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2022年03月21日 イイね!

プーチンは責任をとれ

ウクライナへのロシア軍侵攻は断固、非難する。
ロシア製商品はボイコット中!

Posted at 2022/03/21 20:08:19 | ぼーや木 | 日記
2022年03月21日 イイね!

物語A218:「それぞれの復活」

アイゼン・ブル・マクレン大佐の息子であるアイゼン・ブル・マクレン・ジュニアは、父親であるマクレン大佐から初陣には今のジュニアの実力ではまだまだ程遠いいと見なされていた。
ジュニアが主張する勇気ある行為は、若さからくる勇気であって、その勇気によるジュニアの思い描く英雄的行為は思い上がりの無謀な行為、ただそれだけであるとマクレン大佐に断じられた。

仮にジュニアの期待するそのような英雄的行為を行ったとしても唯の英雄となって終わるだけである。
さらに、それはその行為を英雄として広める者が居ればであって、ほとんどの場合は無い。

マクレン大佐は世間で祭り上げられている英雄とは死と隣合わせの存在であるとしか考えていなかった。
また、ジュニアが思っている英雄像とは現実の戦場では仲間までをも巻き添えにして死へ先急ぎする大馬鹿者で大局を見る事の出来ない無能な小者なのだよとジュニアを諭した。

そして、ジュニアの負けず嫌いな性格を見透かして、負ける事を恥と思ってはいけないとも諭した。
かの、家康公は「三方ヶ原の合戦」で大敗した後、自画像「顰(しかみ)像」を残し、負け戦を自らの教訓としたのである。
土方歳三は負け戦の経験を元に「二股口の戦い」で新政府軍から勝利を奪った。それも数千の政府軍に対し味方は数百の闘いであったと聞く。
かの猛将である織田信長も「金ヶ崎の戦い」「斎藤家との戦い」「浅井・朝倉との戦い」「石山本願寺との戦い」「長島一向一揆との戦い」「毛利家との戦い」「武田家との戦い」「上杉家との戦い」「伊賀地方の戦い」と数限りなく負けているのだ。
だが、そこから戦の何たるかを学び、これら負け戦を上回る勝利を得て天下をほぼ奪い盗ったのである。
かの軍神である上杉謙信も61勝2敗8分とされており、必ずしも全勝ではない。
つまり、先人の英雄達に見習って負けを恐れる事はないし、それで恥じ入る事もないのである。

今のマクレン・ジュニアの気性ではこの負け戦になった時に無理にでも負けを挽回しようと勇み足を踏んで、野に果てるに違いなかった。
うまく、後世にその戦いを残す事ができれば英雄となって書物の中の一文となるかもしれないが、結局のところ唯それだけなのである。
一歩間違うと、いやほぼ間違いなくその書物の一文にすらなれないとマクレン大佐は確信している。
むしろ、第3次全村大戦の戦後の復興にジュニアが活躍すればと思っていた。
それで、当初はこの「マルケットベルト作戦」への空元気なマクレン・ジュニアの参加をマクレン大佐は許さなかった。

しかし、駄々っ子ジュニアであり、マクレン大佐も子煩悩の面を持っている。
ジュニアが簡単にマクレン大佐の言いつけに従う筈は無かった。
早速、子供部屋で床を転げ回り、壁を叩いて泣き喚いてのおねだり攻撃をする。
戸外であればこの攻撃の効果はあったかもしれないが、そこは子供部屋の中である。
それもジュニア自身の部屋である。部屋の鍵をしっかりと掛けられて閉じ込められた。
籠城という手段も考えられたが、子供部屋らしく食料の備蓄はしていなかった。
なかでも、チョコビーが無かった事は決定的であった。
あえなく自沈した。

居間の床を転げ回り泣き喚いてのおねだり攻撃をするが、今度は家の鍵を掛けられて閉じ込められてしまった。
冷蔵庫に食料があったもののジュニアは料理が出来なかった。
空腹のあまりに生の玉ねぎに齧りついてまたもやあえなく渋沈した。

駄々っ子ジュニアは名ばかりではない。
この程度では諦めないのだ。
次は夕食中の鼻水攻撃。
これはかなりの打撃を与えたのだが、効果はその瞬間でしかなく、その報復は激しかった。
部屋の隅まで張り飛ばされるもジュニアの目は父を激しく睨みつけいた。
轟沈した。

深夜での屋根の上の遠吠えは次第にご近所から白い目で見られるという小さなジャブであった。
このジャブが続くとある日突然に片膝付くダメージを与えるという陰湿な攻撃であった。
ある程度は成功するのであるが、効果を得るには時間が掛りすぎた。
さらに、この行為には窓からの景色にジュニアの落下、いわゆるニュートン沈が時折加えられて景色に花を添えた。

