アップする順番を間違えてしまいました。前回と前後してます。
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第2拠点では誘導灯となる灯火が全く無かったが、第1拠点ではその正反対で目標とする灯火があり過ぎた。
灯火を目指して着陸する事を命じられていた第1飛行隊は村民兵の性癖もあって、それぞれ別々の灯火を目指したので、ナイナイメー辺地に部隊は広範囲に四散して着陸する事になってしまった。
部隊として機能しない異常な事態である。
宵闇に紛れての唯の静かな着陸作戦ではあったが、ここまで航空機が大きく散ってしまうと隠密裏の作戦も唯のお祭り騒ぎに変貌してしまった。
そうなると、D村の村民警備兵もその騒ぎに気がつくはずであるが、D村独裁者のアフェト・ラ将軍様の元にこの侵攻の事実を伝える伝令は来なかった。
「マルケットベルト作戦」が展開されているこの北方地帯はD村でさえ手がつけられない程の無法地帯となっていたのである。
そのうえさらにアフェト・ラ将軍様はこの場所が好きではなかった。
というよりも凄く嫌悪しており、その嫌悪感の現れでアフェト・ラ将軍様はその境界線に高い壁「テラ里の長城」を作れとドナール・ド・ランプに命じていたのだ。
実はアフェト・ラ将軍様は本気で壁を作る案は村費の関係であまり乗り気ではなかった。
少しでも多く、戦費に回したかったのである。
しかし、村会議中に悪夢のような北方地帯の事を思い出して、何気なく「壁でも作ればよい」とボヤいてしまったのだ。
この一言を聞きつけたのが、次期将軍の座をニーク・ソンソンと争っているドナール・ド・ランプであった。
ランプはこれを機会にソンソンよりも中央へ近づくべく、「築城費は北方蛮族から拠出させる!」のだと甘い戯言をアフェト・ラ将軍様に提案した。
そういう事であれば、村の予算は不要であるし、一時的にも政敵を北方へ追い出したその留守中に失脚の罠を張れると踏んだアフェト・ラ将軍様は、ドナール・ド・ランプに「築城せよ」と、即日命じたのである。
ニーク・ソンソンも柱の影で一時は悔しがったが、留守中のなんとやらでニヤリと笑った。
そして、将軍様の期待を一身に受けて勇んで出陣しのだが、ドナール・ド・ランプであったが、未だに北方地帯から戻って来なかった。
「テラ里の長城」の形も、影すらも見えていないのが現状であった。
巷ではアフェト・ラ将軍様とドナール・ド・ランプのこの会話を盗聴していたニーク・ソンソンが裏で妨害工作を手引きしているのだと噂されている。
それはさておき、北方地帯はD村から隔絶されており、左遷組が懲罰目的で適当に配置されるだけの地であった。
なので、第1飛行隊という大部隊の騒々しい着陸をD村のアフェト・ラ将軍様は知る事がなかった。
この事実はD村に知られること無く遂行する「マルケットベルト作戦」の成功への大きな好条件であった。
村民の性癖が足を引っ張るも成功はほぼ確実であった。
バーナモン・ゴメリー中尉は着陸すると直ぐに、自分はベストポイントを確実にGETしたのだと確信し、億万長者の夢を見ながら「富嶽29号」の翼から勢いよく飛び降りたのだったが、降り立った場所は泥沼の縁であった。
さらに飛び降りた勢いがあまり、積もりつつある雪溜りに足を取られ、まだ凍りついていないコッテリとドロドロのシチューのような泥沼に頭からダイブしてしまった。
ゴメリー中尉が自信満々に選択し、他機を押し退けてまでして目指したこの灯火は正に「ハズレ」であった。焚火の脇で猿鳶伽椰子と黒猫が焼き芋を頬張る手を止めてこの奇妙な来訪者をじっと見つめていた。
泥に埋まるゴメリー中尉は多額の懸賞金も高価な商品も、それらの片鱗すらも得られない事を自ら悟った。
この事態に陥った身の不幸が心に重くのしかかる。
