基本的に旧いクルマが好きなのだけど、仕事柄いろいろな車に乗る機会も多く、新車の中にも気になっていながらもまだ乗っていないモデルがある。このトヨタ86(スバルBRZ)もそんな1台。Newハチロク(とBRZ)は、トヨタが当初掲げたコンセプト通りの車に仕上がっているらしいことと、987ケイマンの運動性を指標に開発されていること、ボクサーE/Gの重心の低さとFR駆動ということもあり、是非乗ってみたかったのだ。そこで仕事の合間を縫ってネッツ店で試乗させていただいた。このネッツ店は86に非常に力を入れており、「AREA 86」が併設されている。駐車場にはオーナーが乗りつけた86が並び、なかなかの壮観だ。
http://dealer.autoc-one.jp/toyota/dealer-report-1073564/
さすが間口の広いトヨタディーラー、初見でも快く即座に試乗ができる。まずはフルチューンに近い6MTのGTに試乗。早速乗り込むと、これだけオプション満載でチューンされているにも関わらず、全く無味無臭のコクピット(もちろん良い意味)。ウッドやレザーやオイルはもちろん樹脂のニオイさえ無く、シートとステアリング位置をアジャストすると、おそらく誰にでもピタリとポジションが決まる。無味無臭なのは、ドライバーがクセのあるマシンに合わせるのではなく、アナタ色にクルマを染め上げてという粋なはからいともとれる。
ちなみにリアシートはポルシェ911より狭く、前座席とのスペースがほぼゼロで脚の置き場が無いため荷物置き場的な使用が限界かな。

スタートボタンを押しエンジンを始動させブリッピングすると、チューンされた排気系はかなり威勢が良く心地良いエキゾーストノート。対して拍子抜けするほど軽いクラッチペダルとシフトノブを操り全開加速をくれると、現行ロードスターより多少劣るかと思われる加速感。絶対的なパワー感は無いが、このスバル製ボクサーエンジンは現行トヨタ車のどの4気筒エンジンよりも確実にキモチいい。交差点ひとつを曲がるだけでも、確かに重心の低さとハンドリングのクイックさは感じる。過重をかけてコーナーを抜けると、FRならではのコントロール性の良さも光る。プロペラシャフトの剛性も非常に高い。電子デバイスが介入するまでは飛ばさなかったが、是非ワインディングかサーキットを全開で走ってみたいと思わせる素性の良さ。チューンされ締め上げられた前後サスも好みのダンパーの効き具合だったが、このままだと街中はちとキツいかな。
少々いただけないのがトヨタ車によくあるオーバーサーボのブレーキフィールとパワステが効き過ぎのステアフィール。特にブレーキはハードブレーキング時のコントロール性が掴み難いので、限界に達する前にABSが介入してしまいそうになる。クラッチペダルとシフトノブも軽いので全体的に手応えが薄く、メカニカルな感触が伝わってこない。それでも実はインフォメーションは充分にある方なのだけど。操作系全てが軽いために車重も実際以上に軽い感触を受けるが、慣性マスは車重並みにはたらいているので油断は禁物。ステアリングホイールも膝上の居住性を考慮した偏心タイプなのか、タイトに切り返すとセンター同心円から上下するのも気になった。
続いてATのG(フルノーマル)に試乗。ハデなオレンジメタリックが夕陽に映えてなかなかカッコいい。走り出してすぐに感じるのが、トルコンATの出来の良さ。自分は完全マニュアル派なのだが、このATは素晴らしい!通常のプラネタリーギアを用いたトルコンなのに、デュアルクラッチ2ペダルMTを思わせるフィール。マニュアルモードに入れてシフトアップ/ダウンしても、敢えて残したと思われる僅かなショックとブリッピングを伴って素早く変速する。ノーマル16インチのグリップとハンドリングも良く、ステアリングインフォメーションも適切なので、車の挙動が掴みやすい。びっくりするようなパワーは無いが、腕に自信があればサーキットや峠をかなりのペースで走れる(ブレーキがもてば)だろう。ATでもクルマを操るフィールを結構楽しめる。
パッケージングと開発コンセプトから想像していたように、現代ハチロクはかなり素晴らしいクルマだった。ポルシェと違いトヨタもスバルもスポーツモデルだけを造っているメーカーではないので、この性能なら総合的に見て充分以上に買いだろう。確かに内装の「高いオモチャ感」のある質感と、そこここに見えるコストダウンの形跡はあるのだが、この価格で出してきた両社の英断に敬意。モノづくりニッポン万歳!果たして86(BRZ)は「全然アリ」なモデルだった。もっと若者に売れてほしい。
※あくまで個人的な感想です。
Posted at 2013/01/19 22:05:35 | |
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