ジュニアはアイマスクを付けた。
「子供の子供による子供の為の法」の制定目的とする「ませガキ連合」の中でも最も過激である急進派「Jウィンダム」のシンボルアイテムである目の部分に電球を入れた光る目のアイマスクである。
これをを付けて夜な夜な不気味なほどに無表情な「光る眼」の顔で近所や屋内を練り歩く反戦運動に参加した。
「マルケットベルト作戦」責任者の息子が戦争反対運動の陣営に回ったと知れると、ご近所だけではなく軍隊仲間からも冷たい視線攻撃をマクレン大佐は浴びた。
マクレン大佐は議会で説明責任を追及されるがかろうじて、責任者に立場を守り抜いたが、かなりのダメージを受けた。

こうした、数々のおねだり攻撃にマクレン大佐はジュニアの逸る気持ちに強く押し切られてしまうのである。
だが、戦場への初陣は認めないが、その代わりにレフトブラサー航空基地でのグライダー射出係という折衷案を出してジュニアに了承させた。

グライダーの射出合図をジュニアに任せる事にしたのであるが、マクレン大佐はそれでも心配でならなかった。
このグライダー射出係は傍目から見ればただ旗を振るだけの簡単な役目のように思えるが、グライダー射出係は全飛行隊を定時間内にスムーズに誘導し発進させねばならないという重要な役目がある。
そこに、射出時間の遅れや射出タイミングの乱れがあっては絶対にならないのだ。
従って、各機の発進のタイムテーブルは準備されてある。
グライダー射出係はこのタイムテーブルに従って旗を振れば良いという訳では実はないのである。
本番では様々な事が起きると想定できるので、最後には射出係の臨機応変な手腕に寄るところが大なのである。

この射出時間のタイムテーブルはアイゼン・ブル・マクレン大佐を筆頭にして、A村村民のブレーン達(IQ500以上と自己主張しているところに多少の疑問がある。)とであらゆる不確定要素をも含めた要素を突き詰めて想定外を失くすべく血を吐く徹夜の連続で作成された重要な作戦要綱である。
この時のブレーンの一人は後日回想している。
「赤ワインとトマトジュースのカクテルは飲んだ瞬間に吹き出す程に不味かった」と静かに話しており、「血を吐く」とどのように関係があるか、そのような些末な事は適当に作ったという疑問を残すものの、この歴史書では取り上げない事とする。

この作戦に駆り出された航空機の種類は古風な凧や風船・気球に始まり、ジェットパックやカイト・グライダーまでと種々様々である。
こうした完全ではないが自力で飛行出来る航空機もあれば、ロケット弾の代わりに新米村民兵を撃ち出す自走式多連装ロケット砲「カチューシャ」があった。
新米村民兵は戦闘服の上から頑丈な防護服を着こみ、まるで砲弾のような姿でカチューシャの横に並んで装填されるのを待っていた。
それぞれの目は不安と涙で一杯であった。付近にはパラシュート兵を空中高く放り出すカタパルトや大型パチンコまでも設置されている。
その傍らにもパラシュートをしっかりと抱きかかえている不安と涙目の新米村民兵が並んでいた。

それ程に準備された航空機の種類が多彩である故にそれぞれの飛行速度・航続距離・積載能力などの性能にも大きな違いがあった。
飛行速度の異常に速い機体もあれば亀の様な時には逆走する遅い機体も存在する。
これはタイムテーブルを決する第一の要素である。

(尚、遅い事を亀で比喩する事に対し、現在全国亀連盟より多大なクレームが付けられている。
白黒黄色の差別や障害を揶揄する事と同じであり、個の特性をなじる事に等しいといった具合である。
そして、この比喩をナメクジ・コアラ・ナマケモノ・タツノオトシゴらに変えるべきだという代案が出されている。
これに対し、哺乳類協会・爬虫類同盟・虫科目学会から反論が湧いている。
しかし、全鳥類連盟からの出席が無くハシビロコワをどう扱うかで議会は紛糾し、結論が出ないでいた。
尚、魚類組合タツノオトシゴが紛糾の元となっている全鳥類連盟ハシビロコワを尻目に議会への道を歩んでいるもののその出席はまだまだ先である。)

各航空機の航続距離もしくは射程距離もかなり違っていた。
これがタイムテーブルを決する第二の要素である。

しかし、空中高く上げた凧からのダイビングは河の反対岸までが到達距離であった。
ただ、このダイビングの際に円形パラシュートを背負った村民兵の着陸地点は風まかせの運であり、翼型方形傘体パラシュートを背負った村民兵は岸辺を越え、第一拠点までではないもののかなり内陸部まで到達できた。
また、大型機は途中で過半数の村民兵を投下する為に、その後の速度及び航続距離が延びる場合もあった。
このように組み合わや運航方法で速度・距離という要素が変化する為にタイムテーブル決定の至難であった。

