
とうとうこのような様相になってきてしまいました。

手前、ライカM10モノクロームと言いまして、白黒写真しか撮れないカメラ。とカラーフィルター有無だけの相違でどう違うのか、M10-Rの白黒写真とどう違うのか、気になっていましたが、M10モノクロームを手にしてマシンの性格を少し理解してみれば、極めて不毛な比較と知覚したものの、ネットを徘徊していると同じ疑問を持っている人もいらっしゃるようなので、参考程度にもなりませんが掲載をしておきたいと思います。
Leica M10-R Typ 6376+ Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM

M10-R ストレート現像(LR)
F2.4 ISO400 SS3/5
Leica m10monochrom Leitz Wetzla + APO Summicron-M 50mm F2 ASPH. Black Chrome

M10モノクローム ストレート現像(LR)
F2.8 ISO800 SS1/2
と露出を揃えて撮る意味すら見いだせず、計量カップは使わない、ひび割れたどんぶり+スパイス適量な比較となっています。以下、注釈なきときはJPG撮って出し画像となります。
Leica M10-R Typ 6376+ Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM

M10-R F2.4 ISO400 SS3/5 のJPEG(設定ノーマル)「最近は寝顔しか撮らせてもらえませんね」と横で妻がいいますが、その通りです。段々撮れる機会が減って来ました。寝顔をこうして当たり前に撮れるのも今だけと思い、日々、ときには同じボディでレンズを替えたりしながらテストも兼ねて撮っています。
Leica m10monochrom Leitz Wetzla + APO Summicron-M 50mm F2 ASPH. Black Chrome

M10モノクローム F2.8 ISO800 SS1/2 のJPEG(コントラスト高、シャープ高)
NikonD810+ sigma ART 35mm

D810 JPEG (モノクロモード、他ノーマル)
F2.5 ISO9000 SS1/40
NikonD810+ sigma ART 35mm

何も考えずF値だけ近辺に合わせてあとはカメラ任せで撮ってみればライカと比べ露出が暗かったD810JPEG、ソフトで露出を上げました。後半にも比較掲載してあります。

M10モノクロームというマシンを知れば「10-Rとのモノクロ変換写真とどう違うのだろう」という疑問は、スプーンとフォークどちらが使いやすいか、塩と砂糖どちらが美味しいかという愚問と同質でした。あるいは大いなる異質の一方で、ネット画像レベルという日常的な限定域では、つまり低感度域では拡大しないと相違が分からないようなボーイング787と787-9、新幹線700系と800系はどちらが乗り心地がいいのか、というようなもはや操る者にしか相違が分からない域もあったりするものでした。

カメラを買って帰宅したところ、軒先で出くわした我が子によるM10モノクローム開封の儀は「どうせライカでしょ」と言われながら玄関先の外でした。

「レンズ持ってきて」「ハイ」とアシスタントである私が取りに行き、「野球はやるのをやめようかな。だって旅行いきたいもん、二年生になったら土日両方あるんだよ?」と聞いて、

我が家の先生を被写体に初撮りしたあとにテスト撮影をお願いし、遊びに来ていた1年生の級友からは「またカメラ買ったの~?」と鼓舞を頂き、二人を記念撮影して、

これらつぶやきにもUPしましたが、注目する一つは「飛びやすいハイライト、白いペイントに浅く埋没しほぼ陰影もない状態での数字の刻印」をしっかり捉えているフルサイズ市販品史上トップクラスの突き抜けた解像力、描写力があり、同じく際立って高感度も強いカメラで、二点を兼ね備えた製品は無比級に思われ、しかし色はなくという個性を持っている中に、それよりも特筆するべき事項は下記に譲ります。

「かようび3じ5ふん」とアポの予定と、腕時計とその搔き直し、いや描き直しをガールフレンドに学校で「いちゃこく」光景が想像できる描かれた左腕。

我が子が勉強中も、写活に勤しむ楽しいカメラです。EOSR5にも「ここまで来たか」と衝撃を受けましたが、その驚きをある意味凌駕し、そして楽しさという点では飛行機とロケットの高度差のごとく越えていく一機に出会えたような気がします。