その心の重さからなのか、あるいはゲリラ雪将軍が背後から断続的に襲い掛かって来る為なのか、ゴメリー中尉は背中にずしりずしりと断続的に重みを感じていた。
「富嶽29号」からゴメリー中尉の後に続く村民兵達は自分の足を汚さないようにと、次々とゴメリー中尉の背中を足掛かりにして乾いた地面に飛び降りていた。
なかには、ゴメリー中尉の後頭部をそっと押さえる村民兵も居た。
そして、泥に顔を埋めたゴメリー中尉は村民兵からの不純な行為に気がついていない。
ゴメリー中尉の心中はそれどころではなかったのである。
埋まった瞬間は「一生の不覚」と自責していたが、すぐにゴメリー中尉はこの危機を乗り越える打開策を模索し始めている為、心中はその思惑の嵐が渦を巻いていたのだ。
ゴメリー中尉の選んだ着陸地点がハズレであった事は動かしようのない事実である。これは今更にどうする事も出来ない。
故に、今後はこの事実を一切口外しない事であった。
だが、村民兵達の軽い口は塞ぐ事はできない。
そして、このハズレを引いた事が噂となって広まった時、村民兵からの信用を失墜する事になる。
それは中尉として、統率者として、また命令する者として、断じてあってはならない出来事であった。
そして、ゴメリー中尉のプライドの問題もあった。
この八方塞の状況から確実な打開策を求めてゴメリー中尉の頭脳が目まぐるしく回転していく。
この「ハズレ」の事実から村民兵の注意を逸らす必要があった。
「ハズレ」の事実に疑問を持たせるのだ。
そして作戦命令を矢継ぎ早に発すれば、村民兵は考える余裕も、軽口をたたく暇すらも与えないようにする事だと考えた。だが、この無残にも泥に埋まっている事実をどう弁解したらよいのかが問題であった。
周囲は物音ひとつしない静けさとなっていた。背中に心の重みも感じない。五感でそれらを感じながらゴメリー中尉は「沈黙の使命感」に燃え始めた。弁解となる理路整然とした説明がつく理由を思いついたのである。もちろん、ハズレの事実が胡散霧消するまでである。ゴメリー中尉は不敵に泥の中でニヤリと笑った。
中尉は泥沼の中から立ち上がった。
そして、思いつく限りの命令を発しようと口を開きかけたが、大きな「ハズレ」の文字が目に飛び込んだ。
その横断幕は中尉の周りに張り巡らされていた。
それを見たゴメリー中尉の行動が一旦停止してしまった。
口は開きっぱなしとなり、心臓の音すら聞こえてこない。
そのさなかに村民兵達の爆笑が湧きおこり、中尉の神経を逆撫でた。
中尉の中で何かが音を立てて切れた。
切れて開き直ったバーナモン・ゴメリー中尉は異常に強かった。
目を血走らせて「何をしとるか!」と馬鹿笑いする村民兵を中尉は怒鳴りつけるなり、近くに立っていた村民兵を掴むなり、泥の中へ放り投げてしまった。
投げた後「カモフラージュせよ」と中尉は再び怒鳴る。
そして、泥浴びを拒み逃げようとする村民兵を捕まえるなり、「カモフラージュだ」と何度も口にしながら次々と泥の中へ投げ込み、蹴落としていった。
この騒ぎで瞬く間に準備された横断幕は泥まみれになって消えていった。
ここへ着陸したのは作戦遂行の為に重要な理由があるからだと頭ごなしに中尉は村民兵にその理由を押し付けた。
ゴメリー中尉の理屈はこうであった。
ここは敵陣であり、我々はワンワンセブン高地を確保するまで敵に悟られないように隠密行動をしなければならない。
故に、周囲の闇に溶け込むためにはカモフラージュが必要である。
従って、泥でカモフラージュする為に、この泥地を選んで着陸したのだという理屈であった。
そして、部下達全員に泥浴びを命じ、渋る村民兵を次々と泥沼に蹴落としていった。
村民兵達の頭の中から着陸地点に関する諸々の出来事、つまり中尉にとって不利益な事を消し去る為に、中尉の命令はさらに続いた。