第三の要素として各航空機の一度に運べる村民兵の員数や物資の量、いわゆる積載能力という大きな要素があった。
だが、村民兵が楽に安全に、そして機内食も配られる航空機に集中して集まったりと勝手気ままに搭乗機を決める所も有った為に混乱してしまい、結果的に飛行速度や航続距離に多大な影響を及ぼした。
タイムテーブル決定に最も苦労する要因であり、マクレン大佐の威光が試される時でもあった。

そして、機体の性能に関係しない第四の要因として村民兵を送り込む目的地があった。
この目的地とする中で大きな拠点は3カ所、上陸地点と侵攻ルートを確保する第一・第二拠点に分かれている。
上陸地点は当然の事河の向かい岸であるが、第一と第二拠点は北方地域の内陸に入り込んだ地点で第二拠点が一番遠方、つまり内陸部の最深部にあった。

そのうえでさらに難しくしているのは、この3カ所以外に情報収集・伝令を任務としながらも同時に後方攪乱や戦闘支援を行う猿飛佳也子を隊長とした「毬高雅(いがこうが)忍び隊」の存在でであった。
この部隊は三つの拠点とは関係なしに各地に分散させなければならないのである。
それも、本隊が各拠点に到着する前にである。

もちろん、「毬高雅(いがこうが)忍び隊」は独自にこの射出以前に忍術を使って渡河している。
ここで渡河する為に航空機を必要とするのは特殊な忍術を持たない使い捨ての下忍達であった。
それと、攪乱と支援を行うに必要な物資である。
大半の年季の入った忍びはそれぞれ得意な忍法「アメンボ」「水すまし」「河童」で水面を歩いたり、潜水したり泳いだりして渡河し、忍法「バルーニング」で風に乗って北方地域全域に散会して配置に着いており、運ばれて来る使い捨て下忍達と物資を待っていた。
尚、プロ中のプロの忍びは既に「草」として北方地域に根付き、中には地元蛮族を組織して一部隊を作っている忍びもいた。

タイムテーブルにはこれら要素を踏まえて、三つの拠点で同時にその地の拠点確保と陣地構築というミッションを起こすに必要な村民数と物資の同時現着が求められていた。
仮にそれぞれの各航空機の現着時間に大きく差が出来てしまうと、最前線で武器輸送機の到着をぼんやりと待つ無防備の部隊が出たり、受け取り手のない空き地に、最悪は敵もしくは反勢力の上に物資をばら撒いたりしてしまうのだ。
当然のごとくこれらは各部隊の拠点での作戦行動に著しい支障が起こしてしまい、スピードと同時性と連携を要とする奇襲作戦「マルケットベルト作戦」が根底から失敗する可能性が多いのある。

タイムテーブルの作成は遅々として進まなかったが、アイゼン・ブル・マクレン大佐とブレーン達の不撓不屈の精神の元で、速度・航続可能距離・積載能力・目的地を考慮したうえ、作戦遂行にが滞りなく遂行される様に各機の射出時間のタイムテーブルが厳密に作成されたのであった。

しかし、事細かにタイムテーブルが決まっていても、発進間際の機体や搭乗村民兵のコンディションは複雑である。
これ故に計画に無い想定外の事や思いがけないトラブルが次々と発生する。
そして、射出する側もされる側もその対応に手惑ってしまう。

事実、射出する寸前にキャンプファイヤーの丸太を詰め過ぎが発覚したり、鍋物一式を積むために武器を放り出してしまう輩が出現して大騒ぎになったり、その対応にMPや自警団・消防団が出動してタイムテーブルが乱れてしまった。
勇気と意気込みは買うのだが、飛行に失敗した村民兵が舞い戻って来て再出発しようとした。
この割込み阻止に手間取り、順番待ちしている列に無理やり割り込まれてしまうと、そのような割り込みの余地など無い密なタイムテーブルは乱れた。
マクレン大佐とそのブレーン達にとって全くの想定外が現場では次々と発生するのである。

こういった想定外の事に適切に対処できないうえ、何も考えずにタイムテーブルの通りに空へ航空機を次々と放つと、空中では渋滞が発生し、航空機同士のニアミスや空中衝突を起こした。
航空事故が起こると、戦力を無駄に消耗するばかりではなく、その事故処理にも時間を浪費するのだ。
旗振り担当は刻々と変化する状況を確認しながら、タイムテーブルに遅れが無いように微調整し、時には順番を大胆に入れ替えたりしなければならない。
マクレン・ジュニアにとっては唯の旗振りであまりにも単純な仕事のように見えているが、実は作戦の成否を左右する程の重要な任務を秘めているのである。