思わず外にまで出る始末。ソフトでシャドウを下げて、コントラストを上げて、黒を潰しつつ、

トリミング。4000万画素のLeica M10monochrom とフルサイズコンデジ4700万画素Leica Q2 Monochromとで迷いました。Q2系は優秀なボディ付きで同社同種レンズよりも解像力が高いライカ28mmレンズを一本買うようなものであり、AF、手軽さ、M型よりは取り回しやすいサイズ、そこそこ接写もできる、そしてレンズ一体型の度肝を抜く段違いな解像感の素晴らしさは公称画素数以上であることを、SONY RX1RやLeica バリオXで理解したつもりゆえ、Q2 Monochromも素晴らしいカメラで悩ましく思いましたが、結局的に私が多用するであろう35mmで3,000万画素、50mmで1500万画素となる点や、私の場合はQ、Q2にも共通して思いましたが、作例を見るにライカっぽさが殊に陰影の作り方につき少し希薄な気がして、換言すれば情緒的というよりも現代的であるように感じ、あるいはQ系全般的にポートレートがほぼ皆無級であるネット上作例の傾向から撮りたくなる被写体の方向性が異なる気がし、いうなればむしろバリバリ解像番長的な「最新の今ふう超高性能デジカメ」に感じて、加えて解像力だけだとすぐに飽きる傾向を過去の経験則上も思い、各所にクラシックさの香りも残るLeica M10monochromのほうを選んでみました。

ISO12500、これらはすべて撮って出しですが、RAWだとハイライトがしっかりと戻りました。

大トリミング。

ISO3200で、そーっと隠し撮りをトリミング。

ISO32000、SS1/30、F2

プロパティでは34464、という表記のISO100000。確認しますが、M10モノクロームは4000万画素です。いかにカラーフィルターがノイズを作り、解像を下げているのかが分かるテストともいえるかもしれません。

同じくISO100000、肉眼、液晶ともに真っ暗な低照度です。被写体が見えないのでピントはだいたいこれぐらいだろう、と気配の距離感だけで撮っています。

ISO14464というソフトでの表記でしたが、ISO80000です。

こちらがISO6400

ISO12500

ISO12500のJPG画像を、ソフトで増感。当面これらの有難い機材を使い込んで、理解を体で深めていきたいと思いますが、次はデジカメの世界観、残すところFUJI、ライカ、ハッセルブラッドの中判域だけになってきたかもしれません。妻の「まだほしいのあるの?」という一言に「中判ってのがあってね」と説明しておきましたが、来年あたり手を付けてみるのか夜空を見上げながら、

ほんのり室内の灯りを点けてISO800、と平穏な常用域に戻って、

翌日ランチへ向かう道すがらの日中M10モノクローム。

色が見えるようになる、という現象につき、M10モノクローム購入前に経験しました。白黒写真を調整中に、棚の木に薄っすら茶色が乗っているように見え「あれ、モノクロなんだけどな」とソフトで今一度「白黒設定」にしてみても変わらずやはり白黒でして、これは脳で「こういう色のはずだ」と補正されてしまった一種の錯覚なのだと感じました。

トリミング。

お店へ向かう道中に、ISO160固定F8ピントを無限にして、適当に街を撮ってみれば、50m先にいる人の肌感、服の素材まで分かり、商店街にて通りすがり本屋の軒先に向けて適当にシャッターボタンを押してみれば、真っ暗に写った店内のシャドウを思いっきりあげると、奥にいる人の表情も分かる様相でした。赤外線カメラの一歩手前的、恐ろしいです。スーパー解像度+スーパー高感度カメラです。尖ったモンスターマシンと言って差し支えないと思いました。