野戦司令部の設営を命じた。
色がおかしい、形が歪だ、部屋割りが気に入らない、寝室に窓がないなどいろいろと難癖をつけてやり直しを命じた。
グライダーに積み込んであった分解した移動用手押し車を大急ぎで組み立てさせる。
組み立て終わるなり、直ぐに物資を積み込ませる作業を命じた。
時々、なにかと因縁をつけて物資の載せ替えや、既に物資を乗せ終えた手押し車の組み立て直しを指示する事もあった。
作業に遁走する村民兵をとことん急かして回る中尉であった。
考える時間を与えてはいけないのだ。
中尉は手すきの村民兵を単独で全方向に偵察へ向かわせた。
単独で村民兵に偵察させるのは、噂する相手が居なければ中尉への不信も自然に消滅してしまうと踏んでの事であった。
偵察兵には、味方を見つければこの場へ集合するように指示した。
もちろん、一緒に戻らず、引き続き偵察を続けるようにと念押しの命令を与えている。
あくまでも中尉のプライドを守ることが優先されているが、四散した部下を集める事と状況の把握も行っていた。
暗闇に溶け込む為に泥でカモフラージュした村民兵達が周囲に散っていく。
彼らの泥まみれの姿は確かに闇の中では見えないが、真っ白い雪化粧の中では、真っ白いご飯に振りかけた焼ごまのように夜の闇な中でくっきりと浮き上がって見えていた。
カモフラージュの意味がなかったが、それを気にする村民兵はすでに居なかった。
村民兵の関心はすでに泥遊びに向いており、泥で塗り固めた野戦司令部が出来上がったが、誰にも命令されていないのに、村民兵用宿舎がその横に建設され始めていた。
当然、野戦司令部よりも一回りも二回りも大きくて豪華な宿舎である。
その部分が気に入らないバーナモン・ゴメリー中尉であったが、村民兵の頭から「ハズレ」の件を消し去る為の必要悪として、建設に夢中な村民兵の行動を黙認した。
後で、司令部と宿舎の看板を張り替えれば良いのだとも考えている。
「ハズレ」の事実を消す活動は順調に進んでいるが、この状況で部隊を集合させるにはかなり厳しかった。
暫くして、バーナモン・ゴメリー中尉の直轄部隊である第30軍団の一部が集まっただけである。
ゴメリー中尉は第1飛行隊がかなりの広範囲に散ってしまった事を改めて認識した。
ゲリラ雪将軍の突然の襲来に会いながらも、広範囲に散った全部隊を集合させるのは不可能と判断したゴメリー中尉は周辺に伝令をとばした。
雪原に焼ゴマが散って行く。その内容は「各個ワンワンセブン高地を目指して進軍せよ」であった。
ゴメリー中尉はワンワンセブン高地を集合地点としたのである。
しかし、このナイナイメー辺地には中尉を悩ませるゲリラ雪将軍よりも更なる脅威が存在していた。
-- 灰色猫の大劇場 その2 ----------------
灰色猫が玉座に座って・・・・・居なかった。
劇場の舞台も観客席も劇場メンバー総出で踊り狂っていた。
灰色猫を筆頭に黒猫・蜻蛉とその仲間(オニヤンマ)・バニー服の兎・バニーガールの元祖、稲葉のバニーガール・通りすがりの神様・放火兎・狸・陸亀・蛙・蟻さん達・電気ウナギ・ツバメ・シオマネキ・カモメ・蜻蛉の最強の天敵である洟垂れガキの集団・青蛇(自称オロチ)、他多数が「語り部が間違ってやんの!ばんざーい!」とかなんとか吠えながら踊り狂っている。
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劇場を巻き込む、関南大地震・おふじ大噴火と鉄壁津波とCA大火災が同時に発生した。
ホンダ フリードスパイクハイブリッド フリードスパイクハイブリッドに乗りました。 |
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