それであるからこそマクレン大佐は指名したものの心配のあまりに、横で浮かれて旗を振って踊るジュニアを押さえつけ、その喉笛に冷たい冷たく光る刺身包丁を突き付けてこの任務の重要性をとくとくと説いた。
説きながらも内心ではジュニアの高ぶる気持ちが抑えられ、その重要性に臆して出征を諦めてくれれば尚良しとマクレン大佐は思っていた。
ふと、悪魔の声に従って刺身包丁をほんの少し前に繰り出そうかとも思った。

屋根のない火の見櫓。
「マルケットベルト作戦」の開始当日である。
この火の見櫓は自称「メイン管制塔」と称している。
もちろんマクレン・ジュニアに依っての命名である。
そこからはレフトブラサー航空基地の河面の崖縁にびっしりと居並ぶグライダー射出機が一望できる。
射出機と共に様々な航空機が並び、発進の待機をしていた。
射出機周辺では作業用投光器の青白い光の他に無数の村民兵が持つカンテラがせわしなく動き回り、グライダーの威容を闇の中に浮かびあげていた。溶接機の飛び散る火花がそれに花を添えており、その美しい光景を眺めている自分が何か特別な存在のように思えてしまうマクレン・ジュニアであった。
その気持ちをさらに沸騰するまで沸かせる多数の視線がマクレン・ジュニアと、その手に持つ旗に集中している。
自らの体を緊張が走り抜けてマクレン・ジュニアは身震いする。
そのまま英雄へと昇華してしまいそうであった。

マクレン大佐の「GO」サインが水性極太マジックでごっつく大きく書きこまれた軟球が、伝令の剛腕によって火の見櫓上のジュニアを狙って投げつけられ、輝く栄光を夢見るマクレン・ジュニアの頬を深く抉る。
同時にボギュッと鈍い音が火の見櫓上で響き、周辺に居た村民兵が思わず上を見上げた。
世紀の大作戦「マルケットベルト作戦」の開始だった。
頬にくっきりと「GO」の文字を転写したまま、マクレン・ジュニアは鼻血を一筋垂らしながらも、出発の合図であるA村の伝統ある村旗を大きく振り下ろした。
同時に多くの光り輝くグライダーが射出機から放たれて視野一杯に広がり、ジュニアの頭上を覆い尽くす。
まるでサテンのような光の絨毯だ。
その中をロケットランチャーが火を噴き、カイトが崖から飛び出してゆく。
正に壮観な光景であった。
そして、それが自分の合図で空に花開いてゆくのだとと思うと心が躍ってしまうマクレン・ジュニアである。

第二波が宙を舞い、続けて第三、第四波と続々とグライダーや気球が宙に躍り出て夜空に光点となって舞い上がって行った。
勇敢で英雄候補となる主にA村村民がその機体の胴体部分のあちらこちらに遠足気分で取り付いている。
主翼に取り付いているのはB・F村村民が主である。
翼流で吹き飛ばされないように必死に掴まっていた。
A村に冷遇されていても勝利に向かっているどの目も輝いていた。

カタパルトのアームが大きく振られて、落下傘部隊を上空へ放り出される。
凧がスルスルと宙へ舞い上がって行き、それにつかまっていた村民兵が、上空で宙に飛び出し四脚に結んだ風呂敷をムササビの様に広げて滑空していった。
そんな勇敢な姿を見ていると次第に旗振りをしている自分がなんだか嫌になってくるマクレン・ジュニアであった。

マクレン・ジュニアの力強い合図で笑顔がいっぱいの村民兵を乗せた、風船を束ねただけの風船気球が飛ぶ。
A村で活動する「ませガキ連合」の火種となった風船である。
ハンググライダーが走る勢いで崖から飛び出し、一瞬沈むも直ぐに黒い三角翼で風を捕らえて優雅に静かに舞い上がってゆく。

火男(ひょっとこ)面を描いた凧上がり、その凧には渡河を決行する村民兵が張り付いていた。
四人がかりで一人を揚げるのは非効率的だとマクレン・ジュニアは思いつつも、楽しそうに村民兵達が凧を揚げて操っている姿を見て羨んだ。

ジェットパックを背負った村民兵が空中でバランスを失い八の字を描いて河へ墜落した。
だが、その村民兵は重いジェットパックを一生懸命に引っ張って岸まで泳いで帰ってくる。
そして、再び挑戦し、再び墜落した。
それでも諦める風もなく、ジェットパックを引っ張って泳いでいる。