しかしこのカメラのさらなる醍醐味がありました。

単に広いダイナミックレンジだけでなく、

光の階調、陰影のグラデーション、中間・暗部のトーン、どう表記すればよいのか、それらの広範な緻密さと豊潤さ、その表現力です。いや今までは階調性という概念止まりだったところ「階調力」という概念を導入してもいいのかもしれません。

常用感度域におけるモノクロ写真としての比較は、ネット上で通常表示する程度の画像では、差異は大きくでないケースがほとんどかもしれず、あるとしても画質や画像に対して尖ったこだわり、感性がなければ何ら気にならない差異と言ってもいいかもしれませんが、M10モノクロームは、平準域でにおいて「より情緒性ある陰影の階調」を「美しくなだらかに自然に調整しやすく」これらを表現しやすく、かつ画質を維持しながらそれが可能であり、と言っていいかもしれず、

あるいは極限的な高感度のケースが難なく級に撮れ、多少の高感度域であれば際立って綺麗に撮れるマシンであり、ゆえに多少無理に絞っても撮ることができたりスタイルの幅や選択肢が広がる恩恵もあり、かつそれが相対的に良質な画質であり、ということになるわけですが、これらの点に加えて、
flickr

殊更驚愕の一番びびったのが、このトーンです。しびれました。心が震えました。打ちのめされました。真正ダイレクト4000万画素のJPG圧縮どうしてもネットではトーンが若干潰れてしまいますが、あるいはネット環境では現状flickrをもってしても微細なところまで表現できなく、RAW現像段階にてどうハイライトにパラメータを上げても、シャドウを沈めてみても、差異を広げてみたりしても、多くが早晩トーンにつきガタガタになったり崩れたりするようなシーンと思われますが、その中間が一切破綻せずでした。そして美しいと思いました。高感度、ノイズレス、解像度も突き抜けているのかもしれませんが、実は何よりこの無比級たる豊饒なトーンこそが、大きく特出した魅力の一機なのではないかと実感しカラーとトレードオフする価値を思いました。
M10モノクローム、M10-Rともにコントラスト高、シャープ高の設定にしたJPGにて、
Leica m10monochrom + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

M10モノクロームへライカRマウントの35mmF2.8レンズ、エルマリートを装着して、
ISOが任意に設定した上限になるまで滅法高く上がることを許容するモードにして、カメラ任せに、
F2.8、ISO25000、SS1/30
Leica M10-R + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

M10-Rへ同じくエルマリートRを装着し、レンズとF値を揃えて、あとは同じくカメラ任せで、
F2.8、ISO8000、SS1/30
M10-RはISO8000でディテールを残しておくことすら厳しいですが、M10モノクロームはISO25000でもまだ「味」の範囲内に位置していると考えてもよいかもしれません。
Leica m10monochrom + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

F2.8、ISO3200、3/10秒、
Leica m10monochrom + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

今度はF2.8ISO1600のままにして、シャッタースピードで露出を変化させていきます。SS1/6
Leica m10monochrom + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

F2.8ISO1600のまま、SS3/10
Leica m10monochrom + ライカ Elmarit エルマリート R 35mm F2.8

F2.8ISO1600のまま、SS1/2、目視にて下記M10Rの露出に最も近いと思います。なおエルマリートR、M10モノクロームの解像力、そして階調力に対応できていないと思いました。低感度でも探ってみたいと思います。
Leica M10-R + Voigtländer Ultron 35mm F1.7 Aspherical VM

今度はM10-Rのほうにレンズの明るさを付与してF1.7、ISO800、SS1/30、それぞれ最短付近にて。暗所においてレンズの明るさも大いなる正義と感じます。なおM10-R、M10モノクロームともに、数枚間を開けて撮影しても、ボディがホッカイロのように温かくなります。それだけ画像エンジンがアルゴリズムとともに一所懸命に働いているのが伝わってまいります。
MとR、荒涼たる雑なテスト、失礼をいたしました。
追伸
M10モノクローム仲間が欲しい秋の暮。