室…1泊朝食付き、温泉入り放題で、なんと500元(≒1300円)とビックリするくらいの破格。
台湾の物価を考えても安すぎで、設備を考えると何だか申し訳なくなりそうなほどである。
館内図
正面の「花園」(花壇)の下にあるのが、日本時代からの和室。その他の離れになっているのが、ホテル形式の部屋。
また和室でも鍵が完備されており、安心して滞在できる。
増築部分のホテル形式の部屋
● 温泉に入浴
そして早速ロビーを通って温泉へ
浴場へは一旦、外に出ることになるのだが、サンダルなども無料で貸し出してくれる。
但し大浴場・露天風呂は水着着用で、必要なら売店で購入することになる。(脱水機は無料で利用できる)
先ずは貸し切り制の家族風呂を覗いてみることに
日本と違って、裸で大勢で入浴するという習慣が無いこともあって、こうした個室形式の温泉浴場が台湾ではウケているのだとか。
但し制限時間が30分と言うのが、日本人からすると妙に短く感じられてしまう。やはり入浴文化の違いなのだろうか。
なお今晩は宿泊客が私を含めて3組しか居らず、後の2組は家族連れでプール感覚で楽しみに来ているようなので、こうした個室形式の浴場の需要はなく、湯も張られていない状態。
そして大浴場で入浴。
脱衣棚と湯船があるだけのシンプルな構造で、洗い場すら存在しない。
そこで湯船から湯をくみ上げて体を洗うことに。
肝心の温泉はと言うと、無色透明、しかも無臭で、悪く言えば「有り難みがない」とも言えるのかも知れないが、柔らかなぬるめのお湯で、ゆっくり入れる優しい泉質。
しかもジャブジャブと掛け流され、常に新鮮なお湯が注がれているのもポイント大。
家族連れは専ら露天風呂を楽しんでいたようで、こちらの大浴場はずっと私の貸し切り状態であった。
そして中庭を眺めつつ、今度は露天風呂へ。
こちらは温度の違う3つの浴槽があり、好みの温度の湯船に入れるのがポイント大。
違う角度から
打たせ湯も完備
全体的に少しぬるめなので、一番ぬるい湯船だと「水風呂?」と思ってしまうほどなのだが、一番熱い湯船なら、普通の日本人でも十分楽しめる暖かさ。
但し熱い湯が好きな人にはかなり物足りないかも知れないが…
なおこちらの露天風呂には、男女別のシャワー付き更衣室や、コインロッカーも完備され、お作法はプールに近いのかも知れない。
● 珈琲屋で夕食&晩酌
こうして温泉でリフレッシュし、今度は夕食。
但し山裾の一軒宿なので、外に食べに出ることは困難なため、宿の餐庁(レストラン)などを利用することになる。
しかし餐庁を覗いてみるものの、営業している気配は無し。何せ今晩は客が3組しか居ないので、レストランなど開店できないのだろう。
すると後ろからお婆さんが日本語で「ユウショク タベルカ? ソコデ ヨウイスル」と、館内案内で「珈琲屋」と書かれているエリアを指示してくれる。
但し電気の付いていない状態では、タダの荒ら屋にしか見えない…
しかし電気をつけると、少し雑然とはしているものの、一応(?)オサレカフェ的な空間となる。
お婆さんは「オジイサン イマ フロ ニ イル。スグニ クル。」と言い残して自宅(実は紅葉温泉で一番立派な建物)へと引っ込んでしまった。
そして風呂上がりのおじいさんがやって来て、ようやく本格始動。
まずは目に付いた「小米酒」というお酒をオーダー。
おじいさんに聞くと、「ゲンジュミン ノ サケ」との事。
昨日、台湾原住民文化園区を訪れたばかりと言うこともあって、先ずはこちらのお酒からスタート。
「1杯80元、1本300元」とのことだが、最初は恐る恐るグラスでオーダー。
系統的には米ワインや濁酒に近い醸造酒で、意外に甘みもあって、柑橘系のドロドロチューハイでも飲んでいるような感覚。
ついつい2杯目、3杯目とオーダーし、結局はボトルで買っておいた方が良かったかもというオチ。
そしてポテト(炸薯條)や唐揚げ(麦克鶏塊)と言ったおつまみメニュー(各40元)も有ったのだが、やはり何か食事を食べたい。
戸板に書かれているメニュー
どうやら河豚が名物で、鍋など食べ方も選べるようで、しかも250元は安い!
…と思ったのだが、モノがモノだけに、台北の信頼できる店ならともかく、ここで食べるのは少し不安に思いパス。
別に宿を信用していないわけではないのだが…
正直言うと、このおじいさん、日本語を話せる世代と言うことで、相当お年を召しておられると推察するところなのだが、オーダーや会計を間違えるなど、お年を召した方ならではの事もあるようなので、流石に河豚となると…と思ってしまった次第。
結局、炒麺(チャーメン、要するに焼きそば)に落ち着く。(60元)
味の方は…可もなく、不可もなく。
そして「コレ タイワン ショーチューニ。」と「台湾焼酎煮」なる料理をサービスしてくれた。
一瞬、「台湾焼酎って」…と思ってしまったのだが、要は高梁酒。
そもそもアルコール度数が50%を超えるような酒なので、多少煮たところでアルコールが飛びきって居らず、料理と言うより、これはこれで立派な晩酌。正直かなりヘビーである。
こうして夕食のような晩酌タイムを過ごしていると、宿の犬がおねだりにやってくる。

(感度を上げているので、置物のようにも見えるが、れっきとしたホンモノの犬)
しかし残念ながら、あげられるような料理は机の上になく、暫く粘っていたモノの、何も貰えないと悟ったのか、すっと去っていった。
犬は構わないのだが、この珈琲屋、造りが造りだけに常に蚊の襲撃を受け続けなければならないのが困ったところ…
そして部屋に戻るものの、お腹が落ち着くまで温泉に行くわけにも行かず、テレビを見て一休み。
和室で寛ぎながら、
こんなテレビを見ていると、ここが台湾であることを忘れてしまいそうである。
(テレビの内容を紹介するのは、ややグレーな感じなので、本編とは関わりない形で、敢えて
別記事としています。)
そして寝る前に温泉で体を温めて、畳の上に布団を敷いて大の字で就寝。
台湾の旅も5泊目。疲れも出てきているので、とても良いリフレッシュとなったのだった。
ちなみにこの宿…布団は部屋に積んであるのだが、シーツ類は無し。
但し布団カバーは交換されているようで、このまま寝て構わないと判断。
(一応、翌朝自分の使った布団がわかるような形にしておいた。)
神経質な人は、シーツなど持参した方が良いかも知れない。
そして朝食もまた珈琲屋で用意される。
先ずは温泉珈琲が出てきて
厚切りトースト(バターの他、チョコレート、ピーナッツ、ココナッツ、草苺、抹茶など選べる。藍苺…って何だろう…)が出てくるだけのシンプルなメニュー
それでも単品で頼むと、珈琲70元、トースト40元との事。
そうなると、110元相当の朝食込みという訳で…1泊朝食500元という価格設定はやはり安すぎるのではないだろうか。
<つづく>