マクレン・ジュニアは失敗しても真剣に何度も何度も渡河を試みるその村民兵が羨ましかった。
旗振りに興じている自分は紙飛行機にすら乗れないのだと思うと恥じいってくる。
戦地へ行きたい。
戦場で武勇を示したい。
そして、武勲を得たい。
欲望は次第に増してゆく一方であった。

それでも、マクレン・ジュニアは父であるマクレン大佐がその重要性を説いた説法を思い出し、渋々と自分に課された仕事である出発の旗を振りを続けていた。

D村に一撃を加える大作戦、「マルケットベルト作戦」の主戦場に参加出来ない自分を自覚する。
後方で人形のような旗振りをしている自らの境地をさらに自分自身で追い詰め惨めにしていった。
苦痛であった。
旗を上げ下げする腕も痛いし、旗も次第に重く感じられてきた。
交代要員が居なかった。
交代要員に任せて逃げ出すに違いないと予想しているマクレン大佐の指示であった。

ジュニアの胸中では初陣の夢がまた騒ぎだしている。
自分も彼ら村民兵達と共にグライダーに搭乗したくなった。
グライダーの機首部に跨り、角の生えた猛々しい兜を被り、格好よく張扇で前方を真直ぐに指し示して、「進め、進め!我に従って進め!」と号令している姿を思い浮かべる。
何百もの味方を引き連れてD村へ、襲い掛かってくる敵を薙ぎ倒しながら進む姿が思い浮かぶ。

妄想とは裏腹に尾翼にでも良いからこっそりと搭乗してやろうかと考えた。
そして、妄想を現実に変えて、戦地で華々しい活躍する自分を想像した。
勲章をたくさんゲットするのだ。
大勲位菊花章・大鉄十時星章・シルバースター(銀星賞)・殊勲十字章・海軍十字章・空軍十字章・ガーター勲章・レジオンドヌール勲章・サヴォイア軍事勲章・・・・・・・・お肩叩き券・・。
そうして、勲章を胸に一杯付けて、父であるアイゼン・ブル・マクレン大佐を見返してやるのである。
初陣にはまだ早いと断じた父を超えるのだ。
妄想が妄想を呼び、その妄想が興奮の頂点に達した時、丸めたチリ紙の鼻栓が鼻から飛び出し、鼻血が噴出する。

ついに、ジュニアの我慢の緒が切れた。
旗振り任務を難波(なにわ)節名物「くいだおし人形」に任せたマクレン・ジュニアは戦地で武勲を立てようと密かに逃亡したのである。
親子揃って戦場を生きがいとする生粋の武士(もののふ)なのであった。

マクレン・ジュニアは火の見櫓と旗振りに従事している「くいだおし人形」に別れを告げ、レフトブラサー航空基地から河辺に沿って南下しながら渡河するのに都合の良い船が流れ着いていないかと探して歩いた。
船という形をとっていなくとも水に浮くのならばグライダーの残骸でも良かった。
そして、暫く歩むと河面に丸太に跨ってユラユラと揺れ動く一つの影を見つけた。
その影は河の流れに逆らいながらこちらの河岸に向かってゆっくりと櫂で丸太を操っている。
渡河に失敗した村民兵が再び挑戦する為に河岸へ戻ろうとしているのだろうかとマクレン・ジュニアは目を凝らして、月明りの中で、頭上で航空機同士が衝突して閃光を放つ合間に見えるその影を目を凝らして見つめた。

そのちょっと昔、第三次全村大戦がはじまる前に、冒険と新たな世界の探索という夢と希望を乗せ、A村民達の羨望の眼差しの中を近河の辺境へと颯爽と旅立った「USSOエンタメフライス」号があった。
勃発した第三次全村大戦のノルサンデー上陸作戦を遂行すべく「コレ船第2艦隊」の旗艦となるべく近河の辺境から急遽帰還した「USSOエンタメフライス」号であった。
だが、D村、元はF村沿岸のナハロネ・スハルタ舎監の指揮で「ノルサンデーの要塞」からの苛酷な攻撃を受け、旗艦「USSOエンタメフライス」号は「コレ船第2艦隊」と共に河底に沈んでしまったのである。
その艦長がシャット・カークであり、副長は兼務で航水士・化学主任・櫂担当を担っていたスコップ航水士であった。

