僅かな間だったが、「金」の玉の芝狸達は巧みに「あるそん・ろう火付盗賊方」に潜入していたものの、運命を共にして消滅する気などは全くなかった。
自らの保身こそ、芝狸達の理なのである。
そして、巧みに漁夫の利を得る事であった。
「SS(スペシャルソード)親衛隊」の隊員が第1飛行隊の新米村民兵や、ゴメリー中尉直属の第30軍団の兵士や、同じ北方蛮族仲間の「あるそん・ろう火付盗賊方」の各諸子らをなぶっている脇で、芝狸達はまるでプロフェッショナルの従者の様に静かに寄り添っていた。
雪原の芝に化けた攻撃手法をとっていただけにSS親衛隊員達に「あるそん・ろう火付盗賊方」の仲間と疑われていない。
脇に寄り添いつつも、その陰に隠れる様に自らの姿を表に出さないよう注意しながら、SS親衛隊員達の獲物の口に放り込みやすいように加工し直した唐辛子団子やら、○○が先端に付着している超キモイ突んつく棒を芝狸達はタイミングよくSS親衛隊員に手渡している。
その姿は手術中の医者と、その差し出す手にメスを手際よく渡すベテラン看護婦のようであった。
芝狸達はただ道具を渡すだけではなく、その他の数々の卑劣な道具を考案して準備するなど、芝狸達はSS親衛隊員達への気配りに余念のない手助けをしていた。
さらに、応援団SBT12を結成して、額に汗しながら応援歌を歌い、激しい腹鼓と振り付けでSS親衛隊員の虐待行為を一種のお祭り騒ぎへと昇華させるべく盛り上げ、SS親衛隊員達を鼓舞していた。
こうして「SS(スペシャルソード)親衛隊」の隊員達を効果的に手伝う事で芝狸達は次第にSS親衛隊員の好感度をアップしていったのである。
卑怯者同士であるがゆえに、その親近感の距離は急速に縮まってゆき、いつしか「SS(スペシャルソード)親衛隊」の制服を「金」の玉の芝狸達は着込んでいた。
そして、第1飛行隊の新米村民兵を紙袋(かんぶくろ)に押し込んで、ボカンと蹴りゃふんぎゃと鳴く、ふんぎゃが、ふぎゃと鳴きゃ、あ~ヨイのヨイと、SS親衛隊員と共に楽しそうに肩を組んで謡いながらナイナイメー辺地を跳梁跋扈していった。
こうして、本編へ潜入していた「金」の玉の芝狸達は「あるそん・ろう火付盗賊方」を素早く見限り、「SS(スペシャルソード)親衛隊」として統一された兵隊服を身に纏う事で本編での地位と共にその居場所を勝ち取り、芝狸の未来に活躍の場が広がったのである。
芝狸達は劇場にまだ居残って、脚本に頭を絞っている灰色猫に腹太鼓の連打でエールを送った。
それはもちろん自らの優位性を誇り、本編に入れないでいる灰色猫への蔑みの意味を込めてであった。
そして、芝狸達は灰色化け猫の呪いを大層頂いたそうである。
放火兎達の積年の恨みとどのように相乗効果が生まれるのか。
とにかく、めでたし、めでたし。
三角錐隊形が消滅してしまう寸前に、その中の数体が隊形から離脱し、それぞれ自らの道を切り開きながらワンワンセブン高地麓の混戦の中を掻き分けながら高地の頂上を目指して進んで行く。
その数体の中でも抜きん出て先を進む一体はゴメリー中尉である。
高地確保を命じられ第1飛行隊を率い隊長であり、第30軍団の団長でもあるバーナモン・ゴメリー中尉の戦いはまだ終わっていなかった。
後を追う残りの数体は、第30軍団の猛者達の中でも特に一筋縄でいかない兵士達であり、ゴメリー中尉に血の忠誠を誓った兵士達である。
だが、無情にもこの忠義の兵士達の姿を先頭を進むゴメリー中尉は一顧だにしていなかった。
この一見、無情にも見える中尉の態度ではあるが、地の忠誠を誓った猛者達はそういった細事などは一切合切気にもしていない。
見え隠れしながらも常に中尉をサポートし、危地に陥れば身代わりとなる。
それが猛者達の忠誠心であり、もし仮にゴメリー中尉が目標半ばにして不覚にも倒れてしまったとしても、その遺志を引継ぐのも猛者達の熱い忠誠心であった。
ゴメリー中尉は真正面のワンワンセブン高地を見据えていた。
自分単独でもそのワンワンセブン高地の頂上に向い、そこを確保するつもりでいる。
高地を中尉だけで確保しても、第1飛行隊の面々が揃っていないかぎり、作戦は成功しないのだが、ゴメリー中尉の目はすでに狂気に血走っていた。
灰色の脳細胞の中には確かに作戦全体における第1飛行隊の役割をかろうじて残っているものの、その記憶領域のパーセンテージは少ない。
