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2020年10月16日 イイね!

物語A211:「第三種接近遭遇」

黒田大和猫ノ信大尉率いる「ヒホンコー部隊」は着々と第一拠点のワンワンセブン高地に向かって、それもかなりの早駆けで進軍していた。
部隊が進むにつれて周囲の藪が次第に深くなり、それと共に降り注ぐ雪の積雪が重なって進軍の行く手を阻んでくる。
だが、黒田大尉によって選別された優生部隊による進軍である。
深い藪も積雪もその進軍の歩みを阻止するにはかなり物足りない障害物であった。
早駆けの進軍速度を緩める事無く部隊と第一拠点との間に立ち塞がる広大な深い森の縁へと「ヒホンコー部隊」は突き進んで行った。
この時点で黒田大尉はこの漆黒の森の奥に大いなる魔が潜んでいる事などはまだ知らなかった。
しかし、例え何が立ち塞がろうとも「押通る」という固い意志を持っている黒田大尉であった。

そして、第一種接近遭遇。

前方に大きく広がる森の下草が微かに揺れたかと思うとその下草の中から藪の中へ素早く飛び込むが一つ見えた。
見えたと大尉は思った。
それは一瞬の出来事なので注視していないと分からない動きであった。
黒田大尉は素早くその方向に目をやり影らしき何かが飛び込んだと思われる暗い藪の中を見据える。
幻覚かもしれなかった。
河岸からここまでの進軍中の重責、もとい、マクレン大佐への裏切りから来る罪悪感と追いつかれる不安から影を見たという幻覚が生じたのかもしれない。
実際は何も見ていないのかもしれなかった。
だが、黒田大尉の戦で養った本能は超次元的にその存在を感じ取っている。
黒田大尉が実際に影を見ていようが見ていまいがそのような事にお構いなく、影の存在を本能は否定せずに、逆に激しく黒田大尉に警告を発するのであった。
戦慣れした大尉の本能は大尉という器の中では理屈よりも遙かに強い存在なのである。

何かが藪をざわつかせながら、河に向かって疾駆する。
黒田大尉の本能はやはり正しかった。

その何か見えない影が走り去った後には微かに揺れ動く藪が1本の航跡の様な筋を残していた。
黒田大尉は緊張した。
影の正体が何であったのかを想像したが森に住む狐のような小動物以外に直ぐには思いつく物はない。
仮に小動物であった場合、何故森から一目散に駆け出したうえこの大部隊も一目も掛けずに慌てて逃げていく理由を大尉は考えた。
正体はわからないが少なくとも影よりもさらに危険な存在が森に居る。
黒田大尉の本能は風で静かにざわめく森を見つめながらひしひしとその脅威を感じとる。

第一拠点からはまだほど遠いいこの場所で、それも出発した矢先に強敵と遭遇するのは余りも幸先が良くない。
黒田大尉にとってそのような事態は願い下げである。
懐から御神籤を取り出して覗き見る。
中吉だった。
当たるも八卦当たらぬも八卦と云う神のお告げだろう。
大尉は溜息をついて肩を落とすと、御神籤を丸めて捨てる。

万年大尉であるが、これでも一介の指揮官であり、年季もある。
この年季はマクレン大佐の処遇から考えるとあり過ぎる程にある。
奴隷の如く使われていたからだ。
従って、このような不測の事態への対応策も当然のように教練に従って練っていた大尉である。
対応策を簡単に言うと敵と対峙する小部隊をここに残して、本隊はそのまま進軍を続けるという事である。
だが、黒田大尉が気に入らないのは貴重な部隊がこの程度の事でそれも進撃直後に減らしてしまうという事であった。
第1拠点、第2拠点で新たに兵を補充できる筈だが、それでも最後の最後、D村本部を奇襲し独裁者アフェト・ラ将軍様を押収するまで、兵力は温存しておきたいというのが黒田大尉の本音であった。
独裁者アフェト・ラ将軍様の捕縛が大尉自身の功績であるという証人も沢山必要なのである。

黒田大尉の心配をよそに正体も目的も不明な動きの痕跡がたった一度あっただけで、その後は静かで何も起きない。
藪の中を走った脅威が敵かどうかもわからないままである。
正体は不明のままだが、藪の航跡が消えてしまうと辺りは前にも増して静かになる。
この状況から黒田大尉の先を急ぐ心がこの脅威への警戒心を捨ててしまった。
「ヒホンコー部隊」の進軍を止める事無く前進を続けた。
こうして第一種接近遭遇は黒田大尉によって無視される事となった。