そのスコップ航水士は旗艦「USSOエンタメフライス号」を失う時に艦橋で奮戦する自分の方へ飛来して来る敵側の異常な弾数とその射角をある疑念をもとに計測していた。
スコップ航水士の論理的思考で統計論学的にこの事象(戦闘中に敵方の弾が飛来する確率)を捕えた結果、カーク艦長の卑怯で卑劣な影の部分を見てしまって落胆するスコップ航水士であった。
さらに、その後の旗艦「USSOエンタメフライス二世号」が完成間近に沈没した時にもシャット・カーク艦長の我先に部下を見捨てての素早いマスト登りを見てしまった。
本部に戻ってから指揮官らしからぬこれらの行為を訴追しようと思ったが、証拠がない事と十分に証拠隠滅の時間がある事から、すぐに脱走することに決意した。

スコップ航水士は沈みゆく「USSOエンタメフライス二世号」から脱出した後、艦長から遠く離れた河辺に這い上がり、付近の岩壁に隠れた。
空から降ってきたグライダーの残骸で手ごろな大きさの丸太を回収し、故郷のB村に帰るべくその丸太に跨って河へ櫂を使って漕ぎ出したのである。
USSOエンタメフライスでは櫂の漕ぎ手も兼任していたので、その経験と腕力がこの時役に立つのであった。
そのスコップ航水士を川辺で偶然に見つけたのがマクレン・ジュニアなのである。

渡りに船とばかりにマクレン・ジュニアはスコップ航水士を大声で呼んだ。
伝説の航水士にここで何かの縁かの様に巡り合えたのである。
船と同時に操船の専門家であるうえ、讃辞の尽きぬ程に経験豊富な百戦錬磨のスコップ航水士を同行させる事が出来れば子ライオンが立派な雄ライオンの鬣を付けたようなものである。
それ故にマクレン・ジュニアは何としても仲間に引き入れるべくに最大の敬意を籠めて、必死に呼び続けた。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
と察したのか濡れるのも構わずに河の中へと踏み込み、水中で膝をついて両手を組んで拝んだ。

ジュニアに乞われるスコップ航水士はその時尊敬していたシャット・カーク艦長の本性をあからさまに見て意気消沈していた。
静かな田舎へ帰省し、気持ちが落ち着くまで静かに暮らすつもりでいた。
気持ちが落ち着いた段階で、徹底的に時間をかけてカーク艦長を糾弾するつもりであった。
しかし、今は一時の休息が先であり、誰にも悟られずに故郷へ引き返すことが第一であった。
特にシャット・カーク艦長だけは絶対に悟られたくない。
だが、河面一杯に広がる程の大声で自分の名を呼ばわるマクレン・ジュニアに閉口した。
シャット・カーク艦長に悟られる可能性が高いのだ。
その大声を消すために抹殺せねばならないと、呼ぶ声に手を振って返事をする。
戦場という混乱の中で消えてもらおう。
そう思いつつも、声の主が大佐の息子であるマクレン・ジュニアであり、ほぼ命令に近い呼び声がスコップ航水士の軍人としての性を騒がせ、生か死かと悩みつつも丸太の舳先を向けて櫂を漕ぐ腕に力が入っていた。

所詮は一介の兵隊であったし、それを再認識させられたスコップ航水士は丸太の舳先にジュニアを乗せ、羅針盤を見ながら二つの櫂を操って丸太そのものの丸太船で大河原へと漕ぎ出してゆくのである。

マクレン・ジュニアはスコップ航水士の操船する丸太船に跨り、自らの勇猛さをA村内外に、そして父に認めさせる機会の豊富にある戦地へと対岸の北方地帯に向かって河に力強く漕いでいった。
船を漕ぐ都度に心意気が沸々と湧いてくるのである。
宴会鍋用戦闘大型スプーンで。
スプーンの先端には特殊な鋏が付いている。
鋏の中腹は万力の様で獲物を挟み付ける。
鋏先端は鋭利な磨かれ、万力部で挟んだ得物を根元から切り取ってしまうのだ。
だがまだ試作品で、宴会場での本格的テストをしていない為に完成はまだだった。
これも父であるマクレン大佐のジュニアへの扱いにあると断じていた。

二度も艦を失ったシャット・カーク艦長はただ静かにじっと潜んでいたスコップ航水士とは違った。
カーク艦長は実に活発であり、大胆で素早い活動をしていた。
諦めるという事を良しとしない性格なのだ。
その騒音が川面を伝ってジュニア元にも微かに届いていた。
USSOエンタメフライス二世号建造の失敗を顧みずに三世号をカーク艦長は建造していたのである。
だが、そこには共にUSSOエンタメフライスで苦労を分かち合ったスコップ航水士はもちろんの事、船医マコも、また「コレ船第3艦隊」編成に向け努力し合った「2ロー」艦長やスッパロ艇長も既に居なかった。
余談だが、編成時の分かち合う労力の配分率はカーク艦長の極秘事項であり未だに公表されていない。