ほとんどの領域はその高地に「自らの足で立つのだ」という執念の塊が占めている。
乱戦の嵐の中を力強く前進するゴメリー中尉は、味方からの挟撃に混乱して闇雲に中尉の歩む「マイウェイ」内に走り込んで来る目明かしや下っ引きを、虻や蠅を追うかの様に張扇で払い除け、主を見失い同心からも見放されしまって茫然と放浪する与力を遠くへ投げ捨て、寝返り先を探して走る「金」の玉の芝狸を思いっきり鷲掴みにしてハグした。
このモフモフが気持ちよいのだと中尉は思った。
できればもう少しハグしていたかったとも中尉は思った。
しかし、執念がその欲望に打ち勝った。
しぶしぶと決別の意を込めて、モフモフを地面に叩きつけて踏みつけた。
中尉は自らの情けない欲望に惑う精神に鞭打ったのである。
全ての証拠隠滅を謀って掃討戦を繰り広げる「第QSS戦車私団」アンド「SS(スペシャルソード)親衛隊」がゴメリー中尉の「マイウェイ」にも立ち塞がる。
このナイナイメー辺地から河の方へ、自らの部隊以外の全てを追い出す事が彼らの目的である。
当然、ゴメリー中尉もその対象で、追い出す為に「マイウェイ」に立ち塞がったのだ。
その「第QSS戦車私団」兵をゴメリー中尉は罵倒して萎縮させ、卑怯卑劣な「SS(スペシャルソード)親衛隊」隊員を地面に叩きつけた挙句に踏みつけてゴメリー中尉は速度を緩める事無く歩んでいく。
自らも今にも倒れそうになりながらも、時には張扇を杖にして一歩一歩と邪魔者を「マイウェイ」から排除しながら歩んでいくのである。
卑怯な「SS(スペシャルソード)親衛隊」隊員がゴメリー中尉に対して接近戦は無理と悟り、のろのろと歩むゴメリー中尉に特殊餡子入り雪玉を投げつけ始めた。
ゴメリー中尉は剛速球で投げ込まれて来るそれを難なく片手で受け止める。
ゴメリー中尉は受け止めたそれを捨てなかった。
SS親衛隊員に投げ返す事もしなかった。
なんと、気付け薬の代わりでもあるかのように口中に含み奥歯で噛締めながら歩むのであった。
目をいっそう血走らせ、口角から泡を吹きだし、敵の体を踏みつけながらズリズリと歩むすそのその姿に、強烈なオーラをまとう異様な姿に、ゴメリー中尉に手を出そうとする敵は次第に居なくなっていった。
むしろ、素直に道を開けたのである。
その反動であろうか、中尉の背後に付き従ってきた「第30軍団」の猛者達に襲い掛かってゆき、一体一体と「第QSS戦車私団」と「SS親衛隊」に呑み込まれてしまっていく。
ゴメリー中尉は邪魔をする敵兵が居なくなった「マイウェイ」をワンワンセブン高地へと歩むのであった。
-- 灰色猫の大劇場 その10 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
灰色猫が柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前に平伏す灰色猫が居た。
灰色は王様である灰色猫に「XXXX」と願い出る。
柱の影の灰色猫がニヤリと笑う。
玉座の灰色猫が首を傾げ
玉座の前に平伏す灰色猫が一歩迫り
柱の影の灰色猫が機会を逃すまいと手に汗をかき
平伏す灰色猫が袂にそっと手を差し込み
柱の影の灰色猫が体中の筋肉を緊張させ、
玉座の灰色猫が声を発しようとおもむろに顔を上げ
柱の影の・・・ではなく平伏す灰色猫が悪意の笑みを口の端に浮かべ
王座の灰色猫でなく、柱の影の灰色猫が袂から鋭い得物を出し、
ではない、平伏す灰色猫が懐からハンカチ
いやいや、玉座の灰色猫がくしゃみ・・・・
柱の影の灰色猫が少しずり落ちずに、玉座前・・・・
床に一匹3役の過労死状態の灰色猫が横たわっていた。
灰色猫は玉座に「疲れた」と願い出る。
「だからなんなのだ!」と役を干された小劇場出演者の全員が口を揃えて言う。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2019 Freedog(blugger-Name)
ホンダ フリードスパイクハイブリッド フリードスパイクハイブリッドに乗りました。 |
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