第二種接近遭遇。

陽が高くなるものの積雪がさらに進軍を阻むかのように分厚くなり始め、広大な森の縁にかなり近づいた所で黒田大和猫ノ信大尉は森の下草から走り出て来るなり藪を掻き分けて突き進んで来る影を再び発見した。
今度の正体不明の影は黒田大尉に向かって真正面からやって来る
藪が左右に掻き分けられながら大尉に向かって来る物体だったが、深い藪に阻まれてその正体が一向に掴めない。
黒田大尉はその正体を見極める事無く長柄の刺股を前方に突き出して身構えた。
透かし見る藪の奥に影の輪郭を僅かに見て取った時、黒田大尉はその物体目掛けて藪の中へ刺股を突き込んだ。
刺股の先端部分の二股突起が影をがっしりと捕える感触が黒田大尉の刺股を握る両腕に伝わる。
刺股が影をがっつりと捕えたと感じた瞬間、正体の知れないその物体が「むぎゅっ!」と呻いた。
大尉が想像していた音とはちょっと違う調子外れの呻きだった。

「ふんぬっ!」の掛け声と共に黒田大尉はその物体を刺股の先に引っ掛けたまま中空高く持ち上げる。
そのまま、宙に弧を描いて横の藪の中に激しく投げ込んだ。
物体は大きな弧を宙に描きながら、キラキラと輝く美しい雲の尾を引いて再び藪の中へと消えていく。
周囲の新米村民兵が大尉の刺股捌きの豪快さと宙に描かれた煌びやかな光の弧を見て喝さいを上げ拍手する。
その喝采に少しばかり得意気になる黒田大尉であった。

中空高く持ち上げられ、横の藪に投げ込む寸前に物体の正体を見て、「なんぞ?こりゃ味方やわ。」と頭の隅で大尉は思った。
影の正体は泣きながら走って来た第一飛行隊所属の新米村民兵であった。
キラキラ雲の正体は恐怖と刺す股で腹を突かれて思わず漏らしてしまった小便であった。
上空を見上げながら大口を開けて喝采を上げる新米村民兵の上にそれはきらきら輝きながら降り注いでいた。

黒田大尉はこの自分に向けられた「ヒホンコー部隊」の新米村民兵の喝采する中、「まっ、ええわ。」と味方と判別したものの「道のごみ」として無視する事にした。
大尉はこの程度で「ヒホンコー部隊」の進軍を止めようとはしなかった。

次に、タンコブだらけの新米村民兵が姿を現した時は刺股を頭上から振り下ろし、新米村民兵を藪の中の泥地に沈めた。
足元の新米村民兵の無残な姿を見て、「まぁ、戦場やさかい。」と、そして「時には敵味方の間違いもあるものだ。
そもそも例え味方でも武器の射線に無造作に入る方が悪いのだ。
これは戦場の鉄則なのだ。」と自己納得しながら、またもや進軍の足を止めなかった。

もしここらで、異変に気がついて逃げてきた新米村民兵から第2拠点での事情を黒田大尉が聞いていたら、何らかの対応策をとっていたと思われるが、結局は仮定である。

その次の逃げてきた新米村民兵を少し格好をつけて「中空2回転」で放り上げて、藪の中に見えないように放り込む。
キラキラな光りが円を描く。
そして、やんややんやの喝采を浴びながら「なんや、おもろいな。」と黒田大尉は陶酔していた。
光の粒子が辺りに降り注いでいる中、当然のようにこの時点でも進軍はやめない。
黒田大尉の第2種接近遭遇は部隊が森の中に分け入った後も暫く続くのであった。

第三種接近遭遇

森の中を進撃する「ヒホンコー部隊」の進行方向の鬱蒼とした森が少し明るくなっている。
森の木々の狭間から明るい光が差し込んで美しい縞模様の斜光を作っていた。
森林浴の雰囲気である。
森のその様子から黒田大尉はこの先に広場が広がっていると気取った。
同時に、その広場に嫌な気配を感じ取る。
それも、かなり凶悪な気配で、気配の源も数が異常に多い。
第二種接近遭遇する第一飛行隊所属の新米村民兵がたむろしている光景を頭の中に浮かべたが、新米村民兵とは比較にならない程の背筋に悪寒を走らせる凶悪な気配だと大尉は感じた。

黒田大尉の本能が激しく警鐘を鳴らしまくっている。
素早く片手を上げて後続の部隊にその場で速やかに潜伏の合図を送り、大尉自身も手近な木の根元の影に隠れるようにして身を屈める。
この時になって初めて「ヒホンコー部隊」の進撃が止まったのである。