2ロー艦長やスッパロ艇長らの取巻き連中の居なくなったカーク艦長はこの時は自ら進んで指揮し渡河作戦中に不運にも墜落したグライダーの残骸を回収して回った。
シャット・カーク艦長は、今度こそ「コレ船第3艦隊」を再編し、堂々と仕上げた旗艦「USSOエンタメフライス三世号」で指揮する考えでいた。
だが、肩を貼った頑固で伝統を重んじる軍人が好きになりそうな「USSOエンタメフライス三世号」という堅苦しい旗艦名が心に引っ掛かっていた。
口うるさい杓子定規のスコップ航水士は居ないのだ。
そう思うと、自らの名を崩して切れ味の良い事を連想する「スパカット号」に変更しようかとも考え始めていた。
何にでも難癖をつける口汚い皮肉屋の船医マコもいないのだ。
そう思うと、艦隊名を「カーク川猿艦隊」と改めるのもあながち良いのではないかとも思った。
最新鋭戦闘艦「スカパット」号に「カーク川猿大艦隊」である。
カーク艦長はにまりと笑う。

そして、灰色猫墜落による「USSOエンタメフライス二世号」のハルマゲドン的終焉の中を、スコップ航水士と同様にかろうじてその場を逃げる事が出きた「2ロー」艦長とスッパロ艇長は村上武景水軍の主艇:山賊丸で河面を放浪していた。
安宅船の山賊丸に続いて同じく逃逃げおおせた子分どもの小早船とカッターが続いている。
ハルマゲドン的終焉を奇跡的に逃げおおせたのである。
この時の村上武景水軍は主艇ともどもほぼ無傷であったが、山賊丸の艦長はまだ「2ロー」艦長であった。
村上武景水軍のお頭カリフ・ラワ・スッパロ艇長は指揮権を剥奪されたままであった。

スッパロ艇長は建造した「USSOエンタメフライス二世号」を強奪し、同時に「これ船第3艦隊」も乗っ取るつもりでいた。
しかし、強奪するはずだったその「USSOエンタメフライス二世号」は巨大グライダー「富嶽」から落下して来た灰色猫の巨体によっては撃沈され、「コレ船第3艦隊」はまだ骨組みすらも出来ていなかった。
手に入れるはずの全てを目前で失ったスッパロ艇長の制河権制覇の野望は再燃の火種すらなく消化てしまった。
消沈するスッパロ艇長に残ったのは過去の悪行でいつの日か捕縛されてしまう事だけとなった。
その後は拷問やいたぶりが待っているのだ。
スッパロ艇長には新たな策が必要であり、この第3次全村大戦は功を成して運命を書き換える事の出来る絶好の機会である。
勝てば官軍なのだ。
だが今は失望の泥沼に嵌っている。

そして、マクレン・ジュニアと水上で遭遇した時、スッパロ艇長のトレードマークである黒に黄色の×マークの眼帯の裏側でデンジャラスな野望が芽生えるのは当然であった。
スッパロ艇長の動きは速かった。
ジュニアに敬礼する「2ロー」艦長の姿を、その正体をジュニア気取られない様に素早く背後からスープレックスを決めて河の中に始末してしまうと、「2ロー」艦長の居たその場に入れ替わるように立ち上がった。

そして、山賊丸上でジュニアに向かってもろ手を挙げて満面に笑みを浮かばせ、「そこを行く強者は由緒ある気高き者とお見受けするが、さすればアイゼン・ブル・マクレン大佐が御子息のマクレン・ジュニア殿ではござらぬか。」と既に分かっている事だったがわざと問いかけた。
ジュニアはその呼びかけに、このような雑魚キャラまでにも我が名が知れているという幅広い名声に高揚し、先ほどまで居た船上の影の正体には関心が無くなっていった。

ジュニアの反応に気をよくしたスッパロ艇長は丸太船の背後に座しジュニアの影に隠れるようにしているスコップ航水士の細い目に気が付き、スッパロ艇長の目が曇った。
スコップ航水士はジュニアの背後で海賊スッパロ艇長の真の目的を探ろうと一挙手一投足を観察しながら、論理的脳がフル回転を始めている。
「ご油断めさるな。」とスコップ航水士がジュニアの背中に囁きかけるも、飾りつけ豊富なスッパロ艇長の甘い言葉にジュニアは舞い上がっていて、スコップ航水士のその忠告など聞いていなかった。

スッパロ艇長はスコップ航水士の鋭い疑惑の眼差しを気にしながらも、マクレン・ジュニアを指揮官に祭り上げて、最大限に媚を売って同行する了承をジュニアから得た。
カーク艦長の元では野望をかなえられなかったが、A村の有力者に太いパイプ、親子という繋がりがあるジュニアの元でこの第3次全村大戦の最中に武勲を立てる事がスッパロ艇長の野望に繋がると考えていた。
マクレンの親子関係を知らないスッパロ艇長はこうして先々もジュニアを持ち上げておく事は野望達成後の先々のいろいろな事に優位に働くとスッパロ艇長は読んでいるのである。
河の制河権を得た後に河で行われる通商の尽くに武力と制河権を駆使して介入し、そこから利を得るのでつもりある。
邪魔になりそうなスコップ航水士は早めに始末しようと決めた。

マクレン・ジュニアが颯爽と山賊丸に乗り移り、スコップ航水士が油断なく辺りをねめつけ乍ら後に続いた。
舳先で慣れた手つきでジュニアは「山賊丸ア・ゴー」と出発の合図をした。
「レフトブラサー航空基地」での航空機発進で鍛え上げただけに難なくその役をこなし、スッパロ艇長はその手際よさにさすがは将来の大物と感服して良く聞こえる様に賜った。
こうして、思惑を秘めたアイゼン・ブル・マクレン・ジュニアとスッパロ艇長とスコップ航水士の波乱の戦場行きが始まるのである。

ジュニアのこの行動が「井戸端皿番長隊」の忍びに知られ、偵察鳥九官鳥の大きな嘴によってマクレン大佐は文字通りの耳打ち(モールス信号ともいう)をされたのである。
その知らせに息子が来たという親の喜びよりもあったが、鋭い刺身包丁の切っ先を突き付けてあれだけ説得をし、約束を交わしたにも拘わらずにその約束を反故にしたうえ、さらには与えられた重要な使命を途中で投げ出して戦地に赴いた事にマクレン大佐は怒った。

与えられた重要使命を難波(なにわ)節名物「くいだおし人形」に任せて逃げ出した事は敵前逃亡に等しい行為で、戦場においては文字通りの戦犯である。
これが他の村民であれば、マクレン大佐は即刻MPに通告し逮捕、結果は銃殺とわかりつつも手続き上の軍法会議で判決を下すところである。

だが、身内である事と単独で後を追ってきたのではなく、能力未知数の未確認部隊を引き連れてきた現状を考えると、これは思いがけない伏兵として利用できるかもしれないとマクレン大佐は考えた。
お仕置きとして囮作戦の餌に使っても構わないであろうとも考えた。
そして、ジュニアの戦地での活躍によっては軍法会議での減刑も充分考えられると親らしく考えた。
優しさを見せつつも、偵察九官鳥の首を握り締める腕には力が入る。

-- 灰色猫の大劇場 その25 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
イタリアーノのイタチが柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前にカメムシが居た。
カメムシは悪臭を放つ準備をして灰色猫ににじり寄る。

スカンクずが砲塔をむけてカメムシの前に立ちはだかる。
カメムシ危うしとイタチが助太刀に入る。
3者がほぼ同時であった。

想定外の有害物質の混合密度に防毒ガスマスクの機能がマヒしてしまう。
そして、装着していた灰色猫が薄桃色の霞の中でゆっくりと倒れた。

玉座が空いた。
チャンスだ。

だが、このチャンスを生かせる者は・・、そして誰も居なかった。
劇場にバイオハザードの規制線が張られるが、その規制の有無関係なく進入する者は居ない。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2022 Freedog(blugger-Name)
Posted at 2022/03/21 19:59:49 | 物語A | 日記
2022年03月03日 イイね!

ナチと同じ行動をすれば

急遽、オリンピックへの参加を認めない。だそうだ。
ラスプーチンと同レベルまで堕ちるのではないかと心配だ。
とはいえ、感情がピークに達している今は難しいのだろう。
マンデラは「許す」と言ったとか、言わないとか。

Posted at 2022/03/03 20:05:58 | ぼーや木 | 日記
2022年03月02日 イイね!

見え難い位置へ

ロ〇ア製映画のDVDが前面に出されていたので、奥の見えにくい場所へ移動。
経済制裁をやったぜ!

小麦輸出国だって?パン食か?・・・・俺はコメダ珈琲?あっ違った!
Posted at 2022/03/02 21:26:37 | ぼーや木 | 日記
2022年03月01日 イイね!

1年ボイコット開始!

あの国の製品は1年間買わないぞ。

ちなみに、すでに2か国は1年ボイコットを実施中。
でもって、1年ごとに更新中!

でも、ロ〇アの製品ってどこにあるんだろ。
そだ、映画DVDは買わないぞ。
Posted at 2022/03/01 23:23:38 | ぼーや木 | 日記

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何シテル?   01/11 12:41
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