黒田大尉の合図で後続の部隊が停止し、森の中に静かに溶け込んでしまい、その存在を完全に消してしまった。
この森にこれだけ多くの兵士が存在しているとは思えない程の静けさが森を覆い尽くす。
時折、チチッチチッと小鳥の無く擬音が聞こえる。
村民兵が気を利かして鳴き声を真似ているのだ。
この足並み乱れない完璧な行動が部隊編成での黒田大尉自らの選抜による賜物であると大尉は自画自賛するのである。

後続部隊の存在が消えたことを確認すると、木の根元から下草の中へと大尉は潜り込み、地面をトカゲが這い歩くように下草の中を進み、森の境に立つ太い木の幹に辿り着くと、今度は蛇のように幹に寄り添って立ち上がる。
そして、片目だけを幹の影からそっと覗かせて広場を窺った。

大尉の眼前には森の中央に位置する広大な広場が広がっていた。
その広場では凶悪な面構えの戦士たちが横一列に並んで向き合っている。
凶悪な熱気が湧き上がっている。
相手を脅して戦意を失わせ、自らの闘志を奮起させる厳ついポーズを作り、怒気を孕んだ醜悪な面相を作って精一杯に長い舌を出しているところだった。
黒田大尉はその集団の奇妙奇天烈さに、どのように反応してよいかわからなかった。
笑いが出そうな気もするが、尋常でない殺気に身震いもするのだ。
ただ、大尉は成り行きを見ているしかなかった。

ドスドスドスと辺り一帯をを揺らがす様に地面を力強く踏みつけながら、相対した一方の一列が相手側へと前進すると、それに対峙する一列はその動きに合わせて同様にドスドスドスと地を揺らして後方へ下がる。
前進する列が後退する列に襲い掛かると思われたが、前進をやめ遠吠えを上げる。
後退する列も、前進が止まるとその場にとどまり、さらに大きな遠吠えで答える。
この雰囲気は正に一触触発の戦いの場と言って過言でない。
そして、これは合戦の前の闘いの儀式ではないかと黒田大尉は考えた。
両群が一気にぶつかり合うタイミングを計っているのだろうと予測した。
現に両列の後方にはそれぞれ強者たちが興奮し気勢を上げて群れている。
武器や拳が振り上げられ、針の音一つで両群とも爆発しそうな勢いで突撃する雰囲気である。

王者コナンに忠誠を誓いD村を見限って追走してきた「第32装甲私団」のバルター・モデル中佐と、元から北方を住処にして暴れていた北方蛮族の「45独立特化組」ジンケス・カン親分が、ナイナイメー辺地から逃げ出して来る第一飛行隊村民兵という獲物の獲得権をめぐって争っているのだ。
共に、王者コナンを長に担ぐが、部隊間での争い事は絶えないのだ。
王者コナンもある意味これは鍛錬であるとして黙認している。
むしろ、その争いで鍛え上げられて強くなった部隊がコナンに挑戦してくることを期待しているのだ。

-- 灰色猫の大劇場 その18 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
赤切符’s(再発行)を口に咥えた犬の熱血おまわりさんが柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前に、金色の長い鎖が付いた黒縁の片眼鏡を付けたが居た。

レンズの外れた黒縁だけの片眼鏡をしごいて狐は王様である灰色猫に「前回出演時のケガによる治療費と賠償金」を要求している。
灰色猫は赤い羽根の付いたチロルハットをおもむろに被る。
風に吹かれて揺れる赤い羽根を犬のおまわりさんは見た。

そして、むらむらと先祖伝来の本能が揺り起こされる。先祖返りするのは俊足の早業であった。
既に、パブロフ効果に毒されているのかもしれない。
灰色猫は背後から、水平2連式猟銃を引き出した。

そして、強い視線で犬を睨み付け、力強く狐を指さす。
狩猟犬は獲物の狐を追い立てようとし、遁走し始めた狐を追った。

忘れ去られた赤切符’s(再発行)を回収して、丁寧に燃やしてしまう灰色猫が最後に残っていた。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2020 Freedog(blugger-Name)
Posted at 2020/10/16 14:49:29 | 物語A | 日記

プロフィール

「プリウスミサイルというが・・・ http://cvw.jp/b/1467453/47466114/
何シテル?   01/11 12:41
FreeDog(寒;)です。よろしくお願いします。 好きな言葉「笑う門に福あり。」 さぁ、みんなでブログ読んで笑いましょう! 嫌な真実「My JOKE...
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